ドイツ最大の動物保護施設「ティアハイム・ベルリン」見学レポート ペット先進国の動物福祉とは
2015年7月、わずかな夏休みを利用して、ドイツのティアハイム(Tierheim)を見学しました。個人的な趣味での見学でしたが、今回は現地で撮影した写真を中心に、その様子をご紹介しようと思います。
目次
「もっと開く」
こんにちは、公益社団法人「アニマル・ドネーション」のボランティア組織である「クラブアニドネ」の ふみぞのれいこ と申します。11歳のジャックラッセリアと一緒に暮らしています。
ベルリンのティアハイムは東京ドーム約3個分の敷地面積を有しています。以前はベルリンの中心部にあり、現在の場所に移ってから現在の広さになったそうです。ベルリンの中央駅から電車とバスを乗り継ぎ、バス停から約10分歩くとティアハイムが見えてきました。可愛らしい犬や猫のモチーフと「TIERHEIM」の文字を右手にして進むと施設の入口があります。
職員の方の時間が取れれば案内していただくこともできるそうですが、この日はお忙しいようでガイドの方と自分たちで施設内を見学させていただきました。敷地内にはいくつもの建物があり、それぞれに小動物、犬、猫、爬虫類、豚、鳥などさまざまな動物が保護されていて、ちょっとしたカフェもあります。
獣医さんのいる建物を通り過ぎ、まずモルモットなどの小動物の建物を見学しました。建物に入ると、わらやおがくずなどが入った区切られたスペースが横にまっすぐと並んでいました。一つのスペースに1~3匹の小動物がいて、スペースの前にある紙にそれぞれの動物の情報が記載されていました。その項目としては
などがあります。例えば↓この紙(写真左)では、「Friedolin」という名前で長毛のモルモットのオス。誕生日は不明といった情報がわかります。
小動物の建物は見学している人があまり多くなく、静かで、動物たちも、もそもそと穏やかに暮らしていました。
奥に進むと数匹の鳥が生活している小屋がありました。↓こちらの写真のように完全に室内になっている小屋もあれば、一面が外に面している小屋もありました。
4~5部屋のどの小屋の中にも止まり木があり、鳥たちは止まり木から止まり木へ自由に飛び回っていました。鳥の小屋にもそれぞれの子の情報が書かれた紙が写真付きで貼ってあります。中には「Hallo」と言ってくれた鳥もいました。誰に教わったのでしょう……?
ティアハイムにはトレーニングや、リハビリ・治療が必要な子専用の建物があります。トレーニングやリハビリが必要な子は、新しい家族に恵まれにくいという印象を持つ方もいらっしゃるかもしれません。でも、この子にはスポンサーがいます。↓これはこの子に定期的に寄付をしている人がいることを示す貼り紙です。
寄付は個人の好きな額、毎週でも毎月でも1年に1度でも好きな頻度を選べるとのこと。そして、この子が新しい家族を見つけて一緒に暮らしを始めてからも、原則としてその支援は続きます。その支援額はこの子のお世話に使うために新しい家族に渡されます。この貼り紙がある子は、家族に迎える際に金銭面のハードルが少し下がるので、比較的譲渡されやすくなるそうです。もちろん、犬以外の動物のスポンサーになることも可能です。
次の建物も猫舎です。↓こちらは病気や、人に馴れていない猫のための猫舎で、積極的に譲渡することはないそうです。人の目に触れにくい造りや工夫がなされています。こちらでも猫の様子やプロフィールを写真で見ることが可能です。ここにもスポンサー付きの子がいますね(写真右)。
建物に入ってすぐに目に入ってくるのはカメが保護されているエリア。十分に動き回れるスペースに、運動ができる工夫もされていました。よく見ると甲羅に名前が書かれています。
さらに奥に進むと室内のエリアがあります。 ドアを開けると水槽のある小部屋があり、どの小部屋にも↓このように木が置かれていました。一瞬見落としてしまいましたが、イグアナさんが登っていらっしゃいました(写真右中央)。
その向かい側には↓このように温度調節されたケースがずらり。撮りやすい場所にいらしたので、思わず1枚(写真右)。
