犬や猫などペット葬儀の流れや準備は?火葬場や埋葬の選び方や注意点、循環葬という新しい埋葬方法などを獣医師が解説
愛するペットとの別れは、いずれ来るとは分かっていても、考えたくないものですが、いざその時が来た際に、心の余裕を少しでも持てるように、事前に準備をしておくことが大切です。今回はペットの葬儀について、ホームズ動物往診所院長で往診専門獣医師の原野が「どんな準備が必要なのか」「トラブルを避けるための注意点」を解説します。
目次
「もっと開く」
犬や猫(ペット)が亡くなる前の準備(終活)
01:いつでも思い出を振り返れるように管理しておく
亡くなった時に読者様からの声で多かったのが「もっと写真や動画で思い出を残しておけば良かった」こと。いつでも振り返った時にたくさんの時間を共有できるように写真や動画で思い出を残しておくと良いですね。おすすめ思い出管理アプリ:みてね
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02:医療や介護について方針を考えておく
どこまで治療してあげるか、介護してあげるかという難しい問題があります。PETOKOTO獣医師責任者の佐藤によると「高齢の犬の場合、麻酔のリスクが出てくる。その場合に難しい手術をするかどうか判断が難しい。」とのことでした。費用も含め、愛犬や愛猫にどこまで頑張ってほしいか、事前に獣医師の先生と相談しておいても良いのではないでしょうか。
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03:ペットが亡くなった時の対応を考える
愛犬や愛猫が亡くなった場合にどんな手続きをしないといけないか、火葬や埋葬はどうするか、事前に決めておくと一番良い形で見送ってあげることができます。次にペットが亡くなってからすべきことをお伝えいたします。ペットが亡くなってからすること
01:まずはゆっくりと感謝を伝える
亡くなってからすぐに何かしないといけないというわけではありません。別れの言葉をかけるなり、抱き寄せてあげるなり、まずは大切なその時間を寄り添い過ごしてください。闘病の末の最期であれば「よくがんばったね」と声をかけてあげるのも良いかと思います。
02:最後に会わせたい人がいれば連絡する
急変で亡くなった場合には、意識があるうちに会えなかったとしても、荼毘に付す前に会わせたい人がいれば連絡しましょう。03:遺体を綺麗にする
亡くなる際には、衰弱していく過程で毛並みが乱れていたり、口の周りにごはんが付着していたり、陰部付近が尿や便で汚れていることは少なくありません。濡れタオルなどで汚れを取り除き、ブラシやコームを用いて毛並みを整えます。できる範囲で構わないため、その子らしい姿に整えてあげてください。
04:死後硬直について
亡くなってから、早ければ1時間以内に死後硬直が始まります。そして数時間かけて徐々に全身が硬直していきます。硬直の進行時間は、外気温や筋肉量などによって左右されるので、個体によって差があります。
手足は死後硬直が進行すると、つっぱった不自然な状態になるので、硬直前に手足を優しく曲げ、自然な形にしてあげてください。
05:排泄物や体液について
動物病院や往診では、亡くなった後に出てくる体液や臭いを抑えるために詰め物をすることがあります。自宅では、お尻や口の下にペットシーツなどを敷いてください。
06:棺を用意する
遺体がちょうど収まるくらいのサイズの箱を用意します。段ボール箱でも構いませんが、持ち運ぶ際に崩れない強度の物を選んでください。タオルやブランケット、ペットシーツを敷き、その上に遺体を安置します。愛用のおもちゃや衣類、思い出の写真、お花などあれば一緒に添えてあげても良いかと思います。
保冷剤やドライアイスがあれば、タオルなどで軽くくるんで首の下やお腹付近においてあげてください。
安置する場所
棺を置けるスペースが十分あり、エアコン設備のあるお部屋で直射日光や風(エアコン含む)が遺体に当たらないよう安置してください。外気温が高いと腐敗の進行が早まるので、エアコンの温度は低く設定してください。
安置する期間
安置期間については、環境や遺体の状態によって腐敗の進行は異なるため、一概には言えませんが、時間経過に伴って進行し、水分も失われて乾燥するため見栄えも悪くなっていきます。できる限り綺麗な状態のままお別れしたいのであれば、長期的な安置はおすすめできません。
自宅での安置期間は2~3日以内が一般的です。
ペットの遺体の火葬や埋葬の方法を考える
火葬や埋葬についてはさまざまな方法があります。ペット葬儀会社(民営)に依頼する
最も一般的な方法です。費用はそれなりにかかりますが、火葬から納骨まで一任することができます。地方自治体(公営)に依頼する
自治体によって「一般廃棄物として焼却しているところ」「動物専用の火葬炉があるところ」「民営のペット葬儀者に一任しているところ」などさまざまです。ただし、動物用の火葬炉がある場合でも、一般に他の動物と合同で火葬されるため遺骨の返骨は不可なところもありますので返骨希望の場合は事前に確認しましょう。
費用に関しては、民営のペット葬儀社と比較して格段に低くおさまります。詳しくはお住いの自治体HPを確認するか、電話にて問い合わせましょう。
私有地に土葬する
私有地であれば土葬自体は法的には違法になりませんが、異臭が原因で周辺住民とのトラブルが生じることもあります。遺体のまま土葬するよりは、ペット葬儀会社にて火葬したのちに遺骨を持ち帰って埋葬する方が一般的です。
