【体験談】預かりボランティアとは?条件や費用、大変なことなど紹介

牧野芽子

ライター

【体験談】預かりボランティアとは?条件や費用、大変なことなど紹介

「保護犬や保護猫のために何かしたいけど、自分でお迎えするのは難しい……」「今は飼えないけど、何かできることはないかな?」そんな方に検討してもらいたいのが、預かりボランティアです。この記事では、保護団体の支援をしている「ペトコトお結び(OMUSUBI)」担当の牧野が、預かりボランティアの始め方や条件、費用などを体験談を交えながら分かりやすくご紹介します。

目次
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預かりボランティアとは?

社会化トレーニングの一環として、さまざまな人に触れてもらう練習中の預かりボランティアで預かった保護犬
社会化トレーニングの一環として、さまざまな人に触れてもらう練習中。少し緊張した表情

預かりボランティアは、保護団体に保護された犬や猫を新しい家族が見つかるまで家庭で一時的に受け入れてお世話をする活動です。元野犬や多頭飼育崩壊の現場から保護された子など、人と暮らす練習や安心できる環境づくりが必要なケースも少なくありません。

家庭という日常の中で過ごすことによって、犬や猫にはさまざまな変化が生まれます。

  • 人への信頼が回復する
  • 生活リズム(食事・トイレ・就寝)が安定する
  • 外の刺激や音に少しずつ慣れていく

こうした積み重ねが、新しい家族との生活へスムーズにつながる準備になります。

また、「終生飼育(最期まで飼う)」を前提としないため、数週間〜数か月の期間に合わせて柔軟に参加できるのも特徴です。

  • 一時帰国中の数か月だけ
  • 子育てや仕事が落ち着いたタイミングに
  • 今は飼えないけど、保護犬に関わりたい
  • 高齢のため長期飼育は不安だけど、誰かの役に立ちたい、また犬と暮らしたい

上記のような柔軟な関わり方ができる場合もあります。

なぜ預かりボランティアが必要なの?

保護シェルターや自治体の収容施設には受け入れられる頭数に限りがあります。許容量を超えると、1頭ごとのケアが行き届かなくなったり、環境悪化によるストレス・体調不良のリスクが高まったりします。

  • 受け入れ余力が増え、新たに救える命が広がる
  • 家庭環境での生活経験が増え、人や社会に慣れる機会を作れる
  • 体調や行動の細かな変化を把握しやすく、適切な医療・ケアにつなげやすい

こうした理由から、家庭での一時預かりは、保護現場と里親家庭をつなぐ大切な“橋渡し”の役割を担っています。

預かりボランティアのやりがいや大変さ

「大変そう」「途中で辞めたくなったらどうしよう」──これは多くの方が最初に抱く不安です。実際、毎日の散歩や食事、トレーニング、医療管理、社会性のケアなど、時間と根気が必要な場面があります。特にシニア犬猫や持病のある犬猫は、体調管理に神経を使うこともあるでしょう。

手からフードを食べる預かりボランティアで預かった保護犬
人の手に安心感を持てるよう、あえて手からごはんをあげている様子

その一方で、預かりボランティアは小さな命が新しい一歩を踏み出す手助けとなる尊い活動です。 例えば、こんな瞬間にやりがいを感じられます。

  • 目の前でごはんを食べてくれたとき
  • お散歩が上手にできたとき
  • 初めて側に来てくれたとき

こうした小さな成長を一緒に喜べることは、何ものにも代えがたい体験になります。

途中で「辞めたい」と思うことがあっても大丈夫です。ほとんどの団体はサポート体制を用意しているため、一人で抱え込まずに相談することができます。

預かりボランティアの条件と準備について

預かりボランティアの条件は団体によって異なりますが、基本的には次のようなものがあります。いずれも命を安心して預けられる環境を整えるために大切な条件です。

参加に求められる条件

  • ペット飼育が可能な住居に住んでいること(集合住宅の場合は要確認)
  • 家族全員が預かりに同意していること
  • 室内飼育ができ、散歩など日常的なお世話を行えること
  • 譲渡会や動物病院へ移動できること
  • 犬や猫に関する基礎知識を持っている、または学ぶ意欲があること

