殺処分数は、この10年で大きく減りました。けれど、安心して暮らせる居場所を必要とする犬や猫は、今も少なくありません。保護団体のみなさんは、いまも毎日、現場で活動を続けています。この記事では、保護犬・保護猫マッチングサービス「ペトコトお結び(OMUSUBI)」に登録する保護団体のうち、回答を得た59団体への実態調査をもとに、殺処分数だけでは見えてこない保護活動のいまを、データと現場の声からお伝えします。
第1章 調査概要
この調査について
この調査は、保護犬・保護猫マッチングサービス「ペトコトお結び(OMUSUBI)」を運営する株式会社PETOKOTOが、登録する保護団体の実態を把握し、これからの支援のあり方を考えるために実施しました。殺処分数という「結果の数字」だけでは見えてこない、現場の財務・人手・課題の変化を、できるだけ団体ご自身の言葉で記録することを目指しています。
調査の概要
| 調査名称 | ペトコトお結び 保護団体実態調査 2026 |
|---|---|
| 調査対象 | ペトコトお結び登録保護団体 |
| 有効回答数 | 59団体 |
| 調査方法 | Webアンケート(Googleフォーム) |
| 設問構成 | 30設問(選択式・自由記述の混合) |
この記事では、団体の基本情報・財務状況・保護理由・現場の課題・この1〜2年の変化・現場の声・社会への提言・今後重要となるテーマまでを取り上げています。
※本調査は、ペトコトお結びに登録する保護団体のうち回答を得た59団体の声をまとめたものであり、全国すべての保護活動の状況を統計的に代表するものではありません。一方で、日々現場で犬猫と向き合う団体の実感を知るための参考情報として位置づけています。
回答団体の規模(年間保護数)
- 〜10頭:13団体(22%)
- 11〜30頭:12団体(20%)
- 31〜50頭:11団体(19%)
- 51〜100頭:13団体(22%)
- 101頭以上:10団体(17%)
年間10頭ほどの小さな団体から、100頭を超える大規模な団体まで、幅広く回答が集まりました。規模の異なる現場の声を比較できる点が、今回の調査のひとつの特徴です。
第2章 保護団体の規模と分布
「保護した数」と「譲渡できた数」には差がある
団体に、年間の保護数と譲渡数をうかがいました。
| 年間頭数 | 保護数 | 譲渡数 |
|---|---|---|
| 〜10頭 | 22% | 27% |
| 11〜30頭 | 20% | 24% |
| 31〜50頭 | 19% | 15% |
| 51〜100頭 | 22% | 20% |
| 101頭以上 | 17% | 14% |
回答団体の分布を見ると、年間譲渡数は小規模カテゴリにやや多く集まっています。一方で、年間51頭以上を保護する団体は全体の39%でしたが、年間51頭以上を譲渡する団体は34%にとどまりました。保護数のカテゴリと譲渡数のカテゴリには、一定のひらきが見られます。保護した数が、そのまま譲渡につながっているわけではない様子がうかがえます。
この差が意味すること
「保護した数」と「譲渡できた数」は、かならずしも一致しません。とくに年間保護数の多いカテゴリではこのひらきが見られ、その背景には、高齢・疾患・人に馴れていないといった「譲渡が難しいケース」を引き受けている事情があると考えられます。
この差の背景には、長期保護や看取り、譲渡までに時間を要する犬猫の存在があると考えられます。こうした子は、1頭あたりにかかるケアの費用も、期間も、そして気持ちの負担も、とりわけ大きくなりがちです。
「若く健康な犬猫」だけでなく、高齢や病気を抱えた犬猫、人に馴れていない犬猫も支えていることが、今回の調査からうかがえます。
第3章 保護活動の財務構造
収入の規模には、大きな差がある
年間の活動収入をうかがったところ、団体ごとの差が大きいことがわかりました。
- 50万円未満:26%(15団体)
- 50〜100万円:4%(2団体)
- 100〜300万円:30%(17団体)
- 300〜500万円:9%(5団体)
