「ペット業界ゆく年くる年」業界キーパーソンたちのトレンド予測2021

「ペット業界ゆく年くる年」業界キーパーソンたちのトレンド予測2021

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2020年も残すところあとわずか。今年はコロナで始まりコロナで終わらない1年になってしまいましたが、ペット業界のキーパーソンたちはどのように振り返るのでしょうか。2021年のトレンド予測と一緒に紹介します。

今回ご協力いただいたのは以下のキーパーソンです。この場を借りて、改めてお礼申し上げます。

※敬称略


田中夢菜(楽天トラベル)

田中夢菜(楽天トラベル)
楽天株式会社 トラベル&モビリティ事業 PR推進室 PRグループ

1. 2020年最も印象に残った分野・出来事

楽天トラベル」にご登録されている「ペットと同室宿泊が可能な宿泊施設」の中で、「ペット」「犬」「猫」などのキーワードを含む宿泊プランの2020年1月1日から12月15日までの宿泊人泊数は、前年同期比約+15%増加しました。今年の傾向としては、1棟貸切のコテージタイプやキャンプサイトなど、他人を気にせずに楽しめる客室や、小型犬から超大型犬、猫や小動物といった様々な種類のペットと宿泊できる宿泊施設が人気を集めました。

2. 2021年の注目分野

2021年は、ペットと宿泊できることに加えて、シェフが作るペット専用のフードメニューや愛犬用のバスタブが用意された貸切風呂など、2020年から徐々に増え始めている工夫を凝らしたサービスや設備の展開に注目しています。また、ユーザーの投票を元に決める「看板犬ランキング」や「看板猫ランキング」では、どちらも2年連続で投票数が向上しており、旅行情報サイト「マイトリップ」では、ペットと泊まれる宿泊施設の紹介記事の閲覧数も伸びています。今後もペットとの旅行に対するニーズがさらに高まることが期待されます。


森村晃一(フォレストヒルズ那須)

森村晃一(フォレストヒルズ那須)
株式会社フォレストヒルズ 代表取締役総支配人、ワンコネット那須協議会 会長

1. 2020年最も印象に残った分野・出来事

ペットツーリズムは観光業ですのでとても大変な1年でした。3月くらいからキャンセルが増え始め、4月中旬から約50日間の休業要請を受けました。ホテル事業は売上高利益率は10%で優秀という業界で、特にリゾートは労働分配率が高い分野ですので、休業による経営打撃は酷く廃業を覚悟した施設も多かったようです。一方夏休み以降本格稼働したGoToトラベルによる急速な予約回復も凄まじいものがあり、この経営環境乱高下の中、他方しばしば変更される雇用調整助成金を始めとする数々の支援申込とGoToの登録手続きの煩雑さや膨大な事務業務が大きく負担となりました。特にGoToの手続きはとても複雑かつ手間が多く、チェックイン&アウトで従前の倍の時間と人件費を要したことも大きな課題です。

2. 2021年の注目分野

今後のGoToトラベルの在り方をもっと現場ベースで考え直す必要性を強く感じます。すなわち1. 価格帯に関係なく多くの施設に還元されることと、2. 感染予防対策に対する自治体からの金銭&ノウハウ支援です。個人事業者及び小規模企業が大多数の業界ですので、取り組みのレベルに限界差異があることにもっと目を向けるべきです。当社においては「アフターGoTo」を見据えて新規客のリピーター化と従前からの馴染み顧客の惹きつけの策を同時に実施していかなければなりません。顧客サービスの多角高質化とイベント等による吸引だけでなく、本物のロイヤルカスタマーサービスを実践できる力をつけなくてはならないと強く感じています。


伊豫愉芸子(Catlog)

伊豫愉芸子(Catlog)
RABO, Inc. President&CEO

1. 2020年最も印象に残った分野・出来事

この世の中から「ニンゲンの外出」というものが、一時的になくなるとは思ってもみませんでしたね。もともと猫様は散歩に行かない&室内飼いが推奨されているので、猫様自身の外出はとくに変わらなかったと思いますが、ニンゲンが家に居続けるという環境変化により猫様のライフサイクルにも影響が出たり、一部ストレスからの症状が出てしまう猫様も多かったと聞いています。「Catlog」のデータからも、ニンゲンがいるときいないときでの行動変化が如実に現れていることがわかってきています(今後こういった発表も検討しています)。一方で、過ごす時間が増えたことで、近年高まりつつある「家族としての猫様」という想いが、さらに高まったという声も多くありました。

2. 2021年の注目分野

「家族としての猫様」という想いが高まるにつれ、気になる&大事になるのが健康管理です。10月に、いつものトイレの下に敷くだけで体重管理と排泄量が記録できる健康管理により特化したデバイス「Catlog Board」を発表しましたが、開始6分で初期分が売り切れるなどものすごい反響でした。飼い主さんたちの、ちゃんと健康管理してあげたいという気持ちの現れを感じます。また、健康管理するうえでニンゲン同様に重要となるのがデータでの把握と、かかりつけのお医者さん。この流れで、来年は健康管理データの重要性や連携がさらに推進され、ペット業界でもDXが一気に進むと確信しています。

