日本にも「ティアハイム」を 京都動物愛護センターが目指す殺処分ゼロの考え方とは(前編)

動物愛護の推進にとって大きな課題の一つである収容施設(シェルター)の問題。先日の記事でドイツにある巨大シェルター「ティアハイム」を紹介しましたが、ティアハイムは街中にあり、綺麗な建物で誰でも気軽に訪れることができる理想的な施設です。

そんなティアハイムのような施設が京都にもあるのをご存じでしょうか。それが、「京都動物愛護センター」です。同センターは、日本で初めて都道府県(京都府)と政令都市(京都市)が共同で設置・運営する動物愛護施設として、2015年に誕生しました。

今回はシロップ代表の大久保が、同センターの太田 眞一センター長に譲渡・殺処分の現状やセンターの取り組み・課題についてお話しを伺ってきました。

京都動物愛護センター

京都動物愛護センター・太田センター長(右)とシロップ代表の大久保

京都動物愛護センターってどんなところ?

京都動物愛護センター

大久保 よろしくお願いします。施設を見学させていただきましたが、とても明るくて綺麗ですね!

太田 はい。緑豊かな上鳥羽公園(京都市南区)内にあり、施設内も明るく綺麗で、多くの方々が気軽に立ち寄れる環境になっています。本センターでは、太陽光発電システム、太陽熱利用システムを設置するとともに、施設内の全ての照明についてLED照明を導入するなど、省エネ設備も積極的に取り入れ、温室効果ガス排出量の削減を図っています。特に犬猫の収容室では床の冷暖房に地中熱利用システムを活用しており、国内の動物愛護センターで導入された事例としては全国初となります。

京都動物愛護センター

大久保 施設横にはドッグランもあり、多くの飼い主さんが来られていますね。

太田 そうですね。譲渡した里親さんも遊びに来られたりするので、非常に嬉しいですね。

大久保 こういった公園内に施設がある愛護センターは非常に珍しいと思いますが、どうやって実現されたのでしょうか?

太田 京都市ではもともと、10年ほど前から動物愛護センターをつくろうと行政内で話が出ていました。これまでは京都市と京都府の動物管理施設が京都市内にあり、京都市と京都府の二重行政ではないかと指摘されていました。さらに京都市管轄のセンターは、京都市在住の市民の方々にしか譲渡できない決まりがありました。そこで殺処分ゼロに向け、京都市と京都府がタッグを組んで取り組んでいこうということとなり、昨年ようやく愛護センターの設立が実現したんです。

大久保 施設には京都市獣医師会の夜間救急病院も併設されています。

太田 はい。行政と獣医師会がタッグを組むことは珍しく、他県のセンターの方や議員の方々が参考に足を運ばれることもありますね。

大久保 一枚岩となって、動物愛護を推進されていることは非常に素晴らしいですね。実際にメリットはありましたか?

太田 今までは譲渡対象を京都市に限っていましたが、京都府とタッグを組むことで府全体に広げることができました。そうすることで、譲渡比率は増加しています。

大久保 動物愛護センターと聞くと、何をしているところなのかイメージが掴みにくい方が多いと思います。業務内容について教えてください。

太田 主な業務は下記の通りで、すべてのペットが健康で人と共生できる社会づくりを目指しています。

  • 犬・猫等、ペット動物に関する適切な飼養管理の普及啓発事業
  • 飼主からの放棄犬猫の引取・収容
  • 所有者不明犬猫の保護収容
  • 負傷動物の保護収容
  • 保護・収容した犬猫の譲渡
  • 犬・猫等,ペット動物の相談受付
  • 保護・収容した犬猫の返還
  • 咬傷犬(人を咬んでしまい,事故を起こした犬)の調査と狂犬病検診
  • 「動物の愛護及び管理に関する法律」に基づく動物取扱業の登録,届出及び監視指導
  • 「動物の愛護及び管理に関する法律」に基づく特定動物の飼養保管許可,届出及び監視指導

その中で、犬猫の譲渡を推進するため、身近で誰もが利用しやすい施設をつくることが必要だと感じ、今回の設立に至りました。

起きていることを多くの方々に正しく知っていただきたい

大久保 京都において、犬や猫の殺処分や譲渡はどういった現状なのでしょう?

