室内撮影をレベルアップ 「いつもの愛犬」にお花を添えて(後編)【犬の写真の撮り方】

室内撮影をレベルアップ 「いつもの愛犬」にお花を添えて(後編)【犬の写真の撮り方】

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連載企画「犬の写真の撮り方」第2回は、ペットの写真撮影を数多く手掛けるプロカメラマンの杉本 奈々重さんに、お部屋で愛犬を撮影する際のテクニックを紹介していただきます。前編では愛犬だけでなくお花を一緒に写すことでいつもと違った写真が撮れることを紹介しました。後編では、少しステップアップしてお花を効果的にボカす撮り方を教えていただきます。

杉本 奈々重(Sugimoto Nanae)

杉本 奈々重 2001年より写真家としてフリーランスの活動を開始。コマーシャルフォトを中心に雑誌、企業の季刊誌の撮影などを行う。近年犬と人とのつながりをテーマにした作品を多数発表。全国各地で撮影イベントや講演会などを開催中。公益社団法人 日本写真家協会会員。


愛犬を引き立てる「手前ボケ」応用編

山本:前回は「愛犬だけ」を写すのではなく、お花のような小物を添えることで、いつもかわいい愛犬をもっとかわいくする方法を教えていただきました。一眼レフカメラを使って撮影されている飼い主さんも少なくないと思いますが、その機能をさらに生かした撮影方法はありますか?

杉本:もちろんありますよ! せっかく一眼レフを使われているなら、ボケ具合を意識した撮影ができるといいですね。

山本:前回は社員犬コルクにピントを合わせながら手前のお花をボカすという方法を教えていただきましたが、奥をボカすのではなく手前をボカすというのは意外と思いつかないものだなと思いました。

杉本:そうですよね。「ボケ」というと奥にボケているイメージを持つ方が多いと思いますので、意外性があったかもしれません。では、その「手前をボカす」というのを少し応用してみましょうか。まずボカす前に、お花と並ぶパターンから撮ってみましょう。

社員犬コルクとお花

山本:相変わらず絶妙ですね……! キリッとしたコルクだけだとやっぱり「かわいいけどよく見る写真」なんですが、隣にお花があることで一気に残しておきたい1枚になった印象を受けます。

杉本:そうですね。季節によってお花を変えるだけでも印象は変わりますので、ぜひいろいろなアレンジを試してみてください。

それでは応用編ということで、花瓶のお花を少し別に移して……。

社員犬コルクとお花

山本:なんと! 花瓶からお花を出してしまうんですね。お花を添えるというだけでも思いつきそうで思いつかないのに、さらに意外です。

杉本:一眼レフを持つと、ついつい性能や設定に意識がいきがちですが、基本は押さえつつ、どう工夫したら「自分らしい」、また「愛犬らしい」写真を撮ることができるのかを考えることが大切ですよ。

山本:なるほど……。前から気になっていたんですが、こういうときカメラマンさんが実際どうやって撮影しているのか知りたいんですよね。読者の皆さんにも杉本さんがどんなふうに撮影しているか紹介してもいいですか?

杉本:もちろんいいですよ! でも改めて言われるとちょっと恥ずかしいですね(笑)。

社員犬コルクとお花

山本:杉本さんは、正座しながら撮影されていたんですね。

杉本:犬の目線に降りて撮るのを心がけています!

山本:プロのカメラマンさんというと、カメラだけでなく大掛かりな照明機材を使っているイメージがあります。今回も室内撮影ですが、ライトやフラッシュは使わないんですか?

杉本:このお部屋は外からの自然光がしっかり入ってくるので必要ないんです。瞳に光が入っているのがわかりますか? 「キャッチアイ」と呼ぶんですが、これがあると表情が生き生きとしてより魅力的になります。

社員犬コルクとお花

キャッチアイがあるかないかは良い写真を撮る上で重要なポイントになるので、別の機会に詳しく説明しますね。

山本:ぜひお願いします!

手前ボケの花で狙った構図を作る

山本:花の置き方にポイントはありますか?

杉本:もちろんありますよ! ボケていると言っても、ボケたお花がどこにどれくらいあるか。ボケた枝がどこに伸びているかで、写真の印象は大きく変わってきます。何枚か変化をつけながら撮ってみましょう。

社員犬コルクとお花

社員犬コルクとお花

山本:手前に花があるかないかで印象が全然違いますね。1枚目は手前にも花があるのでコルクがお花畑の中にいるように感じますが、2枚目は花がないので中央のコルクを引き立てる役目を果たしているように思えます。

杉本:お花でスペースを作ってそこに犬を配置することで、狙った構図の写真を作ることができます。片手でお花を持ってカメラの前に出す方法もありますが、狙った構図を作るためには手前にも花瓶を置けるといいですね。

花も大事だけど、主役は愛犬♪

山本:花の配置を考えたり、構図を考えたり、けっこう犬がじっとしていられるかが重要ですね……。

杉本:そうですね(笑)。でも逆に予想できないからこそ良い写真が撮れるという面もあるんですよ! 例えばキリッとしたコルクもかわいいですが、口を開けると少し微笑んでいるような表情になってかわいいですよね。

社員犬コルクとお花

山本:微笑んでいるコルクにお花が添えられてかわいさが何倍にもなっていますね。手前で写っているのは枝が少しだけになりましたが「左の余白」「コルクの白いお腹」「花瓶」とそれぞれそこにあるからこその変化が生まれているように思います。

杉本:あら、なかなか良い表情が撮れましたよ。

社員犬コルクとお花

山本:かわいい! 計算された先にある偶然から生まれた奇跡の1枚ですね。

写真撮影は愛犬と楽しみながら

今回は室内でお花を使った撮影の応用編を教えていただきました。「愛犬とお花」だけでなく、お花を使って「狙った構図」を作るのは動きのある犬相手だとなかなか難しいと思います。でも、その動きの中から生まれる1枚1枚に愛犬の魅力が詰まっています。ぜひ皆さんも愛犬と撮影を楽しみながら挑戦してみてください♪