卒業アルバムの「夢」を叶えてトリマーへ 肥田沙織さんインタビュー【ペット業界の若手たち】

卒業アルバムの「夢」を叶えてトリマーへ 肥田沙織さんインタビュー【ペット業界の若手たち】

動物に関わる仕事がしたいという夢を叶えた若手たちに「その仕事についた経緯」や「実際になって思うこと」「これから夢に挑戦しようとしている人たちに伝えたいこと」などを語っていただく連載「ペット業界の若手たち」の第2回は、トリマーの肥田沙織(ひださおり)さんです。肥田さんは専門学校ビジョナリーアーツを卒業後、ペットサロン、動物病院での勤務を経て2016年、新設された動物病院「hiff cafe tamagawa」のトリマーになりました。現在は2人体制ですが、オープンから2年近く1人で担当されていました。今回は肥田さんがプロのトリマーになって思うこと、トリマーを目指している人たちに伝えたいことを伺いました。


動物病院にペットサロンが併設されているメリットとは

トリマー・肥田沙織さん
トリマー・肥田沙織(ひださおり)さん。1991年4月8日生まれ。神奈川県出身。犬も猫も好き。「猫たまらんですね。猫ちゃんがトリミングに来ることもあって、猫も得意です」

――肥田さんが「hiff cafe tamagawa」のトリマーになった経緯を教えてください。

前も動物病院でトリマーをしていたんですが、この病院ができるという話を聞いて先生たちにお会いして、働かせていただけることになりました。学生の頃から「一人で何でもできるトリマーになる」っていうのが夢と言うか目標としてあって、「ここに入って勉強して、それを叶えよう」という思いで入りました。でも一人だと新しい情報が入ってこないから、休日に同期の友達と集まって情報交換をしたり、技術的なところも高めあったりしてますよ。

――動物病院が併設されてるメリットはどんなところにありますか?

ちょっとでも気になることがあったらすぐ先生に相談できるのがいいですね。「この子の皮膚に気になるところがあるんですがどうですか?」って聞いたり、「これだと診察必要ですか?」って聞いたり。皮膚の病気って飼い主さんがなかなか気付かないものなんです。でもトリマーはただ毛をカットしているわけではなくて、ワンちゃんの体の隅々を見て、触って状態を確かめているので、ちょっとした違和感でもあればすぐに先生に伝えられます。それが併設ならではのメリットですね。

ペットサロンだけだと汚れたコットンとかを飼い主さんに見せて、「病院に行ったほうがいいですよ」って勧めたりするんですが、うまく伝わって実際に行ってもらうのは簡単ではないです。獣医療の分野についてトリマーの意見ってなかなか信頼というか理解を得ることが難しくて。また来たときに同じ状態というのが少なくないです。そういうので悩んでるトリマーさんは意外と多いんじゃないかなと思います。


――カフェの仕事もされているんですよね。

そうなんです。1階がカフェで下に飲食スペースと診察室、トリミング室があるので、下にいらっしゃるお客さまの接客も担当しています。トリミングではなく単純にドッグカフェとして利用していただくお客さまもたくさん来られるので、ここぞとばかりに話しかけています(笑)。それでトリミングのお客さまになってもらってることもたくさんあります。

カフェの仕事は、コーヒーの美味しさやご飯の美味しさをしっかり伝えてお出しすることです。お客さまへの気配りや、常に周りを見て動くことも大事で、こういったことはトリミングにも通じるところがたくさんあります。良い経験になっていますよ。

――トリマーになろうと思ったきっかけは何ですか?

小さい時に近所のペットサロンでトリミングをしてるのを見たのがきっかけですね。その頃はまだ犬を飼ったことがなくて、むしろ苦手な方だったのに……。何だったんでしょうね。小学校の卒業アルバムにも「将来の夢」として書いてました。そこからは一直線で、他の仕事は考えてなかったですね。

専門学校は何校か見つけて見学に行ってみたんですけど、何かピンと来なくて。それでビジョナリーアーツに行ったらすっごい魅力的で、「ここだ!」って決めました。明るかったんですよね。先生も先輩たちも。他の学校は先生の説明だけだったんですけど、ビジョナリーアーツは先輩たちも一緒に説明してくれて。入ってからもその印象は変わらなかったです。

――トリマーの勉強を始めて気付いたことはありましたか?

勉強する前は、トリミングサロンとか外から見てもハサミを持ってカットしてる姿しか見えないから、単純に「トリマー=ワンちゃんの美容師さん」っていうイメージしか持ってなかったです。それが「シャンプーからするんだ」とか「爪切り耳掃除もするんだ」っていう小さい発見の数々で。お手入れの大事さにも気付きました。


「私にとってInstagramはカット集」

トリマー・肥田沙織さん
休日は寝て過ごすのも好き。「1日寝てしまっても後悔しない。幸せなんです。寝てる時間が」

――卒業後はどんな進路があるのでしょうか。

卒業してすぐ学校の先生になることもあるんですけど、私の学校ではなかったのでみんな就職しか考えてませんでした。だいたい3パターンですね。
  1. ペットサロンで働く
  2. 動物病院に併設されているペットサロンで働く
  3. 動物病院で動物看護師をしながらトリミングもする
私はペットサロンで2年間働いて、その後に動物病院で2年間。そして縁があってここに来ました。

――最初にペットサロンを選んだのはなぜですか?

