【トレーナー解説】犬に自分の真似をさせる「Do as I Do」とは?イタリア発のトレーニングを解説

【トレーナー解説】犬に自分の真似をさせる「Do as I Do」とは?イタリア発のトレーニングを解説

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「しつけ」は、社会の中で安全に、そして快適に生活していくために重要です。しかし、間違った方法でしつけをおこなってしまうと、飼い主に対して恐怖心を抱いたり、問題行動がエスカレートしてしまったりする可能性もあります。そこで今回は、イタリアのドッグトレーナーによって考案された「Do as I Do」(私の真似をしてごらん)というトレーニング方法をドッグトレーナーの西岡がご紹介します。

犬のトレーニング「Do as I Do」とは

トレーニング中の犬

「Do as I Do」(私を真似をしてごらん)は、「模倣学習」という動物の学習方法を利用したトレーニングです。人も含めて、全ての動物は他者の行動を見て、その結果どうなるかを理解し、自分の行動へと置き換えていきます。

たとえば、末っ子が「世渡り上手」といわれる理由は、兄弟と両親のコミュニケーションを観察し、「どうしたら怒られずに済むか」「どうしたら褒めてもらえるか」を学ぶことで、成功例を真似することができるからだとされています。

犬の場合は、「兄弟犬があんなことして飼い主さんに怒られたから、自分はやめておこう」とまで複雑には考えませんが、親の遊ぶ姿を見て、真似て兄弟で遊んだり、他の犬がうれしそうに水溜まりに入って行くのを見て自分も入ってみたり、真似をすることで経験を重ねていきます。学習方法としては、報酬を前提とする「オペラント条件付け」も知られていますが、模倣学習のほうがより早く、効率的に覚えられるとされています。

「Do as I Do」というトレーニング方法は、もともと1952年にチンパンジーの模倣学習を研究するために開発された学習方法です。この方法が世界各地の行動学者に伝わり、犬をはじめ他の動物における模倣学習の研究に応用されました(※1)

そして2014年には、模倣を通した学習は効率的なだけではなく、「(例えば電気の)スイッチのオン・オフを切り替える」といった複雑な行動にも有効的ではないかとする論文も発表されています(※2)

その後、イタリアのドッグトレーナーのクラウディア・フガッツァ博士が、犬の飼い主さん向けに動画などを作製し、よりわかりやすい手順として発表しました。


犬が学習するってどういうこと?

頭を撫でられる犬

犬は、人のように言葉でコミュニケーションをとらないかわりに、非言語コミュニケーションに長けているので、飼い主のしぐさや表情などから飼い主の気持ちや行動の意図を読み取ります。その能力は他の動物と比べても特に優れていると考えられています。

犬が人間の言葉をしっかりと理解しているかどうか正確にはわかっていませんが、飼い主が犬の学習理論をしっかり理解することで、より犬とのコミュニケーションを取りやすくなります。

犬の学習を理解する上で代表的な理論が「古典的条件付け」と「オペラント条件付け」の二つです。それぞれ簡単に紹介します。


古典的条件付け

古典的条件付けは、別名「条件反射」や「レスポンデント条件付け」ともいわれています。これは、1903年にロシアの生理学者「イワン・パブロフ」の研究観察がもとになって作られた理論です。「パブロフの犬」としてご存じの方も多いと思います。

パブロフは、犬に餌を与える前にベルを鳴らすアクションを何度も起こしているうちに、犬がベルの音を聞くだけで唾液が出るということを発見しました。犬だけのものではなく、人間でも同じ行動があります。

たとえば、人がレモンや梅干しなどすっぱいものを見ると、自ら意識しなくても唾液が出てしまっている時の行動が、古典的条件付けの代表例として挙げられます。

オペラント条件付け

オペラント条件付けは、1898年にアメリカの心理学者、エドワード・ソーンダイクによって唱えられた学習行動です。これは古典的条件付けとは異なり、犬が自発的に行動を起こす学習のことです。


たとえば、ある行動に対して、餌やおやつなど犬にとって喜ばしい「報酬」があった場合、その行動の頻度が増えます。逆に、犬にとって「嫌な出来事」(嫌悪刺激)があった場合、その行動の頻度が減ります。

トレーニングはゲーム化することで幅広くなる!

