【獣医師執筆】犬は鮭(サーモン)を食べても大丈夫!栄養素や与える際の注意点を解説

【獣医師執筆】犬は鮭(サーモン)を食べても大丈夫!栄養素や与える際の注意点を解説

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鮭(サーモン)は犬が食べても大丈夫な魚です。タンパク質やオメガ3脂肪酸が豊富に含まれますが、刺身や鮭フレークはお薦めできません。骨やアニサキスなど与える際の注意点から、焼く・茹でるなど適切な与え方、与えていい量について解説します。

犬が食べて大丈夫な鮭(サーモン)の栄養素

鮭

鮭(サーモン)はタンパク質やEPA、DHAなどオメガ3脂肪酸、ビタミンB群(B12、B6、リボフラビン、ナイアシンなど)、ビタミンD、ミネラル(カリウム、鉄、亜鉛、セレンなど)を多く含み、犬が食べても大丈夫な魚です。

身が赤いことからマグロ、カツオなどと同じ赤身魚だと思われがちですが、実は白身魚です。赤色はカニやエビと同じ「アスタキサンチン」と呼ばれる色素(カロテロイド)によるもので、強い抗酸化作用がありアンチエイジング効果が期待できます

参考︰「サケは赤身の魚ですか。」(農林水産省)
\ 鮭(サーモン)はこんな子にオススメ /
  1. 成長期の子に︰タンパク質やビタミンDが筋肉や骨の成長をサポート
  2. 心臓に不安がある子に︰オメガ3脂肪酸が血液の循環を良好に
  3. シニア犬(老犬)︰アスタキサンチンでアンチエイジング

栄養素
特徴
EPA 抗炎症作用があり、アレルギー性皮膚炎やアトピー性皮膚炎、腹膜炎、大腸炎、歯周病などを緩和する効果があります(※1)。抗がん作用も期待され(※2)、腎不全など腎臓病の軽減につながると考えられています。
DHA 中枢神経を保護する働きがあり、脳卒中や認知症の予防・改善効果が期待できます。子犬の成長に不可欠で、神経や脳膜、聴覚の正常な発達、知能を高めしつけやドッグトレーニングの能力向上にもつながります。
ビタミンB12 補酵素としてタンパク質の合成やエネルギーの産生をサポートします。神経機能や睡眠リズムを正常化する働きもあり、赤血球中のヘモグロビンの産生をサポートすることから、不足すると貧血につながります。
ビタミンD 小腸や腎臓でカルシウムとリンの吸収を促進し、骨や歯を丈夫にするのを助けます。不足することで骨格異常や体の麻痺、運動失調につながります。私たち人間は日光(紫外線)に当たることにより皮膚でビタミンDを合成することができますが、犬は食事で摂取しなければいけません。ただし過剰摂取は高カルシウム血症につながる恐れがあります。
セレン 抗酸化作用を持ち認知症予防の効果が期待できます。魚に含まれる水銀の解毒効果があることもわかっています。
※参照:「小動物の臨床栄養学」、「がんとEPA」(日本静脈経腸栄養学会)、「水産物のメチル水銀とセレン」(日本農芸化学会)

鮭とサーモンの違いは?

「鮭」という言葉は歴史・文化的な背景によって定義が異なり、学術分類のサケ科サケ属とは必ずしも一致しません。日本で一般的に「鮭」と呼ばれるのは「シロザケ」や「ベニザケ」「マスノスケ」「カラフトマス」「サクラマス」「ギンザケ」などです。それらの魚は西洋では「サーモン」と呼ばれます

学術分類ではサケ科サルモ属の「アトランティックサーモン」(タイセイヨウサケ)も一般的に「鮭」に分類されますが、サケ科サケ属の「ニジマス」(商品名「トラウトサーモン」で販売されることも)は「鮭」とは区別されます。これは「ニジマス」が淡水で生息する性質を持つためです。

参考︰「日本のサケ科サケ属」(農林水産省)

犬に鮭(サーモン)を与える際の注意点

鮭

犬に鮭(サーモン)を与える際は、以下の点に注意してください。

  1. 与える量
  2. アニサキス
  3. ビタミンB1欠乏症
  4. 塩分過多
  5. アレルギー

01【犬に鮭を与える際の注意点】与える量

(サーモン)をごはんのトッピングやおやつとして与える場合は、1日の適正カロリー量の10%以内にしてください。

おやつとして与える場合は、1日の最適カロリー量の10%以内にしてください。1日の最適カロリー量はペトコトフーズの「カロリー計算」(無料)で簡単に計算することができます。

