猫と人間の歴史を知ろう!猫は日本にいつからいてどこから来たのか有力説を紹介

猫と人間の歴史を知ろう!猫は日本にいつからいてどこから来たのか有力説を紹介

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ペットの中でも身近な動物である猫ですが、皆さんは猫の歴史をご存じでしょうか?実は近年の「猫ブーム」は今回が初めてではなく、なんと江戸時代にも「猫ブーム」があったのです。なぜ猫が人間と一緒に暮らすようになり、どうやって世界中に広まったのか。今回は猫の歴史を紐解いて紹介します。

猫の歴史を遡る!祖先はリビアヤマネコ

リビアヤマネコ
Photo by ryostrichさん Thanks!

現在ペットとして暮らしているイエネコの祖先は、野生種のリビアヤマネコという猫です。

リビアヤマネコは現在でも中東からエジプトにかけての砂漠地帯に住んでいる野生の猫で、その見かけは毛の色も体の大きさもイエネコのキジトラ猫にそっくりです。

そのため、以前から猫の祖先はリビアヤマネコなのではないかと考えられており、近年のDNA解析によってイエネコの祖先はリビアヤマネコであることが確認されています。


いつから人間と猫が一緒に暮らすようになった?

シャム猫

野生種の猫であったリビアヤマネコがいつ人間と一緒に暮らすようになったかについては、正確には分かっていません

猫が人間と暮らしていたことが分かるのは、およそ9500年前にさかのぼります。キプロス島の遺跡から人間と一緒に埋葬されたと考えられる猫の骨が見つかったのです。

キプロス島は、名の通り島のため、海を渡らなければ行くことができません。猫は泳ぐことも可能なので、泳いで島に渡ったという可能性もなくはないですが、もともと砂漠に生きていた猫は水が苦手であり、そのような無謀な行為をしたということはあまり考えられないことです。

そのためキプロス島へは人間が連れて行ったと考えられています。キプロス島に連れて行かれた猫が一緒に埋葬されるほど、ペットとしても可愛がられていたのではないでしょうか。

最古の記録で9500年前にさかのぼるということは、実際にはそれより前の時代から猫は人間と一緒に暮らすようになったと考えられます。

リビアヤマネコが人間と暮らすようになった理由

キジトラ猫

猫と人間の距離が近づいたのは、人間が穀物の栽培を始めたためです。

リビアヤマネコが生息している地域は、かつてメソポタミア文明が栄えた場所です。メソポタミア文明では「チグリス川」「ユーフラテス川」がもたらす肥沃な土地を生かして、世界で初めて穀物の栽培が行われたとされています。

穀物の栽培が盛んになると穀物を狙ってネズミなどの齧歯類が増え、それらの害獣を狩ってくれる猫が重宝されるようになりました

しかし猫はもともと単体で暮らす動物であり、人に懐いたとしても、犬ほど人の指示に従うということはない動物です。そのため「猫は穀物倉庫に集まるネズミを狩る」「人間はネズミを狩ってくれる猫の存在を認め、邪魔をしない」という共存関係からスタートしたと考えられています。

人間が猫に求めたものはネズミを駆除してくれるという1点であったために、もともとリビアヤマネコが持っていた能力だけで充分役に立ってくれました。

古代エジプトで猫はペットに

キジトラ猫

使役動物から愛玩動物へ

猫が人間と暮らしていた痕跡が残っているのは9500年前ですが、確実にペットとして可愛がられていたのはおよそ4000年前の古代エジプトからとされています。

古代エジプトではネズミを獲ってくれる猫をとても大切にして神聖視していました。猫のミイラや壁画も見つかっており、「バステト」という猫の女神も崇められていました。

バステト神 bastet 猫型の女神 立像【エジプシャン・置物・フィギュア・古代エジプト】
バステト神

それまではネズミを捕まえてくれる使役動物だった猫ですが、エジプトで家族として愛玩する対象となり、ペットとなったと考えられています。

エジプトで愛玩されていた猫はキジトラ

エジプトでペットになった頃の猫は、リビアヤマネコにそっくりな外見のキジトラ猫です。古代エジプトにはキジトラ猫しかいなかったとされています。

そのためイエネコの基本はキジトラ猫といえるのですが、その後に「茶トラ」や「白黒」の猫といったさまざまな毛色の猫が突然変異で生まれたと考えられています。

野生種であった頃は、キジトラの柄以外は砂漠では目立つため、淘汰されていたのが、人間と一緒に暮らすようになったことにより、キジトラ柄以外の猫たちの生存率も上がり、さまざまな被毛の猫が生まれるようになりました