- 500万〜1,000万円:18%(10団体)
- 1,000万円以上:14%(8団体)
※無回答2件を除く
年間収入が100万円に満たない団体が30%、いっぽうで1,000万円以上の団体が14%。同じ「保護団体」でも、活動の規模にはかなりの幅があることがうかがえます。
収入の柱は「寄付」と「持ち出し」
収入源を複数回答でうかがった結果が、次のとおりです。
- 寄付金:86%(51団体)
- 譲渡費用:73%(43団体)
- 物販・イベント収入:46%(27団体)
- 自己資金・メンバーの持ち出し:46%(27団体)
- 会費・賛助会員費:25%(15団体)
- 助成金・補助金:24%(14団体)
- クラウドファンディング:20%(12団体)
- 企業協賛・企業寄付:17%(10団体)
収入の中心は、寄付金(86%)と譲渡費用(73%)です。注目したいのは、46%の団体が「メンバーの自己資金・持ち出し」を収入源として挙げている点です。活動の一部が、運営する人自身の負担によって支えられている様子がうかがえます。
支出では、ほぼすべての団体が「医療費」を挙げた
- 医療費:97%(57団体)
- フード代:68%(40団体)
- ペットシーツ・猫砂などの消耗品:51%(30団体)
- 施設・シェルターの家賃・光熱費:31%(18団体)
- 設備費・修繕費:15%(9団体)
- 人件費:14%(8団体)
- 交通費・搬送費:12%(7団体)
医療費は、ほぼすべての団体(97%)が挙げたもっとも多い支出項目でした。保護した時点で、病気やけが、栄養不足を抱えた子が少なくないため、健康を取り戻すまでの医療費が、活動の財政に大きく影響していることがうかがえます。
65%が「足りていない」と感じている
- 十分に賄えている:2%(1団体)
- おおむね賄えている:25%(15団体)
- 一部、自己負担や追加支援が必要:34%(20団体)
- 大きく不足している:31%(18団体)
- 年によって大きく変動する:8%(5団体)
「一部不足」と「大きく不足」を合わせると65%。財政に不安を感じている団体が多いことがうかがえます。「十分に賄えている」と答えた団体は、59団体のうち1団体(2%)にとどまりました。
財政の厳しさは、現場の言葉にもあらわれています。
「うちのように小さなシェルターでは、保護依頼は多いにも関わらず寄付が全く集まらず、全て自費でやることになり、体も壊してしまった。」
「医療費や物価高の影響。餌や衛生消耗品は10年前の約1.5〜2倍近くになってしまった。」
「物価高騰により、医療費や飼育費、人件費が大幅に増え、運営が難しい。寄付も集まりにくくなっている。」
第4章 保護が必要になる背景にあるもの
野犬・野良猫に加え、増える「飼い主側の事情」
「保護犬・保護猫」と聞くと、野犬・野良猫、飼育放棄された犬猫、繁殖引退犬などを思い浮かべる方が多いかもしれません(けれど今回の調査からは、保護を必要とする背景が、犬猫側の事情だけでなく、飼い主側の事情とも深く関わっていることが見えてきました。)。団体に「特に多いと感じる相談・保護理由」をうかがったところ(複数回答)、結果は次のとおりでした。
- 飼い主の高齢化・入院・死亡による飼育困難:83%(49団体)
- 野犬・野良猫の保護:53%(31団体)
- 多頭飼育崩壊:46%(27団体)
- 飼育放棄:32%(19団体)
- 経済的理由による飼育困難:27%(16団体)
- 繁殖引退犬・ブリーダー放棄:14%(8団体)
- 引越し・住環境の変化:14%(8団体)
- ペットの問題行動を理由とした相談:8%(5団体)
- ブリーダー廃業:7%(4団体)
もっとも多かったのは「飼い主の高齢化・入院・死亡による飼育困難」で、83%にのぼりました。5団体のうち4団体以上が、この理由を挙げています。日本社会の高齢化が、保護活動の現場にも大きな影響を与えていることがうかがえます。
「頭数は減っても、活動は楽になっていない」という声
