
【獣医師プラス】命を救うことにこだわる。 ー循環器認定医 佐藤貴紀先生ー
獣医師プラスでは、ペットライフメディア「ペトこと」にご協力頂いている獣医認定医・専門医など、専門性の高い獣医師を紹介していきます。第1回のインタビューは、獣医循環器認定医の佐藤貴紀先生。「一生のかかりつけ獣医師」を推奨するとともに、専門分野である循環器系疾患治療、予防医療に力を入れる想いやビジョンにせまります。
01
循環器認定医までの道のり
愛犬が開いた獣医師への道
佐藤先生が子供の頃、兄弟のように可愛がっていた愛犬ラッキーの後ろ足が動かなくなったのは中学生のときだったそう。急いで動物病院に連れて行くも、獣医師から「原因がわからない」と告げられ、不安なまま1週間入院させることに。
「結局、1週間入院させても、原因は分からず、可能な限り看病を続けていました。しばらくして、少し動けるようになったときの嬉しかった気持ちは、今でも覚えています。
"病気を診断・治療する尊さ" を子どもながらに実感しましたね」と自らの原点を思い起こす佐藤先生。

愛犬ラッキー
"命を救う"ことにこだわる
その後、大学病院で診察を受けさせると、症状だけですぐに「椎間板ヘルニア」という診断が下されたラッキー。近くの動物病院では1週間入院しても分からなかった原因が、大学病院では一瞬で分かったことに衝撃を受け、専門性の重要さに気づいたといいます。
人の医療とは異なり、専科に分かれず、1人の獣医師がすべての科を受け持つ獣医療。それでも「循環器認定医」を目指した理由は「専門性の重要さ」と「命を救える」という2点が、佐藤先生の考えに合致したこと。
「獣医師になるにあたり、最初から『循環器科を専門分野にする』と決めていたわけではありません。ただ、決め手となったのは『命に直結する病気を治せる』ということでした。
犬は加齢に伴い、心疾患が増える傾向にあります。長く飼い主さんと向き合いながら治療を施し、命を助けることができるのが循環器科を選択した理由です」
02
治療にかける熱き想い
嬉しいことも悲しいことも
人と違って、言葉が話せない動物の病気を見つけ、元気な様子を見れることが佐藤先生のやりがい。ラッキーを看病したときに感じた「動けるようになったときの喜び」がモチベーションの基盤だといいます。しかし、もちろん辛いことも多い現場。
「"助けたい"という想いでやってますが、治療がうまくいかないことはあります。そのときはやっぱり、無力感に苛まれますね。
正直、獣医師にとって『死』は珍しいことではありませんが、慣れているわけでもありません。動物が好きだからこそ、一生慣れることはないと思います」
飼い主と三位一体となった治療を
早期に確定診断をし、最善の医療と治療にむけて飼い主と一緒に並走することが佐藤先生のポリシー。「治療にはさまざまな提案があり、飼い主さんにとってはさまざまな選択肢があります。そのなかから、その子にとって"最善の治療とは何か"を飼い主さんと三位一体となって考え、治療方針を立てることが獣医師の重要な仕事だと思います」
飼い主、医師、救いたい命が一体となるには、飼い主の心がけも必要といいます。
「循環器科としてよく扱うのが、犬は僧帽弁閉鎖不全、猫は心筋症です。
これらの多くは遺伝的な病気であり、重症化する前の早めのケアが必要になります。
こうした病気に限らずとも、早期発見・早期治療のためには、日頃から愛犬・愛猫の様子をチェックする習慣は必要です。愛犬・愛猫の種類や体質によってかかりやすい病気は何か、飼い主さん自身の知識も増やしていってほしいと思います」
03
先生の私生活
スポーツ大好きなパパ
休日は6歳と4歳のやんちゃ盛りなお子さんと過ごすことが多いという家族想いな佐藤先生。「自分でいうのもなんですが、しっかりと家族の時間を取れていて、良いお父さんではないかと思います(笑)。
趣味はスポーツです。ゴルフ、釣りも好きですが、特に好きなスポーツはバスケットボール。
バスケットボールは、チームワークが良ければ強いチームにも勝てるところが醍醐味です。勝てるわけないと思ったチームに勝てたときは本当に嬉しいですよ」


