「小池都知事は『殺処分ゼロ』に本気だと思った」 滝川クリステルさんインタビュー
10日(月)、「アニマル・ウェルフェアサミット 2016」のアフターセッションとして主催団体の代表を務める滝川クリステルさんへのメディア合同インタビューが行われ、小池都知事登壇の舞台裏や「殺処分ゼロ」についての考えが語られました。
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「もっと開く」
目標は大事だが、ただ『ゼロ』を目指せばいいということではない――10日(月)、「アニマル・ウェルフェアサミット 2016」のアフターセッションとして主催団体の代表を務める滝川クリステルさんへのメディア合同インタビューが行われ、小池都知事登壇の舞台裏や、改めて「殺処分ゼロ」についての考えが語られました。
初開催となった今回のイベントは来場者の満足度が89%と高い数値になり、来場者数も想定以上だったことから、第2回が2017年8月27日(日)、28日(月)の2日間にわたって規模を拡大し、開催されることも発表されました。会場は引き続き、東京大学本郷キャンパスになる予定です。
滝川さんによると、この登壇は「TOKYO ZEROキャンペーン」の呼びかけ人でありイベントにも登壇した藤野真紀子元衆議院議員の仲介で実現したものでした。都知事は打診を受け、すぐに「行きます」と返事をしたそうです。
滝川さんは都知事と対談した感想として、「都知事は、『殺処分ゼロに向けて予算を付ける。東京は2020年までに前倒しして達成する』と言ってくださいました。公約に載せる際は周りから反対の声もあったようですが、本人の強い希望、強い意志で加えたそうです。本気なんだと思いました」と話しました。
大きな問題とは、もちろん動物が殺処分されていることを指しているのですが、滝川さんはそれだけでなく言葉そのものにも、「『殺処分ゼロ』という言葉が踊っている」と警鐘を鳴らしています。
「ただ『ゼロ』という数字を追うことでひずみが起き、おかしくなっていることがありますし、結果として人間のエゴで動物を苦しませていることもあります。目標を掲げることは大事ですが、ただ『ゼロ』を目指せばいいということではないということを伝えるべきだと思いました」
「伝えたかった大きなポイントは、『アニマル・ウェルフェアにのっとった殺処分ゼロを目指す』ということです。今回は、アニマル・ウェルフェアをどう伝えるかということでいろいろな方にご登壇いただき、(来場者に)『五つの自由』など基本的なことを知ってもらおうとしました」
「五つの自由」とは、「飢えと渇きからの自由」「不快からの自由」「痛み・傷害・病気からの自由」「恐怖や抑圧からの自由」「正常な行動を表現する自由」のことで、もともと1960年代のイギリスで家畜の扱いが酷かったことから生まれた考えです。今回はペットの話が中心になりましたが、第2回では家畜をテーマにしたセッションも検討しているそうです。
「日本は何でも『かわいい』ことに対する執着心が強いので、ファッション重視でお洋服を着せたり、乳母車に乗せたり、少しtoo muchになってしまうんです。殺処分の問題を見ずに『動物がかわいい』とだけ言っている社会は不自然だと思います」
「動物福祉は、かわいそうな動物に施しをあげる考えだと思います。私たちの財団は『共存』を謳っていますが、家庭動物だけでなく家畜も含めて、生き物が一緒に生活しているのに、なぜ人間だけが心地良さを追求しているのでしょう。それがおかしいと思わないほうが不健康です。すごい(劣悪な)環境で育てた動物たちのことを知らないで(その肉を)いただいていることが私たちの幸せかというと、現実を知れば幸せとは思わないでしょう。もっと生き物に対してのアニマル・ウェルフェアをしっかり整えていくということがこれから必要なことだと思います」
滝川さんは、イベントを通して「アニマル・ウェルフェア」を「動物愛護」でも「動物福祉」でもないものとして浸透させたかったと話します。
「(お仕事中は)触ってはいけないとか基本的なことを教える場も少ないと思います。補助犬に対して、『人間から強要されている』『人間のエゴだ』という声もありますが、補助犬が嬉しそうにお手伝いしてるのが伝わったのがよかったと思うんです。犬も顔に出ますから、無理にやっているのか、遊びながらやっているのかが伝わるデモンストレーションでした。実際にやっているのを見ると違うと思うので、もっとああいう場が増えると知識も身に付いていいなと思いました」
