【ペット市場】2019年は「ペットフレンドリー」な1年に? グラフを用いて日本や海外の現状と未来を考える

【ペット市場】2019年は「ペットフレンドリー」な1年に? グラフを用いて日本や海外の現状と未来を考える

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2019年のペット業界は、2018年のテクノロジーサービスやデバイスの増加に伴い、今まで以上に人と動物の距離が近くなる、「ペットフレンドリー」をキーワードにした年になりそうです。今回はマクロ・ミクロ経済の動向と日本や海外における現状を通して、ペット市場の今とこれからの未来を予測します。

2018年は3月の「平昌オリンピック」に始まり、4月には日米首脳会談、6月にはワールドカップ、9月には大坂なおみ選手が日本勢初の四大大会制覇を達成、安室奈美恵さん引退など、政治経済だけでなくスポーツ関連のニュースに多くの話題が飛び交う1年となりました。

トレンドワードだったAIやIoTもホームスピーカーなどの家電製品で市販されるなど、あらゆるものがインターネットとつながり、働き方や生き方が変わる時代が少しずつ近づいています。

2019年は4月30日に「平成」が終了し、5月1日から新しい時代が始まります。では、それ以降の「ポスト平成」の時代はどう移り変わっていくのでしょうか? 私たちとペットの未来はどう変わっていくのでしょうか?


世界のペット市場

アメリカの調査会社グランドビューリサーチ(Grand View Research)が発表しているアナリストレポート「Pet Care Market Size Worth $202.6 Billion By 2025 | CAGR: 4.9%」によれば、全世界のペット市場は2025年までに約22兆円(USD 202.6 billion)まで増加すると予測されています。ペットの飼育増加とプレミアムで高価格なケア商品が成長の要因とされています。

そして、テクノロジーの発達により、グルーミングやトレーニングがより飼い主と密接に関係するようになります。アメリカの調査会社ウェイクフィールドリサーチ(Wakefield Research)によれば、1980年代から2000年代初頭までに生まれた人を指す「ミレニアル世代」の69%が、「テクノロジーを使ってペットと暮らしたい」と答えたそうです。

アプリなどを通してペットの健康や行動状況を把握したり、自動給餌器などを通して栄養を管理したり、カレンダーと連動させてペットの健康を管理したり。このようにミレニアル世代にとって、ペットとの暮らしにテクノロジーは欠かせない存在となっているのです。これはペットが家族化=人間化していることが大きな理由といえます。

  • グローバルペットケア市場は、2016年に約15兆円(USD 131.7 billion)ほどとされており、2016年から2025年にかけてCAGR(年平均成長率)で4.9%増加するとされています。
  • ペットフード市場は、プレミアムフードやオーガニックナチュラルフードの需要増加に伴い、最も大きなセグメント市場となります。
  • 地域別にはインド市場が飼育者増加と可処分所得の増加により、成長市場になると予測されています。
  • アジア太平洋地域は、欧米に続きペット市場で3番目に大きいマーケットです。

日本のペット市場

日本のペット市場について、矢野経済研究所の「2017年版 ペットビジネスマーケティング総覧」と富士経済の「2017年 ペット関連市場マーケティング総覧」、アニコムホールディングスが発表している「アニコム 家庭どうぶつ白書2017」、アイペット損害保険の「アイペット損保による調査」(PEDGE)、ペットフード協会の「平成29年(2018年)全国犬猫飼育実態調査」などを参考に報告します。

グラフでみるペット市場規模の推移

日本国内のペット市場規模の推移

最新の統計で、2017年度のペット関連総市場規模は、小売金額ベースで前年度比101%の1兆5135億円と推計されています。毎年約1%増加しており、ペット関連市場規模でみると拡大傾向の産業となります。ペット関連総市場規模は2019年度には1兆5547億円を見込んでいます。

今後は飼育頭数の大幅な拡大が見込みにくいですが、ペットの家族化や高齢化により付加価値製品・サービスは増加し、市場規模は金額ベースでは横這いから微増にて推移すると予測しています。なお、本調査におけるペット関連総市場は、ペットフード、ペット用品、その他ペット関連産業(生体やペット美容室、ペット医療、ペット保険、ペットホテルなどの各種サービス)に大別されています。

ペットフード

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ペットフードの2016年度の市場規模は、末端ベースで前年度比102.4%の4856億円と推計されています。そのうちドッグフードとキャットフードが9割以上を占めており、カテゴリー別構成比は、ドッグフードが47.9%(前期48.9%)、キャットフードが46.9%(前期45.7%)となっています。

