「ペット業界ゆく年くる年」業界キーパーソンたちのトレンド予測2023

「ペット業界ゆく年くる年」業界キーパーソンたちのトレンド予測2023

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2022年も残すところあとわずか。今年は世界を一変させたコロナ禍にようやく出口が見えた年となりました。ステイホームの時間を取り戻すように、愛犬とのお出かけを楽しみにしていた飼い主さんも多いのではないでしょうか。来年はどんな年になるのでしょう。ペット業界のキーパーソンたちに、2023年のトレンドを予測していただきました。

今回ご協力いただいたのは以下のキーパーソンです。この場を借りて、改めてお礼申し上げます。

※敬称略

古米 潤(アマゾンジャパン)

古米 潤(アマゾンジャパン)
アマゾンジャパン合同会社 消費財事業本部 事業本部長

1. 2022年最も印象に残った分野・出来事

保護犬・保護猫へのサポート、具体的には保護施設に対する物資支援への関心が高まってきたことが印象に残っています。2019年6月に開始したAmazonの「保護犬・保護猫 支援プログラム」を通じ、2022年11月末までの間に、計4億3000万円相当の支援物資が動物保護団体へ寄付されました。このことからも、社会的な関心の深さが伺い知れます。

一方、弊社が今年実施した「保護犬・保護猫に関するアンケート」では回答者全体の53.0%の人が保護犬・保護猫の受け入れ方が分からないと回答しており、家族として迎え入れるという現実的な選択肢につなげる方法やそのステップの浸透には、引き続き課題が存在することに気づかされた1年でした。


2. 2023年の注目分野

保護犬・保護猫の譲渡というテーマに来年度も注目してまいります。今年、Amazonでは環境省や保護犬・保護猫関連団体・企業の皆様と共に、「里親」に代わる新愛称を一般から募集し、審査の結果「迎え主(むかえぬし)」が選ばれました。従来使われていた「里親」という言葉は“一時預かり”が本来の意味であり、終生飼育の覚悟を持ち家族として迎え入れる行為を表わすには適切な表現と言い難い背景がありました。

今後、より多くの方々に保護犬・保護猫の存在を知っていただき、家族として迎え入れる選択肢をご検討いただけると良いなと思います。流行語大賞に「迎え主」がエントリーされればという意気込みで、譲渡にまつわる一連の活動を引き続きサポート出来れば嬉しく思います。


徳井義実(チュートリアル)

徳井義実(チュートリアル)
愛猫家、株式会社PETOKOTO CAT(Chief adoption, TOKUI)

1. 2022年最も印象に残った分野・出来事

YouTubeで公開している動画徳井videoにうちの猫が出てくるのですが、「どんなキャットフードを食べさせてますか?」と聞かれることが増えてきました。猫のごはんに対する飼い主さんたちの意識が変わってきているのを感じています。



2. 2023年の注目分野

いち飼い主として安心・安全なごはんを食べさせたいと思っているので、PETOKOTO FOODS for Catsの発売を楽しみにしています。愛猫のことを思うと信用はどこまでも求めてしまうものだから、100%の信頼ができるものを食べさせたいと思うのが親心です。広報担当として応援してますが、僕自身が納得した上でお薦めしたいと思っています。


樋口 詩織(楽天トラベル)

樋口詩織(楽天トラベル)
楽天株式会社 トラベル&モビリティ事業 PR推進室 PRグループ

1. 2022年最も印象に残った分野・出来事

2022年は3年ぶりに行動制限のない大型連休を迎え、「楽天トラベル」ではコロナ前の2019年を超える勢いで旅行需要が回復しています。ペットとの旅行も好調で、「楽天トラベル」で「ペット」のキーワード含むプランの宿泊数は、2019年と比べて約1.2倍に増えました。

ドッグラン併設や、コテージでペットと一緒にのびのびと過ごせる宿泊施設が注目を集めています。「ペット同室」のキーワードを含んだ宿泊プランも大きく伸びており、ペットと近い距離で旅行を楽しんでいる傾向が伺えます。


