愛犬の肥満は飼い主の考え方が原因!? 人と犬の肥満の関係性を海外研究から紹介

愛犬の肥満は飼い主の考え方が原因!? 人と犬の肥満の関係性を海外研究から紹介

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肥満が健康に良くないというのは皆さんよくご存じだと思いますが、それは犬も同じこと。関節に負荷がかかって歩けなくなったり、呼吸が難しくなったりするだけでなく、肥満が引き起こす病気によって亡くなってしまうこともあります。犬の肥満の原因には運動不足や栄養過多などが考えられますが、なんと「飼い主さんの肥満への認識」も犬の肥満に影響を与えていたのです。今回は、スペイン・ムルシア大学やデンマーク・コペンハーゲン大学などの研究チームの調査報告を紹介します。

犬の肥満問題を解決するための専門家による調査

ゴールデン肥満

ヨーロッパでは人間の肥満が問題視され、多くの国で60%以上の人が「体重過多」もしくは「肥満」であると報告されています。そして増え続ける肥満は、人だけでなく犬にとっても問題になっています。そこで研究チームは、犬の肥満を予防するため、愛犬の肥満に対する飼い主さんの考え方や認識、経済状況や社会的状況についての調査を行いました。

これまで「人間」と「犬」それぞれの肥満については研究されてきましたが「人間と犬」、つまり「飼い主さんと愛犬」を対象として、それもヨーロッパの広範囲で行われた調査は初となります。3000を超える有効回答から、犬の肥満を生み出すいくつかの原因が明かされました。

飼い主さんの肥満への認識が愛犬を肥満にしていた!?

犬と散歩

調査の対象となった飼い主さんの中で、BMI(ボディマス指数)により、「痩せすぎ」が6%、「正常」が62%、「体重過多」もしくは「肥満」と判断された人は32%でした。犬はBCS(ボディコンディションスコア)で22%、BFI(体脂肪インデックス)で56%が「体重過多」もしくは「肥満」と判断されました。

今回の調査でわかったのは、単純に「飼い主さんが肥満=犬も肥満」ではないということです。

喫煙、偏った食生活……。生活習慣が愛犬を肥満に

研究チームの報告によると飼い主さん、愛犬ともに体重過多や肥満になるのは、
  • 年齢(年を重ねるごとに体重が増える傾向にある)
  • 偏った食事
  • 運動不足
が主な原因とされています。また、「経済的に豊かな家庭で飼われている犬のほうが肥満になりにくい」「喫煙家の飼い主さんと暮らす犬が肥満傾向にある」といった結果も出ています。

さらに、「犬を迎えても生活に変化はない」と答えるなど、犬との時間をあまりとらない飼い主さんや、「人間と同じ食事を愛犬に与えることがある」と答えた飼い主さんと暮らす犬たちにも、同じように体重過多が見られました。

「肥満は病気じゃない」という考えが生んでしまう愛犬の肥満

調査結果で注目したいのは、「肥満に関する認識」と「実際の肥満」との関係性です。

European dog owner perceptions of obesity and factors associated with human and canine obesity

上の図は、クロアチア、デンマーク、イタリア、リトアニア、ポーランド、ポルトガル、ルーマニア、セルビア、スペイン、スウェーデンの回答者に聞いた「肥満を病気と認識するか」という質問の答えです。「人間にとって肥満は病気であるか」という質問に加えて、「犬にとっての肥満は病気であるか」という質問もしていますが、「犬にとって肥満は病気ではない」と答えたオーナーと暮らす愛犬の多くに、肥満傾向が見られたのです。


飼い主さんと愛犬の健康的な未来のために

健康な犬との生活

調査に参加した専門家たちは今回の調査結果から、犬と人間の肥満を防ぐため以下の3つのことが欠かせないとしています。

  • より良い食生活を送るため、健康的な食べ物を手に入りやすくすること
  • テレビやラジオなどで肥満に関する知識を広く伝えること
  • 都会では特に、犬と歩く時間を多く作ること

特に肥満に関する知識において、人を診る医師や専門家と獣医が協力して、飼い主さんと愛犬両方に向けた意識改革をすべきだという声が上がっています。愛犬も家族の一員として、人と同じように肥満予防策を考えるべきだというのがその理由です。一方で、人と犬は全く違う生き物であるため、専門家が共同研究するのは無理だという声もあります。実際、今回の回答者のうち19%の人たちが「共同研究は必要ない」もしくは「共同研究は不可能である」と答えています。皆さんは、どうお考えになりますか?

なんとなく「肥満は悪いものだ」とわかっていても、日々の忙しさについお散歩を短くしてしまったり、欲しがる顔に勝てず人の食べ物を与えてしまったり。飼い主さんが知らず知らずのうちに、愛犬の肥満の原因を作ってしまっているかもしれません。まず、「犬の肥満は病気である」という認識を持つことが、これからの愛犬との健康な生活に必要不可欠です。

調査概要

  • 調査機関:ヨーロッパにある獣医学部を持つ複数の大学
  • 対象:経済状況や人口密度、住環境の違うヨーロッパ10か国(スペイン、ポルトガル、イタリア、デンマーク、スウェーデン、リトアニア、ルーマニア、セルビア、クロアチア、ポーランド)で1匹以上の犬と暮らす18歳から98歳の男女
  • 調査方法:2016年12月から2017年3月の間に手渡しあるいはインターネットで配布された匿名アンケート
  • 質問内容:年齢、性別、身長や体重など飼い主さんに関する質問。犬種や年齢、体重などの愛犬に関する質問。1日にどれくらい犬と過ごすかなど、飼い主さんと愛犬との関係性に関する質問。肥満に対する飼い主さんの認識など。
  • 詳細:「European dog owner perceptions of obesity and factors associated with human and canine obesity