照明や木や岩など暮らしやすい環境の配慮がなされていました。
家畜動物のエリアの近くには、家畜動物について学ぶためのエリアがあります。
建物に向かう道にはさまざまな動物の知識・家畜動物を取り巻く状況が示されています。
飼育方式は、「3」「2」「1」「0」の四つに分かれています。「0」 は放し飼いで飼育され、そのニワトリが産む卵はBio製品(※)として扱われ、価格も高いです。反対に「3」はケージに入れられて飼育されたニワトリで、その卵の価格は一番安いです。
スーパーなどで売られている卵には文字が印字されていて、一番前の数字が先ほどの飼育方式を示します。後ろに続く文字は生産国、地域を細かく示します。
ドイツには家畜の輸送時のスペース確保にも規定があります。
次に見学したのは猫舎です。こちらには多くの人が訪れていました。ガラス張りのドアの奥では、猫たちが何匹かずつに分かれていて、キャットタワーや毛布などもあり、やはり十分なスペースがあるのが印象的でした。
↓こちら(写真左)は猫のプロフィールが書かれた紙が入った袋です。現在利用中の目薬などがある子はその旨が記載され、この袋に一緒にいれられていました。
猫舎は中と外にわかれていて、猫が自由に出入りできるようになっています。外側にもキャットタワーや爪とぎなどがあり、この日はお天気だったので、外も気持ちよさそうです。 建物の屋根が長めになっているので、直射日光は当たっていませんでした。
建物に入ると、元気な鳴き声が響きました。吠える子も何匹かいましたが、寝ている子や、目の前まで行くと少しずつ近づいてくる子もいました。もちろん、こちらにも1匹ずつのプロフィールが書かれた紙があります。
外にも十分なスペースがあります。ジャックラッセリアとみられる子もいました(↓写真右)。
この時間は順番にお散歩に行っている時間帯でした。お散歩はボランティアの方も協力して行っているそうです。
お散歩以外にも、研修を受けてティアハイムの案内をすることや、猫と遊んであげること、猫をなでてあげることなどさまざまなボランティアがあるため、高齢の方でボランティアに登録している方も少なくないとのことでした。ちなみに、私たちに同行したガイドの方も何度か通訳としてこちらに訪れたことを機会に今度研修を受ける予定とおっしゃっていました。
売店にはリードなどのちょっとしたペットグッズも売っていて、こちらで買えば一部の額が寄付になります。また、フリーマーケットのような寄付の方法もありました。
拙いレポートにお付き合いいただきありがとうございました。私も自分に合った方法で、継続して「キモチをカタチに」したいです。
ベルリンのティアハイムを見学
「ティアハイム(Tierheim)」とは、「動物(Tier)」の「家(heim)」という意味で、ドイツの動物保護施設のことです。ドイツのそれぞれの都市や町にはさまざまな規模のティアハイムがあります。私が訪問したのは↓こちらのベルリンの施設です。ベルリンのティアハイムは東京ドーム約3個分の敷地面積を有しています。以前はベルリンの中心部にあり、現在の場所に移ってから現在の広さになったそうです。ベルリンの中央駅から電車とバスを乗り継ぎ、バス停から約10分歩くとティアハイムが見えてきました。可愛らしい犬や猫のモチーフと「TIERHEIM」の文字を右手にして進むと施設の入口があります。
職員の方の時間が取れれば案内していただくこともできるそうですが、この日はお忙しいようでガイドの方と自分たちで施設内を見学させていただきました。敷地内にはいくつもの建物があり、それぞれに小動物、犬、猫、爬虫類、豚、鳥などさまざまな動物が保護されていて、ちょっとしたカフェもあります。
獣医さんがいる建物から小動物がいる建物へ
初めに訪れたのは獣医さんがいる建物です。中に入ることはできませんでしたが、施設に保護されている動物と施設から里親に迎えられた動物で、獣医さんの受付が分かれているそうです。新しい家に行った後も施設のサポートが受けられるようになっています。コンクリートの入口はシンプルでおしゃれですね……!
