ネコノミクスの経済効果を考える 猫ブームで2兆円超!?

私は自称「ネコノミスト」として「猫と人間が末長く一緒に生きていける社会」を構築するため、私たち人間がすべきことを考える研究員でもあります。今回は、猫ブームの背景から、「ネコノミスト」の造語の元となった宮本名誉教授の「ネコノミクス」の経済効果まで紹介します。

はじめまして。この度「ペトこと」に連載で寄稿させていただくことになりました三菱UFJリサーチ&コンサルティング武井と申します。当社の動物好きが順番に寄稿させていただきますので、どうぞよろしくお願いいたします。

さて、私は自称「ネコノミスト」として「猫と人間が末長く一緒に生きていける社会」を構築するため、私たち人間がすべきことを考える研究員でもあります。ネコノミストとは、先だって関西大学の宮本 勝浩名誉教授が発表された「ネコノミクス」にヒントを得た造語です(私が経済学部出身ということもあります)。普段は、国際協力分野での委託調査を担当している研究員ですが、猫好きの1人として、猫の殺処分が少しでも減少し、猫が幸せに暮らしていけるための方策を、ライフワークとして考えていきたいと思っています。

記念すべき第1回の連載は、「ネコノミスト」の造語の元となった宮本名誉教授の「ネコノミクス」の経済効果を詳しく見てみよう、というものです。振り返れば、「ネコノミクス」という言葉が生まれる前から、日本では、キティちゃん、ドラえもん、ジバニャン等、国民的キャラクターには猫が多かったように思います。


猫ブームの背景

猫の写真

この「ネコノミクス」の言葉が生まれるのと同時期に、「日本の猫の飼育頭数が犬を超えるかもしれない」というデータが発表されました。一般社団法人ペットフード協会の「平成27年度全国犬猫飼育実態調査」によると、2015年10月までに20-60代が飼育する犬の数は991.7万頭、猫の数は987.4万頭であり、近年の犬飼育頭数の減少と猫の飼育頭数の増加傾向が続けば、猫の飼育頭数が犬の飼育頭数を超えるのではないかと予測されています。

背景には1人暮らしや高齢者の増加など、現代人のライフスタイルの変化が関係していると言われています。犬は毎日散歩が必要であり、飼育の際には畜犬登録や鑑札の交付を受け、毎年の狂犬病の予防注射が義務化されています。そこで、飼育の手間が少なくて済む猫を選択する飼い主が増えているのではないかと推測されるわけです。

注1. 一般社団法人ペットフード協会「平成27年度全国犬猫飼育実態調査」(http://www.petfood.or.jp/data/)
注2. 猫もワクチン等の予防接種は必要であるものの、犬とは異なり予防注射は義務化されていません。

ネコノミクスの経済効果

さて本題に入りますと、宮本名誉教授が2016年2月に発表した「ネコノミクスの経済効果」と題する論文で、猫ブームがもたらす経済効果「ネコノミクス」は、2015年で約2兆3162億円であったとされます。その内訳は、以下の通りとなっています。

2015年のネコノミクスの経済根拠

項目 金額
【1】 直接効果
1. エサ 2万8176円
2. おやつ 1万3248円
3. トイレ 7800円
4. ペット保険・動物病院 4万5000円
5. 日用品(おもちゃ・消臭スプレーなど) 1万3200円
6. ペットホテル・シッター 4000円
猫一匹あたりにかかる費用合計 11万1424円
上記×987万4000頭(2015年の全国の猫の飼育頭数) 1兆1002億57万6000円
7. 猫のグッズ、本、映像などの売上金額 30億円
8. その他(観光など) 40億円
直接効果合計 1兆1072億57万6000円
【2】一次波及効果(上記の原材料の売上など)
6676億円
【3】一次波及効果(上記の関連産業従事者の所得増加による消費増加分)
5414億円
経済効果(波及効果)【1】+【2】+【3】
2兆3162億円

注:1~2は、ペットフード協会「平成27年度全国犬猫飼育実態調査」、3~8及びll、lllは宮本名誉教授試算
出所:宮本勝浩(2016)「ネコノミクスの経済効果」(リリース用)より作成

直接効果の7(猫グッズ等の売上金)と、8(観光などその他効果)の金額に関しての計算根拠は明確に示されていませんが、直接効果だけでも1兆円を超える経済規模になっています。さらに、宮本名誉教授は直接効果の数字を基に、産業連関表分析を用いた波及効果を計算しています。波及効果とは、消費者、企業、自治体などが直接購入する直接効果から派生する経済効果を意味し、一次波及効果と二次波及効果の2種類に分けられます。一次波及効果とは直接効果の原材料の売り上げ増加額を意味し、6676億円と推計され、二次波及効果とはそれらの原材料の売り上げに伴う関連分野の従業員の所得増加による消費増加額を意味し、5414億円と推計されています。これらを合計したものが、約2兆3162億円という数字になっています。

直接効果の8で試算されている観光に関しても、日本は多くの猫が活躍しています。和歌山電鐵貴志駅の「たま」駅長(2015年永眠)、会津鉄道芦ノ牧温泉駅の「らぶ」駅長(初代は「ばす」駅長)などが有名ですが、猫駅長の活躍で地方の鉄道路線に活気を与えました。また、日本各地の「猫島」が近年話題となっており、日本国内のみならず、近隣のアジア諸国からも多くの観光客が猫島を訪れ、観光での経済効果をもたらしているといいます。


全国の「猫島」の一部

※公式な名称ではないものの、猫が多数生息している島として著名な島。

    東北・関東地方

  • 宮城県
  • 神奈川県
    • 江の島

    近畿地方

  • 滋賀県
    • 沖島

    中国・四国地方

  • 岡山県
    • 真鍋島
  • 山口県
    • 平郡島、笠戸島、祝島
  • 香川県
    • 伊吹島、佐柳島、高見島、男木島
  • 愛媛県
    • 青島、野忽那島(のぐつなじま)

    九州・沖縄地方

  • 福岡県
    • 志賀島、地島、能古島、玄海島、姫島、相島、藍島
  • 熊本県
    • 湯島
  • 佐賀県
    • 加唐島
  • 沖縄県

しかしながら、これらの猫島は、高齢化した島であることも多く、島の住人の数よりも猫の頭数が増えてしまい対応に困っている島や、観光客の急激な増加によるゴミや騒音問題などに直面する島もあるといいます。

福岡県相島の猫たち
福岡県相島にて、筆者撮影

香川県男木島の猫たち
香川県男木島にて、筆者撮影

人と共生した結果のネコノミクスを

猫ブームが単なるブームに終らず、このブームをきっかけに、猫と人との共生を考える人たちが増え、人と猫とが幸せに共生した結果の「ネコノミクス」(経済効果)が達成できる社会を実現していくために、私たちは情報やデータなどを発信していければと思います。