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02【犬に鮭を与える際の注意点】生食はNG

天然モノの鮭(サーモン)はアニサキス食中毒のリスクが高いため生食はNGです。刺身として流通している生食用の鮭(サーモン)は養殖モノで、アニサキスの心配はありません。

生きたアニサキスは体内に入ると胃壁や腸壁に侵入し、嘔吐や激しい痛みを伴う食中毒(アニサキス症)を引き起こします。アニサキスはマイナス20℃で24時間以上凍結するか、加熱調理をすることで死滅します。

参考︰「都内流通サケ・マス類からのアニサキスⅠ型(Anisakis simplex)第3期幼虫の検出状況」(東京都感染症情報センター)、「生鮮魚介類を介するもの アニサキス」(東京都保険医療局)

03【犬に鮭を与える際の注意点】ビタミンB1欠乏症

生の鮭(サーモン)は「チアミナーゼ」というビタミンB1(チアミン)を分解する酵素を含みます。1回食べた程度では問題ありませんが、日常的に食べていると「ビタミンB1欠乏症」になる可能性があります。

ビタミンB1欠乏症は人間では「脚気(かっけ)」とも呼ばれます。食欲低下やよだれが多くなる症状が見られ、けいれん発作や神経・運動機能障害につながります。適切な治療が行われないと死に至る可能性があります。

参考︰「禁忌食(その4)魚介類(チアミナーゼ)」(ペット栄養学会誌)

04【犬に鮭を与える際の注意点】塩分過多

犬も過剰な塩分摂取は健康上の問題を引き起こす可能性がありますが、私たちが塩分過多で心配する「高血圧」が犬も同様に起こるわけではありません。それよりも脱水や腎臓への負担を心配する必要があります。

特に「塩鮭」や「新巻鮭(あらまきざけ)」「スモークサーモン」などは塩分濃度が高く加工されている可能性がありますので腎臓病の犬は特に与えるのはやめましょう。

参考︰「正常犬・猫の高ナトリウム摂取における血圧および飲水量の変動」(日本小動物獣医学会誌)、「犬および猫における水およびナトリウムの調節機構」(動物臨床医学)

05【犬に鮭を与える際の注意点】アレルギー

(サーモン)はアレルギー報告の多い食材ではありませんが、犬によってはアレルギー症状が出る可能性があります。最初の数回は少量にして、変化がないか様子を見ながら与えるといいでしょう。

犬のアレルギー症状は顔や首、お腹などの皮膚に赤みや痒みが出るのが一般的で、下痢や嘔吐が見られる場合もあります。なお、アレルギー検査で陽性反応が出たとしても、症状が出なければ与えて問題ありません




犬への鮭(サーモン)の与え方

鮭(サーモン)

生食はアニサキス食中毒やビタミンB1欠乏症のリスクがあるため、加熱調理して与えましょう。鮭フレークや缶詰など人間用に味付けされたものは与えないようにしましょう。

01【犬への鮭の与え方】骨を取り除く

塊のまま与えてしまうと隠れていた骨が刺さってしまう可能性があります。必ずほぐし、骨が無いことを確認してから与えるようにしてください。

02【犬への鮭の与え方】皮はOK

(サーモン)の皮には豊富なコラーゲンが含まれ、皮膚や関節、骨の健康維持に良いとされます。食べやすいように細かくして与えると良いでしょう。オメガ3脂肪酸も含まれ、抗炎症作用やアンチエイジングの効果も期待できますが、与え過ぎによるカロリー過多には注意が必要です。

03【犬への鮭の与え方】白子もOK

白子は鮭(サーモン)の精巣で、犬も食べられます。高タンパクでオメガ3脂肪酸やビタミン、ミネラルを豊富に含む栄養価の高い食材ですが、与え過ぎには注意しましょう。ただし加熱は絶対にしましょう。

04【犬への鮭の与え方】与える量

1日の適正カロリー量の10%以内を与えるようにしてください。

例えば1日の適正カロリー量が226kcalの犬の場合(計算はこちらから)、22.6kcalまでが与えていい量となります。100gで160kcalのシロザケ(焼き)であれば、14gまで与えて大丈夫です(他にトッピングやおやつを与えない場合)


まとめ

犬
犬に鮭(サーモン)はOK
必ず加熱調理して与える
ほぐして骨を取り、与え過ぎに注意
(サーモン)はタンパク質やオメガ3脂肪酸、ビタミン、ミネラルを多く含み、犬が食べても大丈夫な魚です。ただし、生食はせず加熱調理して与えましょう。ほぐして骨を取り、与え過ぎに注意することも大切です。

参考︰「Can Dogs Eat Salmon?」(American Kennel Club)

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