【獣医師執筆】犬の骨折の見分け方は?原因・症状・治療法・費用を解説

【獣医師執筆】犬の骨折の見分け方は?原因・症状・治療法・費用を解説

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犬の骨折は抱っこからの落下で起こることが多く、犬が大声で鳴いたりいつもと違う歩き方をしたりして飼い主さんがパニックことも少なくありません。しっぽの骨折では痛がらないこともあり、捻挫との見分け方は簡単ではありません。放置すれば後遺症が残ることもあります。骨折の原因や治療費用、入院期間、リハビリなど手術後の過ごし方まで、獣医師の佐藤が解説します。

犬の骨折とは

抱っこされるトイプー

犬の骨折は高いところから飛び降りたり、交通事故にあったり、ドアに挟まれたりして起こります。骨折は皮膚から骨が露出する「開放骨折」と露出しない「閉鎖骨折」や、骨と骨が完全に断裂する「完全骨折」とヒビが入った「不全骨折」などに分類され、骨折した場所によってもさまざまな種類があります。

骨折が起こると犬は痛そうな様子を見せるため飼い主さんがすぐに気づけますが、閉鎖骨折かつ不全骨折の場合は見た目でわかりづらい場合もあります。いずれにしても犬は痛みを伴い生活の質を著しく落としますので、できるだけ早く動物病院へ行くようにしてください。

犬が骨折する原因

犬の骨折は前足で起こりやすく、小型犬(トイプードルやチワワ、ポメラニアンなど)や子犬、シニア犬(老犬)、足が細い犬種(イタリアングレーハウンドやボルゾイ、サルーキなど)でよく見られます。ただ、どのような犬種、年齢、体重などでも以下のような理由で骨折する可能性があります。

  • 高所からの落下、飛び降り
    • 抱っこ
    • ソファーやベッド
    • 階段
    • 散歩中
  • ドアに挟まれる
  • 誤って人に蹴られる・踏まれる(特にしっぽ)
  • 滑る・転倒(ドッグランなど)
  • 交通事故

犬が骨折した際の症状・見分け方

フレブル

開放骨折であれば見た目から骨折が起きていることは明らかですが、閉鎖骨折の場合は以下のような症状、歩き方など行動の変化から骨折を疑います。しっぽなど骨折した場所によっては痛がらないこともあります。

  • 足を上げたまま下ろせない
  • 足を引きずる(跛行)
  • 鳴く、触られるのを嫌がる
  • 特定の場所が腫れる、熱を持つ
  • 特定の場所を舐める
  • 立てない、ぐったりしている
  • トイレを失敗する


捻挫との見分け方

捻挫とは、靭帯や関節包の損傷をいいますが、犬が足を上げたまま下ろせない場合、捻挫ではなく骨折の可能性が高いと考えられます。しかし、骨折や捻挫は問題が起きた場所や状態によって症状が大きく変わるため、外見や様子で見分けるのは簡単ではありません。上記に挙げた症状が継続する場合は動物病院へ行くようにしてください。


飼い主さんの対処法

飼い主さんの目の前で何かしらの事故が起きたり、愛犬が痛みでパニックになっている様子を見たりして飼い主さんも気が動転してしまうと思いますが、まずは落ち着きましょう。冷静に状況を把握して、できるだけ早く動物病院へ連れて行く必要があります。

屋外であれば愛犬が予期しない行動を取り、別の事故が起こる可能性があります。安全な場所へ移動させてください。痛みから攻撃的になり、近づく人に噛み付くかもしれませんので飼い主さん含め注意してください。開放骨折でも閉鎖骨折でも、ご家庭でできる処置は限られます。まずは動物病院へ連絡してください。

犬の骨折の治療法

診察を受けるジャックラッセルテリア

骨折には真横に折れた「横骨折」、斜めに折れた「斜骨折」、ひび割れたように折れた「粉砕骨折」、一部が削れたように折れた「剥離骨折」、ひびが入った「亀裂骨折」などさまざまな種類があり、獣医師はX検査によってその状態を把握します。検査の際は全身麻酔を使用することもあります。骨折した後に、なるべく早く手術を行うことをお勧めします。

骨折の治療方法も状態によってさまざまですが、「ギプス固定法」「プレート固定法」「ピンニング法」「髄内ピン(釘)固定法」「創外固定法」が代表的です。交通事故などで損傷が酷く回復が見込めない場合は、断脚手術が必要になる場合もあります。

ギプス固定法 骨にヒビが入った軽度の亀裂骨折であればギプスだけで固定する場合もありますが、意識して安静にできる人と違って犬の場合は動いてしまうため限定的です。
プレート固定法 皮膚を切開して骨折した箇所に金属のプレートを当て、強く固定します。修復後のプレート除去が必要ない素材もあります。最も使われることが多い固定法です。
ピンニング法 先が尖ったワイヤーで分離した骨を刺してつなげて固定します。細い骨や剥離した骨を固定する際に使われます。
髄内ピン(釘)固定法 骨の中の空洞に金属の棒を通して固定します。太い骨や成長期で柔らかい骨を固定するために使われ、強度を補うためギプスが併用されます。
創外固定法 皮膚を切開せず外側から金属のピンやワイヤーを打ち込み固定します。複雑骨折や関節部の骨折を固定する際に使用します。

骨折の治療費用

治療費用は動物病院によって異なりますが、入院期間や検査や手術費用を含めて20〜30万円が目安になります。軽度の亀裂骨折でギプス固定で済む場合は検査費用を含めて5万円ほどの場合もあります。難しい手術になったり、治療が長引いたりする場合は50万円前後が目安になります。

骨折は自然治癒する?

骨は体のさまざまな組織と同様に生まれ変わりを続けており、骨折した際も新しい骨が折れた骨同士をつなげようと自己修復を行います。小さなヒビが入った程度であれば自然治癒してしまうこともありますが、骨がずれた状態でつながってしまうと後遺症として痛みが残ったり足が曲がったままになったりします。

骨がつながってからの整復は困難になりますので、つながる前に正しい角度で正確に固定しなければいけません。必ず動物病院で検査を受けてから治療方針を決めるようにしてください。

犬が骨折した際のリハビリ・手術後の過ごし方

ダックスフンド

折れた骨が完全に修復するまで2〜3カ月かかります。安静に過ごせるかで治りが変わります。走ったりジャンプしたりして衝撃を与えないように注意して、運動を制限する必要があります。トイレが難しい場合は犬用のおむつを利用するといいでしょう。

ギプスを舐めたり噛んだりする場合はエリザベスカラーを使います。マッサージは獣医師の指示がある場合に行ってください。飼い主さんの判断で行うと状態を悪化させる危険性があります。


滑りにくい床にする

フローリングや石、タイルを使った床材は犬にとって滑りやすく、骨折の回復を遅らせる可能性があります。骨折していない犬にとっても骨折しやすく関節炎や脱臼、股関節形成不全などの原因になります。滑りにくい床材に変更したり、フローリングマットを敷いたりすることをお勧めします。


まとめ

膝の上で仰向けになる犬
骨折は小型犬や子犬、足の細い犬種で多い
抱っこ中の落下事故に要注意
足が着かない・痛みが続く場合はすぐ病院へ
早く治すためにも安静にさせることが大切
犬の骨折は抱っこからの落下や交通事故、ドッグランでの転倒など急に起こり、犬は痛そうに鳴いたり足を地面に着けることができなかったりして飼い主さんはパニックになりがちです。まずは落ち着きましょう。完治するまでは数カ月かかることが少なくありません。ご家庭で安静にできるよう工夫してあげてください。

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