犬の熱中症対策・予防法まとめ! 獣医が教える熱中症の症状や応急処置も


梅雨を越えると暑い夏がやってきますね! 人の話ですと毎年700人以上の方が家の中で熱中症により亡くなっていますが(※)、犬も暑い夏のケアがとても大切です。今回は白金高輪動物病院総院長の佐藤が、怖い犬の熱中症の原因や対策、予防法などについて解説します。

※厚生労働省報道発表資料 「平成22年度熱中症による死亡者数」 調べ

犬の体感温度は人と違う?

地面に近付くほど温度は高くなるため、犬は私たちが体で感じている温度の5〜17度も高い温度の中で歩いています。そのため暑い日には地面の近くが50度近くまで達することもあり、犬は灼熱の中を歩いている状態になります。人との体感温度の違いによる認識の甘さは、犬の熱中症を増やす原因と鳴ります。外で散歩する際はなるべく日陰を歩かせてあげたり、こまめに水分補給をしたりして、愛犬が熱中症にならないように気を付けてあげてください。

どれくらいの気温になると熱中症のリスクが出てくる?

診察では犬の体温が40度を超えた時点で熱中症と診断しますが、熱の上がり方には犬種の差や個体差があります。気温で示すというよりは、人が少しでも暑いと感じた時点で犬にとっては熱中症のリスクがあると答えた方が妥当と言えるでしょう。人と犬が生活している場所は違いますので、人が計測した温度と犬がいる場所の温度は一緒と限りません。大事なことは、自分の愛犬が暑がる場所にはいないようにすることです。

犬の熱中症対策

犬はどうやって温度調節してるの?

犬の熱中症対策

暑い日に外に出ると、ワンちゃんの呼吸が早くなり舌を出して、ハァハァすることがありますよね。これを「パンティング」と呼びます。犬は、人間の主な温度調節である汗腺が足の裏のパット(肉球)部分にしかないため、舌を出して呼吸を浅く早くし、唾液を蒸発させて熱を逃すことで体温を下げているのです。しかし、唾液を蒸発させすぎると水分が足りなくなるため、同時に水分補給をすることが大切です。

実は家の中で熱中症になることが多い

犬の熱中症対策

熱中症と聞くと、外でお散歩しているときに気を付ければいいと思いがちですが、実は大きな誤解です。なんと家の中で熱中症を起こす割合は全体の7割で、外の散歩時よりも多いデータが出ているのです。家の中ではクーラーで温度調節をしたり、水分補給をしてあげたりしてください。

冬でも犬が熱中症になる危険はある?

損害保険アニコムの発表によると、数件ではありますが、冬に熱中症と診断され治療を施しているケースが見受けられます。ということは、冬でも熱中症の危険性は少なからずあるということです。そもそも、熱中症は周囲の温度や湿度によってかなり左右されるので、地域性によっても変わってきます。大事なことは、愛犬がいる環境が適温で、快適に暮らせているかどうかです。

犬の熱中症は怖い! 後遺症が残ることも

犬の熱中症の場合、緊急的に病院を訪れる約5割が死亡していると報告されています。その中で奇跡的に助かったとしても、後遺症は免れない可能性があります。熱中症により脱水が起こり、重度の組織障害が生じるためです。今回は軽い脱水症状で治ったケースではなく、入院が必要となる重篤なケースとして組織障害が生じることで起こる病態をお話しします。

循環血流量の低下。いわゆるショック

ショック状態に陥ることでさまざまな組織が障害を受けます。その一つとして、心筋の障害が生じ、機能が低下することで「うっ血性心不全(肺水腫)」などが起こることがあります。「急性肝障害」を起こすこともあります。

