
【アフリカ縦断記】タンザニアでテント生活! 子守唄はハイエナの鳴き声で
アフリカ縦断記第3弾の今回は主に、タンザニアのセレンゲティ国立公園内でテント生活をした時に実感した自然の脅威、ハイエナと急接近してしまった夜のことを書こうと思います。
ケニア、ウガンダの旅を経てすっかり東アフリカの虜になった私を、さらなる感動で迎えてくれたのがタンザニアでした。タンザニアは深い森や果てないサバンナ、コバルトブルーの海を持つ宝石箱のような国です。この記事を書き始めた時には帰国して半年がたとうとしていました。「記憶が薄れてしまうだろうか」と危惧していましたが、アフリカでの思い出は帰国した時よりも鮮明に、その日々の美しさを教えてくれるようになっています。
※ンゴロンゴロクレーターは火山活動によって生まれた平野を指します。![アフリカ旅行 ンゴロンゴロ]()
ンゴロンゴロクレーター展望台から見渡す景色はとにかく広く、まさに壮大。小ぶりな雲たちが地上を影らせ、その影の中では象の群れがのんびりと歩いています。草原の先にずーっと視線を這わせると、その先には隆々とした壁が草原を囲っていました。「写真を撮ろうか?」と声をかけられた時には口の中が乾いていたので、ずいぶん長い間アホ面していたような気がします。
![ンゴロンゴロクレーター展望台]()
セレンゲティ国立公園
タンザニアに入った後、まずアルーシャという町に1泊しました。ガイドさんから「この国はあまり英語が通じないよ」と聞いていたので、覚えたてのスワヒリ語でやたら話しかけては「あなたスワヒリ語分かるのね!」と勘違いされて大変な目にあっていました(楽しかった)。ンゴロンゴロの壮大な景色と閉じない口
アルーシャからは小さな四駆車に乗り換え、7時間ほどかけてセレンゲティ国立公園へ向かいます。途中ンゴロンゴロクレーター(※)を見渡せる展望台に降りたのですが、まさか展望台で口をあんぐり開けて思考停止になるとは思いませんでした。※ンゴロンゴロクレーターは火山活動によって生まれた平野を指します。

こんな壮大なクレーターを想像していなかった

はとバスのお姉さん風
「こちらがンゴロンゴロクレーターでございます♪」
キャンプサイトの注意事項はハイエナ
ンゴロンゴロクレーターの景色を満喫した後は、いよいよセレンゲティ国立公園内へ。この旅でいくつものキャンプサイトでテントを張って生活してきましたが、この公園内のキャンプサイトは別格でした。もう最&高です。この話に対する反応は人それぞれで、「素敵!」と目を輝かせる人もいれば「無理……絶対に無理」と断固拒否してくる人もいます。皆さんはどっちでしょうね。
道中チーター親子のリラックスタイムに見惚れて寄り道していたので、キャンプサイトに到着した時はすでに暗くなり始めていました。キャンプサイトと言っても柵もなく、石造りの食堂や簡易的なトイレ・シャワールームがポツンとあるだけです。

トイレとシャワー室(水のみ、巨大な虫多め)
誰がどう見ても「え、襲われない? 大丈夫?」という疑問が浮かぶような雰囲気に、私はトキメキっぱなしです。ガイドさんは「動物たちもわざわざ人間に寄って来ないから、ルールさえ守れば大丈夫だよ」と、危険を避けるための四つのルール教えてくれました。
- 食べ物、水以外の飲み物はテントに入れない(匂いにつられて野生動物が来てしまう)。
- テントはカバーまでしっかり閉める。
- 夜はあまりテントから出ず、トイレは誰かと一緒に行く(人間も動物も1匹は襲われやすい)。
- 野生動物が近くにいても騒がない(興奮するきっかけになる)。
夕食時、ライト無しでは歩けない暗さになると、「ウーウッ……ウーウッ」という少し高めの鳴き声が響くようになります。何の動物かガイドさんに尋ねると「ハイエナ。多分もっと増えるよ」とあっけらかんと言い放ちました。「ハイエナの声なんて初めて聞いた……!」と大喜びしていると、テントパートナーから「いい? テントに動物入れちゃダメよ。分かった⁉︎」と念押しされました。どうやら「コイツはテントに動物を招きかねない」と思われたようです。その後も何かあるごとに口を酸っぱくして言われ続けました。
サバンナで見上げる南天の星空
安全に過ごすためのルールの中に「夜はあまりテントから出ず……」というものがありました。しかし夜空を見上げると、そこには自己主張の激しい豪勢な南天の星々。学生時代に天文部で星空オタクをしていた私にとって、「安全のためさっさとテントに引っ込む」という選択肢は皆無でした。そこでガイドさんに頼み込み、一緒に観測してもらうことに!
セレンゲティのビールと南天の星空
サバンナの夜は寒いです。あるだけ着込み、ビール片手にサバンナに覆いかぶさる星空を見上げました。南十字星やはちぶんぎ座、カノープスなど、日本では出会いにくい星たちが瞬いています。音の届かない雷雲が星空を縁取り、ハイエナの鳴き声と、時々聞こえるライオンのうなり声がこの世で一つのBGMとなっていました。星空に心を奪われそうになりますが、時々ライトを周囲に当て、動物の目らしきものが光らないか確認するのも大切です。星はなる側よりも、観る側が一番です。
ハイエナと急接近!
深夜、「トイレに行けない」と考えると行きたくなるのが人間の性……。テントパートナーについて来てもらい歩いていると、真後ろからトットと足音が聞こえました。振り返ろうとしたその時、真横をハイエナが走り去ったのです。さすがに「うわーっ!」と声が出てしまいましたがハイエナは1匹だけで、私たちの存在なんてガン無視。しばらく呆然としましたが、ハイエナをあんな至近距離で感じることができたことへの喜びの方が大きかったです。テントの外ではハイエナの鳴き声が響き、ライオンのうめき声も聞こえます。その夜は潜在的に恐怖心も感じていたのか、ライオンがテントに入ってくる夢を見て目が覚めたり、象の荒ぶる声で飛び起きたり、熟睡はできませんでした(笑)。

