ボランティアさんたちの頑張りがセンターの環境改善へ 行政と向き合う保護活動の現場

業者に「ちゃんとした環境で飼いなさい」と言う行政こそ、ちゃんと保管してください――演出家の宮本亜門さんや女優のとよた真帆さんが呼びかけ人を務める「TOKYO ZEROキャンペーン」が10月に開催したイベントで、「保護活動の現場から」をテーマに、保護活動に携わる3人によるトークセッションが行われました。現場を見ているからこそ語ることができる保護活動の現実。今回は登壇者たちが行政と関わる上で直面した困難について抜粋して紹介します。(取材:薄井慧)

登壇者
司会
  • 細川敦史さん(弁護士・ペット法学会員)

神奈川県の犬猫保護活動の現状

TOKYO ZEROキャンペーンのイベント。保護活動に携わる3人のトークセッション「保護活動の現場から」の様子
左から、細川さん、川崎さん、梅田さん、山田さん

細川:行政では神奈川県動物保護センターが「殺処分ゼロ」で特徴的な活動をされているように見聞きするんですけれど、ちょうど神奈川県動物愛護協会の山田さんが来ていらっしゃるので、その辺のことについて教えていただければと思います。

山田:「神奈川県の県域での殺処分はゼロ」ということですごく宣伝されていますが、神奈川県は日本の中で一番、政令指定都市が多くて、ほとんどの方は神奈川県全域、つまり政令指定都市である横浜・川崎・相模原とかも含めてゼロだと勘違いしています(※)。

※政令指定都市の殺処分数は独立して集計されます。

あと、皆さんもご存じだとは思いますけれど、センターから多頭数引き取っている動物愛護団体さんの方に、犬も猫もたまっているのが現状です。「殺処分をしないでほしい」というのはもちろんのことです。しかし、それで行政側が「じゃあ殺さなければいいんだろう」となって。横浜市動物愛護センターができた時に月200匹とかの乳飲み子が来て、殺処分数を増やさないために放置して自然死としてカウントしたんですね。いったいそれは何なのかと。

もちろん今はそのようなことは行われていないですし、安楽死を勧めるわけではないですけれど、そういった(月200匹の乳飲み子が来る)ことも起きてしまうので、本当に無理な時は麻酔薬による安楽死という方法が取られます。今はどうしても殺処分数をゼロにできない現状があるかなと思います。

細川:要は「行政のところにいたのを保護団体に移しただけ」という話ですよね。行政だけだと収容がいっぱいになるから、いつかは殺処分しなきゃいけなくなる。でも、いろんな団体さんに分散させていけばそれをしなくて済む。その代わり、団体さんが苦しんでいますよというのが最近の状態ということですね。

山田:そうですね。神奈川県の場合は現状そうです。それと神奈川県動物保護センターでも、交通事故や病気とかで道端で見つけられて負傷動物としてセンターに入った動物は殺処分数としてカウントされていないんです。そういう動物はセンターに入るときの枠が違うんですよ(※)。もちろん事業概要とかをきちんと見れば負傷動物の枠で別表があるんですけれども、それは殺処分ゼロの中に入っていなくて、その動物たちはもちろん(予後不良の際は)安楽死処置が取られています。

※行政は、犬と猫の引き取りを動物愛護法の第35条、負傷動物の収容を同法第36条に基づいて行います。

あとは、神奈川県にしても横浜市にしても、獣医療ができるかなりきちんとした機材がセンター内にあるんですね。しかし獣医療を行う先生がいないという現状で、治療がされずに亡くなる動物たちもいます。それを見るのが非常につらいということで、センターを悪く言うわけではないんですが、「なんとかしてほしい」とブログに書いている方もいらっしゃいます。

TOKYO ZEROキャンペーンのイベント。保護活動に携わる3人のトークセッション「保護活動の現場から」の様子

細川:「設備はあるけど人がいない」ということですか?

山田:センターに臨床経験の無い先生が配置されているんですよね。臨床をバリバリやった先生が行政での仕事を望まれることはあまりないというのがその理由の一つとしてあります。あとはセンター、いわゆる行政の機関が医療行為を行うことに関して獣医師会さんとかがあまりいいお返事をくださらないことが多いのかなというのはありますね。

細川:施設はあって獣医師免許を持った人はいるんだけど、それが使われない。能力がなかったり、他の問題でやりたくてもやれなかったりするということですね。

※センターは「平成29年度第2回神奈川県における動物愛護管理施策に関する検討会」において、「センターで十分に治療はできない理由は何か」と問われ、「4人程度の獣医師が従事しており、内科的治療はある程度できているが、技術、費用、時間といった理由で外科的治療は十分にできていない」と回答しています。

山田:地域によっては、そこらへんがうまくいっているところもありますけどね。

細川:あと神奈川県は、大きな施設を作ろうとしているという話も聞きます。

山田:そうですね。神奈川県動物保護センターはかなり古い施設ではあるんですけれど、そこを全面改修しようとしていて。それで一生懸命お金を募っていますけれど、とても無理な金額で。

細川:10億円とかでしたよね。それをなんとか違うことに使えないかというご意見もありそうですね。

山田:最初は全部を寄付でまかなうといって募り始めましたけど、とてもとても無理な状況なので、いったいどうするのか。行政の側に聞いてもあまり明快なお返事を頂いたことはありません。

栃木県の犬猫保護活動の現状

細川:それでは、他の自治体でも何か問題があれば教えていただきたいなと思います。日本動物福祉協会の川崎さん、いかがですか?

