レントゲンと聴診で僧帽弁閉鎖不全症と診断された 信じて良い?【循環器認定医が回答】

レントゲンと聴診で僧帽弁閉鎖不全症と診断された 信じて良い?【循環器認定医が回答】

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白金高輪動物病院・中央アニマルクリニック顧問獣医師で獣医循環器認定医の佐藤です。今回は、「レントゲンと聴診で僧帽弁閉鎖不全症と診断されたが信じて良いか」というポメラニアンの飼い主様からいただいたご相談にお答えいたします。

相談:レントゲンと聴診で僧帽弁閉鎖不全症と診断されたが信じて良い?(ポメラニアン/10歳半/オス)

10歳半、ポメラニアン、オス、去勢済みです。レントゲンと聴診で、僧帽弁閉鎖不全症(肺に水が入ってる)、1年間の生存率50%と診断を受けました。症状は、胸部に手をあてて抱っこすると咳き込む、落ち着いて状態でもハアハアを口を開けて呼吸する、その他歯周病になっています。薬は3種類、飲んでいます。アピナック、ピモデハート、ラシックスです。

セカンドオピニオンとして、循環器、主に心臓に強い獣医師の方に相談したいです。相談したいこととしては、レントゲンと聴診で、僧帽弁閉鎖不全症と判断できるのかどうかです。また治せないと言われてしまい、薬で症状を抑えるだけという、一つのアプローチしかないのか? 他にアプローチがあったり、検査方法が他に必要なのか? という点です。どうぞよろしくお願いいたします。

回答:レントゲンと聴診だけで僧帽弁閉鎖不全症と判断するのは難しい

レントゲンと聴診だけでの判断では、現在の心臓病を把握するのは難しく、今の薬が妥当なのかどうかの判断もできかねます。ただ、他の検査をする際に負担になってしまうことへの考慮の可能性もあります。

咳の症状も必ずしも肺に水が溜まって咳をしているとは限りません。心臓肥大により気管が圧迫されているだけという可能性もあります。

また、生存率50%と判断するには検査が少なすぎます。今の検査だけで、僧帽弁閉鎖不全のみと診断するのも危険です。もう少し詳しく検査をする必要があるかと思います。

治療としては、おっしゃる通り内科的な治療では治すことは難しく(心臓病の種類にもよりますが)症状を抑えていくだけです。ただ、動物ではこの内科的治療が主流です。もう一つは、外科的治療もあります。僧帽弁を形成し血液の逆流をなくす手術です。では、なぜ外科的手術が主流にならないかというと、理由は幾つかあります。

  • 手術の成功率は上がってはいるものの、リスクがある。
  • コストがとてもかかる。
  • 手術したはいいものの、投薬がやめられないケースもある。

これらの理由などから、結局内科的に見ていくケースが多いです。