2. 2023年の注目分野

交通機関から宿泊施設まで、常にペットと一緒に過ごしたりペット向けのおもてなしを受けられたりできるサービスがこれまで以上に充実してきている印象を受けています。楽天がプロデュースする宿泊施設「Rakuten STAY」でも、ペットと一緒に滞在できる部屋が増えており、ワンちゃん専用の足洗場やプライベートドッグランを備えた客室も提供しています。

2023年初頭には、ペット連れのファミリー旅行やグループ旅行にも最適な「Rakuten STAY VILLA 那須」「Rakuten STAY Villa 鴨川」を新しく開業予定です。多くの方に、ペットとの特別な旅行体験を楽しんで頂けたら嬉しいです。

佐藤 亮介(一休.com)

佐藤 亮介(一休)
株式会社一休 新規事業本部 YADOLINK事業部部長

1. 2022年最も印象に残った分野・出来事

ペットを連れた旅が一層広がった一年になりました。一休.comに掲載されているペットと泊まれる宿は前年比15%と堅調に増えています。中でも、ペット同伴専用客室のある「ホテル四季の館箱根芦ノ湖」や、一棟貸しの「moe-luana」は人気でした。さらに、各エリアごとに設けられた「ペットと泊まれる宿」ページへのアクセス数は前年比で約2倍となり、ペットを連れた旅のニーズが本格的に高まっていることを物語っています。

2. 2023年の注目分野

ペットと泊まれる宿が増えてきたからこそ、賢い探し方が益々重要になってくると感じています。単に「ペットOK」ではなく「ペットフレンドリー」な宿を見つけるためには、公式の情報だけでなく、実際に利用したユーザーによる写真付きのクチコミが参考になることが多いです。一休.comが運営する宿特化型SNS"YADOLINK"でもペット連れの投稿は人気となっています。例えば、「ペットと泊まれる自家源泉の宿 ホテル四季の蔵」で雨の日用の屋根付きドッグランや部屋備え付けの遊具で遊ぶ様子など、写真と文章で滞在がいきいきと伝わってくる投稿が数多く見られます。

木村 優斗(Licht)

木村 優斗(Licht)
株式会社Licht 取締役

1. 2022年最も印象に残った分野・出来事

大企業によるペット市場への参入が相次いだこと。今年だけでも、アマゾンによるペット保険事業参入、エステーによるペット用品ブランドの立上げ、NECによるペット健康管理サービスの提供開始などがありました。国内の人口減少を背景に多くの市場が停滞・縮小する中で、拡大するペット関連市場に魅力を感じる企業が増加しています。

その背景には、『ペットの家族化』の加速があるように思います。コロナ禍を通じた新しい生活様式が定着したことで、『ペットの家族化』は一時的なトレンドではなくなりつつあり、今後も市場拡大と新規参入が相次ぐことが予見されます。

2. 2023年の注目分野

ペット市場に身を置く私たちは、ビジネスとしての成功を追い求めるだけではなく、命を預かることへの責任や自覚を改めて強く持つ必要があります。

例えば不動産領域では「ペット可物件」が増えています。しかしその多くは、“ペットを飼ってもよい”物件に過ぎず、ペットの脚に負担がかかるフローリングや、事故につながりかねないドアや窓が採用されていることがあります。私たちLicht(リヒト)は2022年、「ペットと人との快適な暮らし」をコンセプトとしたペット共生マンションを菊川川崎で企画・販売してきました。

2023年も、本当の意味でペットのことを考えた暮らしを、より多くの人に提供していきます。


筬島 香穂里(CITYDOG)

筬島 香穂里(CITYDOG)
CITYDOG創立者 兼 ディレクター

1. 2022年最も印象に残った分野・出来事

CITYDOGでは、ボストンキャリーやバックパックなど遠出用のキャリーバッグの反応が好調でした。自粛期間を経て、愛犬との遠出を計画しリフレッシュしたいといった傾向が高まっているように感じました。ウィズコロナという新しい流れのなかで、感染リスクを考慮しつつも愛犬との暮らしをいかに充実させるか模索した1年だったのではないでしょうか。