獣医さんのいる建物を通り過ぎ、まずモルモットなどの小動物の建物を見学しました。建物に入ると、わらやおがくずなどが入った区切られたスペースが横にまっすぐと並んでいました。一つのスペースに1~3匹の小動物がいて、スペースの前にある紙にそれぞれの動物の情報が記載されていました。その項目としては
- 名前
- 種類(ウサギ、モルモット等)
- 性質
- 誕生日
- 毛の色
- 個体ナンバー
- この施設に来た日
- マイクロチップやリングの有無
- 性別と不妊去勢の有無
- ワクチン接種の有無
- 引き渡し理由
などがあります。例えば↓この紙(写真左)では、「Friedolin」という名前で長毛のモルモットのオス。誕生日は不明といった情報がわかります。
モルモットのFriedolin
ネザーランド・ドワーフのPasa
デグーのBasta
小動物の建物は見学している人があまり多くなく、静かで、動物たちも、もそもそと穏やかに暮らしていました。
鳥が保護されている建物にはサルの姿も
↓こちら(写真左)は鳥が保護されている建物の入口です。中には一部サルが保護されているスペースがありました。動物実験に使用されていたサルが保護されていて、譲渡されることなくずっとティアハイムで暮らすそうです。Vogel=鳥、haus=家
奥に進むと数匹の鳥が生活している小屋がありました。↓こちらの写真のように完全に室内になっている小屋もあれば、一面が外に面している小屋もありました。
4~5部屋のどの小屋の中にも止まり木があり、鳥たちは止まり木から止まり木へ自由に飛び回っていました。鳥の小屋にもそれぞれの子の情報が書かれた紙が写真付きで貼ってあります。中には「Hallo」と言ってくれた鳥もいました。誰に教わったのでしょう……?
動物にスポンサーが付くことで譲渡しやすく
次に見学したのは犬のいる建物ですが、一般に公開している犬の建物とは少し設備が違いました。円形の芝生のスペースに中型~大型くらいの犬がいました。彼女はトレーナーさんと訓練をするようです。ティアハイムにはトレーニングや、リハビリ・治療が必要な子専用の建物があります。トレーニングやリハビリが必要な子は、新しい家族に恵まれにくいという印象を持つ方もいらっしゃるかもしれません。でも、この子にはスポンサーがいます。↓これはこの子に定期的に寄付をしている人がいることを示す貼り紙です。
「私にはスポンサーがいます。○○さんありがとう。Cassieは引き続きお家を探しているよ!」という意味合いです
寄付は個人の好きな額、毎週でも毎月でも1年に1度でも好きな頻度を選べるとのこと。そして、この子が新しい家族を見つけて一緒に暮らしを始めてからも、原則としてその支援は続きます。その支援額はこの子のお世話に使うために新しい家族に渡されます。この貼り紙がある子は、家族に迎える際に金銭面のハードルが少し下がるので、比較的譲渡されやすくなるそうです。もちろん、犬以外の動物のスポンサーになることも可能です。
バケーション前に収容数が増える猫舎
続いて↓こちらは猫舎。ただし、メインのものではなく収容数が増えたときのためのもの。ドイツはバケーションが長い(個人差はありますが3週間程度)こともあってか、夏のバケーション前に収容数が増えるそうです。見学した日は7月でしたが、まださほど活発には使われてない様子でした。次の建物も猫舎です。↓こちらは病気や、人に馴れていない猫のための猫舎で、積極的に譲渡することはないそうです。人の目に触れにくい造りや工夫がなされています。こちらでも猫の様子やプロフィールを写真で見ることが可能です。ここにもスポンサー付きの子がいますね(写真右)。
カメやイグアナがいるエキゾチック舎
次はエキゾチックアニマル(※)の建物です。※一般的に犬猫以外の小動物を指します。
建物に入ってすぐに目に入ってくるのはカメが保護されているエリア。十分に動き回れるスペースに、運動ができる工夫もされていました。よく見ると甲羅に名前が書かれています。
さらに奥に進むと室内のエリアがあります。 ドアを開けると水槽のある小部屋があり、どの小部屋にも↓このように木が置かれていました。一瞬見落としてしまいましたが、イグアナさんが登っていらっしゃいました(写真右中央)。
その向かい側には↓このように温度調節されたケースがずらり。撮りやすい場所にいらしたので、思わず1枚(写真右)。