太田 京都市でみますと、犬や猫の殺処分数は年々減少傾向にあります。

犬の殺処分数は大きく減少

京都動物愛護センター

太田 平成22年度は76頭の殺処分が行われていましたが、平成26年度には殺処分数は8頭まで減少することができました。その背景として、収容頭数の減少や譲渡が困難な犬へのトレーナーのサポートがあります。噛み癖などのしつけをきちんとすることで、一般家庭で飼うことができる状態にしていることが大きいです。

しかし攻撃性のある子もいますし、末期ガンなどの病気を持つ子もいます。そういった子たちは、安楽死をしてあげるべきだという考えで、殺処分はまだゼロにはできていない現状があります。日本は小型犬文化ということもあり、小型犬はすぐ里親が見つかりますが、中型犬以上や高齢犬は見つかりづらいという現状もあります。

京都動物愛護センター

京都動物愛護センター

MIX犬のわんこたち。新しい飼い主をまだかまだかと待っています

猫は野良猫が多く、まだまだ譲渡は進んでいない

京都動物愛護センター

太田 猫に関して言えば、やはり野良の子猫が非常に多い現状があります。繁殖頻度も高い動物であるため、収容するものの譲渡には至らず、殺処分されてしまっている現状があります。

大久保 着々と改善はできているものの、まだまだ課題は山積みということですね。最近だと、SNSの発展によって、保護の投稿や拡散が非常に多く見受けられます。里親になりたい方も増えているのではないかと思いますが、いかがでしょう?

太田 はい。SNSによって非常に多くの方に動物愛護に関して関心を持っていただけていると思います。施設までお越しいただき、新しい飼い主となっていただいています。ただ、間違った情報が拡散されることに懸念もあります。先日、本センターに収容された犬がいたのですが、SNSで「処分されてしまうので助けてあげてください」といった内容が拡散されてしまい、苦情の電話がたくさん来ることがありました。しかし、何日たったら処分するなんてことは定めておりません。犬や猫に幸せに生きて欲しいということが職員の願いであり、本センターのミッションであります。できる限り保護して、新しい飼い主の方を探すことを第一に考えています。

大久保 起きていることを正しく伝えることが大切ですよね。ただ、ネガティブな情報を発信してシェアを呼ぶだけでは何も解決しないと思っています。私たちは、正しい情報を発信していきたいと考えています。

太田 とても大切なことだと思います。保護されている方々も、行政も、この子たちが幸せに暮らせる環境をつくることにおいては、同じ目標なはずです。しかし、それぞれの環境や状況もあり、できることとできないことがあります。それを改善するために、全員が一枚岩となって進めることが大切だと考えています。

京都動物愛護センター

こちらは猫ルーム

京都動物愛護センター

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キャットタワーからジロッと

京都動物愛護センター

殺処分ゼロは通過点でしかない。譲渡率100%がゴール。

京都動物愛護センター

大久保 どの県でも、殺処分ゼロを目指す声が多くなっています。これからのビジョンについてお聞かせください。

太田 殺処分ゼロはただの通過点だと思っています。殺されないことがゴールではなく、幸せに暮らせることがゴールですから。ワード一つで、市民や国民の方々が勘違いすることが非常に怖いと思っており、先ほども申しました通り、正しいことを伝えることが大切だと思っています。

大久保 実際、まだまだ年間15万匹の犬猫が収容され、譲渡率は30%ほどと低い状況ですよね。どのように改善すべきだと思いますか?

太田 まず、私たちができることとしては、より多くの方に譲渡事業を知ってもらうことです。そして、譲渡してから本当にきちんと育てられているのかまでチェックできる体制が必要だと考えています。

大久保 そういう意味では、インターネットの力で自治体のネットワーク化ができれば、他県に譲渡することも可能になるのではないでしょうか?

太田 そうですね、まだまだインターネットの導入が進んでいない現状もありますので、その取り組みが実現できれば、新しい流れができると思います。

大久保 最後に、動物愛護の未来について太田さんが目指すことは何でしょう?

太田 まず、京都動物愛護センターを通じて、譲渡率を100%に近づけること、そしてセンターに入ってくる数をゼロにすることです。だからこそ、まず起きている現実を多くの方々に知っていただき、責任を持って飼うことの大切さを学んでいただく。そして、本センターのようなシェルターから引き取ることが当たり前になる社会をつくりたいと考えています。一緒に頑張りましょう。

大久保 ありがとうございました!

編集後記

いかがでしたでしょうか?

京都動物愛護センターは4月30日で1周年を迎えました。
当日は、イベントが実施され、ドッグランでの散歩体験や、講演会などが開かれました。

京都動物愛護センター
京都動物愛護センター

太田さんも仰られたように、それぞれの活動は、小さな一歩かもしれませんし、その一歩に批判したい時もあるかもしれません。しかし、犬や猫が幸せに暮らせる環境をつくることが携わる全員の想いだと思いますし、その軸だけがぶれなければ、果敢にチャレンジすることが大切だと思います。

引き続き、ペトことでは日本にシェルターから引き取る文化をつくるため、目の前で起きている正しい情報を発信してまいります。

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