柴犬まるもびっくり! 知ってるようで全然知らない犬の五感を学ぼう!【アニマル・ウェルフェア サミット

8月26日(金)、27日(土)に東京大学本郷・弥生キャンパスで行われた「アニマル・ウェルフェア サミット 2016」。2日にわたって開催された本イベントでは、動物に関わる多くのプログラムが実施されました。中でも27日は、家族や友人と参加できるような楽しいプログラムが多い印象でした。今回は2日目のプログラムから、有名犬「まる」、そしてドッグジャーナリストのアルシャー京子さんと一緒に犬の豆知識を知ることができる「犬楽」の様子を紹介します。

大人気の柴犬「まる」も登場! 犬についてみんなで知ろう

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今回のプログラムは、意外と知らない犬の生態について学ぼうというもの。素朴な表情や佇まいで絶大な人気を誇っている柴犬「まる」とその飼い主小野慎二郎さん、そしてドイツ在住のドッグジャーナリストであるアルシャー京子さんが登壇しました。

まるがハアハアと舌を出しているところを見て、「暑いかもしくは緊張している可能性が高い」とアルシャーさん。早速犬に関してちょっと知れたところで、犬の五感についての講義が始まりました。



今年8歳になる「まる」。小野さんによると、8年一緒に暮らしていても、まるには世界がどう見えているのか分からないのだそうです。言葉を発することができない犬は、飼っている人間が十分に観察してあげないといけません。

アルシャーさんは、「犬も人間と同じように触覚、視覚、味覚、嗅覚、聴覚がある。それを知らずに暮らしていくのは、今回のテーマであるアニマル・ウェルフェアに反しているんです」と述べた上で、これを機に知っていきましょうと呼びかけました。

匂いを嗅ぐ=コミュニケーション!? 一番大事な"嗅覚"

私たち人間が周りを認識するときは嗅覚よりも視覚を使いますが、アルシャーさんによると、犬にとって一番大事な感覚は嗅覚なのだそう。それもそう、犬の鼻には人間よりも何十倍の表面積を持つ粘膜によっていろんな匂いを判別でき、嗅覚が発達しているのだそうです。

さらに、私たちは指紋で個人を識別しますが、犬の場合は鼻紋(びもん)がその役割を果たすことからも、犬にとってどれだけ鼻が大事なのかが分かります。

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ここで内容は、犬の散歩中の話へ。小野さんによると、「まる」のお気に入りの匂いは「散歩のときに嗅ぐ電信柱の匂い」なのだそうです。他の犬のおしっこの匂いは「ここにあの犬が来たんだな」という印になります。つまり、私たち人間が目で見て他人を認識するのと同じように、犬も匂いを嗅ぐことで他の犬を認識するのです。

そのことを踏まえて、アルシャーさんは日本特有のマナー意識に苦言を呈しました。「犬を散歩に連れていくときに、匂いを嗅がせないでリードをぐいっと引っ張る人がいますよね」と具体例を提示し、「加えておしっこをさせないために匂いを嗅がせないというしつけの仕方もあります。私は大反対なんですけどね」と苦い顔を浮かべました。

人間で例えるなら、気になる場所に近付けず、そこにいる誰かの存在を認識することもできない……。人間に置き換えるとストレスがたまりそうなことが、匂いをかがせない犬の散歩に近いのかもしれません。

呼びかけるときは高い声で? "聴覚"に関する不思議

犬の聴覚は人間の役4倍もあるのだそうです。中でも犬は高音を聞き取りやすいため、トレーニング中などは高い声を出して聴こえやすくしてあげるといいと言います。

例えば多くの機械に搭載されているシャフトの音。私たちには微弱な音かもしれませんが、犬にとっては強烈な金切り声に聞こえるのです。人間が知覚できる音を基準にして考えるのではなく、あまり大きい音を必要以上に発しないなど、「犬だったらどう聴こえるだろう?」と考えた方がいいかもしれませんね。

「ちなみにまるの好きな音はありますか?」とアルシャーさんが尋ねると、「おやつをもらえると思うのか、スーパーのレジ袋の音が好きですね」と会場の笑いを誘いました。

犬には赤色が見えない!? 意外と知らない"視覚"のこと

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世界を認識するとき、人間は視覚、犬は嗅覚を頼ることが多いのですが、犬の視覚はどうでしょうか。結論から言ってしまうと、実は人間が認識できる色も、犬にはほとんど認識できていないのです。

人間が認識できる紫や青は、犬にも同じような「青」に見えますが、赤色は「茶色」に見えてしまいます。これは、光の三原色を認識する「視覚細胞」に関係があるのだそうです。アルシャーさんによると、「人間には赤、青、緑を認識するための視覚細胞がありますが、犬にはそのうちの赤色を判別する細胞が無いので、認識できないんです」とのこと。その結果、ちゃんと判別できるのは緑と黄色と青ぐらいなのです。

犬に与えているおもちゃに置き換えると分かりやすいかもしれません。青いボールと赤いボールを投げたとき、青いボールは目で追うことができますが赤いボールを視覚で認識することができません。たとえば芝生の上で赤いボールを投げても、犬の視覚上では同じような緑〜茶色と認識されてしまい、嗅覚頼りで探すことになります。

犬は人間の赤ちゃんに優しい? 参加者からの質問に意外な解答

アルシャーさんによる講義が終わったあとは、参加者からの質問の機会も設けられました。

小さなお子さんを連れてきていたご夫婦の方からは、「犬を飼っているのだが、娘が生まれたときは嫉妬がひどく、体調を崩したほどだった。しかし今では私たちにはたまに吠えるのに娘には優しく接するという不思議な現象が起きている。犬にとって、赤ちゃんという存在は分かっているものなのか?」という質問が出ました。対してアルシャーさんは「ちゃんと赤ちゃんであると分かっています」と解答。とても不思議な現象のように思えますが、赤ちゃんの態度や匂いが決め手となるそうです。

「3歳ぐらいまでの子供は犬にとって人間だと認識されないんですよ。言葉をちゃんと発さず、急に態度がガラリと変わったりする様子を見て、『これはいつか人間になるものだ』という認識を持つんですよ」とアルシャーさん。また、「大人とは決定的に違う、性ホルモンの匂いの有無によって嗅ぎ分けています。そして大人/子供と認識して態度を変えているんです。だからお子さんが5、6歳になってくるとまた態度が変わってくると思いますよ」と科学的な根拠からも説明しました。

意外と知っていたようで知らない犬の知識。筆者も犬を飼っていますが、特に視覚について知らないことだらけで、目から鱗でした。ペットにとって快適な環境を作り出すこと、まさに「アニマル・ウェルフェア」を考えるには、犬の生態について深く知っていかなければいけませんね。