なお、高齢者や単身世帯でも参加できる団体はあります。条件は一律ではないため、まずは希望する団体に相談してみるのがおすすめです。

準備しておくとよいもの

多くの団体ではフードや医療費を負担してくれますが、日用品は預かり家庭で用意することもあります。事前に確認しておくと安心です。

  • ケージやサークル(脱走防止のためにも必須)
  • トイレ・トイレシート
  • 食器(水入れ・フードボウル)
  • 首輪やハーネス、リード(二重リードが推奨されることも)
  • キャリーケース(通院や移動に使用)

これらはあくまで一般的な例であり、団体によって貸し出しや支給がある場合もあります。必ず事前に確認して準備を進めましょう。

預かりボランティアにかかる費用は?

預かりボランティアを検討する際に気になるのが「負担する費用」です。基本的には医療費やワクチン代など大きな出費は保護団体が負担する場合が多いですが、細かなルールは団体によって異なります。「日用品は自己負担」「医療費のみ団体負担」といったケースもあるため、必ず事前に確認しておきましょう。

団体が負担することが多い費用の一例
  • 健康診断や治療などの医療費
  • ワクチン・不妊去勢手術費
  • フィラリアやノミダニ予防薬などの薬代
  • 基本的なフードやおやつ(団体が用意する場合)

預かり家庭が負担することが多い費用の一例
  • ペットシーツやトイレ砂などの日用品
  • ケージやサークル、食器類などの生活用品
  • 追加のフードやおやつ(団体支給外のものを与える場合)

【著者の体験談】Delacroix Dog Ranchの場合

私が預かりボランティアをした保護団体「Delacroix Dog Ranch(ドラクロア ドッグ ランチ)」では、以下のようなルールがありました。

  • 医療費は基本的に団体負担
  • フードや薬(フィラリア予防薬など)も団体が用意
  • ケージは在庫があれば貸出可能
  • 預かる犬や猫の条件は事前にヒアリングのうえ決定

このように、団体ごとに負担の範囲やルールは大きく異なるため、必ず確認してから活動を始めることが大切です。

預かりボランティアの始め方と流れ

一時預かりボランティアの同意書
一時預かりボランティア同意書(Delacroix Dog Ranch)

預かりボランティアを始めるには、各団体に応募してから審査・調整を経てスタートするのが一般的です。ここでは一例としての流れをご紹介します。実際の手順は団体によって異なるため、必ず確認してください。

預かりボランティアの流れ(例)
  1. 応募フォームの記入・アンケート提出
  2. 面談・ヒアリング(候補の犬や猫との対面を含む場合も)
  3. 自宅環境の確認(脱走防止や生活スペースのチェック)
  4. 預かる犬や猫の決定・引き渡し
  5. 問題なければ正式にスタート

具体的な流れや条件は団体によって異なるため、まずは気になる団体に「預かりボランティアを始めたい」と問い合わせてみるのがおすすめです。
また、数ある保護団体の中から、自分のライフスタイルや考え方に合った団体を選ぶことも大切です。無理のない形で関わることが、長く続けるための第一歩になります。

預かりボランティアを募集している団体

預かりボランティアは全国のさまざまな保護団体で募集されており、ペトコトお結び(OMUSUBI)に掲載されている団体の中にも、預かりボランティアを募集しているところがあります。
ここではその一部をご紹介しますので、気になる団体があれば必ず公式サイトを確認し、自分に合った形で参加を検討してみてください。東京や静岡、千葉など、さまざまなエリアで預かりボランティアを募集していますよ。

※応募や詳細については、必ず各団体の公式ページをご確認のうえ、直接お問い合わせください。

【預かりボランティア体験談】元野犬サミットとの日々

預かりボランティアの制度や条件を知っても、「実際はどんな日々になるのだろう?」と気になる方も多いと思います。そこで、私が実際に経験した体験談をお伝えします。

私が預かったのは「サミット(通称さっちゃん)」という元野犬の女の子です。彼女は、茨城県の野犬問題を解決するためのプロジェクト「ゼロイバ」によって保護され、保護団体「Delacroix Dog Ranch」に所属しました。