川崎:私がメインで関わっているのは栃木県なんですけど、栃木県は団体譲渡の流れができたのが関東で一番遅くて、首都圏では子犬を見ることはほとんどないと思うんですが、雑種の子犬がいっぱい収容されています。

全国的に殺処分数っていうと、猫の乳飲み子の割合が多いと思うんです。栃木もそうなんですが、子犬の収容が非常に多くて、子犬専門の保護団体さんがキャパオーバーという感じで手を引いたりとか、一番チャンスがある子犬でさえそういう状況です。もちろん成犬も収容されます。犬については狂犬病予防法に基づいた捕獲があるので、結構収容されてますね。

猫については、病気で行き倒れになっているとか、交通事故に遭っただとか、そういった「負傷猫」がいます。あとは乳飲み子がいるんですけれども、とても数が多くて、私たちでは関わりきれないような状況です。

私が行った時に状態のいい子がいると、職員の方がパタパタパタって駆け寄ってきて、段ボールを持っている。「嫌な予感……」って思うと段ボールの中に乳飲み子がいて、「お願いできませんか」って言われるような状況で。本当にたまたま運のいい子を除いては、だいたい300g以下の乳飲み子は全部が致死処分になっていますね。それ以外の負傷猫は、譲渡してもらうのを諦めたのは、今まで数年やっていてほんの数頭しかいません。全部レスキューはしています。

問題はやっぱり犬です。子犬でさえ非常に頭数が多い状況です。成犬はよほど人慣れしているとか、特定の条件、心惹かれるものがない限りは、なかなかチャンスがないというのが今の栃木県の現状です。特に犬は咬傷事故が非常に怖いので、譲渡に適しているかを厳しく見なくてはいけないです。特に咬む犬種というのがあるので、その犬種に関しては警戒しています。

あとは、純血種で割と状況がいい子が入ったとしても、純血種で返還がないということ自体がまずありえないっていうか、おかしいんですよね。飼い主さん、たぶん必死になって探すと思うんですよ。たぶんペットショップからお金出して飼った犬だし、かわいがっている子だったら探すのでたいてい返還されるんです。

じゃあ返還されない純血種の子ってなんなんだろうって。愛されていないから迎えにも来てもらえないっていう状況の子が多いんですね。そういう子、たいてい問題抱えてます。咬むとか、吠えまくるとか、他の犬を見ると攻撃するとか。で、扱いきれなくなって捨てたんだろうなっていうのが分かるので、そういった子たちに関しては、よく見定めます。自分たちが扱える範囲を見定めていないときりがないので、扱える状態の動物かどうかっていうのを考えながら出している状況です。

TOKYO ZEROキャンペーンのイベント。保護活動に携わる3人のトークセッション「保護活動の現場から」の様子

殺処分場に行って犬の適性を見ることもあるんですけど、犬も「やばい」っていうのは分かっているんですね。「ここにいると絶対何かが起きる」っていうのは分かっているんです。処分1日前とか2日前っていう柵のところで、ぴょんぴょん跳ねて注意を引きつけたりとか、柵にぽんって手をかけて一生懸命顔を出してくる子とかいるんですよ。そういう子を見送らなきゃいけなかったりとか。

たいてい迷ったら出すようにはしているんですけど、そういう現場にいるとつい背伸びしたくなってしまいます。でも動物たちにとっても良い環境というのは限界があるので、そういった環境を保持していくためにも、やはりどこかで線引きが必要だっていうつらい作業がありますね。

細川:悩ましいですね。ハード面にも問題があるという風にも聞いたのですが、そちらはいかがでしょうか。「寒い時に飼育環境が……」というような。

川崎:栃木県の場合はですね、殺処分場は日光市の山の上、とはいっても皆さんもご存じの観光地の日光とは違う場所にあって、冬季はマイナス気温になるんですね。開口部が非常に広いのもあって暖房があってもなかなか効かない構造で、そもそも暖房がないんです。でも職員は28度設定の部屋にいて、動物たちのところにはお掃除の時にしか来ないわけですよね。

