
犬とコミュニケーションってどう取るの? アニマル・ウェルフェアにのっとった犬の飼い方とは
リオ・オリンピック閉会式帰りの小池都知事も登壇した「アニマル・ウェルフェア サミット2016」。東京大学にて、2000人を超える方々が人と動物の未来について考えました。8月27日(土)に開催された「アニマル・ウェルフェア講座」では、ドイツ在住で獣医師のアルシャー京子さん、スウェーデン在住でドッグライターの藤田りか子さん、そしてイベントを主催する一般財団法人「クリステル・ヴィ・アンサンブル」で代表の滝川クリステルさんが、アニマル・ウェルフェアの考え方について議論しました。
「アニマル・ウェルフェア」とは

「アニマル・ウェルフェア」とは、動物が自然に行動できるような環境を整えることです。動物が主体となり、人と共存していける環境を整えること。その考えを正しく理解する上で重要な「5つの自由」という訓示があります。
- 飢えと渇きからの自由
- 不快からの自由
- 痛み・傷害・病気からの自由
- 恐怖や抑圧からの自由
- 正常な行動を表現する自由
今回は、「アニマル・ウェルフェアにのっとった犬の飼い方とはなにか」についてご紹介します。「アニマル・ウェルフェア」についてまとめた記事もありますので、詳しくは関連記事をご参照ください。
犬や猫のこと、考えられていますか?

たとえば猛暑の夏、うんちやおしっこをさせたいからという理由で、まだ日の高い昼間に散歩に連れて行ったことはありませんか?
アスファルトは熱をよく吸収するため、表面温度は50〜60℃にもなることがあります。そのような中で犬が歩けば、足や肉球をやけどをしてしまいますし、地表近くの気温は人間が感じる以上に高いため熱中症になる危険もあります。また、意外かもしれませんが熱中症は室内でなることも多く、空調機器による室温調節や、十分に水分補給ができる環境づくりが大切です。
飼い主の都合で犬や猫の状態を無視してはいけませんし、感じ方を科学的に理解することも重要です。その上で思いやりを持って飼うことが、アニマル・ウェルフェアにのっとった飼い方と言えます。
散歩にもコミュニケーションが大事!

スウェーデン在住のドッグライター藤田さんや、ドイツ在住の獣医師アルシャーさんは、ヨーロッパと日本では散歩に対する意識が違うと話します。日本においては、前述した通りうんちやおしっこが目的だったり、運動不足解消のためだけと考えて散歩に行く方も少なくないのではないでしょうか。
しかし、散歩はコミュニケーションを取りながら歩くことで、犬にとってのアクティビティーになります。名前を呼び掛けてあげながら歩いたり、おやつをあげたりと、コミュニケーションを取ることで、犬にとって大切な時間になるのです。
犬と犬とのコミュニケーションにも気配りを
散歩をしていて、ほかの犬を見つけた途端に興奮して走り出し、リードを引っ張られた経験はありませんか? その際に、「ダメダメ」と引っ張ってしまうと、自分が好きなようにできないことでストレスがたまってしまうこともあるそうです。無理にリードを引っ張らず、興奮状態を抑えつつ他の犬とコミュニケーションを取らせてあげることが大切です。また、「散歩」という言葉自体が誤解を招きやすいともアルシャーさんは言います。ドイツ語では犬と出かけるときに、「オースラフ」という言葉を使い、「散歩」という言葉は使わないそうです。犬との散歩のそれ自体が言葉になるほど、犬との暮らし方が密接に考えられている証拠ではないでしょうか。
しつけをする上で大切なことは、コミュニケーションなんです

しつけをしても全然言うことを聞いてくれない…なんてこともあるかと思います。しかし、しつけをする前に、犬とコミュニケーションを取り信頼関係を築くことが何よりも大切だと言います。
たとえば野良犬を引き取ったとします。当たり前ですが、すぐにはなかなか言うことを聞いてくれません。というのも、人とコンタクトを取ったことがないからです。そのため、まずは人の目を見ることができ、コミュニケーションが取れるようになってからしつけに入ることが大切だと言います。
ではどのようにコミュニケーションを取ればよいのでしょうか? 藤田さんやアルシャーさんがおすすめするコミュニケーションの取り方をご紹介します。
なんでも話しかけてあげましょう
たとえば愛犬が冷蔵庫の前にいたとして、ただ足で邪魔者扱いしていてはコミュニケーションは取れません。「行け」という声や手の仕草だけでも、一つのコミュニケーションになると言います。できる限り、ケージ飼いはやめましょう
「おしっこをカーペットでしちゃうから」「散らかすから」という理由でケージで飼われる方も多いですよね。しかしスウェーデンでは、「ケージで飼ってはいけない」という法律もあるほど、コミュニケーションを取ることが当たり前な環境があるそうです。できる限りケージの外で飼うようにしてあげることで、ストレスも溜め込まなくなります。コミュニケーションを取る機会を増やしてあげることが大切です。
犬の欲求を元にコミュニケーションを取ってあげましょう
犬とコミュニケーションを取るには、犬が興味のある(欲求を満たす)ことを一緒にすることが大切です。たとえば、フードやおやつあげるときに人間の手からあげるようにすることで、コミュニケーションを取ることができると言います。また遊ぶことが好きな犬であれば、おやつやおもちゃを使って一緒に遊ぶことも一つのコミュニケーションです。最初は簡単にあげるだけでも良いですが、徐々におやつをあげる方法を複雑にしてあげて、散歩中にしつけとして与えたり、隠して探させることも良い遊びになります。
このように、犬とコミュニケーションを取ることで信頼関係ができ、きちんとしつけができるようになると言います。そしてコミュニケーションを取ってあげることが、犬の気持ちを理解しケアしてあげることにもつながるのです。では、コミュニケーション以外にケアをしてあげられることはあるのでしょうか?
生活3大要素の衣食住に配慮はできていますか?

人間と同じで、犬や猫が生活をする上で衣食住は大切な要素です。そして、その中でも、住環境が意外と配慮できていないと言います。
たとえば、車で犬と一緒に出かけるとき、どうされていますか? ただシートの上に座らせたり、ケージに入れるだけになっていませんか? 犬は綺麗好きで快適性を求めます。そのため、ストレスを抱えず安心して休める環境を用意してあげることが大切です。
ふかふかした布やベッドを置いてあげるとか、ケージの中にもマットを入れるなど、犬が落ち着いて過ごせる環境を整えてあげましょう。
まとめ

「アニマル・ウェルフェア」とは、動物が自然に行動できるような環境を整えること
犬や猫とコミュニケーションを取り、信頼関係を築きながらしつけをおこなうことが大切
犬や猫のことを想い、衣食住に配慮してあげよう
いかがでしたか? アニマル・ウェルフェアは言葉で理解すると難しいですが、内容は至ってシンプルで、犬や猫の体や欲求のことを想って行動することが大切です。
もちろん、日本とヨーロッパは文化や環境が異なるため、一概に飼い方そのものを真似する必要はありませんが、本当に犬や猫が幸せなのかを意識してあげましょう!