スペイン版ペットのお宮参り! 愛犬の健康祈願をする「聖アントニオの日」現地リポート

スペイン版ペットのお宮参り! 愛犬の健康祈願をする「聖アントニオの日」現地リポート

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年が明けて誰もが大切な人の1年の健康を祈願するとき、ペットの飼い主さんなら愛犬の健康も祈りますよね。スペインでは毎年1月17日に日本のお宮参りのようにペットの健康を祈願する文化があり、全国各地の教会がペットを連れた人で賑わいます。今回は、行事が行われている様子とともに、この文化が生まれた経緯や参拝者の声を、スペイン在住デザイナーの関根が現地リポートします。

動物の守護聖人「聖アントニオの日」

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スペインで毎年1月17日は、動物の守護聖人とされるサン・アントン(San Antón)を祝福する日で、日本語では「聖アントニオの日」とも呼ばれています。聖アントニオは動物を保護し、食料を与え、無償の愛で世話をしたとされている聖人です。

当日はアントニオ祭を意味する「フィエスタ・デ・サンアントン」(Fiesta de San Antón)という行事がスペイン各地の教会で開催され、飼い主さんたちはペットを連れてお参りに行きます。

ペットの1年の健康を祈願

この日教会を訪れる人々の最大の目的は、水をかけてもらう祝福の儀です。日本語で聖水という言葉を聞いたことがある人もいるかもしれませんが、スペイン語で「アグア・デ・ベンディタ」(Agua bendita)と呼ばれる特別な水を、ペットの1年の健康を祈って浴びさせるのです。

聖水の意味は儀式や信仰によってもさまざまですが、いずれもこの水を浴びたものには御利益があるとされており、人のための儀式では人が直接聖水を浴びることもあります。

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開始前から集まる人々

聖アントニオの日はスペインにおけるキリスト教の伝統行事の一つとして昔から祝われていますが、このような意義を持つようになったのは、新たな1年が始まる1月に毎年開催されていることが大きく関係していると考えられています。

村の小さな教会でも開催

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今回訪れたのは、スペイン・バレンシア(Valencia)州アリカンテ(Alicante)県のオリウエラ(Orihuela)という人口8万人の村です。どちらかというと保守的な考えの人が多く、古くから続く習慣・文化もたくさん残っています。


祈祷スタート

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午前11時30分頃、神父さんの登場です。ペットも一緒にみんなでお説教を聞き、その後、神父さんがピチャピチャと聖水を撒いていきます。

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儀式のルールは教会によってさまざまで、一列に並んで1組ずつ神父さんに聖水をかけてもらう教会や、一斉に上からピチャピチャとかけてもらう教会などがあります。オリウエラで訪れた教会には大きめの広場があるため、みんなが一斉にかけてもらうスタイルでした。ペットたちが頭上に掲げられる光景は少し独特です。

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参加者のほとんどが犬を連れた愛犬家ですが、中には鳥や亀を連れている人もいました。

スペイン版ペットのお宮参り

もちろん毎年参加しているという方もいましたが、生まれて1年未満だったり、愛犬を家族に迎えた最初の年という参加者が多かったです。そういう人たちは今年1年の健康だけでなく、これからの健やかな成長を祈願するために訪れたといい、日本でいうところのお宮参りに近い行事なんだなという印象を受けました。

参加者の声

そんなスペイン版ペットのお宮参りに来ていた方々にお話を伺いました。

レオ(Leo)

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教会の近くに住む雑種のレオくん。7カ月を迎えたばかりの元気いっぱいの子犬です。飼い主さんは、「レオがこの行事に参加することができて、幸せで喜ばしい気持ちになった」といいます。

ウリセス(Ulises)

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古代ギリシアに由来するかっこいい名前を持つウリセスくんは、この行事のために隣の村から来たんだそう。ハバニーズ(Havanese)という、スペインでもあまり見かけない犬種です。飼い主さんは、「1歳を迎える祝福にもなって、感動的な祈願だった」といいます。

家族である動物たちの幸せを祈る

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儀式の初めに神父さんは、「すべての動物に幸せに生きる価値がある」と説きます。動物の守護聖人であるサン・アントンは動物に無償の愛と癒やしを与えたとされており、現代の人々が動物たちに強いている悲しい状況下で学ぶことは多いです。

日本と同じように犬・猫の殺処分が未だに行われているスペイン。アントニオ祭のようなコンセプトを持った行事をきっかけに、人々の動物に対する考えを変えていくことが必要です。