猫が喉をゴロゴロ鳴らす意味や仕組みは?病気の可能性を獣医師が解説

猫が喉をゴロゴロ鳴らす意味や仕組みは?病気の可能性を獣医師が解説

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猫の飼い主さんは当たり前かもしれませんが、他の動物では見られない猫の不思議な行動の一つに「喉をゴロゴロ鳴らす」というものがあります。これは一部のネコ科特有の行動で、基本的には機嫌の良い時にゴロゴロと喉を鳴らすようです。しかしながら、それ以外にもゴロゴロと喉を鳴らすことがあり、なぜ猫がゴロゴロ喉を鳴らすのかはっきりとした理由はわかっていません。まだまだ未解明な部分が多いものの、その時の気持ちにはいくつかパターンがあるようで、それを理解することで愛猫とのコミュニケーションをより深める手助けになるのではないでしょうか? 今日は猫のゴロゴロに隠された猫の気持ちについて、中央アニマルクリニック獣医師の石本が解説します。

猫がゴロゴロ鳴く仕組み

上目遣いの猫

猫はいったいどのようにして、ゴロゴロという音を鳴らしているのでしょう?

理由として「大動脈が振動している音」という説や、「気管と横隔膜の筋肉の共鳴による咽頭の振動」という説、「喉頭質皺壁という仮声帯の振動」という説などいくつかの仮説が提唱されていますが、いまだはっきりとしたメカニズムは解明されていません

それほど、まだまだ猫は謎多き動物なのです。

猫のゴロゴロのはじまり

猫

母猫と子猫の間のコミュニケーションツールの一つとしてゴロゴロと喉を鳴らすことがあります。

生まれたばかりの子猫は視覚も聴覚も未発達なため、母猫が鳴らすゴロゴロを振動として感じとり母親の存在を認識しているのです。

また、子猫の方も生後2日頃からゴロゴロと喉を鳴らすようになり、「ごはんが欲しい」「かまって欲しい」「自分は元気だよ」などの気持ちを母猫に伝えています。

ゴロゴロは親子の間だけでなく次第に成長した子猫の間でも鳴らすようになり、猫が大人になってからも猫同士の間や猫と人間との間でも聞かれることがあります。

そこにはどんな気持ちが隠されているのでしょう?

猫のゴロゴロに隠された気持ち

キャットタワーで寝そべる黒猫

幸福・満足の猫のゴロゴロ

日常でもっとも多く出会いやすい猫のゴロゴロが、このタイプのゴロゴロではないでしょうか。

心から安心してリラックスしているとき、ごはんを食べて満足しているとき、大好きな飼い主さんに撫でられてうっとりしているときなど猫が幸福感や満足感をかみしめているときによく聞かれます。

要求・欲求の猫のゴロゴロ

ごはんが欲しい、遊んで欲しいなど何かを要求しているときにも猫はゴロゴロと喉を鳴らします。

このゴロゴロは通常のゴロゴロより高い音で鳴り、母猫や飼い主にいつもと何かが違う、緊急性があると感じさせるようです。

通常のゴロゴロの周波数は25~150Hzと言われていますが、要求時に聞かれるゴロゴロの周波数は220~250Hzと高音になるそうです。

人間の赤ちゃんが高い声で泣き、ミルクが欲しい、おむつを交換してほしいなどの要求を母親に知らせることに似ているのかもしれません。

いつもより高くゴロゴロしているときは、何かを要求している時ですので、優しく対応してあげてください。

緊張・警戒の猫のゴロゴロ

突然大きな音がして驚いたとき、警戒をしているとき、動物病院の診察台に乗せられたときなど猫が緊張しているときにゴロゴロと喉を鳴らすことがあります。

これは、猫が自分自身の気持ちを落ち着けるためにとっている行動と言われています。

痛み・苦しみの猫のゴロゴロ

猫が怪我をしたときや病気になったとき、死の直前にもゴロゴロと喉を鳴らすことがあります。

このゴロゴロには鎮痛効果や治癒促進効果があり、猫自身の苦痛をやわらげることに一役買っているようです。とある研究でも猫のゴロゴロは骨折の治癒を促進する効果があることが発表されました。

また、25~50Hzの振動(猫のゴロゴロは25~150Hz)がウサギの骨折の治癒を早めたという報告もあります。人間の骨折治療においても、超音波の振動をあてることで治癒を早める効果があることが認められ、スポーツ選手などが取り入れているそうです。

癒し・いたわりの猫のゴロゴロ

飼い主さんや他の猫の体調が悪いとき元気がないときなど、猫がそばに近づいてゴロゴロと喉を鳴らしてくれたという経験をした方も多いのではないでしょうか。

本当に猫がその状況を理解しているのか定かではありませんが、猫のゴロゴロには自身だけでなく他者へのヒーリング効果もあるようです。

ストレスを軽減したり血圧を下げたりなどの効果があり、治療の一つとしてこの『ゴロゴロ』を活用する国もあるのだとか。

猫のゴロゴロは気持ちを読み取るコミュニケーション!

仰向けの猫

このように、どうやら猫がゴロゴロと喉を鳴らすのにはさまざまな理由が隠れているようです。

その真の意味をくみ取ることで、愛猫との絆や信頼をより深めることができるのではないでしょうか。

多くの場合は猫が心から安心しているときや幸せな気持ちのときに喉を鳴らしているようですが、中には体調不良や不安な気持ちから鳴るゴロゴロもありますので、じっとうずくまって喉を鳴らしているようでしたら注意が必要です。

病気の可能性があるため、動物病院に相談しましょう。

猫のゴロゴロ一つとってもまだまだ解明されていないことがたくさんあります。そんなミステリアスなところも猫の魅力の一つなのではないでしょうか。