キャットフード市場が拡大している中、構成比が最も大きいドッグフードは、飼育頭数の減少を受けて金額ベースでの市場規模は横這い推移となっており、2016年度も市場規模はほぼ前期並みとなっています。

2017年度には、構成比の逆転が考えられます。ドッグフード市場のトレンドとしては、高価格帯商品であるプレミアムフードの需要拡大によって、数量の減少を金額でカバーしており、金額ベースではほぼ横這いで推移しています。

つまり日本全体で見たとき、フードを与える量は減少しているものの、かける金額が高くなっているということです。また、健康志向の高まりにより年齢別や犬種別、体格別、健康目的・症状ケア別などの商品の細分化・多様化が進んでいます。

キャットフード市場は拡大基調で推移しています。犬と比較し飼育頭数が安定しているため、ペットフードメーカー各社も新商品を投入しています。

2019年トレンドワード:カスタマイズウェットフード
2018年と同じく、健康志向の高まりにより、フードはさらに細分化されていくと予測されます。属性やアレルギーなどの疾患に合った、犬猫個別に最適化されたオーダーメイドに近いフードが増加していくと考えられます。

アメリカでは、ITスタートアップである、「Ollie」や「Farmer's Dog」が既存シェアを拡大しており、人間と同じ食材(ヒューマングレード)を使ってインターネットのアルゴリズムを生かしたカスタムフードを提案しています。

これらのフードは全てドライではなく、原材料をミキシングしただけでのウエットタイプなのが特徴的です。今後、無添加で新鮮さを保つフードが伸びてくると予測しています。またフードは与え続けるものであり、量も大きいため、定期購入やオンライン購入と相性が良く、今後はオフラインからオンラインでの購入が当たり前になるでしょう。実質、Amazonのペットカテゴリーの売上は前年比40%増加で成長しています。


ペット用品

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ペット用品の2016年度の市場規模は、前年度比101.6%の2545億円と推定されています。犬の飼育頭数減少により成長率は鈍化していますが、健康管理関連のサービスにはお金をかける時代になっており、各カテゴリー間での成⻑率に差が生じている状況です。

犬用トイレシーツ、猫砂など、室内飼育においてほぼ必需品となっている排泄ケアの消耗品は、市場規模は大きいものの低価格化の傾向があり、ほぼ横ばいで推移しています。一方でペット用おむつ、ウンチ袋などの用品市場は、引き続き成⻑しています。

健康管理に関わるデンタル用品は成⻑にやや鈍化傾向が見られるものの、ペットのデンタルケアへの意識が高まる中で、引き続き前期比2桁増に近い成⻑率を維持していくものと見られています。

2019年トレンドワード:カスタマイズEC
AmazonなどEC経由の販売は年々増加しています。さらに昨年からAmazonがペットのプロフィールを登録すると最適な商品をレコメンドする機能をアメリカから先行して提供開始しました。日本でもAmazonプライムのペット版である「Prime Pets」が開始しており、今後さらに犬種や犬猫個別に最適化された商品情報を簡単に取得できる時代が来ると予測されます。

2019年トレンドワード:D2Cコマース
今まではオフライン店舗を持つ販売メーカーが商品を開発し、それをオンラインで販売する「オフラインからオンライン」の商流が一般的でした。しかし、インターネットの普及によってオンラインで飼い主のデータからニーズを解析し、トレンドに合った商品開発から販売ができる時代になりました。

オンラインを起点としてモノをつくり、ブランドを形成して、直接消費者に中間業者を入れることなく販売、オフライン店舗ではショールーム感覚で販売体験を提案、あくまで購入や配送はオンラインで完結するD2C(Direct to Comsumer)コマースがペット領域でも話題を集めています。

アメリカの事例だと、「BarkShop」や「BarkBox」を展開するBark&Co.は、オンラインでおもちゃやおやつを販売してきましたが、日本のイオンのような存在である巨大スーパー「Target」と提携することで、オフラインでの売り上げも拡大しています。

また、最近だと「WildOne」は洗練されたデザインのウンチ袋やグッズを展開しており、オフライン店舗を都市部に開店しています。認知はインスタグラムをうまく利用しており、SNSをうまく活用してモノ消費へと結びつけています。


生体・サービス産業

生体については、2008年まで犬猫の飼育頭数は順調に拡大していましたが、猫の飼育頭数は微増で推移しているのに対して、犬の飼育頭数は2012年以降減少しています。

少子高齢化の人口ピラミッドや住環境の変化等を考慮すると、今後も飼育頭数の大幅な拡大は考えにくい状況です。ただし、2019年から本格化するであろう「働き方改革」が進むことで、家での仕事が増えたり、フリーランスの働き方が増えたりすることで、20〜40代の飼育意向率は増加する可能性もあります。

