犬が多飲多尿の場合に考えられる原因・対処法を獣医師が解説

犬が多飲多尿の場合に考えられる原因・対処法を獣医師が解説

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犬の多飲多尿はさまざまな原因が考えられます。気温上昇や食事・おやつの影響による生理的な場合、腎臓病や誤食による病的な場合があります。多飲多尿の他に、下痢や嘔吐を伴っていたり、著しい体重減少が見られる場合は病院へ連れて行きましょう。今回は、目黒アニマルメディカルセンター/MAMeCの顧問獣医師の佐藤が犬が多飲多尿の場合に考えられる原因や応急処置、対策を説明します。

犬が多飲多尿の場合に考えられる原因

犬

私たち人間も含め、水を飲むということは体の渇き(脱水)を補正するために行うものです。水を多く飲むことはそれだけ体が脱水しないようにしているということです。

この飲水量増加の原因は多岐にわたりますが、大まかにわけると、「生理的な場合」と「病的な場合」の2つに分けられます。それぞれ見てみましょう。

生理的な場合

  • 気温上昇や乾燥に伴う現象
  • 食事やおやつの影響

<気温上昇や乾燥に伴う現象>

気温が高かったり、乾燥していたりする日は一般的に飲水量が増加します。そのため、夏の熱中症対策として、冬は暖房器具による乾燥による水分補給をすることは大切です。

<食事やおやつの影響>

人間と同様に塩分、いわゆる味の濃いものを食べることで水分量が増加します。人間用の食べ物は与えないようにしましょう。

病的な場合

  • 誤飲・誤食
  • 腎臓病
  • ホルモン疾患
  • 子宮蓄膿症
  • その他

<誤飲・誤食>

摂取してはいけないチョコレートや薬品などの中毒性物質を何かしらの原因で誤飲してしまった場合には飲水量が増加します。


<腎臓病>

慢性腎障害などの腎疾患の場合、尿量は増加します。腎臓は尿素など体に不利益なものを濃縮し、尿として排出する臓器です。

腎機能が低下すると濃縮が不十分となり、薄い尿を多量に排出することで、飲水量が増加し、体のバランスを保ちます。


<ホルモン疾患>

糖尿病やクッシング症候群などの内分泌疾患に罹患した場合、飲水量は著しく増加します。

糖尿病は本来排出されないはずの糖が尿中に出ることにより、浸透圧が変化し、尿量が増加します。クッシング症候群は副腎(血圧や循環血液量を調節するホルモン分泌を行う臓器)が過剰に働くことにより、尿量が増加し、結果的に飲水量が増加します。


<子宮疾患>

子宮蓄膿症と呼ばれる病気に罹患した場合も飲水量は増加します。未避妊メス(一般的に高齢犬に多い)の子宮内に細菌感染を伴う膿が溜まることによって起こる重度感染疾患です。

体内に細菌が入っただけでは、感染を起こしませんが、発情などのホルモンバランスの変化によって感染が成立する場合があります。子宮内の細菌が出す毒素に腎臓がダメージを受け、尿量が増加します。

<その他>

下痢や嘔吐を繰り返すと体が一時的に脱水状態に陥り飲水量が増加しますので、飲水量が増加する疾患は他にも多くあります。ストレスが原因による心因性多飲多尿もあり、原因は多岐にわたるため少しでも気になったら動物病院で診てもらうといいでしょう。

犬が多飲多尿の場合の対処・応急処置

犬

環境を変える

体が熱いときは風通しの良い涼しい場所に移動してあげましょう。また、部屋が乾燥しているときは湿度を45〜60%に設定して加湿してあげましょう。

飲水量と尿量を量る

緊急を要しない場合、一日の飲水量と尿量を測定してみましょう。一般的に正常な犬の一日のおしっこの量は、およそ体重1kgあたり25〜40mlといわれています。

これは、水を飲む量によって大きく変動します。人も運動後などでいっぱい汗をかいた後などは、体の渇きを補うため、水を飲む量が増えます。

同じように、通常、おしっこの量の増加がある場合にはお水を飲む量が増えている場合がほとんどです。明らかに多飲多尿の傾向が見られる場合は、病院へ行きましょう。

食べたものを確認する

まず、何か誤飲してしまった可能性がないか確認しましょう。食べた時間が1時間以内であれば早急に動物病院で対処を行いましょう。

水分を欲しがる場合でも1時間以内であれば飲ませず受診してください。いつかわからない場合には、逆に水分を摂らせてあげてください。

尿を持って病院へ

動物病院で尿検査を行いましょう。朝一番の尿が薄い場合はそれだけで、尿量の増加を疑うことができます。

水を多く飲むだけだとあまり気に留めない飼い主の方がいらっしゃいますが、中には子宮蓄膿症のような緊急手術が必要なケースもあります。飲水量の増加に気づいたら、早めに来院することをオススメします。

犬の多飲多尿は早期発見・早期治療を心がけましょう

犬

犬が多飲多尿になる原因は前述の通り、生理的な場合と病的な場合が考えられます。

生理的な場合は「暑いかも」「乾燥しているかも」「味付けされたものを食べたかも」と推測ができますが、推測ができない多飲多尿には病気が潜んでいる可能性が高いです。

悪化する前に病院で検査してもらうことをおすすめします。