【獣医師執筆】犬にも血液型がある?知識が輸血時の愛犬と周りの犬たちの救いに

【獣医師執筆】犬にも血液型がある?知識が輸血時の愛犬と周りの犬たちの救いに

Share!

犬にも血液型があることをご存じですか?人間の血液型はABO式で表現されますが、犬の血液型は人間よりも種類が多く、DEA(Dog Erythrocyte Antigen:犬赤血球抗原)式で表現されます。今回は、犬の血液型についての基礎知識や検査方法、犬の血液型と性格の関係などについて解説します。

犬の血液型の種類一覧

血液バッグ
採血された犬の血液(200ml)

犬の血液型は、人間とは異なります。

人間の血液型は、A型やB型など、ABO式と呼ばれるもので表現しますが、犬はDEA式という、DEA1.1やDEA1.2など、DEAから始まる数字で血液型を表現します。

DEAは「犬赤血球抗原」という意味の「Dog Erythrocyte Antigen」の頭文字から取っています。

犬の血液型の種類は10種類以上

血液型の種類がどのくらいの数存在するのかは現在も研究が進められていますが、現時点でも10種類以上あるといわれていて、国際的に認知されているのは8種類です。

日本では以下の血液型に加え、DEA1.3を含む9種類とする場合もあります。

  • DEA1.1
  • DEA1.2
  • DEA3
  • DEA4
  • DEA5
  • DEA6
  • DEA7
  • DEA8

犬は一匹で複数の血液型を保有している

お散歩中の犬

犬の血液型は、人間とは比べ物にならないほど複雑です。種類の多さも特徴の1つですが、1匹あたり1種類の血液型ではなく「DEA1.1とDEA6と…」というように、2〜3種類の血液型が体の中で並存しているのです。

個体差はありますが「DEA1.1」「DEA4」「DEA6」「DEA7」の保有率は、他の型よりも比較的高いといわれています。

犬の血液型と性格の関係

飼い主に甘える犬

人間の場合、真面目な人に対して「A型っぽい」といわれる血液型診断を耳にすることがあるかと思いますが、犬の性格に血液型は一切関係ありません

血液型ではなく、「犬種」や「子犬の頃の過ごし方」「育った環境」が犬の性格を左右します。

犬の血液型を知るメリット

飼い主に寄り添う犬

抗原抗体反応を避けられる

日本で犬の血液検査を行うことは、それほど一般的ではありません。しかし、急に輸血が必要になった場合に備え、検査をしておくことで、抗原抗体反応(異なる抗原という物質が体内に入ることによって拒絶反応が起こること)を避けることができます。

献血ボランティアに協力できる

愛犬の血液型を予め知っておくことで、献血ボランティアとして協力することができます。

現在、日本には大規模な献血バンクなどはまだ存在していません。そのため、それぞれの動物病院が病院同士で協力したり、患者さんにボランティアとして協力しもらったりして、輸血準備を行っています。

献血バンクを作ろうという働きもあるようですが、現状は献血可能な犬が協力してくれることが助けになります。

犬の輸血治療

血液を取られる犬
輸血用の血液を採血される社員犬コルク

犬に輸血が必要な場合、まずはDEA1.1が「陰性(マイナス)」か「陽性(ぷ明日)」かを検査し、抗体を保有しているかどうかを調べます。

DEA1.1陰性(抗体を保有していない)の場合、血液を輸血用に提供することは可能ですが、DEA1.1陽性(抗体を保有している)の犬から輸血を受けることができません。

犬の血液型の調べ方

<検査キット>

犬の血液型を調べるためには、動物病院にて専用の検査キットを使用します。約2分程の所要時間と少量の血で検査が可能です。

検査キットでは、DEA1.1の陰性、陽性を調べることができます。DEA1.1は最も抗原抗体反応を引き起こす可能性が高い血液型なので、緊急時はDEA1.1の判定結果が輸血の判断材料になります。

<交差試験(クロスマッチテスト)>

交差試験は、血液型を判明させるというよりは、輸血をしても大丈夫な相性かどうかを確認するものです。

輸血する側と輸血される側の血を混ぜ、固まってしまうかどうかを確認します。血が固まってしまうのは、簡単に言うと「血同士の相性が悪く、輸血することができない」という意味になります。

安全性を担保するために、多くの動物病院では輸血前に「検査キット」と「交差試験」をどちらも用いて「DEA1.1の保有の有無」と「輸血する血液との相性」を確かめます。

DEA4は比較的、どの血液型に対しても抗原抗体反応を起こしにくい血液型のため、人間でいうO型のように「万能血液」と呼ばれています。

PETOKOTO代表の大久保の愛犬コルクも血液型がDEA4のマイナスで動物病院から献血のお願いをされ、多くの命を救ってきました。

供血犬や献血ドナー

日本にはまだ、ペット専用の血液バンクは存在しません。そのため、輸血用の血液を得るためにボランティアとして献血ドナーを募ったり、輸血を助ける供血犬を病院で飼育していたり、病院同士で助け合ったりしているのが現状です。

ボランティアをするためには「持病もなく健康」「輸血されたことがない」「7歳以下」などの病院ごとの条件があり、病院によってはワクチンや健康診断の割引などをしてくれるところもあるそうです。

犬用人工血液

中央大学理工学部と宇宙航空研究開発機構(JAXA)の研究グループは、2016年に犬用の人工血液の合成と構造解析に成功したことを、SCIENTIFIC REPORTSにて全世界に向け発表しました。

動物医療の需要が増していく現状に、輸血療法の環境整備が追いついていないことが問題視され、研究が進められていたのです。

人工血液は長期保存が可能で、しかも血液型がありません。そのため、血液適合検査を行う必要も献血ドナーを確保する必要もなくなります。

この人工血液が実用化されると、大量出血や貧血に対しての輸血療法に大きく貢献することになります。現在は、製薬会社と実用化に向けた協力体制をとっているようです。


万が一に備えて愛犬の血液型を確認しておきましょう!

飼い主を見つめる犬

犬の血液型は、DEAから始まる数字で表現される
国際的に認知されている血液型は8種類
2〜3種類の血液型が体の中で並存している
怪我や病気で万が一輸血が必要になったときのために、血液型を調べておくと安心

犬の血液型の検査は動物病院で頼めば簡単にできます。

友人の犬が輸血を必要とした場合など、万が一に備え、機会があれば検査してみてください。


参考文献