ペット関連産業市場

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ペットの飼育頭数が近年、頭打ち傾向とされる一方で、ペットに対する支出は増加傾向となっています。ペットを家族の一員と考える家庭が増加しているほか、単身者や高齢者などが、ペットを癒やしとして飼育する傾向も見られ、ペット飼育のサポート、またはペットとの生活を楽しむためのサービス関連支出が増加しています。

ペット保険は加入者の多くを犬飼育者が占め、ペットの健康管理への意識の高い飼育者の需要を獲得して2桁成⻑を続けています。ペットサロンなど従来からあるサービスは都市部を中心に依然として需要が高いものの、手間の割に高く設定できないサービス単価の問題があります。これは業界全体で考えなければいけない問題で、サービス提供者と飼育者で対価についての認識を共有する必要があります。

問題は供給が需要を上回っていることにもあり、国家資格の獣医師と違ってトリマーやトレーナーは誰でもできてしまうことに起因しています。教育にも課題があり、専門学校であれば2年で社会に出ることになりますので、基本的には実技が学ぶことの大半となります。マーケティングやキャリアプランなど、卒業後にビジネスの現場で必要となるスキルを早くから学び、理解した上で働ける環境も必要だと考えます。


2019年トレンドワード:アウトドア
ペットの家族化とともに、ペットと出かけられるスポットの増加により、犬と一緒にお出かけする飼い主さんが増加しています。近場だけでなく、キャンプ登山トレッキングSUP(サップ)カヤックリバーウォークなど、犬と一緒に楽しめる体験がどんどん増えています。

さらにペットと泊まれる宿が増え、ハード面の整備が整い始めたことも大きな要因でしょう。そのため預けるペットホテルの成長率は鈍化しており、今後はいかにペットとのコト消費が進むかがペット関連市場の掘り起こしとなるでしょう。

子どもの数を上回る現状だからこそ、ペットがいることが新たなライフスタイルになっています。その変化は電力やガス、車、キャンプ、アウトドア、アパレル、インテリア、リフォーム、不動産、生命保険など、幅広く関連市場のサービスに波及していくと考えられます。そういった市場をどううまくペットライフに染められるかも大切でしょう。

ペット市場シェア

ペットフード

ペットフードメーカーシェア

2013年度におけるペットフードメーカーシェアは、ロイヤルカナンなどを持つマースジャパンがシェア13.7%でトップ、続いてユニ・チャーム12.9%、日本ヒルズ・コルゲート9.6%、ネスレ日本9.3%と続きます。

カテゴリ別にみると、ドッグフードのトータルシェアは、マースジャパンが15.4%でトップ、続いて、日本ヒルズ・コルゲート14.2%、ユニ・チャーム11.6%です。ドライフードでは、「サイエンス・ダイエット」の日本ヒルズ・コルゲートが27.7%でトップ、ウエットフードでは、フルラインの価格帯を持つマースジャパンが12.5%でトップです。セミモイストでは、「ゲインズ・パックン」のユニ・チャームが55.3%と圧倒的にシェアを持ち、ドッグスナックでは、ドギーマンハヤシが30.7%でトップとなります。

続いて、キャットフードメーカーシェアは、ネスレ日本が19.6%でトップ、ユニ・チャーム16.2%、マース・ジャパン13.6%と続きます。ドライフードでは、ネスレ日本が20.9%でトップ、ウエットフードでもネスレ日本が19.8%です。キャットスナックはいなばペットフードが57.8%と圧倒的なシェアを持っています。

今後さらにセグメント化されたフードの提案とプレミアムフードの成長が予測されます。

ペット市場:犬猫の飼育頭数推移

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2018年12月に日本ペットフード協会が発表した飼育頭数の最新統計調査では、20~70代全国の犬の飼育頭数は約893万頭、猫の飼育頭数は約964万頭と推計されることが分かりました。犬の飼育頭数は経年で減少傾向にあり、猫は横ばい。前年に続き、2018年も猫の飼育数が犬の飼育数を上回りました。

犬の飼育頭数は2013年より減少傾向にあり、猫の飼育数が昨年に続いて犬の飼育数を上回った形となります。一方で飼育世帯でみると、犬は飼育率が12.64%(前年比△0.2%)、猫は飼育率が9.78%(前年比+0.07%)と犬の方が飼育率は高いですが、平均飼育頭数が犬は1.24匹、猫は1.74匹のため、結果的に猫の飼育頭数が犬の飼育頭数を上回ったことが分かります。猫は多頭飼いをするケースが多いため、飼育率は低くても頭数が上回ってくることとなります。