照明や木や岩など暮らしやすい環境の配慮がなされていました。
細かく規定されたニワトリの飼育方式
次は家畜動物のエリアを見学しました。アヒルにもかなり広いスペースが確保されていました。池で水浴びも
ブタもいましたが、お休み中でした(写真左)。ブタの隣にはニワトリも
家畜動物のエリアの近くには、家畜動物について学ぶためのエリアがあります。
奥の建物で小学生にあたる年代の子供たちが授業を受けるそうです
建物に向かう道にはさまざまな動物の知識・家畜動物を取り巻く状況が示されています。
どの動物からどの製品ができるかについて(写真左)。ニワトリの飼育方式について(写真右)
飼育方式は、「3」「2」「1」「0」の四つに分かれています。「0」 は放し飼いで飼育され、そのニワトリが産む卵はBio製品(※)として扱われ、価格も高いです。反対に「3」はケージに入れられて飼育されたニワトリで、その卵の価格は一番安いです。
※Bio…Biologiqueの略。オーガニック製品や無農薬製品のこと。ヨーロッパにはBio製品のみ扱うスーパーもあります。
スーパーなどで売られている卵には文字が印字されていて、一番前の数字が先ほどの飼育方式を示します。後ろに続く文字は生産国、地域を細かく示します。
ウサギとアヒルの飼育について(写真右)
ドイツには家畜の輸送時のスペース確保にも規定があります。
ティアハイムの猫は自由に外に出られる!?
少し歩くと動物たちのお墓があり、それぞれに家族からのお花やおもちゃが供えられていました。真ん中より奥がお墓
次に見学したのは猫舎です。こちらには多くの人が訪れていました。ガラス張りのドアの奥では、猫たちが何匹かずつに分かれていて、キャットタワーや毛布などもあり、やはり十分なスペースがあるのが印象的でした。
こちらにもスポンサー付きの子がいました。スポンサー付きのMaurizio(写真右)
↓こちら(写真左)は猫のプロフィールが書かれた紙が入った袋です。現在利用中の目薬などがある子はその旨が記載され、この袋に一緒にいれられていました。
猫舎は中と外にわかれていて、猫が自由に出入りできるようになっています。外側にもキャットタワーや爪とぎなどがあり、この日はお天気だったので、外も気持ちよさそうです。 建物の屋根が長めになっているので、直射日光は当たっていませんでした。
猫舎を外から撮ったものです
犬舎にも自由に行き来できる室外スペース
最後に犬の仲介施設へやってきました。犬舎は1匹ずつ分かれていて、猫舎同様に、犬たちは奥の小窓から外へ出られるようになっています。建物に入ると、元気な鳴き声が響きました。吠える子も何匹かいましたが、寝ている子や、目の前まで行くと少しずつ近づいてくる子もいました。もちろん、こちらにも1匹ずつのプロフィールが書かれた紙があります。
外にも十分なスペースがあります。ジャックラッセリアとみられる子もいました(↓写真右)。
この時間は順番にお散歩に行っている時間帯でした。お散歩はボランティアの方も協力して行っているそうです。
お散歩以外にも、研修を受けてティアハイムの案内をすることや、猫と遊んであげること、猫をなでてあげることなどさまざまなボランティアがあるため、高齢の方でボランティアに登録している方も少なくないとのことでした。ちなみに、私たちに同行したガイドの方も何度か通訳としてこちらに訪れたことを機会に今度研修を受ける予定とおっしゃっていました。
売店にはリードなどのちょっとしたペットグッズも売っていて、こちらで買えば一部の額が寄付になります。また、フリーマーケットのような寄付の方法もありました。
売店内にあるエサの寄付箱(写真左)。右の写真はテーブルにある物の中で、気に入った物があれば右手前の寄付箱にお金を払い、持ち帰って良いというもの
自分に合った方法で「キモチをカタチに」
今回見学して印象的だったことは、寄付にもお世話のボランティアにもさまざまなカタチがあるところです。さまざまなカタチがあるからこそ、それぞれが自分に合った無理のない方法で支援を続けられているように思いました。また、寄付額が大きくなくても、毎年や、毎月など少しずつ継続している人が多いという文化も日本とは異なるように感じました。拙いレポートにお付き合いいただきありがとうございました。私も自分に合った方法で、継続して「キモチをカタチに」したいです。