補助犬のデモンストレーションは、盲導犬・介助犬・聴導犬の3種ごとに記事でも紹介していますので、ぜひご覧ください。
ただ、滝川さんは「東京で『アニマル・ウェルフェアにのっとった殺処分ゼロ』を実現することにインパクトがあります。そして、東京だけではなく、例えば沖縄で保護された子犬たちを東京で譲渡するとか、東京と連携して需要と供給のマッチングをしているところもありますが、そのようなことがもっと増えていけば」と東京が連携の中心になることも期待しています。
なお滝川さんの財団では、保護した犬猫が譲渡されるまで一時的に預かるボランティア「フォスター」の育成も進めており、その数を増やすことが殺処分ゼロへの一つの解決策となるとしています。
最後に、滝川さんは、「サミットは皆さんの寄付で開催させていただいているものです。目の前の動物たちを助けるための寄附の形もあると思いますが、私どもの財団では啓発活動も大切だと考えています。こういった啓発活動にも使わせていただきながら、大きな効果を出していきたいと思っています。そこを理解していただき、マンスリーサポーターとしてのご協力をいただければと思います」と話し、インタビューを締めくくりました。
初開催となった今回のイベントは来場者の満足度が89%と高い数値になり、来場者数も想定以上だったことから、第2回が2017年8月27日(日)、28日(月)の2日間にわたって規模を拡大し、開催されることも発表されました。会場は引き続き、東京大学本郷キャンパスになる予定です。
強い希望、強い意志で公約になった
今回の「アニマル・ウェルフェアサミット」で最も注目されたのは、やはり小池都知事の登壇です。都知事の就任直後であり、さらにリオデジャネイロオリンピックの閉会式直後というタイミングでしたが、都知事はイベントに駆け付け、「殺処分ゼロ」にかける思いを語りました。滝川さんによると、この登壇は「TOKYO ZEROキャンペーン」の呼びかけ人でありイベントにも登壇した藤野真紀子元衆議院議員の仲介で実現したものでした。都知事は打診を受け、すぐに「行きます」と返事をしたそうです。
滝川さんは都知事と対談した感想として、「都知事は、『殺処分ゼロに向けて予算を付ける。東京は2020年までに前倒しして達成する』と言ってくださいました。公約に載せる際は周りから反対の声もあったようですが、本人の強い希望、強い意志で加えたそうです。本気なんだと思いました」と話しました。
「殺処分ゼロ」という言葉が踊っている
イベントの名前にもなっている「アニマル・ウェルフェア」という言葉ですが、まだ聞き慣れないという方が少なくないと思います。滝川さんは、「この言葉を通して大きな問題が起きていることを知ってもらいたかった」とイベント開催の経緯を話します。大きな問題とは、もちろん動物が殺処分されていることを指しているのですが、滝川さんはそれだけでなく言葉そのものにも、「『殺処分ゼロ』という言葉が踊っている」と警鐘を鳴らしています。
「ただ『ゼロ』という数字を追うことでひずみが起き、おかしくなっていることがありますし、結果として人間のエゴで動物を苦しませていることもあります。目標を掲げることは大事ですが、ただ『ゼロ』を目指せばいいということではないということを伝えるべきだと思いました」
「伝えたかった大きなポイントは、『アニマル・ウェルフェアにのっとった殺処分ゼロを目指す』ということです。今回は、アニマル・ウェルフェアをどう伝えるかということでいろいろな方にご登壇いただき、(来場者に)『五つの自由』など基本的なことを知ってもらおうとしました」
「五つの自由」とは、「飢えと渇きからの自由」「不快からの自由」「痛み・傷害・病気からの自由」「恐怖や抑圧からの自由」「正常な行動を表現する自由」のことで、もともと1960年代のイギリスで家畜の扱いが酷かったことから生まれた考えです。今回はペットの話が中心になりましたが、第2回では家畜をテーマにしたセッションも検討しているそうです。
日本の「動物愛護」はToo much?