急性腎不全

重度の脱水による腎臓への虚血、横紋筋の融解により「急性腎不全」を起こします。障害の程度によっては「慢性腎不全」になり、一生涯治療が必要になることもあります。

低血糖

低血糖が持続的に起こることで、神経の損傷を招き前後足麻痺や脳障害などが残ることがあります。

脳虚血や脳浮腫からの神経症状

高体温や循環不全により脳への障害が生じ、意識障害や発作などが見られるようになります。

播種性血管内凝固(DIC)

命の危険性がとても高い病態です。熱中症により血管内凝固亢進(こうしん)のスイッチが入り、血栓が多量に形成され、さらには血小板の消費により出血傾向が起こることになります。

消化器症状

消化管の虚血や壊死などが起こることで嘔吐や下痢、さらには消化管出血に陥ります。最悪の場合は「腹膜炎」へと移行してしまいます。

このように、緊急性の高い状態から死亡を免れたとしても、その後の症状によってはとても辛い状況になることもあります。

熱中症になりやすい犬種や環境要因

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熱中症になりやすい犬種と環境要因を見ていきましょう。

熱中症になりやすい犬種

短頭種

ペキニーズ、パグ、ブルドッグ、シーズーなどの頭が短い犬種は、熱中症になりやすいので注意が必要です。その理由は二つあり、一つは短頭犬種であること。もう一つは興奮しやすい犬種であることです。短頭犬種は他の犬種よりも鼻腔が狭く、呼吸しづらいため、気管虚脱、軟口蓋過長、外鼻孔狭窄などの呼吸器疾患が多く見られます。犬は呼吸で熱を下げるため、呼吸器官が悪ければ熱も下げにくくなります。

太っちょ(肥満犬)

太り気味のワンちゃんも注意が必要です。脂肪は熱を閉じ込めるため、心臓や呼吸の機能に悪影響を及ぼします。人と同じで太ることが体にとって悪い影響になることは多いため、ダイエットをおすすめしています。

病気がある

特に、呼吸数が上がる疾患(心臓病、呼吸器系、脱水)は注意が必要です。心臓病は具体的に、「僧帽弁閉鎖不全症」「拡張型心筋症」「フィラリア症」などが挙げられます。呼吸器系は「肺炎」「気管支炎」などが挙げられます。脱水系は利尿剤を投与していたり、「腎臓病」「糖尿病」が挙げられます。

興奮しやすく、激しい運動を好む犬種・水をあまり取らない犬種(脱水)

ワンちゃんは遊ぶことが大好きです。そのため、夢中になると水を飲むことも忘れて走り回ります。喉が乾いてからの水分補給は危険なため、こまめに水分補給してあげてください。

短足

ダックスフンドなど短足の犬種は、他の犬種よりも地面との距離が近くなりますので、放射熱と言われる地面からの熱もより多く浴びることになります。極力、日陰を散歩し、冷やしてあげてください。

その他

シベリアンハスキーなどの暑い被毛を持つ犬種や、子犬、老犬も注意が必要です。

熱中症になりやすい環境要因

急激な気温差

涼しいところから、急激に暑いところへの移動は危険です。実際に、軽井沢にいたワンコが東京に来てすぐに熱中症になったこともあります。

高温、高湿度

家でワンちゃんのみにしないことが大切です。クーラーをかけてかかる電気代よりも、熱中症になってかかる治療費の方が高くなります。命の危険がありますので、きちんとケアしてあげてください。

お昼の散歩

なるべく暑いお昼の散歩ではなく、朝方や夕方以降に散歩してあげるようにしましょう(コンクリートは夜になっても熱を保っていますので注意が必要です)。また、海沿いを歩きたくなりますが、砂浜はとても熱くなっていますので、なるべく抱っこするなりして避けてあげましょう。

ドッグラン

走り回らせてあげたいためドッグランに行きたいと思いますが、遊びに夢中になると水分補給を忘れてしまうことがあります。ドッグランに行く場合はこまめに水分補給をしてあげてください。元気に走り回っていても、突然ぐったりしてしまうことがあります。