ブランドとしては、初のケアアイテムとなる除菌消臭剤を発表するなど製品を通して、愛犬との生活をサポートできるよう商品開発に注力した1年間でした。


2. 2023年の注目分野

愛犬と行けるグランピングや旅館など宿泊施設の需要は今後さらに増加すると感じています。CITYDOGのお客様とのコミュニケーションの中でもプライベートドッグランなど、周りを気にせず自分たちだけでゆっくりと過ごせる空間への関心や需要の高まりを感じます。

個人的にはCITYDOGとして宿泊施設の空間作りに携わっていきたいといった目標もあり今後の発展を楽しみながら取り組んでいきたいです。


黛 純太(ネコノテ)

黛 純太(ネコノテ)
株式会社neconote 代表取締役

1. 2022年最も印象に残った分野・出来事

ペット業界の企業が保護分野への支援に力をいれはじめた印象でした。特に国内外のフードメーカーが、フードロスを避けるなどの目的で保護団体に寄付する取り組みをよく目にしました。

社会貢献の一環であることはもちろんですが、市場として無視できなくなってきた感覚が見て取れます。PETOKOTOさんでも紹介されている通り「保護犬・保護猫」がトレンドとして注目されてきていますが、それに引っ張られてペット業界各社も保護分野への認識を改めているのだと感じます。

2. 2023年の注目分野

1でも触れましたが、2022年には保護分野への注目度が高まりました。この流れは2023年も続くと思われますが、支援の一極集中には注意が必要です。後を絶たない多頭飼育崩壊や保護依頼の現場にこそ支援の手が必要な一方で、行き届かない現状もあります。保護分野への太い支援と、それを現場へ届ける細い支援両方のパイプライン整備が、2023年には強く求められると考えています。

また保護分野が様々な立場の人の関心を集めることで、昨今増えている「本質を欠いた保護活動」に対しても、健全化の波が起こるはずです。

Coony(猫専門イラストレーター)

Coony(猫専門イラストレーター)
猫専門イラストレーター Coony(クーニー)/ 株式会社PETOKOTO デザイナー

1. 2022年最も印象に残った分野・出来事

2022年2月22日は、1000年に1度の「スーパー猫の日」ということもあり、猫業界は大盛り上がりでした! 私が関わったもので言うと、ファミリーマートからスーパー猫の日を前に「にゃんとも美味しいチーズケーキ」という猫型のチーズケーキが発売されました(パッケージのイラストを担当)。新宿伊勢丹でも猫の日イベントがありコラボアートを発売するなど猫の手も借りたい忙しさでした……。


また、デザイナーとしてジョインしているPETOKOTOが、スタートアップを対象としたピッチコンテストIVSで優勝したのもとても印象に残っています。スタッフ全員で息を飲みながら見守り、感動の涙……。代表の大久保をはじめとしたスタッフ全員が思っている「ペットを家族として愛せる世界へ」という想いに共感が集まったことがとても嬉しかったです。

優勝を喜ぶPETOKOTOスタッフたち


2. 2023年の注目分野

2023年は猫に関する経済効果”ネコノミクス”の拡大に注目です!関西大学の宮本勝浩名誉教授によると2022年のネコノミクスは約1兆9690億円にものぼると推測されています。

猫の飼育頭数がコロナをきっかけに増えたのは有名な話ですが、それに伴い、猫と暮らす芸能人も増え、SNSやメディアで猫の露出が増えているのと、猫カフェや保護猫カフェなど本物の猫とのタッチポイントも増えているので、今後も猫好きさんが増えていくのではないかと思います。

特に2月22日は「猫の日」(にゃんにゃんにゃん)として定着しつつあり、さまざまな企業が限定商品を出したり、各地で猫イベントが開催されます。私もファミリーマート、ねこねこチーズケーキと猫の日イベントを思案中ですし、千代田区役所で開催される「ちよだ猫祭り」にも友人と出店する予定です!