トレーニング中のヨークシャテリア

「トレーニング」や「訓練」という言葉を聞くと何となく気が向かない方もいると思いますが、人間にとっても犬にとっても、トレーニングや訓練は楽しいものであったり、自発的に取り組みたいものであるべきです。無理やり押し付けても、学習効率は悪くなってしまうでしょう。犬に暴力的なトレーニング・訓練を行えば、恐怖心を覚えさせるだけではなく、最悪の場合は人間不信になってしまう可能性もあります。

教える飼い主さんも犬も楽しく学習する方法の一つとして、ゲームの要素を取り入れることがオススメです。人間の勉強でも、アルファベットのAからZまでを歌にして楽しく覚えたり、問題をクイズ形式にすることで記憶に定着しやすくなったりします(近年「ゲーミフィケーション」という言葉で注目されるようになっています)。

犬でも同様で、楽しくトレーニングをすればするほど、犬はトレーニングの内容を早く学習していきます。たとえばおやつを与える際、両手のどちらにおやつが入っているかを犬自身に考えさせることで、「犬はこの問題に正解したらおやつがもらえる!」と楽しく学習していきます。

今回紹介する「Do as I Do」もただ真似をさせるだけではなく、犬に考えさせながらおやつを与え、真似することができたらボールなどその子にとっての報酬を与えます。このとき、犬にとっての報酬は量より質でなくてはいけません。

たとえば、私の知り合いに警察犬訓練所の訓練士がいるのですが、ある訓練犬に「物を持ってくる行動」を教える際、慣れ親しんだダンベルを使っているそうです。犬は「ダンベルを持って行けば遊んでくれる!」と思って行動をして、学習していきます。また、食べ物やおもちゃより、飼い主さんに褒められることがなによりのご褒美という子もいます。

自分の行動を犬に真似をさせる

飼い主を見上げて歩く犬

「Do as I Do」は、日本語で「私の真似をしてごらん」という意味です。その意味の通り、飼い主さんが犬に手本を見せることでそれを真似(模倣)させる方法です。

ちょうどクラウディア・フガッツァ博士の解説に日本語字幕がついた動画がYouTubeで公開されていますので、参考にしていただければと思います。


「Do as I Do」を簡単に説明すると、以下のような手順が基本となります。

  1. 犬に「おすわり」または「伏せ」、そして「待て」といったコマンドで待機させて、真似させたい行動を犬の前で実演します。
  2. 最初の位置に戻り、犬に「Do it!(やってみなさい!)」と言って行動させます。
  3. 犬は飼い主さんの真似をします。
  4. 犬におやつなど(その子にとっての)「報酬」を与えます。


たとえば、「飼い主さんが回る行動」を犬が「Do it!」で真似できるようになったとき、犬は「『Do it!』=回る行動」だと認識しようとします。そこで次に、別の行動で同様の手順をふみます。犬に、「『Do it!』とは何か?」を考えさせることが重要です。

「Do it!」でいろいろな行動の真似を繰り返すことで、犬は「Do it!」という言葉が一つの行動を真似ることではなく、「飼い主さんの行動を真似ること自体を意味する言葉なのだ」と気付くようになるのです。

実際にトレーニングとして取り入れる場合は、クラウディア・フガッツァ博士のDVD『Do as I Do: A New Training Method based on Social Learning』などを活用していただければと思います。

参照:『Training ‘Do As I Do’: Fun and Efficient!』(Smart Animal Training Systems)

ドッグトレーナーコメント

「Do as I Do」では、誘導で教えられない行動を犬に教えることができます。とはいえ、最初のうちはハンドシグナルや誘導などをして、犬にルールを教えていく必要があります。あらかじめクリッカーでのトレーニングができていると、より「自分で考える」ことがスムーズにできるので、新しい行動を覚えることも早くなります。クリッカートレーニングの詳しい方法は関連記事をご覧ください。


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まとめ

トレーニング中のシェルティ

「Do as I Do」とは、飼い主さんの行動を犬に真似させることでおこなうトレーニング方法
「Do it!」というコマンドは、「飼い主さんの行動を真似すること」と教えていく
トレーニングの幅を広げることができるので、愛犬と楽しくチャレンジしてみよう

「Do as I Do」の良いところは、トレーニングの幅が広がることです。一般的にトレーニングは、犬の行動一つ一つを観察して、正解の行動をしたときに報酬を与えて「それが正解だよ」と教える方法をとります。これは犬の偶然の行動に期待した方法ともいえますが、「Do as I Do」ができるようになれば、まず飼い主さんが犬に「これが正解だよ」と教えてあげることができるのです。

教えるのが難しいと思っていた行動が教えやすくなり、「『Do it!』で行動させながらコマンドを入れていく」ということもできるようになるでしょう。飼い主さんも犬も楽しみながらチャレンジしてみてください。


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