車内

車内はとても危険です。少し外に出て帰ってくると、とても熱くなっていますよね。熱がこもりやすい場所のため、子どもと同じで絶対に目を離してはいけません。また、慣れない環境で緊張と興奮状態になり、熱中症が起こりやすくなってしまうのです。

熱中症の症状

犬の熱中症対策

人の場合、軽度で足がつったり、立ちくらみが起こります。中等度で疲労感、頭痛、嘔吐、下痢が起こります。そして重度で意識混濁、けいれんが起こり、死亡に至ることもあります。犬の場合は、呼吸数が上昇し、よだれを出したり、立ちすくみ、ふらついたりという症状が起こります。そして、吐き気や嘔吐、下痢が起こり、重度になるとけいれん、虚脱、死亡に至ることもあります。体温が40-43度になると非常に危険な状態です。

犬の熱中症の予防法

犬の熱中症対策

犬は温度調節が大変で、人よりも熱中症になりやすいため注意が必要です。

熱中症の予防

  1. なるべく愛犬だけにしないようにする
  2. 留守番させる際には下記に気をつける
    • 室内温度が上昇しないようする(通気性の良い場所、エアコンなど)
    • 水分は絶対になくならないように工夫する(数カ所に置く、取り付け型にする)
    • いつも寝ている場所などが暑くならないようにする(カーテンを閉める、ケージの置く場所に気をつける、クールマットを置く)
  3. 車内で愛犬だけにしない、運転中もなるべく涼しい環境にする
  4. 屋外に連れ出す場合
    • キャリーバッグなどは熱がこもりやすいので、こまめに観察する
    • 水分をまめに取らせる
    • 直射日光をさける
  5. 日中の散歩は控え、早朝か夜にしましょう
    • 炎天下ではなく、日陰を歩く事も。その際にはたくさんお水を飲ませる

犬の熱中症対策に効果的な食べ物・飲み物はある?

エビデンスが取れているものは正直ありません。一番大事なことは、やはり水分量の確保です。フルーツなどに関しても、個体差がありどのくらいの容量あげるかどうかは決まっていないのが現状です。人用のポカリスウェットに関しても、容量が不明です。強いて言うのであれば、犬用のイオン飲料水が良いのではないかと思います。

熱中症の応急処置

意識がある場合

39度になるまで流水をかけてあげてください。氷水をあげる飼い主の方がいますが、氷水は逆効果になるため、気を付けてください。

意識がない場合

すぐに動物病院に行きましょう。その際に、できれば気道をふさがないように舌は外に出した状態で運んであげてください。そして首、脇の下、股などを保冷剤を直に当てずに、タオルなどで包み冷やして運んでください。さらに、動物病院へ連絡を入れていただくと、救命率がさらに上がります。

動物病院での治療法

症状によってさまざまですが、意識の有無によって変わります。

意識がある場合

まずは高体温を通常体温に冷やすための冷却、ショック予防の注射や酸素吸入、脱水改善のための点滴が主な治療です。その際に、尿量が確保されてない場合は、利尿剤の投与。血圧低下などには昇圧剤。そして、低血糖などに関しては糖液を点滴します。DIC(播種性血管内凝固症候群)にならないためにも抗血栓治療なども行われます。

意識が無い場合

意識が無い場合はまずは気管チューブを挿入し、心肺蘇生を行います。

最後に

以上が犬の熱中症の対策まとめです。これから暑い季節がやってきます。大切なことは、

  • 正しい知識を持って未然に防ぐこと
  • いつまでも若いワンちゃんだとは思わないこと
  • いかに一人ぼっちにしないか愛犬の特性を知ること

です。予防に勝る医療はないと言いますが、予防が何よりも大事です。暑い季節だけが危険だとは限りませんが、きちんと知識を持ってワンちゃんと楽しい夏を過ごしてくださいね!

第2稿:2017年5月19日 公開
初稿:2016年7月2日 公開

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