数字以上に受け止めたいのが、保護の“難しさ”が増しているという声です。ただし、これは全国一律の傾向ではありません。地域によっては、TNR(屋外の猫の不妊・去勢を進める取り組み)の推進で子猫の保護が減る一方、成猫や高齢猫の相談が増えているという声もありました。
活動16年というある団体からは、こんな声が届きました。
「TNRの推進で子猫はほぼいなくなり、今まで対応する余裕がなかった飼い主の飼育放棄に対応せざるを得なくなってきた。飼育放棄された動物は成猫のため、病気・高齢など譲渡困難で苦労している。単純に頭数だけを見れば減っているが、内容は大きく変化し、今の方が保護譲渡活動は苦しく大変。」
頭数という“量”は減っても、1頭にかかる手間という“質”は重くなっている——。こうした変化が、現場の負担の背景のひとつにあると考えられます。
別の団体は、高齢化がもたらす複雑さを、こう語っています。
「高齢家庭、独居、ハンディのある人などの飼育が目立ち、置き去りにされる、不適切飼育で崩壊が多い。亡くなった高齢者の身寄りが遠縁しかおらず、連絡がつきにくいため所有権や、屋内に取り残された動物の救助が困難になっている。」
ここにあるのは、もはや「犬猫だけの問題」ではなさそうです。高齢化、孤立、福祉——人の課題と分かちがたく結びついた問題に、保護団体が向き合っている現状がうかがえます。
多頭飼育崩壊も、依然として深刻
3番目に多かった「多頭飼育崩壊」(46%)も見過ごせません。経済的な困窮や孤立と重なるケースもあり、飼い主自身も支援を必要としている場合があります。犬や猫の問題だけではなく、人の暮らしや福祉、地域の生活環境の課題とも重なっていることがうかがえます。
「行政機関からの多頭飼育崩壊案件の相談が急増している。そのためレスキュー後の労力や人手不足に繋がっている。」
保護を必要とする背景について、現場では変化を感じる声もあります。その変化を理解することが、これからの支援を考える出発点になるのではないでしょうか。
第5章 現場の課題と負担
負担の中心は「お金」と「人」
保護活動で特に負担が大きいことを、複数回答でうかがいました。
- 医療費の負担:69%(41団体)
- スタッフ・人手不足:44%(26団体)
- フード・消耗品費の負担:37%(22団体)
- 預かりボランティア不足:36%(21団体)
- 保護場所の不足:27%(16団体)
- 問い合わせ対応の負担:22%(13団体)
- SNS・発信の負担:22%(13団体)
- 里親希望者とのマッチングの難しさ:22%(13団体)
- 高齢犬・高齢猫のケア:20%(12団体)
- 怖がり・野犬のケア:14%(8団体)
医療費(69%)、人手不足(44%)、フード・消耗品費(37%)が上位を占めました。いずれも「お金」か「人」にまつわる課題で、現場の負担の多くがこの2つに集まっている様子がうかがえます。
現場が語る、日々の負担
アンケートの自由記述には、日々の負担を語る声が多く寄せられました。
「時間が足りない。体力が保たない。」
「明日が見えない。自分の生活と保護を続けていけるのか、常に不安。」
「活動を長く続けるほど、譲渡が難しい子(性格、病気、シニア)が増えてきます。預かりボランティアさんへお願いするのも難しい子が多いです。そういう子の飼育費や医療費が重くのしかかっています。また、保護活動に携わっている人の多くは無償という理不尽をなくしたいです。」
第6章 「殺処分ゼロ」の先で起きていること
76%が「課題は変わらない、むしろ増えている」
殺処分数が減ったあと、現場の課題は減っているのか。うかがった結果が、次のとおりです。
- 大きく減っていると感じる:3%(2団体)
- やや減っていると感じる:19%(11団体)
- あまり変わらない:49%(29団体)
- むしろ増えていると感じる:27%(16団体)
- わからない:2%(1団体)
「課題が減っている」と感じる団体は合わせて22%にとどまり、76%が「変わらない・増えている」と答えました。殺処分数の減少だけを見ると「問題は解決に向かっている」と受け止められがちですが、現場では課題が変わらない、あるいは深刻化していると感じる団体も少なくありません。