中世ヨーロッパで起きた猫の受難の歴史

エジプトでは神聖視され大切にされていた猫ですが、ヨーロッパでは猫を崇拝するということはありませんでした。

ネズミを獲ってくれる動物として重宝していたものの、中世になると猫は迫害され、虐殺されるようになります。

中世で巻き起った暗黒の歴史「魔女狩り」の際には、魔女の手先と考えられた猫たちが迫害され、殺されたのです。悲しいことに、この迫害の歴史の影響は現在も残っていて、特に黒猫のことを忌み嫌う風習がある国がまだヨーロッパには残っています。

交易によって世界に広まった猫

仰向けになる猫

古代エジプトでペットとなった猫が世界中に広まりました。猫をローマ帝国(ヨーロッパ)に持ち込んだのはエジプトと交易をしていたギリシア人やフェニキア人とされています。

ヨーロッパでも生息するようになった猫ですが、その後、ローマ帝国の拡大や交易の広がり、キリスト教の布教などによりアジアなど世界中に猫が広まっていったと考えられています。

日本の猫の歴史

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中国から渡来

日本に猫がいつからいるのかは、実のところはっきりとはしていません。一般的に有力な説としては、奈良時代に中国から渡来したと考えられています。

仏教の経典をネズミから守るために連れてこられたという説や、当時は猫が珍しかったために贈り物として連れてこられたという説があります。

弥生時代から存在していた可能性

近年になり、弥生時代の遺跡から猫の骨が出土したというニュースが報じられました。弥生人たちは大陸から渡来した人々であると考えられているので、その人々と一緒に猫もやってきた可能性があります。

猫という言葉が初めて登場するのは、飛鳥時代、705年の「日本現報善悪霊異記」です。この中で「狸」に「禰古(ねこ)」という注釈が付けられているのが、初めて「ねこ」という言葉が確認されたものとされています。

弥生時代は300年頃に終焉を迎え、猫の記述がされた飛鳥時代まで 400年もの時間があるため、弥生時代に渡ってきた猫が日本の猫として生きていたのか、それとも飛鳥時代の交易によって日本に猫がやってきたのかは定かではありません。

江戸時代の猫ブーム

西洋では中世に受難の時代を迎えた猫ですが、日本ではネズミをとってくれる大事な動物、または珍しい愛玩動物として大切にされていました。

室町時代までは猫の存在が貴重であったために、ネズミを獲らせるというよりも愛玩動物として大切につないで飼っていることが多かったようです。

江戸時代になるとネズミを退治するためのお守りとして、より一層猫が重宝されるようになります。招き猫が生まれたのは江戸時代ですし、浮世絵にもたくさん描かれるなど、猫は縁起の良い生き物とされていました。

江戸時代になると猫の数も増え、江戸が都市化したことにより猫が生きやすい環境になるなど、庶民が猫を飼うのが当たり前になりました。

都市化が進んだ江戸の町はネズミも増え、それを駆除してくれる猫は大事にされたのです。また市井(しせい)の人々の生活が豊かになり、猫を飼ったり浮世絵を楽しんだりする、生活を楽しむ傾向も出てきたために、江戸の庶民は猫をかわいがるようになったと考えられます。

これからも続く猫の歴史を幸せなものに

子猫

イエネコの祖先は、野生種のリビアヤマネコという猫種です
猫が人間と暮らしていたことが分かる、最古の記録はおよそ9500年前のものです
人間は猫にネズミ駆除を求めたことから共生するようになりました
交易によって猫は世界中に広まりました

猫と人間の関係は共生から始まりました。人間が野生動物であったリビアヤマネコを飼い馴らしたことによりイエネコとなりました。

人間はこの先もお互いが幸せになれる共生関係を築いていく努力をすべきでしょう。