海外で見ると、犬の飼育頭数ランキングは以下のような順番となります。アメリカが最も多く、次いでブラジル、中国となります。日本は最新の飼育頭数で計上しているため9位となっています。

※最新の数字と違う可能性があることをご了承ください。
順位
飼育頭数
1位
アメリカ
6992万頭
2位
ブラジル
3580万頭
3位
中国
2740万頭
4位
ロシア
1252万頭
5位
フィリピン
1160万頭
5位
フィリピン
1160万頭
6位
インド
1020万頭
7位
アルゼンチン
920万頭
8位
イギリス
900万頭
9位
日本
890万頭
10位
フランス
757万頭
11位
南アフリカ
740万頭
12位
ポーランド
731万頭
13位
イタリア
700万頭
14位
ドイツ
530万頭
15位
エチオピア
500万頭
16位
スペイン
472万頭
17位
ルーマニア
416万頭
18位
オーストラリア
370万頭
19位
チェコ
315万頭
20位
ハンガリー
285万頭

猫の飼育頭数ランキングはこちらです。日本で犬の飼育頭数が猫の飼育頭数を上回ったことが発表され話題になりましたが、世界的にみると猫の方が犬の飼育頭数を上回る国も多く、世界的にみれば猫の頭数が多いことがわかります。

犬の飼育頭数ランキングには入ってなかったウクライナやベルギーなど、猫文化が形成されている国が欧州でみても異なることがわかります。

順位
飼育頭数
1位
アメリカ
7405万頭
2位
中国
5310万頭
3位
ブラジル
2200万頭
4位
ロシア
1780万頭
5位
フランス
1148万頭
6位
日本
964万頭
7位
ドイツ
820万頭
8位
イギリス
800万頭
9位
イタリア
740万頭
10位
ウクライナ
735万頭
11位
ポーランド
550万頭
12位
ルーマニア
389万頭
13位
スペイン
338万頭
14位
アルゼンチン
300万頭
15位
オランダ
287万頭
16位
ハンガリー
224万頭
17位
オーストラリア
220万頭
18位
韓国
200万頭
19位
ベルギー
188万頭
20位
チェコ
175万頭

飼育割合と種類

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犬の場合は飼育頭数のうち、純血が圧倒的に多く85.4%が純血です。ペットショップから迎える方が多いことが要因の一つです。しかし、保護犬猫から迎える方が増加していることもあり、雑種を飼う方も前年比+1.1%の14.6%まで増えています。

トイプードルチワワは変わらず人気で、特にトイプードルは8年連続1位と人気を誇っています。日本では室内で犬を飼う人が7割を占めることから、マンションなどで飼いやすい小型犬が好まれる傾向にあります(※犬種に限らず室内飼育が推奨されています)。その中でもトイプードルは性格が大人しく、甘えん坊タイプなのが人気の秘訣のようです。大きな変化としてパピヨンが15位から10位になりました。


一方で猫の場合は迎え方が野良猫から拾ったりする方が多かったため、純血よりも雑種の方が多く、82.8%が雑種となります。しかし、猫ブームもありペットショップから猫を迎える方が増加しており、純血の割合が前年比+1.9%となっています。スコティッシュフォールドが9連覇していましたが、混合猫(雑種)が1位となりました。保護猫から迎える方が増えていることも要因かもしれません。


飼育環境

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犬猫ともに室内飼いが80%を超えており、年々室内飼いをする方が増えています。ペットの家族化が進んでいる要因の一つでもあります。今後は家の中でのペットの暮らしを考えた製品開発が進んでいくと予想されます。

飼育率の推移

犬の場合、50代の飼育率の減少が顕著で、前年比で△2.3pt、2013年から4.6%減少しています。猫の場合、飼育率が全体的に増加しています。飼育意向とも相関しており、犬よりも猫の方が飼育面、住宅面などからみて飼育しやすいことが要因の一つとなっていると考えられます。

飼育意向の阻害要因

犬の場合、20〜40代総じて「お金が高いから」「ペット不可物件だから」「十分に世話ができないから」という理由が多く、望まれるサービスとして「旅行中や外出中の世話代行サービス」「健康保険料・生命保険料などが減額になるサービス」が挙げられました。ペットホテルやペットシッターだけでなく、「DogHuggy」などのシッターマッチングサービスも今後成長していきそうです。

ペットへの支出費用

アニコム損害保険が毎年「ペットにかける年間支出調査」を発表しています。2016年のデータでは、犬が44.6万円で猫が33.7万円でした。要因として、「サプリメント」「交通費」「光熱費」の3つの項目が追加されたことが大きいです。