この受け止めのギャップこそ、私たちがこの白書でお伝えしたい核心です。
保護頭数・相談件数はどう変わったか
- 増えている:24%(14団体)
- やや増えている:19%(11団体)
- 変わらない:25%(15団体)
- やや減っている:20%(12団体)
- 減っている:12%(7団体)
43%の団体が「保護頭数・相談件数は増加傾向」と答えました。殺処分数が減少する一方で、一部の保護団体では保護頭数や相談件数が増えていることがうかがえます。
現場が語る「なぜ課題は変わらないのか」
自由記述からは、いくつかの構造的な要因が繰り返し挙がりました。
「以前は野良猫の保護が大半を占めていたが、ここ数年飼い主からの保護が増えている。それに伴い問題がより複雑化しており、猫だけでなく人に対してのサポートやケア、行政や支援への対応が必要となり、1件1件に膨大な時間と労力、精神的負担がかかる。」
「行政が殺処分数を減らす代わりに、下皿である保護団体への負担が増えています。高齢者が残したペット問題も行政の対応が甘いため、その分保護団体への相談件数が増えています。」
「保健所に収容=殺処分、と思い込んでいる人が多く、飼育放棄の相談件数が増えた。殺処分しない保健所もあることを知ってほしい。」
「譲渡が困難な猫が増えている。預かり先不足。公共が機能していない。」
「動物愛護センターの殺処分数は激減しているが、行政では一般譲渡できない成猫や負傷猫が、むしろ保護団体に集まってきている。」
「ケアに必要な経費の値上がり。物価高騰で支出額が減らない。」
第7章 この1〜2年で変わったこと
「ここ1〜2年で保護活動の現場に変化を感じることがあれば」と、自由記述でうかがいました。回答を整理すると、5つの変化の流れがみえてきます。
※自由記述は、趣旨を損なわない範囲で一部抜粋・表記を調整しています。
変化① 高齢者に関わる相談・保護依頼が増えている
ここ1〜2年で多く聞かれたのが、飼い主の高齢化や死亡にともなう相談の増加です。心身の不調や生活上の困難を背景に、不適切飼育や多頭飼育崩壊につながるケースもあるという声もありました。
「高齢家庭、独居、ハンディのある人などの飼育が目立ち、置き去りにされるケースが急増。亡くなった高齢者の身寄りが遠縁しかおらず、屋内に取り残された動物の救助が困難になっている。」
変化② 物価高騰が運営を圧迫している
医療費や食費、光熱費の値上がりも、運営を直接圧迫する要因になっています。
「医療費や物価高の影響。餌や衛生消耗品は10年前の約1.5〜2倍近くになってしまった。」
「物価高騰により、医療費や飼育費、人件費が大幅に増え、運営が難しい。特に物品寄付が集まりにくくなっている。」
「家賃高騰・ガソリン代高騰による経費増加。多頭飼育案件の相談増加に伴い金銭的負担が切迫している。」
変化③ 成猫・シニア・ケアが必要な犬猫の譲渡が難しいという声
里親希望の傾向にも、変化が見られます。若く健康な犬猫に希望が集まり、成猫やシニア、病気を抱えた子のご縁が難しくなっているようです。
「里親希望者が、より若くて健康な犬を求める傾向が強い。」
「『猫ブーム』の影響もあり、子猫に関しては譲渡が進みやすいが、だからこそ成猫・シニアへのご縁が難しくなっている。」
「シニアやエイズキャリアの譲渡が難しい。生後6ヶ月以降の猫の譲渡が厳しい。」
変化④ ブリーダー廃業・繁殖崩壊の影響
法改正や飼養管理基準の見直しを背景に、ブリーダー廃業や繁殖崩壊の影響を感じるという声もありました。
「中途半端な法改正のせいでブリーダー廃業が増え、末端の私達に全てしわ寄せが来ている。」
「全国で繁殖屋崩壊が後を絶たず、譲渡数が減った。」
変化⑤ SNS・情報環境の変化がもたらす新たな問題
情報環境の変化が、保護活動への誤解や新たな問題を生む場面も出てきました。
「SNSの発達により保護活動がテレビドラマのようなものだと誤解する人が増えた。正しい情報より可哀想な情報・悲惨な情報を信じる。」
「外にいる猫を保護と称し持ち去るボランティアが増加、新しい問題となりつつある。」
