
【アフリカ9カ国縦断記】ウガンダで出会った野生のゴリラたち
アフリカ縦断記、今回はウガンダ編! ケニアで旅が始まってから初めて陸路で国境を越えたり、雨季の中テント生活を送ったりと、東アフリカに試された時期でした。そのためなかなか感慨深く心に残っています。私が見たのはもちろん一部ではありますが、ウガンダには魅惑的でカオスな街並み、野生動物が住むナイル川、絶滅危惧種であるゴリラが生息している森、古い部族の集落があり、それぞれが旅人の心を捕らえて離さないほど魅力的でした。

ケニアからウガンダまでの移動
前回のアフリカ縦断記ケニア編で紹介したように、私はオーバーランドツアーという陸路&テント泊でアフリカを縦断する旅行をしていました。ケニアからウガンダが人生初の陸路での国境越えで、何だかよくわからないけどワクワク。国境に到着するとガイドさんが「絶対写真撮るなよー窓閉めろー撮るなよー」と若干フリに感じてしまいそうなテンションで注意していました。(国境での写真撮影は法律で禁止されているらしい)
この日はケニアからウガンダのキャンプサイトまで、ガタガタ悪路を進むことたっぷり12時間。「え、余裕だったよ?」とかっこいいこと書きたいのですが、まだ慣れていなかったのでテントを設置している頃はすでに疲労困憊。キャンプサイトにある水シャワーを浴び、談笑もそこそこに寝袋に潜り込みました。

夜間、侵入者と野生動物を彼らが追い払ってくれるキャンプサイトのワンコたち。とても人懐っこい
チンパンジーの森【ブドンゴ森林保護区】
ブドンゴ森林保護区は数多くのチンパンジーが生息しており、彼らの生態系を研究する人々もよく訪れているそうです。
いくつかのグループに分かれ、目撃情報などを共有しながら進みます
森の中は坂は少なく比較的歩きやすい環境でした。足場は悪いので、チンパンジー探しはガイドさんに任せてひたすら足元を見ながら歩きます。開始から20分ほどでチンパンジーのコミュニティーに会えたのですが、身軽すぎて写真を撮るのが大変! 途中からカメラで追うのはギブアップしました。目に焼き付けた方が心に残るものなんですよね。記事を書く時に後悔するけど。

まだこちらに気づいていないのんびりチンパンジー

君のような勘のいい猿は嫌いだよ(うそ大好き)
私が一番印象に残っている瞬間は、チンパンジーの姿が見えなくなった……と思った時に周囲の木々が揺れ始め、たくさんのチンパンジーの鳴き声が私たちを囲み、その中で息を飲みながら立ちすくんでいた時です。
木の上を見上げても、後ろを振り返っても姿は見えません。ただチンパンジーが鳴き、木々がザワザワと音を立てる様子はまるで森全体が動き出したかのような雰囲気で、「とんでもないところにいるな」と感じたのを覚えています。
ガイドさんから聞いたチンパンジー豆知識
チンパンジーはコミュニティー内の子供の世話に積極的な動物だそうですが、特に母親が賢い……。ガイドさん曰く、チンパンジーのメスは妊娠する時にさまざまなオスと交尾することで、子供を産んだ後、複数のオスが「自分の子かもしれないから」と積極的に世話をする環境を作るのだそうです。その賢さにただただ感動。ヘタに月9ドラマを見るよりもチンパンジーのドキュメンタリードラマを見た方が絶対に楽しそうだと思いました。
絶滅危惧種のゴリラに遭遇【ブウィンディ原生国立公園】
私は野生のゴリラを目の当たりにした時の衝撃や、旅が終わってもなお残るトキメキが抑えられるか心配しながらこの記事を書きます。歴史が漂うブニョニ湖
私たちはゴリラの森に入るため、ウガンダ西部にあるブニョニ湖という美しい湖畔にテントを張り泊まっていました。非常に広大な湖で、たくさんの島があり、たくさんの古い集落があります。
Happy Birthday to meの日