布施健(Furbo)

布施健(Furbo)
Tomofun株式会社 代表取締役

1. 2020年最も印象に残った分野・出来事

日本国内の大手、ベンチャーのペット系プロダクトのサブスクリプションサービス化が目立った1年に感じました。フード系やギフト系などでのサブスクだけでなく、IoT領域でのソフトウェアサービスのサブスク化が特に目立ったように思いました。当社においても見守り領域でのサブスクサービスを開始しましたが、その他にも、バナソニックさんや、Catlogさん、tolettaさんなど、多くのIoT×ペット領域でのサブスクが目立ったように感じました。

2. 2021年の注目分野

ペット業界の近年のマーケットトレンドは、フードやシーツなどの必需品から嗜好品のモノ、コトへマーケットが拡張している過渡期にあると考えております。ペット保険などは、インフラとして徐々に定着してきておりますが、ペットの「健康」や「安全」をサポートできるサービスニーズは高まることが想定されているので、その領域で、どのようなプレイヤーが出てくるかはとても楽しみにしております。当社もそのようなシーンで飼い主様にご満足いただけるようなサービスの開発に努めていきたいと考えております。


加藤大樹(一休.com)

加藤大樹(一休.com)
株式会社一休 バケーションレンタル事業部長 兼 旅館・リゾートチーム

1. 2020年最も印象に残った分野・出来事

一休.com』では、ご家族で密にならないプライベート空間を楽しまれる方が増え、贅沢な空間がウリの貸別荘、いわゆるバケーションレンタルでもペット受け入れOKのお宿の需要が増加いたしました。また、ペット連れOKな高級シティホテルもオープンするなど、「ラグジュアリーなお宿×ペット連れ」のお客様をターゲットとした市場の活性化が印象的な一年でした。旅行にペットを気軽に連れていけることで、わんちゃん一緒でもOKなカフェやレストランも増えているようです。『一休.comレストラン』でもご予約が増えていると聞いています。

2. 2021年の注目分野

ますますペットとの旅がトレンドになると思います。新規開業のみならず、リニューアルでペット連れでも楽しめる高級なホテル・旅館がここ近年増えており、今後も続くと予想しております。ペット連れ旅行に関する先駆けた取り組みとして、わんちゃんとの旅行を存分に楽しめる施設を伊豆エリアで展開されている企業がございます。ペットOKのラグジュアリーリゾート「ウブドの森 伊豆高原」やレストラン「愛犬の駅 伊豆高原」、ドックランといった施設がエリア内に併設されています。地域一体型のモデルケースとして各所にも波及していくのではと期待しております。


河野寛貴(アニコム)

河野寛貴(アニコム)
アニコム損害保険株式会社 経営企画部長

1. 2020年最も印象に残った分野・出来事

新型コロナウイルス感染症の影響で、ペット需要が高まったと言われています。実際に当社のペット保険の新規契約件数も、4月から9月までの前年同期比で33.2%増となりました。これは「巣ごもり需要」の一環であり、ペットを安易に飼育する人が増えたのではないかと捉える向きもあります。しかしながら、私たちはむしろ『“ペットの価値”が見直されたからではないか』と考えています。人と人との繋がり・対面での関わりが極度に制限されたコロナ禍において、ペットは私たちの孤独や寂しさを癒やし、力を与えてくれる―そうした存在価値を、人々が改めて認識した1年間だったのではないでしょうか。

2. 2021年の注目分野

コロナ禍がどの程度続くかは不透明ですが、2021年には先述のペット需要はある程度落ち着くと見込まれる中で、改正動愛法が6月に施行され、各種規制が強化されます。この2点から、特にブリーダー業・ペット販売業では、一定程度の影響があるでしょう。そのような状況において、今後もペットと暮らす意義や価値を人々に提供し続けるには、ペット業界の健全性が保たれなければなりません。そのためにも、ペット業界の一員である我々自身が法律を遵守し、業界として正すべきところは正すといった姿勢が重要だと考えています。当社も、微力ながらそうした流れの一助となるべく、出来ることにひとつひとつ取り組んでいきたいと思います。

佐藤貴紀(獣医師)

佐藤貴紀(獣医師)
目黒アニマルメディカルセンター/MAMeC顧問獣医師(獣医循環器学会認定医)

1. 2020年最も印象に残った分野・出来事

新型コロナウィルス感染症によって、全世界の人が影響を受け、そして生活様式なども一変してしまった一年だったかと思います。この感染は人だけに限らず、犬や猫にまで感染させる怖いウィルスであることも明らかになってきました。未だ、犬や猫から人への感染は報告されていません。研究レベルではありますが、猫やフェレットでは同種間での感染が確認されています。今後も、愛犬愛猫への感染拡大を食い止めるためにも、消毒などを徹底していただきたいです。