第8章 現場の声:数字では伝わらないリアル
自由記述では、数字だけでは見えてこない現場の実情が数多く寄せられました。ここでは、寄せられた声をもとに、主な論点を整理してお伝えします。
保護団体に引き取り依頼が集中し、「無料で引き取ってくれる場所」と受け止められてしまう現状への戸惑い。医療ケアに時間とコストがかかっているにもかかわらず、回復後の姿だけを見て誤解されやすいという声。動物の問題は人の福祉や孤立とも絡み合い、行政・地域との役割分担や制度面に課題を感じるという指摘。そして高齢化が進むなか、飼育が難しくなったときに社会が受け皿となる仕組みづくりを求める声——。
こうした声からは、殺処分数の減少という数字の裏で、保護団体や現場のボランティアがが複雑で重い課題に向き合い続けている様子がうかがえます。
第9章 社会に知ってほしいこと
「保護活動の現場から、社会にもっと知ってほしいこと」を自由記述でうかがいました。繰り返し挙がったテーマを、5つに整理します。
① ボランティアは「無料の便利屋」ではない
「私たちボランティアは、ボランティアしていない人と立ち位置は同じ。他に仕事をし、家庭があり、仕事で稼いだ給料の中でボランティアを続けている。労力や知識の面で依頼者をサポートするのがボランティア。ボランティアは無料の便利屋ではない。」
「大半の保護活動現場では、ボランティアスタッフの持ち出しがかなりある。お金がないと保護活動はできない。」
② 行政との役割分担や連携に課題を感じる声
「民間である保護団体は、行政と同じ位置づけと思われていることが多くあります。あくまでも私たちはボランティア団体です。国から保護の助成を受けていると思っている人がまだまだ多くいます。」
「民間が自腹で活動するには無理がある。公的にも補助金など整備してほしい。」
「TNRや地域猫問題は地域課題であるため、公的機関がもっと公費で取り組んでほしい。」
③ 保護活動の透明性や情報開示も求められている
自由記述では、保護活動の医療ケアや飼養管理、情報開示のあり方について、団体ごとの差を指摘する声もありました。支援者が安心して応援できるよう、活動内容や費用の透明性を高める仕組みも求められています。
④ 保護犬猫を迎えることの意義
「長年の個人ボランティアたちの活動により、子猫が生まれることが減って殺処分が大きく減少した。犬猫を飼う時は、ぜひ保護猫・保護犬を検討してもらいたい。大人の犬猫でも、時間をかけて関係を築ける子はたくさんいます。」
⑤ 高齢社会とペットの問題を、社会全体で
「高齢者に癒しをと飼育を推奨するならば、飼育困難になった際に社会が受け皿になる必要がある。」
「高齢者に関わらず、おひとり様が増えている社会への警鐘。終生飼養をもっと多くの方に理解してほしい。」
第10章 今後の保護犬猫支援で重要なこと
「殺処分数が減少している今、今後の保護犬・保護猫支援においてより重要になると感じることは何ですか」という問いに、複数回答でお答えいただきました。
- 1位 飼い主の高齢化対策:56%(33団体)
- 2位 保護後の医療・ケア体制:41%(24団体)
- 3位 保護団体への継続的な寄付・支援:41%(24団体)
- 4位 多頭飼育崩壊の予防:37%(22団体)
- 5位 高齢犬・高齢猫の譲渡促進:32%(19団体)
- 6位 成犬・成猫の譲渡促進:32%(19団体)
- 7位 保護犬猫を迎える文化づくり:24%(14団体)
- 8位 保護活動を支える人材育成:20%(12団体)
- 9位 預かりボランティアの拡充:14%(8団体)
- 10位 怖がりな犬・野犬への理解促進:14%(8団体)
最多は「飼い主の高齢化対策」
もっとも多くの団体が「重要」と答えたのは「飼い主の高齢化対策」(56%)でした。第4章でみたとおり、保護理由の最多も「飼い主の高齢化・入院・死亡による飼育困難」(83%)です。高齢化社会とペットの問題は、これからの保護活動の中心的な課題として、支援者・行政・企業がともに認識すべきテーマだと考えられます。
2位は「保護後の医療・ケア体制」
