
猫の平均寿命が5年伸びる!? シャープがペット事業参入で猫用トイレ発売
家族の一員であるペットなくして、スマートライフを考えることはできない――シャープはペット事業に参入することを発表し、第1弾として猫用システムトイレ型「ペットケアモニター」を7月30日に発売すると発表しました。
猫の尿量や回数、体重、滞在時間などを計測してスマホ用の専用アプリで確認でき、別売りの個体識別バッジを使うことで最大3匹まで個別管理できるのがるのが特徴です。価格は2万4800円(税別)で、シャープのECサイト「COCORO STORE」で発売される予定です。なお、サービス利用料として月額300円(税別)が必要になります。
本稿では、6月11日(月)に行われた発表会から、長谷川祥典専務執行役員と鳥取大学の岡本教授の登壇内容と質疑応答の内容をほぼ全文掲載で紹介します。
![長谷川祥典 専務執行役員スマートホームグループ長 兼 IoT事業本部長]()
本日は当社が新たに開始するペット事業について発表させていただきます。昨年「CEATEC JAPAN」において、「人に寄り添い、人と社会をココロでつなぐ AIoTスマートライフ」を実現すると発表しました。
![シャープ「人に寄り添い、人と社会をココロでつなぐ AIoTスマートライフ」]()
国内では1800万頭以上の犬と猫が飼育されています。これは15歳未満の子どもの数を大きく上回る数となっています。また8割以上の犬と猫は室内で飼育されており、ペットはまさに家族同然の存在になっています。
![国内のペット飼育状況]()
今や家族の一員であるペットなくして、スマートライフを考えることはできません。「ペットを飼っている方にとってのスマートライフはどうあるべきか」「ペットにとってスマートライフはどうあるべきか」を考えたとき、「新しい商品、新しいサービスの提供が必要」という結論に達し、今回ペット事業へ参入することにしました。
![シャープのスマートライフ]()
ペット事業の参入にあたり、まず我々のビジョンであるAIoTとの親和性の高いヘルケア分野から事業開発をしました。その第一弾として、AIoTを活用してペットの健康管理を行う猫用のペットケアモニターのサービスを開始します。さらに、BtoB向けに犬向けのウェアラブルセンサーを商品化し、バイタル計測サービスを試験提供していきます。
![シャープのペットヘルスケア向け新商品]()
それでは、まず猫用のペットケアモニターから説明させていただきます。
本稿では、6月11日(月)に行われた発表会から、長谷川祥典専務執行役員と鳥取大学の岡本教授の登壇内容と質疑応答の内容をほぼ全文掲載で紹介します。
「ペットの家族化」に注目したシャープ

長谷川祥典 専務執行役員スマートホームグループ長 兼 IoT事業本部長
本日は当社が新たに開始するペット事業について発表させていただきます。昨年「CEATEC JAPAN」において、「人に寄り添い、人と社会をココロでつなぐ AIoTスマートライフ」を実現すると発表しました。

国内では1800万頭以上の犬と猫が飼育されています。これは15歳未満の子どもの数を大きく上回る数となっています。また8割以上の犬と猫は室内で飼育されており、ペットはまさに家族同然の存在になっています。

今や家族の一員であるペットなくして、スマートライフを考えることはできません。「ペットを飼っている方にとってのスマートライフはどうあるべきか」「ペットにとってスマートライフはどうあるべきか」を考えたとき、「新しい商品、新しいサービスの提供が必要」という結論に達し、今回ペット事業へ参入することにしました。

ペット事業の参入にあたり、まず我々のビジョンであるAIoTとの親和性の高いヘルケア分野から事業開発をしました。その第一弾として、AIoTを活用してペットの健康管理を行う猫用のペットケアモニターのサービスを開始します。さらに、BtoB向けに犬向けのウェアラブルセンサーを商品化し、バイタル計測サービスを試験提供していきます。

それでは、まず猫用のペットケアモニターから説明させていただきます。
自動で計測して専用アプリでお知らせ

言葉を話さないペットを飼育するために、ペットのさまざまな体調変化に飼い主が気付いてあげる必要があります。特に猫を飼育する上では尿量や尿の回数、体重などの変化をこまめにチェックしてあげる必要が重要であると言われいます。しかしながら、そうしたデータを日々チェックすることは、実際には難しいものです。そこでそれをAIoTでサポートできないかと考えました。

我々は鳥取大学との共同研究で実証実験を重ねながら、計測すべきデータの選定と「異変検知アルゴリズム」の開発を進めてまいりました。その結果、尿量、体重、尿の回数など5つの計測データの選定と、閾値(いきち)からの乖離、変化量の大きさ、特定事象の発生という3つの基本アルゴリズムの開発を行いました。こうした共同研究のもとで生まれたのが猫用システムトイレ型「ペットケアモニター」です。

猫がいつものようにトイレに行くたびに、尿量や体重などのデータを自動でチェックします。計測されたデータはAIoTクラウド上に集約され、解析されます。計測データとその解析結果は専用アプリを通じてスマートフォンにお知らせします。単にデータが閲覧できるだけでなく、注意すべきポイントも教えてくれるので、健康管理がしやすくなります。


多頭飼いのお客さまには、個別の猫ごとにデータを記録できる個体識別バッヂを用意しました。その個体識別バッジはお手持ちの首輪に装着してお使いいただけます。

また、本製品の性能を最大限に引き出すために専用の消耗品、チップとペットシートもご用意いたしました。ペットケアモニターは7月30日より、シャープのECサイトCOCOROストアにて発売いたします。