2. 2021年の注目分野

来年はオリンピックが開催される可能性が高く、世界からペットが連れてこられることが予想されます。その場合は、検疫での検査がしっかりと行われると思われますが、狂犬病などのウィルスや他の病原体が運ばれる可能性があります。そこで、狂犬病注射の接種率が日本では4割くらいと言われているだけに、今年こそは予防を徹底する必要があると思っています。


大久保泰介(PETOKOTO FOODS)

大久保泰介(PETOKOTO FOODS)
株式会社シロップ 代表取締役社長

1. 2020年最も印象に残った分野・出来事

前から注目していた「LAVOT」がついに世間に登場し、一般の方が認知した年になりました。私自身も実際に触れることができ、熱を放出することで温もりを感じられ、目の動き方がリアルで本当に人間に近い感覚でコミュニケーションができることに驚きました。ロボットかペットかの議論はされてきましたが、迎える際にそうした選択がここ数年で起こり得ると感じた体験でした。生き物の温もりや愛には代え難いものがあるというのが私の意見ですが、ロボット自体の生命の基準が私たちや犬や猫たちと同じ時代が来ることも想像できます。これからも、生命の在り方や付き合い方を事業を通じて学びながら、ペットライフのQOL向上に取り組んでまいります。

2. 2021年の注目分野

弊社が今年から展開している「PETOKOTO FOODS」は冷凍タイプのフレッシュドッグフードです。PRというわけではありませんが(笑)、先進国ではペットが家族化・人間化することで、食事の在り方や価値観も変わり、犬の手作りごはん需要が増加しています。Google Trendでのキーワード検索数はアメリカでは5年間で5倍に、日本では3倍になっています。犬の手作りごはんの課題である栄養面と利便性を補完するフレッシュペットフードは成長市場であり、デジタルの発達によりすでに国内でも複数サービスが登場し、ドライフードが当たり前の文化から変化が起こり得ると考えています。これからも美味しく、健康な食事を通した健康の提供、そしてペットライフのQOL向上に邁進していまいります。


井島七海(OMUSUBI)

井島七海(OMUSUBI)
株式会社シロップ 執行役員/OMUSUBI事業責任者

1. 2020年最も印象に残った分野・出来事

2020年は新型コロナの影響により、OMUSUBI登録保護団体さん支援に注力した一年でした。ペット需要の増加により犬猫への応募数は2倍以上に増えたものの、OMUSUBIが実施したアンケート調査では「運営継続に懸念がある」という回答も見受けられました。OMUSUBIではオンライン上での譲渡機会を創出するため「オンラインお結び会」の開催や、他企業さまとのコラボ企画で支援を加速させてきました。不確実性の高い状況は続くため、引き続き保護団体さんと一緒にコロナ禍を乗り越えていきたいと思います。

2. 2021年の注目分野

2021年は動物愛護管理法の改正に含まれた「数値規制」が施行されます。近年「殺処分問題」への関心が高まり、保護犬・保護猫も認知されてきました。今後は譲渡促進に限らず、ペット流通市場全体の健全化に目が向けられ、様々な議論が生まれる一年となることを期待しています。OMUSUBIとしても保護団体さん、里親希望者さんのサポートを通し、業界の健全化を後押ししていきたいと思います。


あとがき

今年の「ペット業界ゆく年くる年」は、より広範囲にペット業界に関わるキーパーソンから振り返りとトレンド予測を頂くことができました。ペットの家族化が進むことで、「ペット業界」の定義も変化しているのかもしれません。

コロナによって家にいる時間が増え、犬や猫を安易に迎える方が増えた一方、愛犬・愛猫の異変に気づきやすくなり動物病院に行く人が増えたという話も聞きます。安易に迎えることは良くありませんが、大切なのは迎えてからですね。

先日、実家にいる愛猫リズモが膀胱炎になってしまいました。その際、最初に異変に気付いたのは一緒に暮らす両親ではなく、離れて暮らす僕でした。なぜかというと、シャープの「ペットケアモニター」が教えてくれたからです。

ペットケアモニターの通知画面

ペットケアモニターはリズモがトイレに行くとスマホに通知してくれるのですが、その日は50〜60回という明らかに異常な数。体調に大きな変化はなかったので、トイレに行く様子をじっくり見ていない限り気付くのは遅くなっていたことでしょう。

飼い主が知識を蓄え、しっかり見て、触って体調管理をするのが一番ですが、誰もが愛犬・愛猫の変化を完璧に把握するのは現実的ではありません。日常的な飼い方も含めて、IoTデバイスのサポートが飼い主のためにも、ペットのためにも重要な存在になってくるのだと改めて認識した出来事でした。

2021年がどんな年になるのか、まったく予測できない世の中になってしまいましたが、ペトことの使命は変わりません。飼い主さんも、その愛犬・愛猫たちも、みんなが幸せな生活を送れるように。新鮮で正確な情報、楽しくなる情報の発信に努めてまいります。

今年もご愛読いただき、ありがとうございました。来年もよろしくお願いいたします。皆さま、よいお年をお迎えください。

リズモ
リズモ