猫の元気がない時に考えられる症状別の病気や原因【猫専門獣医が解説】

いつも元気だった猫の元気が急に無くなり、寝たきりで動かなくなった場合は何かの病気である可能性が高いと言えます。ただ老齢の猫で徐々に寝ている時間が長くなったという場合は、生理的なものの可能性もあるためさほど心配はありません。それ以外の理由について、猫の専門病院「Tokyo Cat Specialists」院長の山本が症状別に可能性のある原因について解説します。

猫と病気

猫は基本的に犬や人よりも健康な動物で、15歳になって初めて病院に来たという話も珍しくありません。特に最近は室内飼育が増えたことや、バランスが取れたキャットフードがどこでも買えるようになったことで猫の寿命は伸び続けています。ただ、そうは言っても猫もご飯を食べなくなったり、活動性が低下してしまったりすることがあります。当院にも「毎回食事を30秒で完食するのに残すようになった」「帰ると必ず玄関に迎えに来ていたのに部屋で寝たままだった」など、いつもと違う様子が心配で来院されることが多いです。

猫は人とお話しできませんので、どこが悪いか聞き出すことはできません。そのため獣医療では「元気がない」という症状の場合、全ての病気の可能性を考えなくてはいけません。こういった症状を「非特異的症状」と呼びます。つまり、胃腸が悪くても腎臓が悪くても元気がなくなるので、病気の原因を探る上で元気がないこと自体はヒントにならないという意味です。その代わり、「便が硬くなっていないか」「尿が増えていないか」「体重に変化はないか」「呼吸数が多くないか」などで気が付いたことがあればヒントになるかもしれません。動物病院で積極的に報告しましょう。

猫が元気がないときに考えられる原因と病気

猫

季節

季節の寒暖差によって元気がなくなることがあります。急に寒くなったり暑くなったりする時期は猫にとっても負担が大きいのでしょう。猫も人の風邪のように、一時的に体調が悪くなることがあります。その場合、検査ではほとんど異常がなく数日間、様子をみればケロッと回復します。しかし、中にはどんどん悪化してしまうケースもあるので気が抜けません。また毎年同じ時期に体調を崩しているようなケースでは季節ごとに起こりやすい病気が隠れているかもしれません。それぞれの季節で特に多い疾患を紹介します。

発情シーズンのストレス

猫にとっては比較的過ごしやすい時期ですが、発情シーズンであるため不妊去勢手術を行なっていない猫の場合は周囲の猫の活動性が高まりによってストレスを感じるかもしれません。これは周囲の猫の鳴き声や臭いにより刺激されるもので、室内飼育の猫でもストレスを受けることがあります。ストレスは食欲不振や膀胱炎の原因になります。メス猫は犬や人と異なり交尾をしないと排卵もしない性質があります(交尾排卵動物といいます)。そのため室内飼育で交尾をする機会がない猫は発情期が長引き、それがストレスになることもあります。オス猫は去勢手術を行うことで男性ホルモンが激減し、メス猫を探しに行きたくなる放浪欲や攻撃性が緩和されます。

花粉症

最近、猫も花粉症があることがわかってきました。ただし猫の花粉症は鼻水や涙目という症状より、皮膚のかゆみや嘔吐などの症状の方が強く出ます。花粉症の原因となる植物はそれぞれですが、いつも同じ時期に体調が悪くなると花粉が原因かもしれません。花粉症の対策はできるだけ家の中に入れる花粉の量を抑えることです。部屋に入る前に花粉を落としたり、空気清浄機で花粉の飛沫を防ぎましょう。

毛球症

冬毛から毛が生え変わるため、この時期の猫はたくさん毛が抜けます。猫は毛並みを手入れするときに、舌を使ってグルーミングをします。猫の舌はザラザラした突起物が豊富なため、舌に毛がつき飲み込んでしまいます。そして飲み込んだ毛が胃の中で球をつくり、嘔吐や食欲不振の原因になることがあります。手術が必要になることは稀ですが、日頃からブラッシングをして毛を落としてあげるのが予防になります。やはり長毛種の方が毛球症になりやすいです。

熱中症

猫は暑さに強い動物ですが、湿度が高い日本の夏は猫にとっても辛いようです。犬のように散歩をすることがないため熱中症で来院する頭数は少ないですが、毎年数件は熱中症の猫の問い合わせがあります。室内で換気が不十分であったり、留守番中に室温が予想以上に上がったりすることが原因です。動物の熱中症は非常に危険で命に関わる病気です。夏場外出する時は、必ず密室にならないか注意し、クーラーをオンにしてから家を出ましょう。

ノミ、ダニ、フィラリア

夏は虫が増える季節です。最近では猫もフィラリアに感染することがわかってきました。犬のように血管に詰まることは稀ですが、フィラリアに対して急性炎症を起こして呼吸困難に陥いると危険です。蚊が飛ぶシーズンは予防薬をつけてあげましょう。

花粉症

人の花粉症はスギ花粉が原因になっていることが多いため春のイメージがありますが、ブタクサやヨモギなど秋も花粉症になることはあります。春同様、同じ時期に症状が悪化する場合は気を配ってあげましょう。

猫は寒くなると水分摂取量が減ることがあるようです。猫は比較的健康的な動物ですが、腎臓や膀胱など泌尿器が弱点です。水分摂取量が減ると、これらの病気が悪化する可能性があります。若い猫は特に尿路結石に注意しましょう。定期的に尿を出せているか、尿の色は問題ないかなどチェックしてください。高齢の猫は腎臓病に気を付けましょう。脱水は腎臓病を悪化させる要因の一つです。水飲み場の数を増やしたり、ウェットフードを混ぜて与えたりすると水分摂取を増やすのに効果的です。

