【獣医師執筆】猫は牛肉を食べても大丈夫!栄養成分や与える際の注意点を解説

【獣医師執筆】猫は牛肉を食べても大丈夫!栄養成分や与える際の注意点を解説

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猫は牛肉を食べても大丈夫です。牛肉のアレルギーや生肉の危険性など与える際の注意点から、茹でる・焼くなどオススメの調理法、栄養成分量などを解説します。

猫は牛肉を食べても大丈夫

牛肉

牛肉はタンパク質や鉄、亜鉛、ビタミン類を含み、猫に与えても大丈夫な食材です。猫は肉食動物であるため、牛肉が大好きな子は多いでしょう。牛肉に含まれるタンパク質は猫にとって重要なエネルギー源となり、皮膚や被毛の健康維持にもつながります。

シニア猫(老猫)の筋肉維持にもオススメです。手作りごはんで食べさせたい飼い主さんも多いと思いますので、注意点を守って与えるようにしてください。


猫が食べて大丈夫な牛肉の栄養成分

肩ロース(皮下脂肪なし) サーロイン(皮下脂肪なし) ヒレ(赤肉)
エネルギー 373kcal 422kcal 207kcal
タンパク質 14.0g 12.9g 19.1g
脂質 36.5g 42.5g 15.0g
カリウム 210mg 200mg 340mg
0.7mg 0.8mg 2.5mg
亜鉛 4.6mg 3.1mg 4.2mg
ビタミンB12 1.1mg 1.1mg 1.6mg
※和牛肉、生100g当たり、参照:「食品成分データベース」(文部科学省)

特徴
カリウム 過剰な塩分を排出してナトリウムとのバランスを保ち、血圧を安定させる効果があります。腎臓が弱っている場合は過剰になり心臓にダメージを与えてしまいます。摂取量に注意が必要です。
血液中で酸素を運んだり筋肉中で酸素を受け取ったりする働きを持ち、体を動かすために欠かせないミネラルです。不足すると皮膚や被毛のトラブル、イライラ感につながります。
亜鉛 亜鉛はタンパク質の合成に関わる酵素に欠かせない成分で、骨や肝臓、腎臓、膵臓などで必須のミネラルです。亜鉛が不足すると免疫力が低下してしまいます。
ビタミンB12 補酵素としてタンパク質の合成やエネルギーの産生をサポートします。神経機能や睡眠リズムを正常化する働きもあり、赤血球中のヘモグロビンの産生をサポートすることから、不足すると貧血につながります。

猫に牛肉を与える際の注意点

調理中の牛肉

猫に牛肉を与える際は、以下の点に注意してください。

  1. 生肉
  2. アレルギー
  3. 偏食
  4. 味付き肉
  5. 骨付き肉

01【猫に牛肉を与える際の注意点】生肉はNG

飼い主さんの中には「野生の猫は生肉を食べているから生で与えたほうがいい」と考える方がいるかもしれません。しかし猫が生肉を食べているのは加熱調理の選択肢が無いからで、生肉だから「体に良い」「栄養が摂れる」「消化に良い」わけではありません。そういった主張を裏付ける科学的根拠もありません

生肉を与えるメリットは特にありませんが、デメリットとして細菌感染のリスクがあります。そのリスクは猫だけでなく飼い主さんにも及びますので、肉を与える際は必ず、焼いたり煮たり加熱してから与えるようにしてください。


02【猫に牛肉を与える際の注意点】アレルギー

牛肉を使ったごはんを食べて皮膚が赤くなったり、痒がったりする場合はアレルギーの可能性がありますので、動物病院でアレルギー検査を受けることをオススメします。ただし、検査で牛肉に陽性反応が出たとしても症状が出ていなければ避ける必要はありません

食物アレルギーには、生まれつきの体質による先天性アレルギーと、長い期間同じ食材を食べることで発症する後天性アレルギーがあります。

初めて食べる食材を与える際は少量からスタートさせてあげましょう。アレルギーには以下の症状になる可能性が挙げられます。

  • 下痢
  • 嘔吐
  • 皮膚の痒み
  • 元気がない
  • 目の充血

上記のような症状があれば、すぐにかかりつけの獣医師に相談しましょう。一方で、アレルギーテストで陽性が出たから食べられないと思う飼い主さんも多いですが、それは間違いです。症状が出ていなければ食べさせても問題ありませんので、特定の食材を食べさせてアレルギー反応が出るか確認してみてください。


03【猫に牛肉を与える際の注意点】偏らない

アレルギーの原因となるタンパク質は、摂る機会が増えるほどアレルギーのリスクが上がります。牛肉が好きだからといってそればかり与えることは避け、いろいろな種類の肉を与えるようにしましょう。