昔、島流しに使われていた小さな島
いざ、ゴリラトレッキング!
ブウィンディ原生国立公園に入ることができる人数は規制されているため、同じ場所で3泊ほどする必要があるのです。旅の疲れを感じ始めていた時なのでちょうどよかったです。前日にゴリラトレッキングをした人に話を聞くと、
- 坂道がキツイ!
- 葉っぱや枝で怪我をするから、手袋必須
- 虫が多い
- ゴリラは1時間半で見つかった
- ゴリラ最高
- 素晴らしいけど一生に一度でいい
ということが分かったので、それなりに覚悟をしていざ出発!
トレッキング当日は、私が得意とする晴れるおまじないも効かないほどの大雨でした。当日は50米ドル(当時のレートだと5600円くらい)ほどでリュックなど荷物を持ってくれるポーターを雇います。
ウガンダで50ドルという値段は決して安くないのですが、ゴリラトレッキングは大変キツイという前情報があったのと、ポーターを雇うことが現地の人の仕事を作ることにもつながるため、ほとんどの人がポーターを雇うそうです。そしてこの決断は英断でしかなかったです。
これが真の獣道か……
葉を伝って大粒になった雨水がボトボトと落ちてくる中、1時間、2時間、黙々と歩きました。大雨が会話を遮り、足場は泥と落ち葉の相乗効果で滑りやすくなり、立ちはだかる壁のような獣道は四肢を駆使してよじ登り、びしょびしょに濡れた軍手を時折絞りながら歩き続けました。(書いてるだけで疲れてくる)
これ、壁じゃなくて道です
「あれ、昨日の人たちはもうトレッキング終えている時間だ」そう気づいた頃、ガイドさんに「これからもっとキツイくなるから、カメラ以外の荷物をポーターに預けたらどうか」と聞かれます。これ以上道が険しくなるのか……とがっくりしたそんな時。かすかにパコパコパコッという音が聞こえました。
そう、ゴリラのドラミングです‼︎‼︎‼︎(ドコドコドコッを想像していた)
ついにゴリラと遭遇!
私たちは、はやる気持ちを抑えながら壁(のような坂道)を下ります。しばらく歩き続け膝が笑い始めたその時、とうとう待ちに待った瞬間が迎えてくれました。目の前には、木に手をかけ、堂々たる姿でこちらをじっと見つめるゴリラの姿が現れたのです‼︎ ウガンダの大木も若木に見えてしまう、想像以上の大きさ。迫力。もう少しで感情をも読み取れそうなまっすぐな瞳。私はこの時から一目惚れを信じるようになりました。

深い森がよく似合う……
一瞬の対峙は私からすると随分長く感じたのですが、ゴリラは重そうな巨体を軽々とひるがえし、森の中に消えていきました。小さな声でメンバーと喜びを分かち合った後、ガイドさんに続いてさらに森の奥へ進んでいきます。ここから先はガイドさんがナタで道を開きながら進むのですが「これが本当の獣道か……」というくらい道がなかったです。
この日ゴリラたちは大雨のためか普段よりも警戒していたようで、ゴリラのコミュニティーを見つけたと思ってもそそくさと森の奥地に移動してしまいます。大雨と霧も手伝い、深い森はその場所自体がとても幻想的で森厳な雰囲気がありました。
また1時間程度ほぼ無心で歩いていると「しゃがめ! ゴリラだ!」という声が聞こえます。急いでしゃがみますが前方にゴリラの姿はありません。背後か横かと確認していると、ガイドさんが再び小さな声で「上だ、上を見ろ!」

この写真は私が見た視覚情報そのまんまです
ゆっくり顔を上げると、私の目の前にある木の上からゴリラに覗かれていたのです。白い霧をまとったその姿は、「え、森の神さま⁇」と手を合わせたくなる情景でした。じっとこちらを見ているので、目を合わせないようにゆっくり、ゆっくり後ずさりをして距離をつくります。メスゴリラだったのですが、木の上にはさらに若いゴリラが 2頭いたようでした。
若いゴリラは比較的人間に興味があるようで、時折こちらに来ようとするのを大人に止められている姿も見受けられました。コミュニティーによってはゴリラから人間に接触してこようとする場合もあるようですが、そんな時は体をとにかく低くし、目を合わせず争う意思がないことをアピールすれば大抵大丈夫だそうです。若いゴリラに木の実を投げつけられたのが嬉しかったなぁ。