正直、凍死する動物が非常に多かったです。しかも前はオス・メス関係なく入れられてしまって、そこで妊娠するとか、そういったトラブルもありました。私たち団体が譲渡でその施設を見に行くようになってからは行政とかなり衝突して、もしかしたらご存じの方もいらっしゃるかもしれませんけどFacebookで呼び掛けをしたりして、栃木県に環境改善を求めました。それでやっと施設の一部で温水の床暖房がつくようにはなったんですけど、だから良かったという風には思えないわけです。

私たちも永遠に活動していたいわけではなくて、活動から足を洗うためにやっている部分があります。いつかはこの活動をやらなくて済む世の中にしたいと思っています。極力収容される動物を減らしたいというところがまず第一です。そこを目指していくためにも、途中経過として収容状況を良くするとか、譲渡とかいう手続きがあるんだと思っています。

細川:昔はほとんどの動物が殺処分されていたので、「これから殺そうとするやつを別にどう保管しようがいいんじゃないの」という発想があったと思うんですけど、時代が変わっている部分はあるでしょうから、「必ずしも全部死んでいくわけではないから、そこでの保管環境をちゃんとしなきゃいけないよね」っていうのが基本だろうと。業者に「ちゃんとした環境で飼いなさい」って言ってるんだったら、「行政こそちゃんと保管してください」っていう発想になるのも当たり前ですよね。

茨城県の犬猫保護活動の現状

細川:梅田さんは茨城県のセンターに入っているとのことですが、それについて教えていただけますか? 問題とか、良いこともですが。

梅田:私がセンターにきっちり入り始めたのは今年の話です。茨城にはすごく頑張っている「しっぽのなかま」という団体さんがいて、特殊ですけど愛護団体がセンターの下請けに入っているんですね。私はお店を開く前、本当はそこの職員になりたかったんです。でも考えただけですぐ「精神的に崩壊するな」と思って。言ってみれば、私は保護猫カフェに逃げる形で保護猫カフェを作ったんですけど。

私はセンターに入ってから日が浅いので聞いた話になりますが、埼玉のセンターも栃木ほどではないと思いますが冷え冷えなところに犬がいて、凍死するような環境でした。私の先輩の埼玉のボランティアさんたちはそこにみんな裸足で入っていって、センターの職員さんに抗議をしたわけなんですね。「ここにあなたも立ってみなさい」と。「足が冷えて1時間もいられないでしょう、犬たちはそこに死ぬまでいるんだ」と。「汚れるから」と言って毛布を敷くことも許されていなかった環境を、そこから少しずつ変えていったと。

茨城に関して私が言うのもあれなんですが、「しっぽのなかま」がセンターに入る前も、下請け業者さんが入っていました。センターに収容されているのは、殺す前提の子たちです。臭いと言って猫が入っているケージに業者さんが水をかけます。生きている猫にも水をかけるんですね。すると処分になる前に、次の日の朝そこで凍死していると。犬に関しても、今日収容された子が例えば20匹30匹います。大きな子、飢えた野良犬がいます。そんなところに小さな子犬も入れるわけですね。えさは一応あげなきゃいけないんで、そこに放り込みます。するとみんなそこにワッと集まって、子犬はそこでかみ殺されて首が飛んで……と。

中でそういった状況が起きていました。「しっぽのなかま」の方が業者になったのは、その環境を中から変えたいという気持ちがあってのことでした。全部を助けることはできないけれど、殺されるまでの3日なり4日なりを少しでも快適に過ごさせてあげたいと。自分の財産をなげうって業者になって、安く、赤字覚悟で毎年毎年入札を勝ち取って、それでセンターの中の改善をやったということです。そのことを知って、「なんとかお手伝いしたいな」と思ったんですが、なかなかできなくて。

あの日から7、8年たちましたけど、やっと外から少しだけお手伝いができるという状況です。センターの中が良くなっている場所は、たぶんそうやって前のボランティアさんたちが頑張ってくれていたのかなと思います。そういったことがまだない地域のセンターも、全国にはたくさんあると思うんですね。地方に行けば、栃木の何年か前の状況、茨城の状況が今もたぶんあると思います。まずはオープンにしてもらいたいですね。

熊本も最近ちょっと問題になっていましたよね。「本当にひどい状況で、センターの中で繁殖業者と変わらない状況で殺されている犬や猫がたくさんいるんじゃないか」と。私が実際に見ることはできていないんですが、そういった状況はあるんじゃないかなと思います。

TOKYO ZEROキャンペーンのイベント。保護活動に携わる3人のトークセッション「保護活動の現場から」の様子

細川:センターも、徐々に改善されているということですね。法律の中で「こんな保管方法をしなきゃいけない」と(細かく)書いてあるわけではないので、逆に言えば、やろうと思えば毛布を敷いたり温水の床暖房をやったり、そういうことができるというわけですね。それぞれの人たちが声を上げて、時代の後押しがあったりもして、少しずつ改善されているのが今の状況なのかなと思います。

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