ただ、それら3つを除いたとしても、前年比で109%と増加していることが分かります。 構成別に見てみると、治療費が最も多く、フード・おやつ、しつけ・トレーニング、シャンプー・カット、ペット保険と続きます。

病気やケガの医療費
「病気やケガの治療費」は、「シニアになったので病気が増えた」という年齢による理由や、若齢では「皮膚病、アレルギーによる通院のため」などが見られました。高齢化による高度医療の需要増加がありつつも、重大な病気の予防への意識が高くなり、治療費そのものは減少傾向になりつつあるといったことが考えられます。

フード・おやつ
「フード・おやつ」にかける費用は、年々増加しています。人間同様に栄養における健康寿命の増加が重要視されており、オーガニックやグレインフリーなどのプレミアムフードや、高齢化による疾患別の療法食が増加していることが考えられます。

ドッグランなどの遊べる施設
犬とお出かけできるスポット、宿の増加によって、「飼い主さんが遊ぶために仕方なく愛犬を預ける」という需要が徐々に減少していることが考えられます。

私もそうですが、週末は犬とお出かけをすることがとても増えました。それはお出かけする場所や遊び方の広がり方が増えたことにあります。犬とキャンプ、SUP(サップ)リバーウォークサーフィン登山まで、犬も人間と同じアクティビティーを楽しめるようになりました。

それに伴い、ペットと泊まれる宿が増加しており、相乗効果でお出かけ市場が広がっています。実際、ペトことの読者さまも多くの犬の飼い主さまが旅行に犬とお出かけされていますが、1予約あたり宿単価5万円と相場よりも高いです。

今後は関連市場として車や電車などの交通市場、アウトレットなどの中間地市場の増加が期待できます。「ペットの家族化」「健康志向の高まり」という二つキーワードによるプレミアムフードなど、健康関連商品の購入増加とお出かけなどレジャーツーリズムの拡大が見込まれると考えられます。詳しくはペットにかかる飼育費用はいくら? 犬や猫の初期費用もをご覧ください。


ペット市場:ペットの長寿化と高齢化

飼い主の健康意識の向上、獣医療の発展などにより、ペットの長寿化が進んでいます。犬の平均寿命は14.19歳、猫の平均寿命は15.33歳です。犬の場合はサイズによって寿命が異なり、超小型犬は15.01歳(前年比+0.12歳)、小型犬は14.66歳(前年比+0.22歳)、中・大型犬は13.29歳(前年比△0.45歳)となっています。

ペットの高齢化も進んでいます。7歳以上の高齢の犬の割合が58.9%と過去最高で2013年から5%も増加しています。年齢別飼育頭数の推移は飼育ブームとも相関しており、飼育意向が少なくなっているため、自然と若齢の犬よりも高齢の犬の方が増えてくることになります。人間で起きている少子高齢化と似た現象ともいえるでしょう。

ペット市場の課題

殺処分問題
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ペット市場の大きな課題の一つが、殺処分問題です。生体販売構造やペットを飼う上でのミスマッチングなどにより多くの保護犬猫が生まれ、殺処分されています。ペトことを運営するシロップでも、保護犬猫から迎える文化をつくるため、犬猫の一生の家族を見つけるペットマッチングサービス「OMUSUBI」を運営しています。

既報の通り、環境省から2017年度(平成29年度)の「犬・猫の引取り及び負傷動物の収容状況」で全国の保健所や動物愛護センターなどで殺処分された犬猫の数が2016年度の5万5998匹から4万3227匹に減少したことが分かりました。しかし動物保護団体の尽力によるところも大きく、自治体によっては動物愛護センターや保健所から保護先が保護団体に移っただけという場合もあります。

飼い主が最初から保護団体に相談したり、保護団体がレスキューをしたり、保護の際に自治体を経ていないケースもあり、環境省が把握している数は日本における動物保護の実態とは必ずしも一致しないという点をご注意ください。

世界的にも法律の規制が進んでおり、パピーミルと呼ばれるブリーダー工場の適正化やペットショップでの展示販売禁止などが進んでいます。ただ、根本的に大切なのは、「飼い主さんが責任を持ってペットが幸せな環境でずっと暮らせるようにすること」に限ります。

現状の過剰な繁殖は規制すべきですが、ペットを大切に育てようと望む人がいるのにペットが迎えられない社会も変ですし、需要と供給を一致させ、本当に大切に育てられる人だけがペットを迎えられる、そういった体制づくりが必要だと考えます。