飼い主さんの中には「猫は肉食だから肉だけ与えていればいい」と考える方もいるかもしれませんが、タンパク質は肝臓や腎臓で吸収されてエネルギーに変わりますが、猫も適度に炭水化物を摂ることで効率的にエネルギーを作り出せます。肝臓や腎臓の負担を少なくすることは、老化予防につながります。

また、肉ばかり食べて体内のアミノ酸濃度が高くなるとセロトニンが少なくなり、イライラして攻撃性が高まるリスクもあります(※)。猫はタンパク質だけでなく炭水化物もバランス良く摂ることで、健康な体を維持することができます。

※参照:水越美奈『食と問題行動』(ペット栄養学会誌)

04【猫に牛肉を与える際の注意点】味付けはNG

スーパーなどで販売されている味付けされた牛肉を与えることはやめましょう。人間用の味付けは猫にとって塩や砂糖が過剰に含まれる可能性がありますし、玉ねぎやにんにく、ナツメグなど猫が食べてはいけない食材が含まれている可能性もあります。


05【猫に牛肉を与える際の注意点】骨付き肉は注意

骨についた肉が好きな猫は少なくありません。硬すぎると歯が折れたり欠けたりすることがありますし、割れた骨を飲み込んでしまう可能性もあります。必ず愛猫にとって安全かを飼い主さんが確認して、飼い主さんが見ているところで与えるようにしてください。

部位によって異なる脂身の量

牛肉

牛肉の中でも部位によって脂身の量は異なります。今回は、私たちの食卓にとても馴染みの深い「サーロイン」「バラ」「ロース」「モモ」の脂身の量を比較してみましょう。

参照:BEEF IROHA

サーロイン【脂身多い】

背中の下ぐらいぐらいの部分で、ステーキでよく用いられます。

バラ【脂身多い】

ろっ骨に付いている部分の肉です。バラ肉には、ろっ骨の外側に付いている「肩バラ」と内側に付いている「バラ」の2種類があります。カレーやシチューなどの煮込みなどで用いられます。

ロース【脂身少量】

背中の筋肉部分にある肉です。脂身が少なくてさっぱりしているため、しゃぶしゃぶやすき焼きなどで用いられます。

モモ【脂身ほとんど無し】

後ろ脚の付け根の部分の肉です。脂肪が少なく、ローストビーフなどで用いられます。

部位や調理方法で異なる牛肉の栄養成分量

食事する猫

含まれている成分の種類は変わりませんが、牛肉の種類や部位、調理方法などによって牛肉に含まれる栄養成分量は大きく変化します。今回は、脂身が一番少ないといわれているモモ肉で比較してみます。(栄養成分は100gあたり)

生モモ肉(脂肪付き)
生モモ肉(脂肪なし)
焼きモモ肉(脂肪なし)
茹でモモ肉(脂肪なし)
エネルギー(kcal) 343 282 264 375
たんぱく質(g) 16.4 18.3 18 25.7
脂質(g) 28.9 21.6 19.9 28.2
ナトリウム(mg) 63 68 45 29
カリウム(mg) 270 300 230 130
リン(mg) 140 160 137 120

適切な与え方は生?茹でる?焼く?

お肉を焼きすぎると焦げが付き、猫の体には良くありません。茹でたり、蒸したりすることを推奨します。もちろん味付けはしないで与えるようにしましょう。人向けの調味料には猫にとって中毒性のある成分が含まれる可能性があります。

1日の最適カロリー量の10%以内にしてください。毎日の最適カロリー量はペトコトフーズの「カロリー計算」(無料)で簡単に計算することができます。

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牛肉の加工商品は猫にあげても大丈夫?

舌を出す猫

猫は牛肉を食べても大丈夫ですが、牛肉を使った料理の中には猫が食べると命に関わってしまうものもあります。猫にあげる前に、一度確認しておきましょう。

ローストビーフ

牛肉を蒸し焼きにして作ったローストビーフは、猫が食べても大丈夫です。ただし、TVなどでもよく見かける「ローストビーフ丼」はソースに玉ねぎやニンニクなど、猫が決して食べてはいけない食べ物が多く含まれています。与える際は、必ず味付けのされていないものにしましょう。

ハンバーグ・すき焼き・牛丼

ハンバーグやすき焼き、牛丼などには玉ねぎが使われています。絶対に猫にあげないようにしてください。また、少しでも猫が口にしてしまった場合はすぐにかかりつけの獣医師に相談しましょう。

猫は牛肉を食べても大丈夫!

猫

猫にとって牛肉は健康的な食材です。与え方やアレルギーには気を付けてください。ただし、健康的だからといって牛肉だけをあげてしまうと、猫の栄養に偏りが出てしまいます。そのため、牛肉はあくまでもキャットフードのトッピングやおやつとして適量をあげることをオススメします。

人間にとって美味しい食材でも、猫にとっては危険な食べ物もたくさんあります。それらをきちんと理解した上で、楽しいペットとの食ライフを過ごしてくださいね!

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