木の枝を操りひょいひょい移動
ゴリラに遭遇してから3時間、深い森の中でのトレッキングは某国との国境もまたいでしまったようなので、いよいよ人間界へと戻ります。道中、何回「あとどのくらいかかる?」と聞いても「30分」という回答が続きました(途中から聞くのをやめた)。大雨のせいで体は冷えまくり、ゴリラの獣道を歩き続けた足は立ち止まると秒速で地面に根を張ろうとします。

もう崖のレベルの帰り道
この日は結局、当初2時間くらいと予想されたトレッキングは7時間半で幕を下ろしました。疲れからか「不公平だ」とぶつぶつ言っている人もいましたが、大自然を前に人間の予想なんて全くアテにならないことを、身を以て学ぶことができただけでも素晴らしい経験でした。
威嚇用の銃を携帯するガイドさんに挟まれ黙々と歩いている時に「ジャパニーズは体力ないけど、こういう時心が強いよね。サムライサムライ!」と言われた時は嬉しかったです。
心が揺さぶられるほどの感動と、頭が揺さぶられるほどの疲弊を連れてキャンプサイトに到着。前日にトレッキングをした人たちが拍手で私たちを迎えてくれました。
ゴリラトレッキングをするには?
ブウィンディ原生国立公園のゴリラは、人間と遭遇すること自体は慣れているため、距離を守れば威嚇してくることもありません。そもそもゴリラは非常に賢く温厚なので(そのギャップもたまらない)人間がゴリラに必要以上に近づいたり、威嚇と誤解されるような行為をしなければ大丈夫です。ゴリラは絶滅危惧種として指定されている動物で、ブウィンディ原生国立公園には地球上に生息しているゴリラの約半数が住んでいると言われています。まず森に入るための許可証の申請が必要で、許可証を得るだけでも7万円を超えます。この高額な金額設定が「本気で! どうしても! ゴリラをみたい!」という人だけを集め、許可証として得た資金は森の保全にも役立てられているのです。
また、1日に森に入ることができる人数は制限されているため、行く際はスケジュールにゆとりを持ち2、3日は確保しておくことをおすすめします。トレッキング以外にもピグミー族を訪ねたり、湖のアクティビティに参加することができるので暇はしません。
研究していたり、保護活動に関わっていないと、野生のゴリラに会える機会は本当に少ないと思います。そして何より、ゴリラトレッキングに参加することがゴリラの保護活動の一環になると考えると、本当に素晴らしい機会でした。
あんなに美しい存在のゴリラと人間の遺伝子が98%一致しているなんて、生まれてきてよかったとしか思えないですよね。

ツアーメンバーにお祝いしてもらった
おまけ:ナイル川でハシビロコウ先輩に遭遇
サバンナでのゲームドライブも素敵なのですが、ナイル川のクルージングは鳥好きにはたまらない時間です。ナイル川ほとりには絶滅危惧種のハシビロコウという鳥も生息しているため、出会えるまで何日もクルージングを繰り返す人も少なくないのだとか。私は非常に運がよく、ハシビロコウ先輩に出会うことができました! 動かない鳥、と言われている割にはキョロキョロと動いていましたが。
河川は続くよどこまでも
世界最長とも言われるナイル川、対面してみると意外と普通。「やっぱり危険なの?」とガイドさんに聞くと「何かしらには殺されるね!」と輝かしい笑顔で答えてくれました。ナイル川に投げ込まれても魚をくわえて出てくる。そんな人間でありたいですね。

フンバご一家

絶滅危惧種のハシビロコウ先輩

飛ぶとすごくきれい

鳥と警戒心MAXのバッファロー

荒ぶるカバ先輩(カバは泳げないから水の底を歩いてるって知ってました?)

ハシビロコウよりも動かないクロコダイル
TIA(This is Africa)
今回はゴリラを筆頭にウガンダの野生動物をお届けしました! アフリカにいる間、何か困ったことや不便なことがあると「TIA(This is Africa):これがアフリカさ」と笑い飛ばすことが多かったです。「よい意味でのアフリカらしさ、悪い意味でのアフリカらしさ、どちらも楽しんでしまえ!」そんな勢いがものすごく好きでした。次回はいよいよタンザニア編。ナショナルパークの中でハイエナの遠吠えや、ライオンのうめき声を聞きながらテントで息を殺して寝た夜は、人生で最高の夜でした。本当は部族訪問の話も書きたいので、どこかで挟めたらいいなと思っています。読んでくれて、ASANTE SANA(スワヒリ語でありがとう)