未来の埋葬の在り方:循環葬
関西でも名高い北摂の霊場であり、天然記念物のブナ林も有する能勢妙見山(大阪府・能勢町)の森林に火葬後粉骨した遺骨を埋葬します。ご遺骨はやがて樹木の栄養に。まさに自然に循環する新しい埋葬の在り方です。
循環葬の費用や方法を見る
民営のペット葬儀会社に依頼する際の注意点
ペット葬儀会社は一度決めてしまえば、火葬~納骨・返骨までの一切を任せることになります。信頼のできる葬儀会社かどうか慎重に選びましょう。
ペット葬儀会社の選び方・ポイント
- 葬儀の流れやプラン、費用について分かりやすく丁寧に説明してくれる
- 従業員のマナーがしっかりしている
- 従業員の知識が充分にある
- こちらの要望を丁寧に聞いてくれる
- 所在地や電話番号が明確にある
他にもホームページで施設の写真があれば、希望のイメージに合っているかどうか確認できます。
ペットの火葬場の選び方・ポイント
火葬場は大きく分けて「動物霊園・葬儀場」と「訪問火葬」に分けられます。
動物霊園・葬儀場での火葬の流れ
葬儀会社に電話して日程や葬儀プラン、送迎の有無などを決定します。葬儀プランですが、一般に「個別火葬」「合同火葬(他家の動物と共に火葬)」「火葬からお骨上げまで立ち会い」「一任」などの選択肢があります。
プランを決め、予約が完了したら、当日は飼い主さん自身で、もしくは葬儀会社のお迎えにて来園します。火葬炉の前でお別れし、待機室があればそこで時間を過ごします。
火葬時間は約1時間~2時間で、火葬が終わり次第、お骨上げをします。遺骨は持ち帰るか、霊園に納骨堂がある場合には納骨することも可能です。
訪問火葬の流れ
葬儀会社に電話して日程や葬儀プランなどを決定します。当日、火葬炉を積んだ車が訪問し、ご自宅付近(要相談)で火葬します。多くの移動火葬車では、火葬によって生じる煙や臭いはほぼ出ない構造になっています。火葬時間は約1時間~2時間で自宅にて待機します。火葬が終わり次第連絡があり、お骨上げをします。
火葬の際に棺に入れても良いもの(副葬品)
火葬に際して、遺体とともにお花や好物だったおやつ、思い出の詰まった写真など一緒に入れてあげたいかと思います。ただ、何でも入れて良いというわけではなく、入れることで火葬時間が伸びたり、お骨が汚れたり、有害ガスが発生するなど、火葬に悪影響を及ぼすものもあります。
葬儀会社の方と相談しましょう。
服装について
動物霊園や葬儀場での服装ですが、人のお葬式のように喪服や地味な格好、黒基調などといった決まりはありません。日常的な格好での参加が一般的ですが、極端に派手な格好は避けた方が良いかと思われます。
費用について
「犬」か「猫」か「種類」や「体格」「葬儀プラン」「地域」などによって費用は大きく異なります。おおよその目安としては猫や小型犬で1〜5万円、中型犬~大型犬では3〜8万円くらいです。多くの葬儀会社ではホームページやパンフレットにて目安の費用を公開しているため、検討中の葬儀会社があればそちらを参照ください。
悪徳業者によるトラブルに注意
誠意をもって仕事をされている多くの優良業者に混じって、一部の悪徳業者によるトラブルも生じています。- 事前説明とは異なる不当な高額請求
- 預かった遺体を火葬しないで山中に不法投棄
- 別の遺体の遺骨を返骨される
動物病院は近郊のペット葬儀会社のことは知っているはずなので、かかりつけの先生に相談してみるといいでしょう。
葬儀会社を利用したことのある犬仲間や猫仲間を探して評判を聞いてみるのも良いかと思います。
犬が亡くなった後の届出
犬が亡くなった場合には、狂犬病予防法にて30日以内に市区町村に届け出ることが義務付けられています。
届出方法としては、市区町村役場に直接行く、もしくは郵送でも可能です。
届出に必要なもの
- 死亡届(市区町村役場で貰います。HPから印刷可能なところもあります)
- 鑑札
- 狂犬病予防注射済票
死亡届には「犬種」「生年月日」「亡くなった年月日」「名前」「飼い主の住所氏名」などを記載します。
鑑札や注射済票を無くした場合や、形見としてとっておきたいという場合には相談に応じてくれることもありますが、返却することが基本です。
ペットロスについて
愛するペットの喪失によって深い悲しみや喪失感が生じます。倦怠感や集中力低下、頭痛などの症状が数カ月から数年にも及ぶこともあります。
ペットを家族、ひいては家族以上の存在として捉えている方も多く、身近な人を亡くした際と同様にこのような悲嘆症状が生じるのは当然の反応ともいえます。
無理に克服しようとしても簡単にできるものではなく、少しずつ少しずつ悲しみを受け入れていくものです。
同じ悲しみを経験をした仲間がいれば、悲しみを表出することで孤独感が和らぐこともあります。
まとめ
遺体は身なりを整えて、涼しい所に安置しましょう
ペット葬儀社は慎重に選びましょう
愛犬の死後、30日以内に市区町村に届け出ましょう
ペットロスは当然の反応です。少しずつ受け入れましょう
愛するペットが元気に生きている期間に、亡くなった後のことなど想像したくはなく、考えること自体が縁起が悪いと思われるかもしれません。
ただ、最後の大切な時間を無駄にしないためにも、納得のいくお別れのためにも、病気になった時のことや、終末期からの看取り、葬儀のことなど、一度考える機会を作ってみるのも良いのではないでしょうか?