【獣医師解説】猫が紐で噛むのは誤飲に要注意!飲み込んでしまった場合の対処法を解説

【獣医師解説】猫が紐で噛むのは誤飲に要注意!飲み込んでしまった場合の対処法を解説

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紐にじゃれることが好きな猫ちゃんは多いのではないでしょうか。しかし猫にとって紐で遊ぶことはとても危険なことです。猫は紐を誤飲してしまうことが多く、飲み込んだ紐を吐き出せないと手術しなければならないことになるなど、深刻な事態に陥ってしまうからです。猫はなぜ紐を好きなのか、万が一紐を飲み込んでしまったときにはどうすればよいかを解説します。

猫が紐が好きな理由は?

紐が好きな猫

猫は紐状のものにじゃれるのが好きですね。猫はどうして紐を見るとじゃれたくなってしまうのでしょうか。

猫の祖先であるリビアヤマネコは狩りをして暮らしていました。猫の獲物になるものは、ネズミなどの小動物やカエルなどの爬虫類、鳥類などです。これらの中で細長い形状の生き物といえば、ヘビやトカゲ類ですね。ヘビやトカゲなどの小型の爬虫類は細長い形状で、クネクネ動く紐はそれらに似ているので猫はじゃれたくなってしまいます。

猫が紐を誤飲するのに要注意

猫が紐で戯れている

紐は猫にとって獲物に見立ててじゃれることが分かりましたが、猫を紐で遊ばせてはいけません。猫は紐を誤飲してしまう可能性が高いからです。そもそもどんな物でも、誤飲してしまうことは猫にとっては危険なので、異物を誤飲しないように注意が必要なのです。そして、特に紐の誤飲は発生しやすい事故です。

短い紐だけでなく50cm以上の長さの紐を誤飲してしまったという例もあるそうです。「そんな長さのものを食べ物でもないのに誤飲してしまうの?」と不思議に思うかもしれませんが、珍しい例ではありません。猫はなぜ紐を誤飲してしまうのでしょうか。

紐を獲物に見立てるため

紐は決して美味しいものではないのに猫が紐を誤飲してしまうのは、やはり獲物に見立てているからという可能性が高いでしょう。はじめはじゃれて遊んでいるだけだったのに、だんだんエキサイトして本物の獲物のように思ってしまうと考えられます。また猫の牙は鋭いので、紐を本物の獲物と同じように噛みちぎって飲み込んでしまうこともあります。

おもちゃに紐が使われることが多いため

猫じゃらしなどの猫のおもちゃには紐が使われていることが多いですね。猫のおもちゃは紐が主体なのではなく、大抵の場合、先端におもちゃが付いていて、それで猫を遊ばせるようになっています。しかし、おもちゃを追いかけているうちに紐にまで噛み付いてしまうことは少なくないでしょう。

また、猫じゃらしで遊ばせていると、先端のおもちゃよりも紐のほうに興味を持つ子もいます。紐状になっていても猫が噛み付いても簡単には切れない形状の猫じゃらしもありますが、大抵はゴム紐などで、猫にとっては簡単に噛みちぎれてしまう素材でできていることも少なくありません。

遊んでいるうちに紐がちぎれて、それを猫が飲み込んでしまう可能性はありますね。また、おもちゃに猫の興味を引くように紐状の飾りがついていることがありますが、そのようなものも猫が噛みちぎって飲み込んでしまうことも考えられます。

口に入りやすい大きさだから

猫が紐を飲み込んでしまう理由の一つに、猫が飲みやすい大きさだからということもあげられるでしょう。長い状態でズルズルと飲み込んでしまうのは難しいかもしれませんが、遊んでいるうちに丸まった紐を飲み込むことは簡単にできてしまいます。細くて丸まりやすい紐状のものは猫にとっては危険だということになりますね。

猫が誤飲しやすい紐状のもの

猫が誤飲しやすい紐状のものは日常生活の中にあふれています。猫が誤飲しやすい紐状のものをあげてみます。以下のようなものを猫が触れられないように管理しましょう。
  • 猫じゃらしなどについている紐
  • 輪ゴム・ヘアゴム
  • リボン
  • 裁縫用の糸
  • 毛糸
  • 靴紐
  • 洋服などに付いている飾り
  • 人間の髪の毛

子猫は特に紐に注意!