井島 七海(OMUSUBI)

井島七海(OMUSUBI)
株式会社PETOKOTO 執行役員/OMUSUBI事業責任者

1. 2022年最も印象に残った分野・出来事

2022年6月からマイクロチップの装着の義務化が施行されました。義務の対象は繁殖業者や販売業者のみで、普及には課題も多い現状ではあります。しかしペット(伴侶動物)の飼養責任を明確に管理することで悪質な事業者の繁殖・販売や無責任飼養の抑止力として期待されています。

また、個人的には「保護ビジネス」という新たなテーマに触れる機会が増えたのも、2022年を象徴するものだったと感じています。保護犬・保護猫という言葉の定義は曖昧です。支援や社会課題の解決を謳いながらも、事業者の都合の良いスキームが組まれているビジネスモデルも散見され、新たな課題として捉えています。

2. 2023年の注目分野

前述した状況も含め、2023年は言葉の定義がとても重要になってくる年になると感じています。現在、保護犬・保護猫やペットに関わる社会課題は良くも悪くも注目を集めています。解決に向け業界横断した取り組みも活性化してくると思うので、主観・感情論に振り回されずに適切な議論が行われるため、前提となる議論ポイントや言葉の定義が整理された上で推進されることがより重要性を増してくるでしょう。

佐藤貴紀(獣医師)

佐藤貴紀(獣医師)
株式会社PETOKOTO取締役副社長CVO 兼 獣医師(獣医循環器学会認定医)

1. 2022年最も印象に残った分野・出来事

コロナ禍の影響でペットの新規飼育率がコロナ前と比べ上昇している中、動物病院やトリミングサロンでのペットホテル需要が減少したことが記憶に新しいです。もちろん全体的に旅行などの需要は減ってはいるものの、ペットと一緒に旅行したい需要は増えています。

その課題解決の一つとして、弊社ごとではありますが、東日本旅客鉄道とJR東日本スタートアップ、西武ホールディングスと連携し、日本初の新幹線ペット専用列車の運用実験と軽井沢でのツーリズム企画を実施しました。特徴的なのは愛犬をケージから出し、お客さまの膝の上やカバーをかけた座席シートの上で一緒に旅行を楽しんでいただいたことです。今後もペットツーリズム需要は増加すると考えています。


2. 2023年の注目分野

愛玩動物看護師の国家試験が令和5年2月19日に実施されます。今後、動物看護師の仕事が明確されることや質の向上につながるメリットはあります。課題としては、動物病院の規模が大きければ大きいほど試験で看護師が足りなくなり診療が回らなくなることの実態や、落ちてしまった場合のモチベーションダウン、さらには国家試験のハードルによって人材不足が進むのではないかともささやかれています。どちらにしても、業界に国家資格化が進むことで、獣医療への質が向上することは間違いありません。

あとがき

今年もたくさんのキーパーソンにご協力いただきました。例年に比べて、共通のテーマがあるというより個々の専門領域についての言及が多かった印象を受けました。それだけペットの家族化が進み、社会のあらゆる場所でペットの存在が当たり前になってきたということなのではないかと思います。

PETOKOTOでは今年5月に日本初の「ペット専用新幹線」を走らせることに成功しました。この企画は、「もっと愛犬とのお出かけを楽しみたい」という飼い主さんの願いを叶えることはもちろん、「どうすれば犬が苦手な人とお互いの存在を認め合っていけるか」を模索するための実験でもありました。

PETOKOTOではスタッフの行動指針を3つ定めているのですが、その1つが「輪の外も想像しよう」です。愛犬・愛猫を前にするとついつい親バカになって周りが見えなくなってしまいがちです。そんな時に、「いかんいかん、輪の外も想像しよう」と思い出すようにしています。

来年も、その言葉の重みはどんどん増していくことでしょう。誰もが暮らしやすい世界を実現していくために、2023年も愛犬家・愛猫家である読者の皆さんと共に、前へ進んでいきたいと思います。今年もありがとうございました。来年もよろしくお願いいたします。

良いお年をお迎えください。

PETOKOTO