保護後の医療やケア、動物福祉の質が問われています。医療費を支える仕組みを整えていくことが、現場の疲弊をやわらげる一歩になると考えられます。
「文化づくり」と「人材育成」も
「保護犬猫を迎える文化づくり」(24%)や「保護活動を支える人材育成」(20%)も挙がりました。いずれも、長い目で見た支援として大切なテーマです。
「ほとんどが末端のボランティアに頼っているだけなので、行政で全て対応できる部署を作るとか、法律の厳格化など、根本的な改革を本気でしなければならないと思う。」
第11章 提言:保護活動の持続可能な未来に向けて
今回の調査結果を踏まえ、私たちペトコトお結びから、5つの提言をお伝えします。
提言1 保護団体への支援を「個人の善意・持ち出し」から「社会で支える仕組み」へ
現在の保護活動の財政は、個人の寄付とメンバーの持ち出しに支えられている面が大きいことがうかがえます。65%が財政の不足を感じ、97%が医療費を大きな支出項目として挙げるなかで、持続可能な仕組みづくりが求められていると考えられます。
- 医療費補助のための専用ファンドや、行政委託制度の整備
- 企業のCSV/ESG活動と保護団体の協働(物資・資金・ノウハウの提供)
- マッチングプラットフォームへの寄付導線の組み込み
- 助成金・補助金へのアクセス支援(現在の利用は24%にとどまる)
提言2 「飼い主の高齢化」を、社会全体の課題として受け止める
最多の保護理由となった「飼い主の高齢化・入院・死亡による飼育困難」は、人間社会の高齢化が進むなかで、今後さらに増えていく可能性があります。保護団体だけで解決できる問題ではありません。
- ペット後見制度の法的整備と、社会的な普及
- 自治体・介護・福祉事業者との連携による、早期の把握と支援
- 飼育が難しくなるリスクをあらかじめ減らす「終活×ペット」の仕組みづくり
- シニア犬猫・障害を持つ犬猫への理解を深める里親文化の育成
提言3 多頭飼育崩壊の「予防」に投資する
多頭飼育崩壊(46%)は、いちど起きると対応に大きなコストがかかります。だからこそ、早期発見・早期介入による予防的な支援が重要だと考えられます。
- 行政と民間が連携した「早期発見・早期介入」の体制づくり
- 不妊・去勢手術への公的助成の拡充(特に生活が苦しい世帯向け)
- 相談窓口の整備と、その認知の拡大
提言4 「成犬・成猫・シニア」の譲渡を後押しする文化を育てる
自由記述では、子犬・子猫や若く健康な犬猫に希望が集まりやすく、成犬・成猫・シニア・病気を抱えた犬猫の譲渡が難しいという声が寄せられました。
- 成犬・成猫・シニアの魅力を伝えるコンテンツ・啓発
- 「保護犬猫を迎える文化づくり」に向けた、企業・メディアとの協働
- 譲渡後のフォロー体制の整備(里親が孤立しない仕組み)
- 野犬・怖がりな犬への理解を深めるトレーナーの育成・普及
提言5 保護活動の「質」を見える化し、信頼を高める
不適切な運営への懸念も、複数の団体から寄せられました。保護活動への信頼を高めるためには、活動内容や費用、医療ケアの透明性を高めることも重要です。
- 審査・認証の仕組みの整備(ペトコトお結びのような審査モデルの普及)
- 保護団体の活動の透明性を高める、情報開示の仕組み
- 第三者による監査・評価制度の検討
- 支援者が「信頼できる団体」を見極めるためのガイドライン整備
おわりに
この白書を通じて、私たちがお伝えしたいことは、ひとつです。
殺処分数という「数字」は、たしかに改善しています。けれど、その陰で、多くの保護団体が、限られた人手と資金のなかで活動を続けています。行政や地域、企業との連携がまだ十分ではないなかで、犬や猫の命をつないでいる人たちがいます。
保護活動を、「頑張れる人が頑張る」フェーズから、「社会全体で支える」フェーズへ。そのための仕組みを、データをもとに提言し、プラットフォームとして実装していくことが、ペトコトお結びの使命だと考えています。
この白書が、保護活動を支援する一人でも多くの方、そして企業や行政機関に届くことを願っています。