それでは今回、開発にご協力いただいた鳥取大学の岡本教授からコメントを頂きたいと思います。
腎不全が克服できれば平均寿命が伸びる

鳥取大学 農学部 共同獣医学科 岡本芳晴教授

左側の棒グラフは犬と猫の平均寿命を示しているものです。過去30年間で屋内飼育の浸透、獣医療の進化、そして動物薬の開発などによって、猫の場合1990年には5.1歳だった平均寿命が2014年には11.9歳と約2倍近くに伸びています。右の円グラフは猫の死亡原因について書いてあるのですが、2位が腎不全となっています。よく獣医のほうでは、「猫の場合は腎不全が克服できれば平均寿命を5歳以上伸ばすことができるだろう」と言われています。

このグラフは猫の疾病について、ある保険会社の請求割合を示したものです。長寿化となり、いろんな疾患がみられています。その中でも泌尿器系の疾患に対する保険請求が一番多いということになっています。猫はもともと、砂漠で生活するため少ない飲料水でうまく生きてきたということがあります。そのため尿をできるだけ濃くして必要な水分を蓄えるということで、腎臓に対して非常に負担が掛かっているという状態となっています。それに加えて、寿命が大幅に伸びてきたことにより今までは潜在化していた泌尿器疾患が増加しているということがあります。

これは一般に猫の一次診療の場合ですが、通常飼い主の方が動物病院に猫を連れて来られて、最初に私たちがするのは問診です。その後に聴診、触診と身体検査をやりまして、血液検査とか検査を進めるわけです。猫の場合は病院に来るだけで非常にストレスを感じるということがあります。そのため十分な身体検査、触診とかができないということが非常に多くあります。そのため、最初に飼い主の方からの問診をどれだけ正確にできるかがその猫の診断をしていく上で非常に重要なことになります。
また、猫がストレスを感じるということで飼い主の方も猫を病院に連れて行きたがらないというのも非常に多いです。そして「病気が進行した段階で初めて病院に連れて行く」という場合が非常に多くあります。これは犬と比べて猫のほうが多いと思われています。ですから、「もう少し早く病院に連れてきてくれればいろいろな対処法があったのに」というケースが多々あります。
私たちは飼い主の方に、普段から猫をよく観察をしてくださいと言います。例えば泌尿器関係の病気だと、「おしっこの量はどうですか」「おしっこの色はどうですか」「臭いはどうですか」「トイレの回数はどうですか」というものを聞いていくわけです。しかし、家に普段いない飼い主さんもいますので、猫の日中の状態を観察することが非常に不可能な場合もあります。

棒グラフはこのペットケアモニターのデータで、青のところが体重を示しています。それから尿量がオレンジのバーです。こういう形で体重とか尿量がリアルアイムで上がってくると、獣医師側としてはそういうデータを飼い主の方から頂いて、より正確な問診ができます。診断する上で大きなウエイトを占めてくると思われます。
猫は多頭飼いが増えてきていますので、どの猫がおかしいか非常に難しい場合があるんですけど、こういうふうなモニターの情報を得ることで、どの猫が泌尿器疾患になっているかを容易に把握することができると思っています。
質疑応答「シャープがなぜペット事業に取り組むのか」
発表会での質疑応答から「ペットケアモニター」に関する内容を紹介します。Q. 競合する猫のIoTトイレに比べて優位性はどこにあるのか。
ペットケアモニターは体重、尿量、それから入退室の時刻による滞在時間、モニターの置かれている環境温度をセンシングしてお伝えすることができます。それを(スマホアプリを使って)リアルタイムで確認できるところが優位性であると考えています。Q. 将来的にクラウドデータを活用する計画はあるか。
当面は、「飼い主さま向けに情報を解析してフィードバックする」ということを考えています。将来的にそれがたくさん溜まったときどういう活用方法があるかは、獣医師さんを含めて協議しながら考えていきたいと思っています。Q. これまで「役に立った」という声はあったか。
過去にかなりの症例数を実証実験でやってきています。ある実証実験で、最初は「こんなんで何がわかるの」という雰囲気の方がいらっしゃいまして、2カ月くらい協力してくださいました。「回収させていただきます。ありがとうございました」と言ったら、「無くなるとデータが見られなくなるんだよね。いつ商品化してくれるの?」ということがありました。データの信頼性が高ければ高いほど、飼い主の方には価値として訴求できるのではないのかなと感じています。Q. なぜシャープがペットなのか。
我々は「人に寄り添い、人と社会をココロでつなぐ AIoTスマートライフ」を標榜してやっていますが、人の生活を考えていくと、家族同然となっているペットは外せないなと。しかもペットの領域でIoTを活用したものはまだ市場としてはできていません。空白市場と言えるかもしれない。そこで、我々の事業拡大とスマートライフの実現のために、ペット事業に取り組むことにしました。Q. 海外展開は考えているか。
今回は国内でのスタートですが、海外もほぼほぼ同じシステムで展開していけると考えています。どんな市場でやっていくのか。どれくらいやっていけるのか。これから研究してぜひ進めていきたいと考えています。地域としては、「我々のブランドが浸透しているところ」というのが一つと、もう一つはペットを家族同然に考えていて、こういうAIoTの製品を使いたいというニーズがあるところです。