詳しくは、【平成28年度】犬猫の殺処分・譲渡・引き取り数 2016年度の都道府県別ランキング1位はどこ?をご覧ください。


日本のペット市場についてお話してきましたが、海外ではどうなのでしょうか? なお、市場規模の算定方法は統計機関により異なるため、正確な比較ではないことをご了承ください。

米国(アメリカ)のペット市場

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参照:APPA

アメリカのペット市場は世界一の市場規模を誇り、成熟市場ですが拡大傾向にあります。全体で7兆円ほどの市場規模となっています。内訳としては、フードが2.8兆円、ペット用品が1.5兆円、医療ケアが1.6兆円、生体販売が2000億円、グルーミングなどペット関連サービスが6000億円となっています。

Fitbitの犬版としても話題だったウェアラブルIoTの「Whistle」が2016年3月にロイヤルカナンなどを小会社にもつMars Petcareに買収されるなど、日本と同じくペットへの健康志向の高まりは拡大しており、今後もペットテックを中心としたヘルスケアサービスは広がっていくでしょう。


ブラジルのペット市場

ブラジルは犬の飼育頭数が世界2位の5200万頭、猫の飼育頭数が4位で2200万頭と南アメリカで最も多く、世界的にみても飼育頭数が多い市場です。PETS Internationalが報告しているペット関連市場規模のレポートでは、2015年に50億ドル(約5500億円)と前年比から7.6%成長しています。

2016年も7%成長の53億ドル(約5900億円)まで拡大すると予測されています。ブラジルでもペットの家族化が進んでいることが一つの要因です。ペットフード市場でみると、2014年に49億5600万ドル(約5500億円)、2020年までにCAGR5.9%の成長率で69億7200万ドル(約7300億円)まで成長すると予測されています。

中国のペット市場

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中国のペット市場は、経済成長だけでなくペットを動物ではなく家族として捉えてきたこともあり2000年代後半から急成長を遂げてきました。市場規模は2017年に2兆5千億円規模と前年比で27%増加しており、アメリカの市場規模を数年で超えるだろうと言われています。

この要因として、

  • 中国の犬に対する法律では、ドッグライセンスフィーが年$285 (USD) から$35 (USD)に下がったこと
  • 中間層の飼い主のペットに対する支出額が増加していること

があると言われています。

中国の犬猫飼育頭数は3800万匹であり、市場規模は765億円です。中国経済自体は成長が鈍化していますがペット市場は成長市場となっています。中でもペットフード市場が急成長しており2007年から2014年の成長率は100%でした。近いうちにアメリカの市場に匹敵する規模になると予想されています。オンラインECも成長しており、大手ECサービスの「Taobao」では全商品の7%がペット商品です。

ロシアのペット市場

ロシアは犬の飼育頭数が世界4位の1250万頭、猫の飼育頭数が3位で1780万頭と世界的にみても飼育頭数が多い市場です。ペットフード市場でみると、欧州全域の10.9%を占め、世界でも2%と大きな市場です。それでも東欧諸国と比べるとまだ成熟市場とはいえず、今後も成長が見込めます。

面白いことにロシアのペットフード市場は、ロシア産のペットフードが20%近く増加しているのに対し、海外輸入のペットフードは40%も減少しており、ドメスティックな要素が強い市場となっています。市場規模でみると、920百万ドル(約1000億円)とされ、2022年までにCAGR4.25の成長率で1181百万ドル(約1300億円)まで成長すると推測されています。この成長ドライバーとなっているのがECマーケットで、特に都市部で成長しています。

韓国のペット市場

韓国の犬の飼育頭数は740万頭であり、犬猫合わせた市場規模は360億円です。2022年までに8.3%成長で570億円まで成長すると予測されています。韓国では犬食文化が今なお残っていますが、韓国政府も人と動物の共生を掲げるなど、今後愛玩動物としての関わり方は変わってくるでしょう。

ペットフード市場は2022年までに180億円まで成長すると予測されています。70%はドライフードです。グレインフリーのフードは限定的で、炭水化物と穀物を使用したフードが80%を占めています。ただし、今後はグレインフリーのフードの需要が拡大し、6.7%の成長率で拡大すると予測されています。

オーガニック関連やプレミアムフードの商品も拡大するでしょう。マーケットシェアで言えば、世界的に有名なマースグループのロイヤルカナン、ネスレピュリナが筆頭で、EC市場も拡大しており、GmarketやAlibabaが躍進しています。


台湾のペット市場

台湾のペット市場

Euromonitor from trade sourcesによれば、2016年度の市場規模は816百万ドル(約890億円)とされており、前年比105%で年々増加しています。少子高齢化と晩婚化により独身者がペットを飼う人も増えています。日本同様にペットショップも多く存在し、野良犬や野良猫もまだ数多くいます。