猫

紐の誤飲はどの年代の猫も起こる可能性はあるのですが、子猫~2歳くらいまでの子は特に危険です。まだ精神的にも成熟しておらず、遊び好きであるため子猫は他の年代の猫よりも誤飲の可能性が高いからです。

筆者は紐状のものは放置しないようにしていますが、生活の中でどうしても紐を使わなければならないときもあります。新聞紙などをゴミの日に出すときは紐で縛って出さなければならないのですが、その際、子猫たちは大興奮します。くねくね動く紐が大変楽しいらしく、激しくじゃれてくるのでいつも紐を結ぶのに一苦労します。このとき、あまり2歳以上の大人の猫たちは絡んできません。子猫の大興奮の様子に引いているという面もあるかもしれませんが、経験を積んだ大人猫たちにとって紐は大興奮するほどではないのかもしれません。

知り合いの獣医さんの話によるとヘアゴムなどの誤飲も多いようで、つい先日も飼い主さんのヘアゴムを飲み込んでしまった子猫の開腹手術を行ったとのことです。どの年代の猫でも異物を飲み込んでしまう可能性はあるので管理には気を配る必要がありますが、子猫はより紐を誤飲する危険性が高いでしょう。

猫が紐を誤飲したときの症状

あくびする猫

猫の誤飲について猫の専門病院「Tokyo Cat Specialists」院長の山本先生が解説しています。食欲不振、元気消失、そして嘔吐が主な症状になります。特に嘔吐は腸管が詰まってしまうと1日に10回以上吐くこともあります。

日頃吐かない若齢の猫が3回以上嘔吐する場合は、異物の可能性があるので、何か無くなったものはないか周囲を見渡してみましょう。

愛猫の誤飲を疑う場合

誤飲をしたか確実な現場を見たわけではなく「誤飲したかも…」と思った場合は前述した「食欲不振」「元気消失」「嘔吐」の症状がない限りは静観してみてもいいかもしれません。

とはいえ症状として現れるまでに個体差がありますし、愛猫のことを長時間見ていることができず、不安がある場合はすぐに動物病院に相談しましょう。

猫が紐を誤飲した時の対処法

猫

明らかに何かを飲み込んだ現場に遭遇した場合、様子見はせずすぐに動物病院を受診してください。まだ胃の中に残っていれば、促吐処置(吐かせる治療)を行うことができます。

一概にはいえませんが、2時間以内であれば胃内に残っている可能性が高いです。時間が経過している場合もできるだけ早く受診することで治療の選択肢が増えるので、できる限り早く受診しましょう。

誤飲に気づけなかったら

愛猫の誤飲に気づけず、放置してしまうと腸閉塞を引き起こしてしまう可能性があります。腸閉塞2、3日続くと腸が破裂し、他の病気を引き起こしたり、最悪の場合には死亡してしまうので、少しでもおかしいなと感じたら動物病院で診てもらってください。

猫の小腸に入っていたおもちゃの紐
猫の小腸に入っていたおもちゃの紐。先端の丸い部分が胃に引っかかっていた

おもちゃについている紐、靴紐、包装用リボン、そのほか釣り糸など細いものも飲み込むことがあるので注意が必要です。紐状の異物を飲み込んでしまうと、腸管が紐に締め付けられるため、腸が破ける危険性があります。

そのため一般的な異物より危険性が高くなります。ビニールやゴムも紐状になっている場合、同様の危険性があります。運良く、うんちで出てくる場合もありますが、出てこない場合も多く、すぐに動物病院に行きましょう。

詳しくは、猫の誤飲についての紹介記事をご覧ください。



猫に紐を誤飲させないためには

猫

猫に紐を誤飲させないようにするには、管理を徹底することが大切です。紐状のものは身の回りにあふれていて、しかも生活必需品であるので全くなくすることは難しいですが、猫ちゃんが勝手に取り出したり、いたずらしたりできないようにきちんと管理することが事故を防ぎます。猫じゃらしなど、紐がついているおもちゃも遊んだ後は放置せずに必ず片付けるようにするといいですね。

キャットタワーなどの補修を自分で行う飼い主さんもいると思います。その際に使う麻紐は細いものではなく、太いものを使うようにしましょう。口径が太い紐であれば、猫は飲み込むことができません。

猫が紐で苦しまないように日頃から観察が大切

暑そうな猫

紐が好きな猫ちゃんは多いですが、特定のものに対して執着を見せる子もいます。輪ゴムに執着する子もいますし、飼い主さんのヘアゴムが大好きという子もいます。筆者が現在面倒を見ている子は、紐状のものではないですが箸にご執心です。特定のものに執着を見せる子は、天才的にそれを見つけ出しますし、しまってある場所から根気よく取り出してしまうこともあります。愛猫にそういう面が見られるときは一層管理に注意が必要ですね。

しかし、どんなに管理に気をつけていても、飼い主さんが誤飲に気が付かないこともあるかもしれません。誤飲すると猫も体調に異変をきたし、いつもと違った様子が見られます。異変に気づきやすいように日ごろの様子を観察しておくことが大切ですね。