「アニマル・ウェルフェア」という新しい言葉を伝える場となった今回のイベントですが、日本にはもともと「動物愛護」や「動物福祉」という言葉があり、三つの言葉があいまいに使われているのが現状です。滝川さんに改めて、それぞれの言葉への考えをお聞きしました。「日本は何でも『かわいい』ことに対する執着心が強いので、ファッション重視でお洋服を着せたり、乳母車に乗せたり、少しtoo muchになってしまうんです。殺処分の問題を見ずに『動物がかわいい』とだけ言っている社会は不自然だと思います」
「動物福祉は、かわいそうな動物に施しをあげる考えだと思います。私たちの財団は『共存』を謳っていますが、家庭動物だけでなく家畜も含めて、生き物が一緒に生活しているのに、なぜ人間だけが心地良さを追求しているのでしょう。それがおかしいと思わないほうが不健康です。すごい(劣悪な)環境で育てた動物たちのことを知らないで(その肉を)いただいていることが私たちの幸せかというと、現実を知れば幸せとは思わないでしょう。もっと生き物に対してのアニマル・ウェルフェアをしっかり整えていくということがこれから必要なことだと思います」
滝川さんは、イベントを通して「アニマル・ウェルフェア」を「動物愛護」でも「動物福祉」でもないものとして浸透させたかったと話します。
印象的だったのは、補助犬のデモ
イベント開催中は登壇の準備などでいろいろなセッションを見られなかったのが残念と話す滝川さんですが、補助犬のデモンストレーションに参加し、子どもたちが嬉しそうに見ていたのが印象的だったそうです。「(お仕事中は)触ってはいけないとか基本的なことを教える場も少ないと思います。補助犬に対して、『人間から強要されている』『人間のエゴだ』という声もありますが、補助犬が嬉しそうにお手伝いしてるのが伝わったのがよかったと思うんです。犬も顔に出ますから、無理にやっているのか、遊びながらやっているのかが伝わるデモンストレーションでした。実際にやっているのを見ると違うと思うので、もっとああいう場が増えると知識も身に付いていいなと思いました」
補助犬のデモンストレーションは、盲導犬・介助犬・聴導犬の3種ごとに記事でも紹介していますので、ぜひご覧ください。
アニマル・ウェルフェアにのっとった殺処分ゼロを全国へ
小池都知事の公約で注目を集める東京の殺処分ですが、実は他の都道府県に比べて数が多いというわけではありません。むしろ2015年度の犬猫の殺処分数は、418匹と全国で2番目に少ないのです(ちなみに1番少ないのは福井県の195匹です)。この418匹には病気や事故に起因する自然死や安楽死も含みますので、返還・譲渡の可能性があった犬猫の殺処分数という意味ではもっと少なくなります。ただ、滝川さんは「東京で『アニマル・ウェルフェアにのっとった殺処分ゼロ』を実現することにインパクトがあります。そして、東京だけではなく、例えば沖縄で保護された子犬たちを東京で譲渡するとか、東京と連携して需要と供給のマッチングをしているところもありますが、そのようなことがもっと増えていけば」と東京が連携の中心になることも期待しています。
なお滝川さんの財団では、保護した犬猫が譲渡されるまで一時的に預かるボランティア「フォスター」の育成も進めており、その数を増やすことが殺処分ゼロへの一つの解決策となるとしています。
次回の動物愛護管理法改正に向けて
現在の動物愛護管理法は2013年に改正が行われたものですが、次回の改正が2018年に予定されており、どのような改正を行うべきか議論が高まることは間違いありません。これについて滝川さんも、「(財団の)代表として嘆願書を持って行くため、署名活動などで動こうと思っています」と話します。現在は、さまざまな保護団体へヒアリングを行い問題点などを情報収集するために準備をしているそうです。最後に、滝川さんは、「サミットは皆さんの寄付で開催させていただいているものです。目の前の動物たちを助けるための寄附の形もあると思いますが、私どもの財団では啓発活動も大切だと考えています。こういった啓発活動にも使わせていただきながら、大きな効果を出していきたいと思っています。そこを理解していただき、マンスリーサポーターとしてのご協力をいただければと思います」と話し、インタビューを締めくくりました。