ペットの「再生医療」って?獣医療をもっと前へ! -ペットの再生医療vol.1-

ペットの「再生医療」って?獣医療をもっと前へ! -ペットの再生医療vol.1-

初めまして。J-ARMの獣医師、遠矢です。「再生医療」という言葉を皆さんも最近よく耳にすると思います。「聞いたことはあるけど難しそう……」「そもそも『再生医療』ってヒトの医療じゃないの?」と思う方もいるかもしれませんが、そんなことはありません!! 皆さんの大切なワンちゃん・ネコちゃんも再生医療で治療ができるのです。「再生医療とは一体何なの?」「再生医療でどんなことができるの?」そんな皆さんの疑問にお答えできればと思います。

実は知っている? 「再生」のお話

まずは、身近な「再生」のお話から。皆さんイモリはご存じですよね? 正式にはアカハライモリと言います(私も初めて知りました)。ここで皆さんに質問です!! イモリのしっぽが切れたらどうなるでしょう?

……どうです? 答えは浮かびましたか? 正解は、しっぽが切れても元通りに生えてきます!! さらに驚くことに骨まで再生されるのです!! 「そんなの当たり前じゃん!!」と思ったあなた!! そうなんです。実は「再生医療」という言葉が広がる前から、皆さんは「再生」を目にし、耳にしていたのです。そして、皆さんが知っているこの「再生」を医療の現場で生かそうというのが、「再生医療」の考え方なのです。

さすがにすべての生物にイモリのような驚くほどの再生能力はありませんが、生物には、病気やケガで壊れてしまった自分の体を自分の力で元に戻そうとする働きが存在します。そういった生物の持つ再生能力の背景には、「幹細胞(かんさいぼう)」が重要な役割を果たしていることが、医学の進歩によって徐々にわかってきました。そしてペット医療においても、この「幹細胞」を使ってワンちゃん・ネコちゃんの病気を治療しようという動きがすでに始まっているのです。

幹細胞のはたらき

では、「幹細胞」とは一体何者なのでしょうか? 幹細胞は、自己複製能力とさまざまな細胞に分化する能力を持つ細胞です。

……難しい。……ですね。私も難しい言葉は苦手です。

幹細胞のイメージとしては、まさしく「お医者さん」です。病気やケガを一生懸命に治そうと頑張ってくれる細胞なのです。お医者さんにもいろんな方がいるように、幹細胞にもいろいろな種類があります。ペット医療では、主に「脂肪幹細胞」が治療に使われています。脂肪幹細胞は名前の通り脂肪の中にある幹細胞です。


脂肪幹細胞とは

「どうやって脂肪から幹細胞を作るの?」「治療ってどんなことをするの?」
皆さんの疑問に答えていきましょう。順を追って説明していきます。

  1. ワンちゃん・ネコちゃんからビー玉大(0.5グラム)の脂肪を取ります。
  2. 脂肪を特殊な環境下で育てることで(「培養」と言います)幹細胞をたくさん作り出します。
  3. できた幹細胞をワンちゃん・ネコちゃんの体内に戻します。

以上です!! 難しい話はいくらでもできますが、飼い主の皆さんに知っておいてほしいことは、
  • 脂肪からたくさん幹細胞が作れる。
  • 幹細胞を点滴などで体内に戻してあげる。

この2点です。注意点(リスク)としては、
  • 脂肪を取るときに全身麻酔をかける。
  • 幹細胞の培養に2週間ほどかかる(その間に病気が進行してしまう可能性がある)。
  • 稀に吐き気・嘔吐・過呼吸といった軽度の症状を示すことがある。
  • アレルギー反応を示すことがある。
といった点が挙げられます。ただ再生医療に限らず、病気を治療していく上では、ある程度のリスクは必ず存在します。必要以上に怖がらずにまずは獣医師に相談してください。

ワンちゃん・ネコちゃんの状態によっては麻酔をかけられず脂肪が取れない場合や培養の2週間が待てない場合もあります。そんな時はあきらめるしかないのでしょうか……。実は、ほかの子から取った脂肪幹細胞でも治療ができるのです!! 治療法がないと諦める前に、再生医療の可能性について獣医師と話してみてください。大切な「家族」の可能性は誰にも否定できるものではありません。

では、どんな病気の治療ができるのでしょうか。代表的な病気としては「椎間板ヘルニア」があります。ダックスフントシーズーといったワンちゃんがかかりやすい病気です。ほかにもさまざまな病気に対して効果が期待できます。詳しくは次回、お話しします。
※ワンちゃん・ネコちゃんの再生医療が受けられる病院 お近くの病院を探してみてください!!
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