台湾もプレミアム商品の需要が拡大しており、ペットとのライフスタイルを豊かにするサービスにお金をかける飼い主が増えています。ペットフード市場は、2000万ユーロ(約26億円)とされており、2020年までに8300万ユーロ(約90億円)まで拡大すると予測されています。

タイのペット市場

タイのペット産業市場規模

タイのペット市場規模は7億6200万ドル(約800億円)とされていて、前年比112%で年々増加しています。ペットフード市場は3億1700万ドル(約350億円)で、CAGRで9%の成長率で2020年までに5億3300万ドルまで成長すると予測されています。疾患やアレルギーを持つ犬が多くなり、オーガニックなどプレミアムフードの需要が拡大しています。

インド

インドは、世界でも爆発的に成長している市場です。特徴として、フードの場合、大衆フードの受け入れが遅く、ホームメイドフードなどを好むとされています。ただし、大衆フードマーケットは徐々に伸びており、TechSci Researchによると2019年までに300億円ほどの規模になるとされています。これは都市部でペットと暮らす家族が増えていることが要因です。

そして、毎年12%市場規模が増加しており、ペットケア商品の市場規模は2017年に300億円あります。その中で増加しているセグメントは、グルーミング、ペット行動学、ヨガ、ペット雑誌です。また、犬のフードを与えられるドッグカフェも人気になっています。また、獣医師の往訪診断の増加により健康管理の意識も高まっています。特に交通機関ではタクシーやバスにインドはペット連れできないためです。

ロシア

他の成長市場がロシアです。ネスレがペットフード工場を建築していたり、マースも2018年を目処にフード工場建設プロジェクトを完了しています。ペットフードの市場規模は、2016年で950億円です。

2019年以降に考えられるペット市場の未来と動向トレンド

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在宅ワークやAIの進化により、ペットと一緒に過ごす生活時間は増えてくると予測されます。それに伴い、さらにペットの家族化は進み、労働におけるペットを飼育する阻害要因が減少することで1人暮らしでもペットを飼いやすい環境がつくられると予想されます。その際に大切なことは、責任を持って生涯飼育ができるかに限るでしょう。万が一のために後見人を指定しなければペットを迎えられない整備づくりも必要になってくるでしょう。

ペットを迎えられないけど癒やしを求める方も多くなる時代で、散歩代行やシッター代行などのサービスも拡大することが予測されますし、SONYが提供しているペット型ロボット「aibo」と過ごす方も増えてくるかもしれません(個人的にはペットとペット型ロボットは全く違う存在だと思っています)。

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また、ITの発達により、ペットとの生活もITによってより豊かになると予測されます。これは「ペットテック」と呼ばれ、日本でもINUPATHYやRABOなどのIoTサービスが増えています。トレンド技術を生かしたペットテックサービスはさらに増加してくるでしょう。既にAmazonはペットの属性データを生かしたレコメンドECを拡大していますが、Googleなど、テック企業の代表がペット業界と密接に関わることも増えてくるでしょう。それでは世界的に面白いペットテックサービスをトレンドワードとともにいくつか紹介します。

IoT

IoT(Internet of Things)は、2018年も多く話題となった言葉でした。モノのインターネットと呼ばれ、テレビやデジタルカメラを始め、洗濯機やエアコンなどの家電製品、自動車、農業機具まであらゆるモノがインターネットと接続されることを指します。

機械とつながることで今まで取得できなかったことが、データ化されるのです。例えば、温度や湿度、気圧、照度などの環境データ、衝撃や振動、傾斜、移動などの動きを知ることができるデータ、存在検知や近接検知などモノの位置を知ることができるデータなど、本当にあらゆる情報がデータとなり、数値化され、私たちに新しい提案を生み出してくれます。

実際にあらゆる分野でIoTの製品は開発されています。GoogleやDeNAが目指している自動運転自動車もIoTの一つですし、農業界でもセンサーにより土中の水分量を計測し自動で水を排出するデバイスがあったり、乳牛界でも牛にセンサー付きの首輪をつけ、牛乳が最適なタイミングで採れるデバイスも開発されています。

では、ペット業界ではどうなのでしょうか。もちろんペット業界にもIoT製品がたくさん出ています。今回は世界でたくさんトレンドになっているIoTサービスについて紹介します。

Furbo

Furbo ドッグカメラ Amazonで見る

日本でも展開しているドッグカメラです。見守りカメラ市場は拡大していますが、Furboは少しアイデアをずらして展開していることが特徴で、お留守番中の愛犬を見たり、話しかけたりできるだけでなく、おやつもあげられるドッグカメラです。

