「ふるさと納税で毎年10億円を調達する」 ピースワンコが「殺処分ゼロ」へ新プロジェクト始動

「ふるさと納税で毎年10億円を調達する」 ピースワンコが「殺処分ゼロ」へ新プロジェクト始動

Share!

10月4日(火)、ピースワンコ・ジャパンが都内で記者発表会を開き、「殺処分ゼロ」へ向けた新プロジェクトとして、ふるさと納税で毎年10億円の資金調達を目指すと発表しました。調達した資金は譲渡センターや収容施設の建設に充てるほか、人材育成や他団体への助成にも活用するとしています。

イベント時の集合写真
左から、神石高原町まちづくり推進課 小坂依文課長、ピースウィンズ・ジャパン 大西健丞代表理事、災害救助犬 夢之丞(ゆめのすけ)、ピースワンコ・ジャパン 大西純子プロジェクトリーダー、トラストバンク 須永珠代代表取締役

今回の募集は、ふるさと納税総合サイト「ふるさとチョイス」で行われ、納税先はピースワンコの活動拠点がある広島県神石高原町(じんせきこうげんちょう)です。

プロジェクトHPの写真

問題を解決するための方程式は8割くらい見えた

ピースワンコは、1996年から人道支援活動を行っているNPO法人ピースウィンズ・ジャパンが2010年からスタートさせたプロジェクトです。活動拠点である広島県は、2011年の犬猫殺処分数が全国で最も多い8340匹(犬が2342匹、猫が5998匹)でしたが、同プロジェクト開始後に減少を続け、犬は今年4月に殺処分ゼロを達成。猫も連携する保護団体の活動により今年8月に殺処分ゼロとなりました。

広島県の犬の殺処分の推移

記者発表会に登壇したピースウィンズ・ジャパンの大西健丞代表理事は、「広島も少しでも手を抜けば元に戻る状態ではあるが、問題を解決するための方程式は8割くらい見えた。これを全国に広めていくにはどうすればいいかと考え、今回のプロジェクトになった」と話しました。

プレゼンターの写真

単独で殺処分ゼロを実現するなら35〜50億円が必要

ピースワンコは譲渡センターを広島だけでなく神奈川県(藤沢市辻堂)にも設置し、年度内に都内2カ所でも開設予定としています。同団体が犬の保護事業にかける年間予算は2013年度が4224万円でしたが、2016年度は5億1000万円に上ります。

保護犬の事業費の推移のグラフ

大西代表は、もし単独で犬の殺処分ゼロを達成するなら35〜50億円が必要だと話します。

「無謀だと思うかもしれないが、意外とできる。欧米には年間2000億円をファンドレイジング(個人や国からの資金調達)で集める人道支援系のNGOがあり、動物愛護系でも100億円を超えるものがある」(大西代表)

大西代表とプレゼンター

広島県は殺処分ゼロを達成しましたが、それは保護される犬猫がゼロになったわけでも、保護された犬猫がすべて譲渡・返還されたわけでもありません。ピースワンコなどの保護団体が殺処分対象だった犬猫をすべて保護できたためです。

ピースワンコは2010年10月から今年9月末までに1043匹の犬を保護し、399匹を譲渡・返還しています。その差である644匹には病気などで亡くなった犬や、ピースウィンズで災害救助犬として活躍する犬もいるものの、約500匹は現在も広島の拠点で保護中となっています。

ピースワンコの事業説明表


「保護犬猫の新しい流通を作りたい」

大西代表が「保護する仕組みはできてきたが、収容したからゼロになったわけではない。次の課題として、譲渡を進めなければいけない」と話す通り、「殺処分ゼロ」を実現できても譲渡が進まなければ根本的な解決にはつながりません。

今回のプロジェクトで集めた10億円は2020年までの犬の殺処分ゼロを達成するため、「譲渡センターの新規開設」「保護施設の拡充」「人材育成」「他団体との連携」「保護犬・猫を迎えることをスタンダードにする啓発活動」などに利用される予定です。

最後に大西代表は、記者からの「ペット業界をどう考えているか」という質問に対し、「現在70万匹がペットショップで購入されている。殺処分されている犬猫は7万匹。1割の人が保護犬猫の飼い主になれば殺処分は無くなる。保護犬猫の新しい流通を作りたい」と次の取り組みへ向けた意気込みを語りました。

2イベントに登場した保護犬
夢之丞(ゆめのすけ)は殺処分される直前に保護され、現在は災害救助犬として活躍しています

神石高原町からのお礼の品は?

今回のプロジェクトは広島県神石高原町へのふるさと納税ですが、結果的に他の地域での活動にも使われる可能性があります。これについて神石高原町の担当者は、「全国的な殺処分ゼロという趣旨に賛同して納税していただく」とコメントしています。

なお、神石高原町から納税者へのお礼の品は、寄付金額によって選べるものが異なります。産地の食材を使ったおかしやレトルトカレー、お米や地酒などが用意されています。
ホームページの写真