【ペットの再生医療vol.3】スーパー細胞「脂肪幹細胞療法」が猫の口内炎の救世主に?

株式会社J-ARMの獣医師、遠矢です。前回は、椎間板ヘルニアに対する脂肪幹細胞療法についてお話ししました。いかがだったでしょうか?再生医療の可能性を少しでも感じていただければ嬉しいです。さて、今回はネコちゃんの口内炎に対する脂肪幹細胞療法についてお話しします。

みなさんは口内炎になったことはありますか? 口内炎になると非常に痛いですよね?

ちなみに私はよく頬の内側や唇を間違って噛んでしまうので口内炎の痛みはイヤというほど実感しています。私の噛み合わせが悪いのでしょうか??口内炎になると痛みでごはんを食べるのもイヤになるくらいです。

……話が脱線したのでネコちゃんの口内炎の話に戻りましょう。

猫の口内炎

お口を触られるのを嫌がるネコちゃんも多く、ネコちゃんのお口のケアは難しいですよね? そのせいか、口内炎はネコちゃんに多くみられる病気です。そして、非常に厄介な病気でもあります。

なぜかというと、
  • 長い間、治療をしても治らないことがある

  • 薬による治療で副作用が出ることがある

  • 根本的な治療がネコちゃんにとっても飼い主にとってもつらい一面がある

といった点からです。

最悪の場合は死に至ることもあり、ヒトの口内炎とは比べものにならないくらい重い病気なのです。

では、ネコちゃんの口内炎の原因、症状、治療についてみていきましょう。 そして、口内炎治療の新たな可能性についてお話ししていきましょう。

口内炎の原因は?

ネコちゃんが口内炎になる原因は何なのでしょうか? 実ははっきりわかっていないのですが、歯石や歯垢に存在する細菌が増殖することで口内炎を発症し、悪化させると考えられています。

口内炎の原因となる細菌の増殖はどのようなときに起こるのでしょうか?

  • 口の中が傷つき、細菌が侵入し増殖する
  • 体調や栄養バランスが乱れている
  • ウイルスに感染している
  • 免疫力が低下している

以上のようなときに口内炎になると考えられています。

口内炎の症状は?

では、口内炎のネコちゃんにはどのような症状がみられるのでしょうか。

はじめの症状として、
  • 口臭がする
  • 口の中(歯茎)が赤い

といったものがあります。普段からネコちゃんの口の中をケアしていれば気づく変化かもしれませんが、なかなか気づきにくいのが現状のようです。

さらに悪くなると、 ・さらに口臭がきつくなる ・よだれが増える ・ごはんの食べ方がおかしい ・ごはんを食べなくなる ・さらには、水も飲まなくなる ・口の中の赤みが全体(歯茎、のど、舌)に広がる
といった症状がみられるようになります。 重度の口内炎になったネコちゃんは痛みでごはんも食べられなくなり、水すらも痛みで飲めなくなるのです。そうすると体重も減り、元気もなくなります。また、痛さのあまり触れられるのを嫌がり凶暴になることもあります。

口内炎の治療は?

では、口内炎になってしまった場合、どのような治療を行うのでしょうか? 最初にお話ししたとおり、口内炎の原因がはっきりとわかっていません。つまり、特効薬がないのです。

現在の動物病院では、以下の治療が主に行われています。

1. 口の中の洗浄・消毒

細菌がひそむ歯石や歯垢を取り除きます。ただ、症状が治まるのは一時的で、再び細菌が増えて口内炎になってしまうことが多いようです。痛みがひどくなった状態では麻酔をかけて行わないといけないので、ネコちゃんの年齢や健康状態などを獣医師とよく相談してください。

2. お薬の投与

細菌と戦う抗生物質や炎症(痛みや腫れ)を抑えるステロイド剤といったものを組み合わせながら治療していきます。うまく治療ができれば、比較的長い間お薬で症状を抑えることができます。ただ、長い間お薬を使うことによってさまざまな副作用がみられることが多くあります。また、お薬の効果がだんだん弱くなってきて、お薬の量を増やしていかなければならない場合もあります。

3. 抜歯

1や2の治療を行っても最終的に症状が治まらず、悪化した場合に飼い主のみなさんが選択されるのが抜歯です。そして、根本的な治療を目指すなら全顎抜歯が必要になります。全顎抜歯とはネコちゃんの歯を全部抜くことです。

細菌が存在し、増殖する歯をなくしてしまおう! というのがこの治療の考え方です。ただ、全身麻酔で長時間にわたる手術が必要なのでネコちゃんの健康状態や手術のリスクを考えなければなりません。また、飼い主さんの心情として大事なネコちゃんの歯を全部抜いてしまうことをすぐに決断するのは非常に難しいことだと思います。

口内炎の新たな治療法

全顎抜歯しか根本的な治療がなかったネコちゃんの口内炎でしたが、脂肪幹細胞を使った治療に効果があるのではないか、ということがわかってきました。

というのも、全顎抜歯やお薬の投与で症状が良くならなかった口内炎のネコちゃんに脂肪幹細胞を投与すると症状が回復したからです。手の打ちようがなかった状態のネコちゃんに脂肪幹細胞が効果を発揮したのです‼

まだまだすべての口内炎のネコちゃんに効果を発揮したわけではないですが、口内炎治療に新たな兆しが見えてきました。

もちろん無責任に100%の効果があるとは言えません。でも、病気の苦しみから救ってくれる可能性を大いに秘めた治療法だと考えています。 大切な“家族”の“明日”を良い日にするために獣医師と話してみてください。きっと、力になってくれると思います。

次回も、脂肪幹細胞療法の一例をお話しします。

ワンちゃん・ネコちゃんの再生医療が受けられる病院 http://j-arm.biz/owner/hospital_list お近くの病院を探してみてください!!

追記:抜歯治療はまず、臼歯(きゅうし)と呼ばれる歯を全部抜く全臼歯抜歯を行います。それでも改善が見られない場合に全顎抜歯を行います。すぐに全顎抜歯しなければならないわけではないので獣医師と相談してください。