学生の時、全然ダメだったんですよ。「このままトリマーになるのか?」ってくらい頑張れてなくて。インターンも本当だったらいろんなところに行って決めなくちゃいけないのに、募集を見てすぐ決めてしまった。いろいろ見学できるのって学生のうちだけじゃないですか。もっと見ておけば良かったなという思いはあります。

――よく「人と喋るのが苦手でトリマーになった」という話も聞きます。

トリマーも人と喋りますね(笑)。私はお客さんと喋るのは大好きなので、大変だと思ったことはないですね。世間話でもいいし、単純に「ワンちゃんかわいいですね」とか。「どういう子なんだろう」っていうのを私も知りたいし、例えばを手を触られるのが嫌いな子にいきなり触ったらかわいそうじゃないですか。飼い主さんも愛犬のことを話したいはずなので、まずはワンちゃんについて触れて、そこから広げていく。「飼い主さんはどんなカットが好きなんだろう?」っていうのを汲み取っていけば、大変じゃないと思います。


――飼い主さんの好みを聞き出すために工夫していることはありますか?

「理想のカットはありますか?」って聞いて、写真を見せてもらったり詳しく話してもらえたら簡単なんですけど、それでも「丸く」とか「かわいく」とかって人によって違うので難しいですね。飼い主さんがかわいいと思うことが大事なので、基本はカット集を見ながらです。今はInstagramにかわいいカットの写真がいっぱい載っているので、「これはどうでしょう?」って見せながら聞いていきます。私にとってInstagramはカット集です(笑)。

――スキルアップしたいと思うことはありますか?

最近はシャンプー剤選びです。シャンプーって難しいんですよ。シャンプーのこともっと深く勉強したいなって思ってます。この子に合うシャンプーは何だろうっていうのを先生に頼らなくても見極められるようになりたいですね。もちろんカットの技術も上げたいですけど、私はそういうところの方が気になりますね。皮膚のこともそうだし、犬について知らないことってまだまだたくさんあって、ゴールは無いですね。


トリマーを目指す人に伝えたいこと

肥田さんの愛犬・愛猫
肥田さんの愛犬と愛猫たち。左から梅ちゃん、小梅ちゃん、姫ちゃん

――1日のスケジュールを教えてください。

9時半に出勤して、10時からオープンして、トリミングをして19時までに最終のお返しをして、20時までに帰るというのがだいたいのスケジュールです。トリマーってバタバタするとけっこうお昼を食べられないということがあるんですけど、私は食べます(笑)。ここはカフェも併設されてて厨房があるので、まかないをいただいてます。

――休みはどうしてますか?

お店に合わせて月・金が定休日です。今は2人体制になったので、ここも変えていきたいなとは思ってます。友達と遊ぶ時は、友達に有給を取ってもらったり、月曜の祝日を狙ったり。よくコンサートとかライブに行くんですけど、どうしても行きたい時はお休みを頂いてますね。好きなアーティストはHYDEとか嵐とか。今は安室ちゃんのライブが楽しみです!

休みの日にトリマーが集まってトリマー会をすることもありますよ。女子が多いですけど、男の子もいますね。技術的な話とかスタッフ間の話とか。「お給料いくらぐらいなの?」とか(笑)。

――トリマーとしてやりがいを感じる瞬間ってどんな時ですか?

一番は、やっぱり飼い主さんが喜んでくれることです。私はカットが特別上手なトリマーではないのと思っているので、カット以外のところでも「よく見ているな」って思ってもらえるように心掛けています。でもカットがうまくできたらテンションが上がりますよ。

――トリマーの道を選んでいなかったら何をしていたと思いますか?

頭が良ければ獣医さんになりたかったです。今はすぐ先生に話が聞ける環境にいるので、皮膚や耳の病気、スキンケアの勉強をして、飼い主さんに喜んでもらいたいと思ってます。

動物に関わることでなければ、昔からアイドルが好きだったんですよね。私の世代は「モーニング娘。」で、小学生くらいで流行り始めて憧れました。「顔がかわいかったらアイドルになりたかった」って思ってました(笑)。

あと海の動物も好きで、海洋学とか学んでイルカの調教師になりたいと思ってたこともありました。イワシが一番好きで、八景島シーパラダイスでイワシのイリュージョンをやってるんですけど、本当にすごいんですよ。


でも、私はこの仕事しかできないし、楽しいし。「トリマーになる」という夢を実現できて良かったと思ってます。

――10年後の自分はどんな働き方をしてると思いますか?

前は漠然と「お店を持ちたい」っていう思いもあったんですけど、今はフリーランスの先輩の話とかを聞いて、そういう働き方も魅力的だなと思います。いろんな道があるんだなって最近思ってます。

――トリマーを目指してる人たちにどんなことを伝えたいですか?

学校で学ぶことは大事にしたほうがいいです。私は本当に後悔してます。学校では獣医学とかトレーニングのことも学ぶんですけど、「そんなのトリミングにいらない」と思って真面目に聞いてませんでした。その時、「絶対にいる」と思うことしか学んでなかったんです。今になって、もっとちゃんと勉強しておけばよかったって思いますね。

あとは、いろんなワンちゃんと接した方がいいです。学校にワンちゃんがいるならそのワンちゃん、お客さんが来るならお客さんのワンちゃん。トリミングにはいろんな犬種、性格のワンちゃんが来るので、その時の経験が後ですごく生きてくると思います。

――ありがとうございました。


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