老猫が吐く場合に考えられる原因や病気は?食欲の有無や吐いたものから獣医師が解説
皆さんのお家のネコちゃんは、吐いた事はありますか? どの位の頻度で吐きますか? 年齢を重ねた事で、吐く回数や内容に変化はありますか? ワンちゃんと比べるとネコちゃんは吐くことが多いと思います。しかし、若い頃とシニアの頃では吐き気の内容がちょっと異なるケースが多いのです。今回はネコちゃんの中でも、老猫(シニア猫・高齢猫)が吐く原因と対処法、考えられる病気などをペットの往診・在宅ケア専門サービス「にくきゅう」代表で獣医師の立石が解説します。
何歳からが老猫?
そもそも何歳以上を老猫と考えるべきでしょうか?一般的に、ペットフードメーカーなどが年齢別にフードを変える目安として用いられるのが7歳前後といわれています。しかし、6歳と7歳で突然シニアの身体に変わるわけではないですし、個体差もかなりあると思います。生物的な繁殖が自然に行える年齢を超えた辺りからを「シニア」と捉えるならば、その辺りの年齢がボーダーラインとなるのでしょう。
老猫が吐く場合に考えられる原因や病気
猫が吐く場合、それが病的なものなのか、自然なものなのか。言い換えれば病院へ連れて行くべきか様子をみていいのか。これが飼い主さんにとって一番重要ではないでしょうか?まずは、吐いた後に食欲が有るか無いかをチェックしましょう。
吐いてもその後は食欲があり、食べても吐かないのであれば、ひとまずは様子を見ても大丈夫なケースが多いです。逆に、食欲が無く1日に何度も吐く場合はできるだけ早く病院に連れて行ってください。これを一つの目安とした上で、「吐く」内容について考えてみましょう。
食べた直後(1時間以内)に未消化の食事をそのまま吐く
勢いよくガツガツたべるタイプのネコちゃんに多い現象です。これは正確に言うと「嘔吐」ではなく「吐出」といって、食べた内容物が胃に入る前に食道でストップしてしまっている可能性があります。
猫はもともと食道の粘液や唾液が少ないため、丸飲みしたフードは喉につかえたり、食道内にひっかかりやすいと考えられます。特に年を取ると粘液量は減っていくので、若い時には大丈夫だった子も、吐出回数が増える可能性があります。
対策としては、
- 食事の水分を増やす(ウェットフードへの切り替えや水分を加えるなど)
- 食器の位置を7cmほど高くする
- 急いで食べてしまわないよう、少量ずつに分けて与える
猫用の足つき食器の1例
食欲が異常にあるのに痩せる、吐く
腎不全により脱水した猫
シニア猫に多いのが「甲状腺機能亢進症」というホルモン異常の病気です。この病気の症状として過食があげられますが、末期になると食欲は落ち、吐き気は増えていきます。吐く以前の症状として、「過食なのに痩せる」という経過があった場合、血液検査などで確認する必要があります。
同じように糖尿病でも初期は食欲旺盛で太りますが、病状の進行とともに痩せたり飲水量が異常に増えたりしますので、食欲と体重の変動、飲水量と尿量の変化は健康なうちから気にかけてチェックしておくことが大切です。
食欲が低下し、吐く回数が増える
食欲が低下して吐く回数が増える場合、肝機能や腎機能の悪化、消化管の異常で起きている吐き気の可能性があります。肝臓、腎臓は血液検査の数値の変動をみることで診断がつきますが、消化管の異常は一度の通院で診断できないものも多くあります。
異物摂取などによる消化管閉塞(腸閉塞)は比較的若い猫に多いのですが、口に引っかかった異物を取ろうとして飲み込んでしまう可能性は老猫でもゼロではありません。若い頃は飲み込んでしまっても便として出すことができていた人の髪の毛や細かい糸くず、紙なども消化管の動きが鈍くなることでうまく排出できずに詰まってしまう恐れがあります。
様子を見ているうちに悪化してしまい、最悪の事態を招くこともありますので、このような症状がみられた場合はできるだけ早く受診してください。
老猫が吐いたものの状態から考えられる原因・病気
老猫に限った事ではありませんが、参考までに吐いた物の形状と原因の一例をあげてみます。
白い泡、透明~やや黄色い液体
胃液の可能性が高いです。空腹のタイミングで吐いている場合は、食事を与えてみて食べるか、その後吐かないかを確認してください。空腹時の胃酸過多は病気のこともありますが、食事を小分けにして与え、空腹時間が短くなるように対応することで収まることもあります。褐色~緑色の液体
胆汁が逆流している可能性があるため、胃腸の機能や運動性に問題が疑われます。食欲が無いケースが多いため、治療が必要になる可能性が高いと思われます。食後、時間がたってから消化されたフードを吐く
消化管全体の動きに問題がありそうです。お腹の他の臓器の異常から消化管に影響が出ている事も考えられます。いずれの場合も、「1日に2回以上吐く」「吐き気が連続する」「吐く回数が増える」などの症状がある場合は、できるだけ早く動物病院へ行く必要があります。老猫が吐いた場合は早期に相談
若い頃は体力や気力でカバーできていた部分が、年を取ることによってできなくなり、症状として現れるのはネコちゃんも私たち人間も一緒かもしれませんね。自分でお医者さんに行けないネコちゃんのために、少しでも異変に気が付いたら早めに獣医さんに相談するようにしましょう。
特に慢性腎臓病などの慢性疾患は歳をとるほど出やすくなりますし、病気の進行が緩やかであるほど飼い主さんが軽視してしまう傾向にあります。若い頃からの観察力と、日頃の生活でチェックする習慣が必要です。かわいい家族と永く一緒にいるためにも、シニア期のネコちゃんには半年毎に健康診断を受けることをお勧めします。血液検査などは食前と食後では数値に変動が出やすいため、朝ご飯抜きの午前中に受け、毎回同じ条件で結果を比較することがポイントです。
参考文献
- 『犬と猫の治療ガイド2015』(インターズー)