猫の犬糸状虫症 | 症状や原因、治療・予防法など【循環器認定医が解説】
猫の犬糸状虫症は肺血管へ犬糸状虫が寄生もしくは死滅することにより引き起こされ、呼吸器症状が認められる疾患です。緊急性もあるため動物病院に早期に行くことをおすすめします。今回は猫の犬糸状虫症の症状や原因、治療法、予防法、対処法・応急処置まで循環器認定医の深井先生が紹介します。
猫の犬糸状虫症のサマリー
猫の犬糸状虫症は、肺血管へ犬糸状虫が寄生もしくは死滅することにより引き起こされ、呼吸器症状が認められる疾患です。緊急性
緊急性があります。猫の犬糸状虫症とは
猫の犬糸状虫症は犬の犬糸状虫症と異なる病態を持ちます。猫の犬糸状虫症の場合、犬糸状虫の寄生は少数で、診断や治療が困難ですので、予防が重要な疾患とされています。病期は第Ⅰ期:肺血管系に犬糸状虫が到達する時期と、第Ⅱ期:犬糸状虫成虫が死滅する時期に分類することができ、前者は血管および肺実質組織の急性炎症反応を主とし犬糸状虫随伴呼吸器疾患[HARD:heartworm associated respiratory disease]を起こし、後者は死滅虫体の遠位塞栓に起因する変化を主とし、急性に重篤な呼吸器症状を認めます。かかりやすい種類
かかりやすい種類はありませんが、感染は室内および室外飼育の両者で認められ、成虫感染猫の25%が室内飼いの猫であったと報告されています 1)。かかりやすい時期
蚊により媒介されるので、夏を中心に蚊の活動期間に感染しやすいです。症状
第Ⅰ期
- 無症状
- 発咳
- 呼吸困難
- 嘔吐
第Ⅱ期
- 急性肺障害
- 突然死
異所寄生
- 中枢神経系に迷入した場合は神経症状 など
原因
原因として、犬糸状虫症の感染が疑われます。一般的に、猫の感染率は、その地域で飼われている犬の集団の感染率の5〜20%と報告されています 2)。検査・診断
有効性が認められる検査法は以下の通りです。確実な検査法はありません。- 胸部レントゲン検査
- 心臓の超音波検査
- 抗体検査
- 抗原検査
治療法
以下支持療法と成虫感染の治療の方法があります。支持療法
- ステロイド剤
- 酸素吸入
- 気管支拡張剤
- 静脈点滴
成虫感染の治療
外科的な成虫摘出をします。有効性はあるとされていますが、摘出はかなり困難です。予後
軽度な場合は、予後良好です。状態が悪化する場合や突然死のリスクもあります。無症状の犬糸状虫感染猫の報告では、80%以上が治癒し、そのほとんどが3年で治癒しています 3)。予防
以下内服薬の投与により予防ができます。動物病院に必ず相談するようにしましょう。- イベルメクチン(経口投与)
- セラメクチン(局所投与)
対処方法、応急処置
呼吸状態の悪化があれば、できるだけ早く動物病院を受診することをおすすめします。※引用文献
- 1) Nelson CT, et al. American Heartworm Society 2014
- 2) Nelson CT. Comp Cont Ed Pract Vet 2008;30:382–389.
- 3) Venco L, et al. Vet Parasitol 2008;158:232–237.