【獣医師監修】猫も狂犬病になる?症状や人間への感染・ワクチンについて獣医師が解説

【獣医師監修】猫も狂犬病になる?症状や人間への感染・ワクチンについて獣医師が解説

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狂犬病というと「犬」という文字が入っていることからもわかるように、かつて日本では犬から人に感染する病気として知られていました。実は人だけでなく全ての動物に感染し、発症後は致死率ほぼ100%の恐ろしい病気です。もちろん猫でも発生し、2016〜2018年で10例以上も報告されています。今回は狂犬病の症状やワクチン、海外で犬や猫に噛まれた場合などについて獣医師の佐藤が説明します。

この記事を執筆している専門家

佐藤貴紀獣医師

獣医循環器学会認定医・PETOKOTO取締役獣医師

佐藤貴紀獣医師

獣医師(東京都獣医師会理事・南麻布動物病院・VETICAL動物病院)。獣医循環器学会認定医。株式会社PETOKOTO取締役CVO(Chief veterinary officer)兼 獣医師。麻布大学獣医学部卒業後、2007年dogdays東京ミッドタウンクリニック副院長に就任。2008年FORPETS 代表取締役 兼 白金高輪動物病院院長に就任。2010年獣医循環器学会認定医取得。2011年中央アニマルクリニックを附属病院として設立し、総院長に就任。2017年JVCCに参画し、取締役に就任。子会社JVCC動物病院グループ株式会社代表取締役を兼任。2019年WOLVES Hand 取締役 兼 目黒アニマルメディカルセンター/MAMeC院長に就任。「一生のかかりつけの医師」を推奨するとともに、専門分野治療、予防医療に力をいれている。

猫の狂犬病の発症リスト
※猫の狂犬病の発症報告(felineは猫を意味します) 出典:ProMED-mail

猫の狂犬病とは

狂犬病は、狂犬病ウイルスの感染によって起きる感染症で、主に運動障害や性格の変化などの重い神経症状を引き起こします。人を含むすべての哺乳類に感染するウイルスで、ウイルスは感染動物の唾液に混ざっています。

犬の研究では、他の感染した動物に噛まれた場合発症するまでにかかる潜伏期間は1週間から1年4カ月と報告されていますが、平均すると1カ月ほどで発症します。発症した場合は人でも犬でも猫でもほぼ100%が死亡します。

日本では1957年に猫で発生してから報告がありません。狂犬病流行国で犬に咬まれ帰国後に発症した輸入感染事例として、1970年にネパールからの帰国者1例、2006年にフィリピンからの帰国者2例、2020年にフィリピンから来日者1例が報告されています。現在、狂犬病の無い清浄国は日本、オーストラリア、アイスランドなど限られた国のみです。


猫の狂犬病の症状

横になる猫

猫が狂犬病を発症した場合の症状は以下の通りです。

初期症状

前駆期とも呼ばれます。暗い場所に隠れたり、食欲不振になったりします。情緒不安定になって挙動がおかしくなるなどの行動異常も見られます。だいたい1〜2日間継続します。

中期症状

行動が著しく変化して人やその他の動物への感染源になりやすい期間です。狂騒型と麻痺型がありますが、狂騒型が8割と言われています。狂騒型では、普段食べないようなものを食べる、顔つきが険しくなる、体の一部が痙攣している、鳴き声が枯れてくる、よだれをだらだらと垂らす、攻撃的になって襲いかかってくるなどの症状がみられます。2〜4日継続します。

末期症状

脱水、意識不明の麻痺状態に陥り、1〜2日で死亡します。

猫の狂犬病の原因・感染経路

外猫

猫は狂犬病にかかった他の動物に噛まれることで感染します。感染した犬や猫などのペットから人が感染するケースが多いので、犬や猫への狂犬病感染を予防するのは人の健康を守る上でも重要です。

外へ出入りする猫では散歩中に感染した野生動物に噛まれて感染する可能性があり、室内飼いであってもイタチなど屋内に侵入する感染野生動物に噛まれて感染する可能性があります。

