
言葉が話せない愛犬たちとの会話、もしかしたらもっと上手に伝えてあげる方法があるかもしれません。どんな話し方をしたら愛犬との絆を深めることができるのでしょう? ドッグトレーナーの西岡先生に聞いてみました。
犬も話しかけてくれたら嬉しい

愛犬にどれくらい話しかけていいのか。あまり深く考えたことはないという方が少なくないと思います。そもそも話しかけたほうがいいのでしょうか? それとも話しかけないほうがいいのでしょうか?
日常的に話しかけられている犬には、聞こうという意思が出てくるものです。よく話しかけられている犬は人の顔をよく見ますし、聞き取ろうという動きもします。ご家庭では、どんどん話しかけてあげていいと思います。(西岡先生)
犬たちは、飼い主さんが話しかけてくれるのを楽しみにしているかもしれないですね。それでは、どんな話し方をすればいいのでしょう? 西岡先生によると、ポイントは3つあるそうです。
- 話しかけるときは低い声より高い声
- 伝えたいことはシンプルに
- 優しく丁寧に
それぞれ詳しく紹介していきます。
1. 話しかけるときは低い声より高い声

よく「男性より女性のほうが動物に好かれやすい」といわれますが、それは声のトーンが高いか低いかが関係しています。犬に限らず動物が威嚇のために唸るとき、いつもより低い声になりますよね。ですから、動物は低い音を聞くと警戒してしまうんです。
男性は普通に喋ろうとすると、どうしても低いトーンになってしまいます。動物に対して声をかけるときは、意識的に高めのトーンで話しかけてあげるとコミュニケーションが取りやすいと思います。女性も怒るときは声を低めにして、褒めるときは声を高めにすると伝わりやすくなるでしょう。(西岡先生)
僕も普段の生活の中で、「お腹空いたの? どうしたの? 食欲ないね、大丈夫?」といった言い方をしたり、「マルちゃんいい子だねー」と話すことはあります。擬人化しすぎるのは良くないですが、ほどほどであれば赤ちゃん言葉が悪いということにはなりません。(西岡先生)
ちなみにイギリス・ヨーク大学の研究チームによると、赤ちゃん言葉で話しかけた場合のほうが犬は好意的に接することがわかったそうです。もっとも、「赤ちゃん言葉が良かった」というより、赤ちゃん言葉を話すことで声のトーンが高くなり、抑揚も強くなることが関係しているそうですよ。
2. 伝えたいことはシンプルに

2つ目のポイントは、シンプルに伝えるということ。犬も頑張って私たちの言葉を理解しようとしてくれますが、人と同じように話しかけられても困ってしまいますよね。
例えばお座りをさせるために指示を出すとして、「ほら、おすわりでしょ、おすわりしなさい、なんでおすわりしないの? おすわりでしょ」といった形で伝えてしまうと、「おすわり」という単語そのものの意味が伝わりにくくなってしまいます。指示を出す場合は、一つ一つシンプルに言ってあげた方がいいですね。(西岡先生)
シンプルに伝えるといっても、単語を連呼すればいいということでもありません。犬たちはその言葉の重要性を感じなくなってしまうからです。
お散歩のときやドッグランで遊ばせるときもそうですが、いざというとき名前を呼んだら帰ってくる、振り返る、アイコンタクトが取れるというのはとても大切なことです。良くないのは名前の連呼です。犬にとっては全然嬉しくないし、むしろうるさいだけで、呼ばれても次第に反応が無くなっていきます。
特に最近は写真を撮ることが多いと思いますので、名前を連呼したり「ごはん」を連呼したりすると、最初は反応しても段々しなくなって、カメラを見ただけでどよーんとしてしまうかもしれません。コミュニケーションは双方向ですから、つまらなそうにしているのにいちいち名前を呼ぶのは逆効果になってしまいます。(西岡先生)
撮影の注意点は心当たりのある方もいるのではないでしょうか。愛犬にとって大切な言葉なら尚さら、大切に使ってあげたいですね。
3. 優しく丁寧に

最後は、優しく丁寧に伝えるということ。言葉で伝えるのが難しいからこそ、言葉以外のことにも気を遣って伝えてあげなければいけません。
犬は、話しかけるときの声色やかけ方から人の感情を敏感に感じ取ります。ですから、なるべく穏やかな優しい気持ちで声をかけてあげることはとても大切です。名前を呼んで褒めるときも、例えばマルなら、「マル!」だけでなく、「マルちゃん。そうだね。えらいね」といった感じでお互いに楽しくなるよう意識して声をかけてあげられるといいです。
ただ、どうしても強い口調で声をかけなければいけないときもあると思います。そんなときのためにも、日常的な声のかけ方はなるべく優しくしたほうが良かったりします。トレーニングでいえば「呼び戻し」ということになりますが、いつも怒鳴るように呼んでいれば反応が鈍くなります。普段から穏やかに声をかけられていれば、強い口調で呼ばれたとき、ハッと反応してくれるでしょう。(西岡先生)
いざというとき守ってあげられるように、普段からメリハリをつけて呼んであげることが大切ですね。
先ほど写真撮影の話もしましたが、犬にとって「楽しい」「嬉しい」に直結する言葉は大切に使うようにしてください。「ごはん」や「おやつ」と言ったら実際にあげる。「お散歩」と言ったら実際にお散歩に行く。言って何もしない、悪く言えば騙すような言い方は一番良くないことです。
人同士のコミュニケーションと同じで、犬とも誠実に接しましょう。そしてお互い楽しくいられるように、話しかけるときは「優しく穏やかに」を意識するようにしてください。(西岡先生)
犬との正しい話し方というと少し難しく考えてしまうかもしれませんが、「少し高めの声を意識して」「伝えたいことをシンプルに」「優しく丁寧に」ということですから、今からでもできそうですね。ぜひ絆を深める話し方、意識してみてください。
ドッグトレーナー。青山ケンネルガレッジ卒業 訓練所やショップ、ブリーダーの元でトレーナーとして修行、トリマーやショップの店舗管理等、さまざまな形で動物業界に携わる。 その後独立し、フリーのドッグトレーナーとして活動。 家庭犬の出張・預かりトレーニングを主とし、都内各地でグループレッスンを開催。 ドッグモデルのトレーニングも担当。各種CMや雑誌等多数。 東京都動物愛護推進委員であり、保護犬の一時預かりボランティアもしている。