最高で最恐の宿泊地
セレンゲティ国立公園をゲームドライブ
翌朝、私たちは朝日が登る前にキャンプサイトを出発し、ゲームドライブ(自然保護区の中を野生動物を探しながらドライブすること)を始めました。茂みの中に隠れていたインパラが車と並走し、なんとも幻想的な朝。ケニア編でも少し書きましたが、ナショナルパークで会える確率の低い動物2トップはヒョウとサイ。この日私たちは「ヒョウが見たい‼︎‼︎」と初っ端からガイドさんに懇願していました。ガイドさんは「努力はするけど、約束はできないよ……」とド正論。
「見られるかなーどうかなー」と雑談しながらサバンナを疾走すること数十分。

会えちゃいました。

今見返してもなんてかっこいいの……。ヒョウはチーターと間違えられがちなのですが、実際に見るとかなり違いがあります。体つきはより筋肉質で、エレガントと言うよりも迫力のある雰囲気。また警戒心が野生動物随一で強いため、ササーッといなくなってしまいます。しかし私たちの愛が伝わり、ゲームドライブ中に5回も遭遇することができました!
雨季の野生動物たち
セレンゲティ国立公園ではカバのなわばり争い、捕食中のライオンの群れ、ヌーやシマウマの大群など、雨季らしいたくさんのシーンに出会うことができました。私たちが人間の社会で生活を送っている時にも、命のドラマが繰り広げられているんでしょうね。
威嚇中のカバ

ゲームドライブの様子

じゃれ合うインパラ

食事中のライオン
予想外の自然の脅威
タンザニアのセレンゲティ国立公園での強烈に記憶に残っている出来事があります。それは私たちがテントを張っているキャンプサイトの近くで起こりました。午前中のゲームドライブを終えキャンプサイトに戻ってくると、象一頭とバッファロー二頭がのんびりと草を食べていました。「わー近いねー」なんて話しながらテントに戻り、お茶を飲みながらゆっくり荷物整理をしていました。

テント内からの景色
そんな時、突然象が荒れた鳴き声を上げ始めたのです。何事かとテントを飛び出すと、川が氾濫し、象がいた場所に大量の水が押し寄せています。距離があったためよく見えなかったのですが、象が水から出るのに苦戦しているのは分かりました。象が心配で全員ハラハラ。すると後ろから車が飛んできてガイドさんが「飛び乗れ!」と一言。初めて走行中の車に飛び乗りました。そして水が来ないであろう少し高い位置に車を停め象を見守ります。
誰も予想していなかった川の氾濫。象は泳ぎが得意な方ですが、パニックな状態では助かるか分かりません。ただ全員で「頑張れ……」と祈り、自然の脅威を肌で感じていました。
苦戦すること十数分。動画にもありますが、象は無事岸に上がることができました……‼︎‼︎
岸に上がった象は、興奮冷めやらぬという感じで、水に石を投げたり鼻で水面を叩いたりしていました。しかし次第に楽しくなってきたのか、最後には自ら浸かりに行って遊んでいました(笑)。

なんだよもうー!

あれ、楽しいじゃん
いやはや、自然は本当に予想がつきません。このキャンプサイトで、一見小さなことが自分の命を左右してることを実感しました。一人ではない。夜はテントがある。車もある。どれか抜けていたら、今頃バッファローに襲われるか肉食獣の血肉となっていたのかもしれないです。
おまけ:タンザニアのオアシス ザンジバル島
セレンゲティ国立公園でのサバイバルも魅力的ですが、タンザニアに行くならザンジバル島も外せません。私は帰国して以来「新婚旅行はタンザニアでセレンゲティテント泊からのザンジバルが最高だよ!」と布教活動をしています。
きれいすぎる海
コバルトブルーの海、学校帰りに服のまま海に飛び込む子供たち、でかすぎる夕陽。ただのオアシスかなと思いますが、昔は奴隷貿易、象牙貿易の拠点でした。歴史的にも学ぶところの多く、海に浮かびながらいろいろなことを考えます。

夕陽が大きくきれいなことで有名だとか
Kwa heri
今回はタンザニアで体験した出来事を中心に書きました。現地の方の笑顔もとても素敵な国で、書ききれないことはたくさんあります。森下典子さんの『日日是好日』という私の好きな本があるのですが、その中に「百パーセント、ここにいる」という一文があります。さまざまな命が混交する野生の世界にいると、まさに動物たちがその言葉を体現しているんですよね。ただ今を生き切ろうとする姿って、本当にかっこよかった! 私の駄文で少しでも伝われば嬉しいです。ペット系のメディアなのにアフリカ縦断記を読んでくれてありがとうございます! それでは皆さんKwa heri!(クワヘリ:スワヒリ語でさようなら)
Asante Sana(アサンテサーナ:ありがとう)