猫が猫パンチするのはなぜ?隠された気持ちや病気の可能性を獣医師が解説
猫と一緒に暮らしていれば、一度は猫パンチの洗礼を受けたことがあるのではないでしょうか。「どうしてこのタイミングで?」と思うようなときに猫パンチが繰り出されたことがある方も多いかと思います。この猫パンチ、基本的には攻撃をするときに繰り出されることが多いですが、爪がしまわれていてさほどダメージを受けないソフトなものから、一撃で流血してしまうほど威力が強いものまで少々バリエーションがあるようです。今回は猫パンチの特徴や理由、猫の気持ちについて、中央アニマルクリニック獣医師の石本が解説します。
猫パンチをする理由
遊び・興味の猫パンチ
ご自宅の猫ちゃんが、初めて見るものやおもちゃなどに対して手先でちょんちょんとつつくようにパンチを連打している様子を見たことはありませんか?このパンチは、攻撃の意味合いはほとんど無く、どちらかというと触れることでその存在を確かめたり、相手の出方を調べたりしているのです。
つまり「目の前のものに興味があって遊びたい」「じゃれつきたいけどはたしてそれは安全なものなのだろうか?」「攻撃してこないだろうか?」などを確かめているのです。
そして安全であることや攻撃をし返してこないことなどを確認すると、致命傷にならない程度にソフトなパンチを繰り出して遊び続けます。
不快・不満の猫パンチ
「猫の頭やあごの下を撫でると気持ち良さそうなので、しばらく撫で続けていたら突然パンチを受けてしまった」「寝ている猫の体を触ったら急にパンチを繰り出された」というような経験はありませんか?これは、はじめは猫ちゃんも撫でられて気持ちいいと感じていたものの、満足してもなお撫で続けられたことで不快になり「もうやめてほしい」とパンチを繰り出したパターンです。
触られた部分に痛みを感じてパンチを繰り出すこともありますので、その際は注意が必要です。その部分を触られるのを嫌がることが続くようでしたら、動物病院に相談してみましょう。
多頭飼いの場合は、相性の合わない猫同士が近づいてしまったときや、お互いのテリトリーに踏み入ってしまった時などにも猫パンチが見られることがあります。
パンチを繰り出すことで相手に自分の不快感を示し、本格的な争いに発展することを避けているのかもしれません。
攻撃の猫パンチ
猫は基本的に争うことを嫌います。ですが声や態度で威嚇をしてもなかなか相手が引き下がろうとしない時には、真剣勝負をしなくてはいけません。最終手段として人間が痛いと感じるほどの本気の猫パンチが飛び交います。牽制・威嚇までは比較的、致命傷にはなりにくい手加減したパンチですが、本気の場合はより相手にダメージを与えるために爪を出して攻撃力を高めます。
また、猫は本来ハンターですので、狩りをする際にも獲物を一発でしとめるために爪を出しパンチを繰り出します。ですが、家の中で人と暮らしている飼い猫は基本的にはこのような本気のパンチを出すことは少ないようです。
猫パンチに利き手はある?
猫にも利き手はあるようです。イギリスのとある心理学者が猫の利き手に関する実験を行い興味深い結果が得られました。実験の内容は以下のようなものです。
オス猫・メス猫それぞれ21匹ずつに、以下の3つのテストを繰り返し100回行い、どちらの手を使うのかを観察し分析が行われました。
- ネズミのおもちゃを頭上につるす
- 目の前でネズミのおもちゃを引っ張る
- 透明な瓶の中にマグロを入れ、取り出させる
実験の結果は、1と2では左右両方の手を均等に使ってパンチをする猫が多かったのに対し、3ではオスは21匹中20匹が左手を使用し、メスは21匹中20匹が右手を使用していました。
なぜ3のテストだけ使用する手に差が出たのか。この心理学者は次のように考察しています。
1と2のテストは利き手でなくても容易に行うことができる動作のため、左右どちらの手も均等に使い、3のテストはより複雑な動作を必要とするため利き手を使ったのではないか。
確かに、私たち人間も簡単な動作(ドアを開けるなど)はどちらの手も特に不自由なく使うことができますが、より緻密で精度の高い動作を行う時には利き手を使用しています。猫にも同じようなことが言えるのではないでしょうか。
また、3のテストでオスは左手、メスは右手を使用しており、性別によって利き手が違うようです。
犬や人間でも左利きはオスに多い傾向にあり、男性ホルモンである「テストステロン」が利き手の決定に関与しているのではないかと言われています。猫も同じように、性ホルモンが利き手の決定に影響を与えているのではないでしょうか。
猫パンチを理解して愛猫の気持ちを理解しよう!
猫パンチにはどうやら不快感・嫌悪感・攻撃などのマイナスイメージの意味だけでなく「遊びたい」「じゃれつきたい」などの明るい意味合いもあるようです。愛猫の気持ちがどちらなのか、よく観察することでわかるかもしれません。