【獣医師執筆】猫は刺身を食べても大丈夫?食中毒やアレルギーに注意

【獣医師執筆】猫は刺身を食べても大丈夫?食中毒やアレルギーに注意

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猫はお刺身好きなイメージがありますが、食べても大丈夫なのでしょうか?マグロ、ブリ、鯛など食卓に並ぶことの多いお刺身に興味を示す猫も多いと思います。実際に猫はお刺身を食べても大丈夫ですが、イカや青魚、淡水魚など注意すべき種類や食べ過ぎに気を付ける必要があります。今回は猫が魚の刺身を食べるリスクについて説明します。

前提として、猫は総合栄養食のキャットフードを食べていれば、それ以外は与える必要がありません。

猫は刺身を食べても大丈夫?

お刺身

猫は食べ過ぎなければ魚の刺身を食べても大丈夫ですが、いくつか注意点もあります。猫が刺身を食べるリスクとして、以下の5点が挙げられます。

  1. アニサキスによる食中毒
  2. チアミン(ビタミンB1)欠乏症
  3. イエローファット(黄色脂肪症)
  4. ヒスタミン食中毒
  5. アレルギー症状

1. アニサキスによる食中毒

近年、人が感染して激しい腹痛などの症状が出ると話題になっている「アニサキス」。アニサキスは魚介類の内臓に寄生している寄生虫で、サバをはじめアジやイワシ、イカ、サンマなどでの感染が多いとされています。

アニサキスは魚の鮮度が落ちると内臓から筋肉へ移動するため、内臓や鮮度の落ちた魚の刺身を生食することで食中毒(アニサキス症)を引き起こします。胃壁や腸壁に寄生するため、生食後数時間で激しい腹痛や嘔吐などが起きるのが特徴です。

−20℃で24時間以上の冷凍処理や60℃で1分以上茹でることが予防となります。

※参照:「アニサキス症とは」(国立感染症研究所)

2. チアミン(ビタミンB1)欠乏症

イカの刺身

チアミン(ビタミンB1)を分解する酵素「チアミナーゼ」を摂ることでチアミンが不足すると、「チアミン欠乏症」になってしまいます。私たち人間では「脚気(かっけ)」とも呼ばれています。チアミナーゼを含む食材としてはイカが有名ですが、ワラビ、ゼンマイなどのシダ類やタコ、カツオ、アサリなどの魚介類にも含まれます。

刺身など生の魚を食べたからといって急に問題になることはありませんが、毎日のように与えていればチアミン欠乏症となります。チアミナーゼは加熱することで不活性化します。魚介類は生で与えず、茹でるなど加熱したものを与えるようにしてください。

※参考文献:「禁忌食(その 4 )――魚介類(チアミナーゼ)」(ペット栄養学会誌)


3. イエローファット(黄色脂肪症)

黄色脂肪症は、皮下脂肪が炎症を起こした際に脂肪が黄色に変色するすることからイエローファットと呼ばれています。症状として、痛み、皮下脂肪のしこり、歩行異常などが見られます。

イエローファットは脂肪が酸化することで起こるもので、不飽和脂肪酸が多く含まれるサンマ、イワシ、アジ、サバなどの青魚が代表的で、マグロやブリ、鯛やサケにも多く含まれます。それら魚の慢性的な過剰摂取が原因となります。

4. ヒスタミン食中毒

カツオ

ヒスタミン食中毒は、鮮度の落ちた魚を食べることで起こる食中毒で、下痢や嘔吐・舌や顔の腫れ、じんましんやめまいといった症状がみられます。アミノ酸の一種であるヒスチジンがヒスタミン産生菌によってヒスタミンに変換されることで起こります。

ヒスチジンはマグロやカツオ、サバ、イワシ、サンマ、ブリ、アジなどに多く含まれ、変換されたヒスタミンは加熱しても分解されません。

参照:「ヒスタミン食中毒について」(厚生労働省)

5. アレルギー症状が出ることも

魚のタンパク質が原因となってアレルギーを発症してしまう猫もいます。アレルギー反応が出た場合、下痢や嘔吐、脱毛、お腹が張るなどといった症状が見られます。いつも食べていない魚の刺身を食べさせたり、誤飲してしまったりした場合は、変化がないか様子を見るようにしてください。

年齢が経過してから急にアレルギー症状が出て、アレルギー体質とわかる場合もあります。「今まで大丈夫だったから」と安心せず、魚にもアレルギーのリスクがあることを覚えておいてください。

猫に刺身を与えていい量

刺身を総合栄養食へのトッピングやおやつとして与える場合、1日の最適カロリー量の10%以内にしてください。毎日の最適カロリー量はペトコトフーズの「カロリー計算」(無料)で簡単に計算することができます。

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猫が注意すべき刺身の種類

魚の刺身

それぞれ症状別に説明しましたが、改めて注意すべき魚を確認しましょう。

イカ

生のイカはチアミン(ビタミンB1)欠乏症を引き起こすため、猫に食べさせてはいけません。アニサキスのリスクもありますので、食べさせる場合は茹でるなど加熱するようにしてください。


マグロ、ブリ、鯛

マグロやブリ、鯛にはイエローファット(黄色脂肪症)を発症させる不飽和脂肪酸が多く含まれます。慢性的な過剰摂取を避けましょう。マグロやブリではヒスタミン食中毒にも注意が必要です。

サバ、アジ、イワシ、サンマなど青魚

サバ

サバ、アジ、イワシ、サンマなどはイエローファット(黄色脂肪症)、ヒスタミン食中毒、アニサキス食中毒に注意が必要です。

どれも私たちが刺身としてよく口にするものばかりですよね。それぞれに異なる危険性がありますので、愛猫にどのようなリスクがあるのかということをしっかりと把握しておきましょう。


猫は刺身などの魚が好きというのは本当?

魚をくわえる猫

猫は魚が好きというイメージを持つ方も多いかと思いますが、本当なのでしょうか?  猫の祖先は、砂漠地帯に住んでいるリビアヤマネコだとされています。もともとはネズミや鳥などの小動物を食べて生活していましたので、魚は食生活の中心ではありませんでした。

日本の猫たちは魚好き

ではなぜ「猫は魚が好き」というイメージが出来上がったのでしょうか? その理由は、日本人の食文化に大きく起因しています。日本人は魚をタンパク源とする食生活を古くから送ってきました。昔は今のようにペットフードなどもありませんから、人間の食べる食事を猫も食べることとなります。その中で猫は魚が好きというイメージが出来上がったのではないかといわれています。

実際、魚を好んで食べない猫もいます。人気アニメの主題歌にも「お魚くわえたドラ猫〜♪」というフレーズがありますが、「猫は魚好き」というイメージは日本人の食文化などがもとになって作られたイメージだったんですね。


猫に刺身を与える場合は魚の種類と量に注意

ねこ

猫に刺身を与えた場合のリスクについて説明しましたが、魚には猫の健康に良い成分もたくさん含まれています。魚の種類にもよりますが、鮮度の良い猫が食べても大丈夫な魚を少量であれば食べさせても大丈夫です。しかし、与え過ぎやアレルギーには注意が必要です。もし体調に変化があった場合は、すぐに動物病院に相談するようにしてください。

基本的に猫にとって必要な栄養素は、総合栄養食としてのキャットフードから摂取することができます。魚を食べさせたい場合は、生の刺身ではなく加熱したものや、魚を含むキャットフードを食べさせることでリスクを減らすようにしましょう。

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