年齢

猫

子猫の場合

子猫の元気がない場合は、感染症が原因になっていることが多いです。純血種や完全室内飼育でもお家に来る前に感染したものがぶり返している可能性があります。特に猫風邪と呼ばれる「猫ヘルペスウイルス」「猫カリシウイルス」「猫クラミジア」は至る所で蔓延しているので注意が必要です。子猫期はささいな病気でも悪化しやすいのであまり様子見をせず、一度動物病院で相談してください。

成猫の場合

猫のライフステージで最も病気が少ない時期です。年齢に関係なく発症する病気は「尿路結石」「膀胱炎」、そして異物の誤食などです。猫はボールを飲み込むというよりスポンジのかけらや輪ゴム、靴下などが腸に詰まっていることが多いです。家の中でこれらのものを出しっぱなしにしないように注意しましょう。その他、中年齢でも比較的みられる病気に「膵炎」や「糖尿病「心筋症(肥大型)」などがあります。症状が続くようであれば一度チェックしましょう。

老猫の場合

このステージでは「慢性腎臓病」や「がん」「甲状腺機能亢進症」など、さまざまな病気の可能性があります。これらの病気が隠れていると必ず体重が減少して来ますので、定期的に体重を測定しましょう。年を重ねることで活動性や食欲が低下するのは自然なことですが、1カ月で10%以上体重が減っている場合は明らかに異常で、5%以上だと要注意です。体重4kgの猫であれば10%は400g、5%は200gです。私たちにとってはわずかですが、猫にとっては大きな変化です。

症状

元気がない以外の症状があれば必ず獣医師に伝えましょう。いくつか猫で多い症状を紹介します。

毛玉ができている場合

毛球症とは別に皮膚の毛がだまになってしまうことがあります。これも長毛種で多い疾患ですが、一度できてしまった毛玉は解くことは困難なのでカットするしかありません。毛玉を放置するとどんどん大きくなり、また皮膚が引っ張られ痛みがで、それが原因で元気がなくなることもあります。毛玉をカットする時はハサミでなくバリカンを使った方が安全です。慣れていない場合は、まずはペットサロンや動物病院にカットをお願いしましょう。

鼻が乾いている場合

「猫は鼻が乾くと体調が悪いサインである」と広く信じられていますが、獣医学の教科書にはそれに当たる項目はありません。重度の脱水や発熱がある時は鼻も乾くので、病気のサインという認識が広まったのでしょう。それ以外にも寝ている時や高齢の猫では鼻が乾いていおり、必ずしも病気と関連しているわけではありません。

よだれが出ている場合

よだれが出る理由は二つ考えられます。一つは口の中の病気です。猫で多いのは免疫細胞が自分を攻撃してしまう「難治性口内炎」と、歯垢がたまり細菌が増える「歯周病」です。そのほかにも高齢の猫では口の中に「がん」ができていることもあります。口の中の病気の場合は、口を少しでも触るとかなり痛がるのですぐにわかるはずです。

もう一つは気持ちが悪くてよだれが出ているパターンです。殺虫剤などの中毒、熱中症、肝不全または脳の病気などでも起こります。これらの場合はいずれにしても危険な状態なので出来るだけ早く動物病院にかかりましょう。

食欲がない(食欲不振)場合

食欲不振も上記の「非特定的症状」に含まれ、どのような病気でも食べなくなる可能性があるのでそこから原因をたどることはできません。特に食欲が低下する病気は消化器の病気です。異物が胃の中に残っていたり、膵炎になったりするとほとんどご飯を食べなくなります。

食欲はある場合

「元気がないが食欲はある」という場合は「糖尿病」や「甲状腺機能亢進症」などの病気が考えられます。この二つは病気にもかかわらず食欲が亢進するのが特徴です。しかし実際には、これらの病気を初期に発見することは稀で、診断される頃には食欲が低下していることが多いです。

猫

動かない・寝てばかりいる場合

動きが悪いのも上記の「非特定的症状」に含まれ、どのような病気でも動かなくなる可能性があるのでそこから原因をたどることはできません。特に動きが鈍くなる病気は痛みが出るものです。高齢の猫では関節炎が多いです。膝や肘などの関節に痛みがあると活動性が低下し、寝てばかりになります。猫の場合は高いところに登らなくなるのが特徴で、今まで一発でジャンプしていたところを中間地点を経由し2回に分けて登るようになります。その他に「膵炎」「膀胱炎」なども痛みが強い病気だと言われています。

鳴かない場合

鳴かない、というのも上記の「非特定的症状」に含まれ、どのような病気でも鳴かなくなる可能性があるのでそこから原因をたどることはできません。特に猫はもともとあまり鳴くことが多くないので判断が難しいでしょう。猫はひも状のものを飲み込むことがあり、ひもが喉に引っかかると鳴けなくなります。ひも状の異物は固形の異物よりも危険性が高いので注意が必要です。

まとめ

猫は、犬よりも健康な動物だと言われているとは言え、普段元気な猫が元気がない時には何かしらの原因があります。正しい知識をつけておくことで、適切な判断ができるようにしたいですね。

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第2稿:2017年5月29日 公開
初稿:2015年12月14日 公開

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