犬が失明する原因|白内障や緑内障など考えられる病気を獣医師が解説

犬が失明する原因|白内障や緑内障など考えられる病気を獣医師が解説

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犬が失明する原因は、白内障や進行性網膜萎縮など「目の異常」、緑内障など「神経の異常」、水頭症など「脳の異常」が考えられます。突然、愛犬の目が見えなくなってショックを受ける飼い主さんもいると思いますが、病気によってある程度は回復したり治ったりする場合もあります。症状や生活の工夫について、獣医師の佐藤が解説します。

犬の失明とは

チワワ

犬が失明する理由は大きく以下の3つに分けることができます。

  1. 目の異常白内障や網膜剥離、進行性網膜萎縮など
  2. 神経の異常緑内障や脳腫瘍など
  3. 脳の異常脳炎や水頭症など

犬は目の不調を飼い主さんに言葉で伝えることができません。さらに低下した視力を嗅覚や聴覚で補うことができてしまうため、飼い主さんの発見が遅れるケースは少なくありません。

視力は犬のQOL(生活の質)に大きく関わり、原因となる病気の治療が早くなればなるほど視力の低下を抑えられる可能性も高まります。散歩中や屋内で「音に過剰な反応をする」「モノにぶつかる」「散歩に行きたがらない」といった変化が見られる場合は、早めに動物病院へ行くようにしましょう。

犬が失明する可能性のある原因・病気

原因・病気
概要・素因
目の異常 白内障 水晶体が濁ることで視力が低下します。遺伝や糖尿病、老化などで起こります。(詳しくはこちら
水晶体脱臼 水晶体がズレてしまった状態です。白内障や緑内障、ぶどう膜炎を併発する場合が多いです。
網膜剥離 光を神経に伝達する網膜が剥がれ、栄養供給を絶たれた視細胞が死滅します。(詳しくはこちら
進行性網膜萎縮症(PRA) 網膜が薄くなって光を感知できなくなる遺伝性の病気です。
脈絡網膜炎 感染症やぶどう膜炎などの病気に起因して脈絡膜や網膜が炎症を起こします。
高血圧性網膜症 腎不全や糖尿病、甲状腺疾患などで高血圧になり、網膜剥離を起こします。
突発性後天性網膜変性症(SARD) 視細胞が死滅して急に視力を失う原因不明の病気です。
外傷 交通事故や喧嘩で眼を損傷して視力を失います。
神経の異常 緑内障 眼圧の上昇で視神経が圧迫され、損傷します。(詳しくはこちら
視神経炎 視神経に炎症が起きて視力が失われます。早期治療で回復する可能性があります。
脳腫瘍 脳腫瘍が視神経を圧迫して視力を失います。(詳しくはこちら
イベルメクチン中毒 フィラリア予防薬で神経に中毒症状が出ます。コリー種は要注意です。
外傷 交通事故や喧嘩で神経を損傷して視力を失います。
脳の異常 脳炎 脳の炎症で中枢神経に異常が起き、視力が失われます。(詳しくはこちら
水頭症 脳に髄液が溜まり、障害を受けることで視力が失われます。(詳しくはこちら

犬の失明の症状

ダックスフンド

犬は失明しても、嗅覚や聴覚を使って今までと変わらない行動をしようとします。そのため飼い主さんがすぐに気づけず、発見が遅れがちです。視力が低下したり、失明したりすると以下のような変化が見られるようになります。

  • モノにぶつかる
  • 段差でつまづく
  • 物音に驚く
  • 寝ている時間が増える(動きたくない)
  • 散歩に行きたがらない
  • 動かなくなる(怖くて動けない)
  • 吠える
  • 匂いをかぐ(嗅覚を多用する)
  • 人に寄り添う(何かに触れていたい)
  • 攻撃的になる・噛む(見えないところからの動きが怖い)

いつもと違う、何かおかしいと思うことがあれば、早めに動物病院へ行くようにしてください。

失明した犬のケア

ダックスフンド

人間の感覚で「失明」と聞くと「愛犬の目が見えないなんて……」と悲観してしまうかもしれませんが、視覚に大きく依存している私たちが感じる世界と、嗅覚も聴覚も人間より優れている犬が感じる世界は大きく異なります。そのため失明してしまったとしても、飼い主さんがサポートしてあげることで犬はストレスの少ない生活を送れるようになります。

どんなサポートをすべきかは住環境によって異なりますが、多くのご家庭で共通するポイントは以下の通りです。

  • 声かけを意識する(急に触って驚かさない)
  • 家具の配置を変えない
  • 散歩コースを変えない
  • ぶつかって怪我をしないようクッション材を付ける
  • バリアフリーにする
  • 滑りにくい床材にする
  • 匂いがきついものは置かない

失明によって運動量が減ってしまうと肥満や筋力低下、老化の原因になってしまいます。できるだけ失明する前と変わらない生活を送れるように工夫しましょう。愛犬のためにどんな工夫をすればいいのか悩む場合は、獣医師やドッグトレーナーなど専門家に相談することをオススメします。

まとめ

ジャックラッセルテリア
失明は神経や脳の異常でも起こる
飼い主さんが失明に気づかない場合も
早期治療で視力を保てる可能性も
失明したら愛犬が過ごしやすい工夫を
失明は目の異常だけでなく神経や脳の異常など、さまざまな原因で起こる可能性があります。犬は失明しても嗅覚や聴覚を駆使するため飼い主さんの発見が遅れがちです。異変を感じたら、なるべく早く病院へ行きましょう。失明してしまった際は、できるだけ変わらない生活を送れるようサポートしてあげてください。