パートナーだった愛犬まりも
先日天国へ旅立ってしまったミニチュアシュナウザーのまりもちゃんについてもお話して下さいました。「まりもはペットショップで家族が決まっていたのですが、心臓病が見つかり、返犬されたワンちゃんでした。基礎疾患を持つ子はなかなか売れず、まりもも案の定"売れ残り"になってしまったのです。
たまたま私は獣医師として、まりものいたペットショップで診療をしており、店員さんから相談を受け、私が家族として迎えることを決めました。
開業する前年に迎えた子なので、会社と一緒に成長した良きパートナーです。人が大好きで、まっすぐな子でした。いつかはお別れが来るとは分かっていても、今はまだ寂しい気持ちでいっぱいです」
04
ペットと幸せに暮らすコツ
「ペット=家族」という認識が広まった今でも、まだまだ法律でペットはモノ扱いで「ペット=ペット」という認識が一般的だと佐藤先生は考えます。
「動物嫌いな人に"動物を好きになるべき"なんてことは言うつもりはありませんが、私たち獣医師の活動や飼い主さんのマナーひとつで、動物嫌いな方でもペットに少しでも良い印象を持ってくれる可能性はあると思います」
ペットとの幸せな共生には、マナーや心配りが必要とした上で、飼い主の責任についても先生は次のように語ってくれました。
「かつては治らない病気といわれていた僧帽弁閉鎖不全症は、僧帽弁形成をすることで、完治とまではいかずとも、立て直せるようになりました。
愛犬の健康を守るには、飼い主さんは信頼できる獣医師さんを見つけることが大切です。どの獣医師も得手・不得手はあり、オールマイティーな先生はいません。
信頼できるかどうか判断が難しい場合はセカンドオピニオンや、専門性の高い獣医師も積極的に検討しましょう。
なかには"かかりつけ獣医師にセカンドオピニオンに行ったことがバレたら気まずい"と思う方もいるかもしれませんが、愛犬・愛猫のためには重要な判断です。
セカンドオピニオンに診させることを、嫌がる獣医師であれば、かかりつけを変更することも検討しましょう」
今後も循環器認定医として、予防医療に注力しながら、ペットの健康を維持できる仕組みづくりに貢献していきたいと獣医療への熱い想いを語ってくれました。

目黒アニマルメディカルセンター
〒153-0063
東京都目黒区目黒3丁目9-3 104号
03-5725-3370
公式サイトはこちら

東京ベイ動物病院
〒135-0061
東京都江東区豊洲3丁目 4-8(スーパービバホーム豊洲店内1Fペットコーナー)
03-6220-0600
公式サイトはこちら
- 麻布大学獣医学部卒業
- 2007年
dogdays東京ミッドタウンクリニック副院長に就任
- 2008年
株式会社FORPETS 代表取締役 兼 白金高輪動物病院院長に就任
- 2010年
獣医循環器認定医取得
- 2011年
中央アニマルクリニックを附属病院として設立し、総院長に就任(現在は顧問獣医師)
- 2017年
JVCC株式会社に参画し、取締役に就任し、子会社JVCC動物病院グループ株式会社代表取締役を兼任
- 2019年
株式会社WOLVES Hand 取締役 兼 目黒アニマルメディカルセンター/MAMeCの顧問獣医師に就任
- 犬の急病対応マニュアル(鉄人社)
- 猫の急病対応マニュアル(鉄人社)
- 犬の悩みなんでも相談室(学研パブリッシング)
- 動物たちのお医者さん(共著・構成/小学館)
From 獣医療ライター 織田

爽やかな見た目とは裏腹に、動物への情熱を感じました。子どもの頃の経験が、今の佐藤先生の基盤になっているようです。
「お子さんにも獣医師さんになってほしいか」とお聞きしたところ「そうは思わない。ただ、何になりたいと言ったとしても、応援できるような父親になりたい」との子ども想いな一面も見せてくれました。