ゼロイバの活動とサミットとの出会い

茨城県動物指導センターでは常時200頭前後の犬が収容されており、過密状態が続いています。そこで小美玉市や茨城町と連携し、特に繁殖力の高いメス犬を優先的に保護する「蛇口締め活動」を行っているのがゼロイバです。繁殖の連鎖を止めることで野犬の頭数を減らし、地域全体の問題解決につなげることを目的としています。

サミットも、その活動の中で捕獲された1頭です。小柄な体で、子犬のように見えました。

そんなサミットは、捕獲直後に恐怖のあまりパニック状態に。現地ボランティアさんが時間をかけて愛情を注ぎ、初めての首輪をつけてくれたことで無事に保護されました。

警戒から信頼へ――サミットと過ごした日々

我が家にやってきた当初のサミットは、とても警戒心が強く、ケージの外に出ることすら拒んでいました。散歩の練習をしても、初めて見る車や音にパニックを起こし、立ち止まったり飛び跳ねたりしてしまうのです。

それでも、毎日少しずつ社会化の練習を重ねていくうちに、変化が見えてきました。

1か月ほど経つ頃には、踏切や都会の大通りでも落ち着いて歩けるようになり、外で知らない人からおやつを受け取ることもできるようになったのです。

小さな「できた」の積み重ねが、確実に彼女の表情や行動を変えていきました。

野で暮らしていた犬が、人間と一緒に暮らし始めるというのは、想像以上に大きな変化です。サミットもきっと最初は、心細くて、怖くて、不安でたまらなかったはずです。

それでもサミットは変わっていきました。日々少しずつ新しいことを覚え、自分の足で歩き出すようになったのです。そんな彼女の変化を一番近くで見守れたことは、預かりボランティアとして、かけがえのない経験になりました。

里親さんとの出会い、そして旅立ち

預かりボランティアで預かった保護犬が足の上でリラックスしている様子
体のどこを触られても安心できるよう、この体勢でリラックスする練習も続けた。写真はトライアル前、最後のお風呂の様子。新しい家族のもとへ送り出す前に「ここまでよく頑張ったね」という思いを込めてシャンプーした

ある程度社会化が進んだタイミングで、サミットの里親募集が始まりました。ありがたいことに一晩で複数の応募があり、団体の代表と相談のうえ、サミットにとって一番相性が良さそうなご家族とお見合いを実施。トライアルを経て、新しい家族のもとへ旅立っていきました。

最初は不安でいっぱいだった彼女が、自らの足で未来へ踏み出していく姿を見るのは本当に感慨深いものでした。

預かりボランティアの意味を実感

預かりボランティアで預かった保護犬と愛犬と飼い主
先住犬のポンゴも一緒に、たくさん頑張ってくれた。三人で力を合わせ、サミットの新しい旅立ちを迎えることができた

Delacroix Dog Ranchの方が伝えている言葉を借りるなら――

「1匹の犬を救っても世界を変えることはできない。
でも、その1匹の犬の世界は確実に変わる」

まさにその通りだと感じました。

預かりボランティアは、犬にとっての「過去」と「未来」の間に立ち、次のステップへとつなぐ大切な存在です。数か月という短い時間であっても、その時間があったからこそサミットは新しい家族に出会えました。

預かりボランティアという関わりは、犬や猫の未来を切り開く大切な力になるのです。

まとめ

預かりボランティアで預かった保護犬と愛犬

預かりボランティアは日々のお世話や体調管理など大変な部分もありますが、小さな変化や成長を間近で見守れるのは、かけがえのない経験です。

「今は飼えないけれど、犬や猫のために何かしたい」と思っている方にとって、預かりボランティアはその想いを行動に変えられる第一歩にもなるかもしれませんよ。

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