
【動画で解説】聴導犬の訓練や仕事を紹介。聴導犬に向いている犬種や稼働数についても。
耳の聞こえない方に、いろんな音をお知らせ――8月27日に行われた「アニマル・ウェルフェア サミット2016」で、補助犬の仕事を実演するプログラム「お仕事犬デモンストレーション」が行われました。今回はその中から、聴導犬のトレーニングやお仕事の様子を紹介します。
聴導犬って知ってる?

聴導犬は、盲導犬・介助犬と並び、2002年に施行された身体障害者補助犬法に規定された補助犬の一種です。
耳の聞こえない方や聞こえにくい方に代わって音を聞き、それをタッチで教えることで生活をサポートしてくれます。
また、聴覚障害は見た目では分からないため、聴導犬が目印になることでサポートを受けやすくなるという役割も担っています。
国内の実働数は2016年7月時点で65匹となっており、盲導犬の966匹に比べても少なく導入は進んでいません。
聴導犬の仕事は介助犬や盲導犬と違い力仕事や体の大きさが必要になる仕事ではなく犬種の制限がないため、保護犬から適性のある犬を見つけ、聴導犬として育成する取り組みが進められています。
トレーニングは楽しみながら
今回のプログラムでは日本聴導犬推進協会の秋葉圭太郎さんと、来年度の聴導犬デビューを目指す3歳のラブラドール・レトリバー「アーミ」ちゃんが訓練と実際のお仕事の様子を実演しました。
最初に実演したのはトレーニングの様子です。
トレーニングと言っても、聴導犬にとって「遊び」や「楽しいこと」であると認識してもらうことが重要だと秋葉さんは話します。
犬たちが楽しんで行動した結果が「仕事」になるように工夫してトレーニングしているそうです。
そして最初の実演は、床に置いたキッチンタイマーの上におやつを乗せ、音が鳴ったら食べに行くというもの。食べるとさらにおやつがもらえるため、「音が鳴る=そこに行くとおやつがもらえる=楽しい」という認識ができていくのです。
鼻でツンツンしてお知らせ
次のトレーニングは、音が鳴ったことを人に教えるという実践編。
今度はキッチンタイマーの上におやつが乗っていませんが、音が鳴ると駆け寄り、そして秋葉さんのもとに戻り、鼻で秋葉さんにツンツンとタッチして鳴ったことを教えてくれました。さらに、鳴った場所まで案内してくれます。
日常で想定されるシーンとしては、例えば玄関のチャイム。聴導犬も、サポートしてくれる人もいなければ、お客さんが来てチャイムを鳴らしても、耳が聞こえない方にはそれが分かりません。
気付かずにお客さんが帰ってしまったり、来る時間が分かっている場合はドアを開けてずっと待っていたりするそうです。
「『耳が聞こえなくても目が見えるから大丈夫でしょ』とおっしゃる方もいますが、聞こえないことの苦労はたくさんあります。それを無くしてくれるのが聴導犬なんです」(秋葉さん)
首をベロンベロンしてお知らせ
最後は、目覚ましが鳴ったら起こすトレーニングです。
聴導犬も、起こしてくれる人もいない場合は、例えば扇風機のタイマーを使って風で起きたり、カーテンを開けて太陽の光で起きたりするそうです。
でも、午前0時に寝て、午前4時に起きなくてはいけないとしたら、ちゃんと起きられるか安心して寝られません。そんなとき聴導犬がいれば、安心してゆっくり寝られるわけです。
そして実際に秋葉さんがベッドに横になり、携帯のアラームが鳴ると……。
アーミちゃんが秋葉さんの首をなめて教えてくれました。でも、寝ている人がすぐ起きるとは限りません。
秋葉さんが起きずにいると、口をベロンベロンなめたり、反対側に回ってなめたりとあの手この手で起こそうとしてくれます。
もともと手で叩いて起こすようにトレーニングしていたのですが、アーミちゃんはどうしたら起きるか自分で考え、自分なりの起こし方をするようになったそうです。
聴導犬が盲導犬・介助犬と大きく違うのは、ユーザーさん(耳が聞こえない方)からの指示が無いという点です。
音が鳴ったら自分で考えて行動しないといけません。音が鳴って行動しなかったとしても、ユーザーさんは行動していないことに気付けません。そのため、聴導犬が仕事をしなくなってしまうケースもあるそうです。
最後に、秋葉さんは「仕事と言うと厳しいイメージを持たれる方もいらっしゃいますが、犬たちにしてみれば遊びです。
ほめてもらうために楽しんでいるということを理解していただければと思います」と話し、聴導犬のデモを閉めくくりました。