日本は狂犬病清浄国なので現在のところ犬であっても野生動物であっても狂犬病ウイルスを持っている動物はいませんが、交通事故なども防げるので猫を飼うときは完全室内飼いが原則です。

猫の狂犬病の治療法

黒猫

発症した場合の治療法はありません。隔離して他の人間や動物に感染しないようにします。生前の診断も難しく、死後脳の組織を使って診断します。

人間には感染動物に噛まれた後、発症しないようにする治療法(曝露後予防)があります。「直接皮膚をかじられた」「出血をしない引っかき傷ができた」「粘膜を舐められた」「出血を伴う傷ができた」「傷のある皮膚を舐められた」「コウモリと接触した」といった場合は、できるだけすぐに医療機関を受診し、複数回狂犬病ワクチンを接種します。

猫の狂犬病の予防方法

子猫

犬では年1回毎年4月から6月までの間に狂犬病予防接種が義務付けられていますが、猫では義務付けられていません。しかしアメリカでは猫への狂犬病予防接種を義務付けている州もあります。

猫を海外に連れて行くときや、連れて帰ってくるとき両方とも検疫が必要になります。狂犬病の発生がある国へ行ったり、帰国してくる場合には猫にも狂犬病予防接種を打って血液検査を行い免疫が付いていることを証明しなければなりません。

証明書を作ったり、ワクチン接種後から免疫がつくまでに数週間かかるので猫を海外に連れて行ったり帰国する際は余裕を持って検査し書類を揃えるようにしましょう。日本では2500〜3000円程度にワクチン接種料金を設定している病院が多く、別途血液検査代や相手国のフォーマットに沿った証明書を作成する代金がかかります。

狂犬病予防接種は製造した製薬会社により基本的には1年効果が継続すると設定されています。副作用としてはアナフィラキシーショックなどがあります。

狂犬病清浄国・地域

猫

現在清浄国であっても、狂犬病はいつ発生するかわかりません。台湾も以前は清浄国でしたが、2013年に野生動物で発生し除外されました。アメリカなどの先進国であっても野生動物やペット、人において少数ですが発生がみられます。外国では清浄国であっても油断せずに野生動物や挙動のおかしい動物には近づかないようにしましょう。

清浄国一覧

アイスランド、オーストラリア、ニュージーランド、フィジー諸島、ハワイ、グアム、日本
※2019年2月7日現在、ProMED-mailにて著者調べ

人が海外で野生動物に噛まれたら

凛々しい猫

もしも海外で野生動物や犬猫などの動物に噛まれたり舐められたりした場合、様子を見ずに医療機関を受診してください。そして指示にしたがって曝露後予防接種を受けてください。

狂犬病発生国に行く場合、動物と触れ合う機会がある場合は曝露前接種として日本で予防接種を受けることができます。この曝露前予防接種を受けることで、もし感染動物に噛まれた場合の発症リスクを低くすることができます(リスクを避けることができまし回数も減りますが、曝露前接種をしている場合でも曝露後予防接種は必須です)。曝露前接種をするときはトラベラーズクリニックなどで相談してみましょう。

たとえ先進国に行く場合でも油断せず、海外では基本的に素性の知れない動物とは触れ合わないようにしましょう(予防されている飼育動物は別です)。特に子供は噛まれるケースが多いので、目を離さないように注意しましょう。

まとめ

舌を出す猫
狂犬病は猫を含むすべての哺乳類に感染する
発症した場合は致死率ほぼ100%
日本でもいつ発生するかわからない

狂犬病は日本では「犬の病気」「狂犬病予防接種は獣医師のお金儲けのため」などと言われていますが、世界では年間5万5000人以上の方が亡くなり150万人以上が曝露後接種を受けている病気です。猫においても輸出入検疫で狂犬病に関する項目が設けられているのも、動物ではなく人間の命を守るためなのです。この記事をご覧の方は猫の飼い主さんが多いと思いますが、まだまだ狂犬病は他人事の病気ではないと認識いただければ幸いです。

参考文献