Whistle

ペットのウェアラブルデバイスIoT「Whistle」

Whistleは、ペットのウェアラブルデバイスです。心拍数や歩数などヘルスケアデータを取得することができます。2016年3月にマースジャパンに売却しています。ウェアラブルデバイスは、今後さらに血液や遺伝子データなど、健康に紐づくデータが取れるかが拡大の鍵になると予測されます。日本ではまだまだ浸透していませんが、いかに日常的に首輪にセンサーをつける時代になるかがこれからの課題と言えます。日本でもINUPATHYや、猫用のCatlogなど、ウェアラブルデバイスが増えてくるでしょう。

シェアリングエコノミー

モノやコト、時間を「所有する」時代から「共有する」時代に移り変わろうとしています。自動車業界ではメーカー側もカーシェアリング事業を展開していますし、ホテル産業はAirbnbが席巻しています。日本でもメルカリが上場しましたが、シェアリングエコノミーサービスは拡大しています。ペット業界でも世界的にペットシッターのシェアリングサービスが普及しています。

Rover(Dog Vacay)

ペットシッターシェアリングサービス「Rover」

ペットシッターのシェアリングサービスの最古参でもある「Dog Vacay」「Rover」の両社は昨年、合併を発表し、世界No1のシッターシェアリングサービスに拡大しています。本サービスは、シッターをしたい愛犬家と犬を預かってほしい飼い主をつなぐマッチングプラットフォームです。ペットホテルの物理的、経済的なデメリットを解消するサービスとして普及してきました。日本でも「Dog Huggy」が同様のサービスを展開しています。ただし、飼育される犬のサイズ、仕事など生活スタイルが日本とアメリカでは大きく異なるため、日常的に預けるニーズが増えてくるかはまだ疑問です。

Wag

犬の散歩代行サービス「Wag」

アメリカで拡大する犬の散歩代行サービス「Wag」です。前者の「Rover」などはマーケットプレイス的モデルで、ペットシッターや散歩代行人はペットオーナーと直接連絡を取りあってペットを預かります。それに対してWagはオンデマンド方式で、会社が散歩代行者を事前に選定しておき、要求に応じて都合のよい散歩人を派遣する。つまりWagは、AirbnbよりUberかLyftのような運営形態をとっているのが特徴です。

以上がペットテックサービスです。その他、今後拡大してほしいという期待も込めてペット市場のトレンドワードを紹介します。

ペットツーリズム

那須は心も体も癒やす「人と犬の楽園」 シロップ初の社員合宿レポート

ペットの家族化が進んでいること、交通や宿などハード面の充実により、ペットとお出かけする機会は年々増えています。ペットツーリズムはトレンドワードとなっており、犬とキャンプや犬とハイキング、犬と旅行などが今後拡大していくでしょう。実際にシロップでも社員合宿で那須に愛犬と旅行に昨年行ってきました。


マイクロチップの統制と繁殖管理のブロックチェーン化

ブロックチェーンとペット
これは現実的には難しいですが、長期的な期待を込めて選びました。殺処分問題の原因の一つとして、繁殖規制が挙げられます。日本ではマイクロチップの着用が推奨されているものの、スコットランドなど義務化が進む国も増え、今後義務化が進むと推測されます。しかし、チップから取れるデータはまだまだ少なく、さらに技術革新によりマイクロ化と低価格化が進むことでマイクロチップを通した個体管理は増加すると予測されます。そして、これらの個体管理がされていないことも問題の一つであり、ブロックチェーンでデータ管理がされれば、個体管理から獣医療の診療管理まで一括でできると期待されます。

獣医療の変革は今後拡大が見込め、ゲノム遺伝子による生体管理、再生医療なども拡大していくでしょう。


まとめ:2019年はペットフレンドリー元年に

2018年はスマートフォンの普及だけでなく、クラウドなどの汎用化によりAIやIoT製品の開発も進み、ペット業界にもITを生かした製品が増加してきました。そしてデータが蓄積されることで、今まで分からなかった犬や猫の体の構造や気持ちが解明される時代になっています。いわば人と動物の距離が近くなりつつあります。

シロップは「人が動物と共に生きる社会をつくる」をミッションにしている会社ですが、人と動物の共生とは、動物が好きな人も苦手な人も全ての人が命を共にする動物を排除することなく許容することだと考えています。しかし、許容するためには動物と暮らす人たちが最低限のマナーを保ち配慮を持って社会で生活をすることが大切です。この共生の在り方をペットフレンドリーな社会と位置づけ、真摯に取り組んでまいります。