猫の鼻水は重大な病気の可能性も 透明・緑・黄など色別の原因や対処法を獣医師が解説

猫の鼻水は重大な病気の可能性も 透明・緑・黄など色別の原因や対処法を獣医師が解説

猫さんで鼻水はよくみられる症状です。人間で鼻水というと風邪を連想しがちですが実は猫さんではさまざまな原因で鼻水がみられます。実は鼻水の原因は重大な病気であることもある大事な症状です。今回は猫の鼻の機能からよくみられる鼻水の原因や対策を獣医師の福地がご紹介します。

猫の鼻水とは

鼻、喉、気管は酸素交換を行う肺につながる場所です。単に空気を取り込むだけでなく、空気中のチリなどの異物を取り除く機能を持っています。左右の鼻は顔の中でも鼻中隔(びちゅうかく)という硬い組織で区切られています。その中には巻き紙状の薄い組織があり、表面を粘膜が覆っています。この粘膜は血流が豊富で、入ってくる空気を温めています。粘膜を顕微鏡で見てみると、細かい毛がびっしりと生えていることがわかります。

呼吸で入ってきた空気中の細かな異物を外に戻す作用もあり、粒子径が10マイクロ以上の異物はほぼ完全に鼻でトラップされるといわれています。人の肉眼で見える最小の大きさは0.1〜0.2ミリメートルといわれおり、1マイクロは1ミリメートルに換算すると0.01ミリメートルですから、鼻では肉眼では見えるギリギリか、それよりも小さなものまで捕捉しているのです。さらに小さな5マイクロメートル以上(0.005ミリメートル)のものは、気管や気管支でトラップされるといわれています。

鼻水は異物を外に出そうとする体の防御反応の一つです。鼻水とは、獣医学用語では鼻漏(びろう)や鼻汁排出(びじゅうはいしゅつ)と呼びます。一般的には鼻水という呼び方が浸透しているので、この記事では鼻水という単語を使っていきます。

鼻水が出やすい年代

猫の鼻

猫の鼻水を年代ごとに解説します。

子猫の鼻水

子猫の鼻水は、猫風邪を起こすウイルスによる症状の一つとして、「目やに」や「くしゃみ」とともによくみられます。炎症が長引くと組織が変形してしまいますので、早めの治療が大切です。例えば目の炎症が酷かったりすると白い瘢痕(はんこん)組織が目を覆うようになったりします。


成猫の鼻水

普段は元気だけど季節の変わり目などちょっと調子が低めの時に鼻水とともに目やにやくしゃみが見られる場合は、小さい頃にかかっていた猫風邪のウイルスが活性化しているからかもしれません。そうでないのにくしゃみや咳がみられる時は、アレルギー性気管支炎などを疑うこともあります。


老猫の鼻水

老猫の場合は腫瘍や歯の病気も多くなってきます。猫では扁平上皮癌やリンパ腫など、鼻や顔面を侵す腫瘍が比較的多いです。歯の根元は鼻の近くまであるため、ここが炎症を起こしたり細菌感染していると鼻にも影響がでます。老猫さんで口臭がきつく鼻水が出ている時は歯の病気も疑ってよいと思います。


猫の鼻水の症状、種類と出る理由

鼻は常に外界の空気に触れていますので、鼻水を出させる原因はたくさんあります。しかし鼻水の色や粘度、両側からなのか片側からなのかである程度の病気を絞ることが可能です。鼻水が出ている時、鼻や副鼻腔(※)に何か疾患があるかもしれません。

※副鼻腔(ふくびくう)は頭蓋骨にある空洞で、鼻と隣り合っています。

さらさらの透明な鼻水

さらさらの透明な鼻水が出ている時に考えられる原因として、
  • アレルギー性鼻炎
  • ウイルス性鼻炎
  • 循環血液量過剰
が挙げられます。

アレルギー性鼻炎では長い間さらさらの透明な鼻水がでることが多く、季節によってむらがあることも多いです。ウイルス性鼻炎では徐々に細菌の感染も起こるため、鼻水が無色透明から緑や黄色っぽくなっていきます。循環血液量過剰による鼻水は、肺水腫という生命の危機にみられ、時にうすいピンク色です。これはかなりエマージェンシーな状態なので、急に出てきて、ぐったりしているはずです。

いずれの場合でも、鼻水は両鼻から出ていることが多いです。


ネバっとした緑や黄色、血の混じった鼻水

ネバっとした緑や黄色、血の混じった鼻水が出ている時に考えられる原因として、

  • 細菌性鼻炎
  • 真菌(かび)性鼻炎
  • 腫瘍
  • 外傷
  • 慢性副鼻腔炎、前頭洞蓄膿症
が挙げられます。

細菌性鼻炎の場合、最初から細菌だけが問題になっていることは少なく、ウイルス性鼻炎や歯の病気などから続いて発生することが多いです。腫瘍の場合は鼻や顔面の変形がみられることもあります。慢性副鼻腔炎や前頭洞蓄膿症は、鼻の近くに存在する顔の骨の空洞に細菌感染が波及して膿が溜まってしまう病気です。ここまで発展してしまうと外科的に膿を取り除く必要があり、猫にとっても負担が大きくなってしまいます。早いうちの治療が重要です。

猫の鼻水が出ている場合の対処法

猫の鼻

猫の鼻の表面はいつもうっすらと濡れており、触ったときに少し手が湿るのは正常です。しかし鼻の周りの毛まで濡れていたり、鼻が詰まったような音がする時、緑や黄色や血の混じった鼻水が出ている時は、病院に連れて行ってあげてください。上記のように猫の鼻水にはアレルギーによるものから、腫瘍など命に関わるものまで原因はさまざまだからです。

猫の鼻水の治療法・薬

鼻水が出ている場合、まずは原因の病気に対する治療を行います。どんな原因であれ、ある程度進行してくると細菌の感染が重なってくるので、抗菌薬を使うこともとても多いです。猫風邪の再発で、症状は鼻水くらいで猫の元気食欲もあるような場合は、消炎剤や抗菌薬の点鼻だけで治療し改善することも多いです。

アレルギー性の場合は、部屋をこまめに掃除したりといったことで改善することもあります。重度でアレルギー性気管支炎なども併発している場合はステロイド剤の内服で対応することもあります。

猫の鼻水の予防法

鼻水の原因は多岐にわたる上に予防が難しい病気が多いのですが、まずはよく観察してもらうことが大切です。歯の疾患では、鼻水とともに「よだれが多い」「カリカリを食べづらそうにしている」などの症状が一緒にみられることもよくあります。

鼻水というと呼吸の状態に気をとられがちですが、それ以外の体の状態もとても大切な情報です。常に生活を共にする飼い主さんの「いつもと違うな?」という感覚が病気の早期発見につながります。


猫の鼻水は気軽に考えずに病院へ

皆さんは「鼻水」と聞いても、あまり大きな病気を思い起こすことは少ないかもしれません。しかし、猫においては重大な病気の症状の一つであることも多いのです。腫瘍や歯による鼻水も多く、症状だけで判断するのは難しい場合も多々あります。鼻水が出ているのをみかけたら、かかりつけの先生に相談してみてください。

「どのくらいの期間出ているか」「どのような状態の鼻水か」「鼻水の状態は変わっていないか」「鼻水が出るタイミングに規則性はあるか」といったポイントに注意して観察してもらうと診断の助けになることがあります。

引用文献

  • 獣医内科学』文永堂出版、岩崎利郎、長谷川篤彦、辻本元

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