
ふれあって命の大切さを学ぶ 小学生向け特別教室「動物の授業」レポート
皆さんは子どものころ動物と触れ合う機会がありましたか? なかなか機会がないまま大人になってしまった方も少なくないと思います。そこで、子どもたちに実際に犬を目の前にして「命の大切さ」「共感性」「自立型思考」を学んでもらおうとNPO法人「ワンコレクション」が開催しているのが「動物の授業」です。6月26日(水)、成蹊小学校の6年生を対象に開催された授業の様子をレポートします。(取材:薄井慧)
知らないことがたくさん! 「動物の授業」

今回の「動物の授業」の講師を務めたのは、海老原ゆかり先生。先生犬の「かえちゃん」(5歳)を抱っこして、子どもたちの前に登場しました。会場は、アイペット損害保険(東京・六本木)の会議室。約30人の小学生とその保護者で会議室はいっぱいでした。
かえちゃんは、両親から遺伝する「先天性網膜萎縮症(PRA)」という病気を持った両目が見えない犬です。かえちゃんが1歳くらいの時に、ベッドから落ちたり、目の前の人形を見つけられなかったりしたため診断を受けたところ、病気が分かったのだといいます。
犬には、どうやって触ればいいの?

授業は、子どもたちに質問を投げかける形式で進んでいきました。
海老原さんが教室の子どもたちに「犬を飼っている人?」「犬を飼ったことある人?」と聞くと、挙がった手の数は意外と少なめ。「犬とか猫とかをよく知ってると思う人!」と聞くと、なかなか手が挙がりませんでした。中には、「小動物がこわい」とつぶやく子もいました。
しかし、「かえちゃん抱っこしたい人!」と聞くと、一気にたくさんの手が! 勢いよく手を挙げた子どもたちの中から1人が選ばれ、かえちゃんの抱っこに挑戦しました。

「いいな~」という声も聞こえてくるなか抱っこしてみるも、なかなかうまく抱っこできません。「かえちゃん、ちょっと居心地が悪そう。ちょっとだけ抱っこの仕方違うのかも」と海老原さんが言うと、次の子にバトンタッチ。海老原さんのアドバイスを受けながら数人の子どもたちが順番に抱っこをしていくと、少しずつ正しい抱っこの仕方に近づいていきました。
「ワンちゃんは簡単に抱っこできそうな気もするけど、正しい抱っこの仕方は意外と知らないよね」と海老原さん。抱っこの仕方に限らず、自分が「知っている」と思っていることも、実は正しく知れていないことがあるのだと語りました。
触られて「うれしいところ」と「うれしくないところ」は?

続いて子どもたちが取り組んだのは、犬の「さわられてうれしいところ」と「さわられてうれしくないところ」を考えるクイズ。犬の体のイラストが大きく印刷されたプリントが配られ、子どもたちは犬の「さわられてうれしいところ」を予想してその部位に丸をつけていきました。海老原さんが「みんなはどこに丸をつけた?」と聞くと、子どもたちは「のどとあごのした!」「むね!」と次々正解を当てていきましたが、残り一つの正解がなかなか当てられません。
「せなか」でもなく、「おなか」でもない……。なんと、正解は「耳のうしろ」でした! これには子どもたちもびっくり。知らなかったことを、ここでもまた一つ学びました。
続けて、「小さい頃、ワンちゃんに小指を噛まれたことがあるんだ」と小指を見せた海老原さん。傷口がまだ残っていることを説明し、「指が取れそうになるまで噛まれてしまった」と当時を語りました。海老原さんが犬のそばにいたところ、他の人がその犬のしっぽを触ってしまい、驚いた犬が前にいた海老原さんを噛んでしまったのだそうです。自分の経験をふまえながら、「人に迷惑をかけてしまうこともあるから、触っていいところと触っちゃいけないところはちゃんと覚えておこうね」と子どもたちに注意しました。
いざ、実践!

そして、クイズの答えをもとに犬に触る練習をした子どもたち。自分がもともと知っている知識も使いながら、正しい触れ合い方を探っていきました。かえちゃんも、少し落ち着いている様子……?
犬のボディランゲージや、「使役犬」の勉強も

他にも、犬のボディランゲージを学ぶクイズに挑戦したり、使役犬(特定の用途のために訓練される犬のこと)に関する話を聞いた子どもたち。ハンディキャップを背負った人たちの介助をする「介助犬」について、海老原さんが「ペットボトルのキャップをあけられるワンちゃんもいるんだよ」と説明すると、子どもたちは驚きの声をあげました。

「みんなが知ると、ひとりひとりができることができる。そうすると、これまで可哀想な目に遭っていたわんちゃんたちが救われるよね。そうすると、人も犬も幸せに暮らせるような世の中になるよね」と海老原さん。自分が「知っていない」ことを「知る」こと、そして「知らない」ことを「知る」ことの大切さを語りました。
かえちゃんとの自由なふれあいや、カルタも……!?
海老原先生のお話の後には、かえちゃんと自由に触れ合う時間と、アイペット損害保険が絵札・読み札を一般募集して制作した「ワン!にゃん!かるた」を楽しむ時間が取られました。
子どもたちは二手に分かれましたが、海老原先生とかえちゃんの前には、かえちゃんと触れ合いたい子どもたちの長蛇の列が。列に並んだ子どもたちは、ひとりひとり海老原さんと話をしながらかえちゃんと触れ合いました。順番を待っている子どもたちも、その様子に興味津々でした。

一方、かるたコーナーも大盛況。ペットに関するエピソードや豆知識が盛り込まれた「ワン!にゃん!かるた」で、子どもたちは大いに盛り上がりました。テーブルをみんなで囲み、頭に手を乗せて札が読まれるのを待つ様子は真剣そのもの。楽しみながら、ペットについて学ぶことができたかな……?
日本も「ペットと人間が共生できる」社会に
授業の冒頭には、アイペット損害保険の山村鉄平代表取締役も登場しました。アイペット損害保険株式会社のマスコットキャラクター「トッペイくん」と一緒に会場に入ってくる予定……だったのですが……?
入口のドアの幅が(トッペイくんにとっては)狭く、トッペイくんだけ会議室に入ってこれないという事態に! 会場は大爆笑。

しかし諦めなかったトッペイくんは、力ずくでドアを通過。なんとか登場できました!

気を取り直して、山村代表取締役が挨拶をしました。経営理念の一つに「ペットとの共生環境の向上」を掲げているアイペットは、ペットの命の大切さを一人でも多くの人に知ってもらいたいという思いから、この「動物の授業」を去年からCSR(Corporate Social Responsibility=「企業の社会的責任」)・CSV(Creating Shared Value=「共通価値の創造」)の一環として支援していると説明しました。
ペットと人間の共生環境づくりにおいて、世界各国に遅れをとっている日本。「全国にこのような授業が広まっていけば、命を大切にする社会ができていくのではないか」と「動物の授業」への期待を語りました。

(ちなみに、トッペイくんは帰りもドアのところで詰まってしまいました)