犬や猫と暮らす子どもは喘息や湿疹のリスクが減少する? 海外のアレルギー研究を紹介

子どもが犬や猫などのペットと暮らすことは心の発達によいと言われますが、アレルギーなどの原因になってしまわないか心配になる方も少なくないと思います。しかし、近年では逆に子どもが犬や猫と触れ合うと喘息や湿疹の発症リスクが下がるという報告も相次いでいます。今回は子どもとアレルギーに関する海外研究について、獣医師の福地が解説します。

犬との暮らしで子どもの喘息が改善する!?

犬と子ども
アメリカの医学博士(Doctor of Medicine、MD)のP.Tsouらは、喘息症状のある子供たちを対象に動物が与える影響について研究したところ、犬との接触が喘息症状の緩和につながっている可能性があることがわかりました。
米国アレルギー・喘息・免疫学会(Allergy, Asthma&Immunology)の刊行物『Annals of Allergy and Asthma』に掲載された報告によると、P.Tsouらは喘息に罹患している都心に住む7.8歳〜11.5歳の小児188人を対象に、各家庭で動物を飼っていることと喘息症状の関係性について調べました。
研究では臨床的な喘息症状について、調査開始時、3カ月後、6カ月後、9カ月後のタイミングで調査し、各家庭での粉塵を調査して各動物への接触状況と、各動物種に特異的なアレルゲンへの影響を分析(各項目と臨床症状との関連を調べるために「マルチレベル媒介分析」という統計学的な手法を用い行われました)しました。
その結果、犬のアレルゲン(アレルギーの人の体内でアレルギーを起こす原因となる抗原)自体は朝の吸入器の使用と夜間のアレルギー症状の増加に関与しているという結果が出ましたが、犬との接触は朝の吸入器の使用と夜間のアレルギー症状の低下に関与しているという結果が出たのです。今回の研究は、犬のアレルゲンは喘息症状を悪化させるものの、犬とのふれあいはアレルゲンとは別の物質などの作用によって、喘息症状を抑えると結論付けています。
ちなみに、今回の研究では猫やマウス、ゴキブリ(ペットではないと思いますが)と接触していた子どもたちには、こういった喘息に対する保護作用は見られなかったとのことです。

猫と暮らす子どもは気管支炎になりにくい!?

猫と赤ちゃん
コペンハーゲン大学(デンマーク)のJakobStokholmらが喘息の母親から生まれた子どもの遺伝子型と家庭での犬猫の飼育状況を調べたところ、生まれた時から犬猫と接触している子どもは、小児喘息の要因となる遺伝子TT型を持っていても発症リスクが低くなることがわかりました(生まれてから12歳までの喘息症状を調査)。
また、猫と暮らしている子どもは、猫と暮らしていない子どもよりも肺炎や気管支炎などの発生率が低く(0歳から3歳までの肺炎や気管支炎の発症状況を調査)、遺伝的に喘息発症リスクが高い子供においては、猫のアレルゲンとの接触が呼吸器の疾患を抑える可能性が示されました。犬のアレルゲンに対してはこの発症リスクの低下は見られなかったとのことです。

妊娠中に犬とふれあうと子どもの湿疹リスクが低下する!?

アメリカの医師・医学博士(Doctor of Medicine、MD)であるG. Cheemaらは、妊婦がペットの犬とふれうことで生まれてくる子どもの湿疹リスクが変わるかを調査したところ、生まれてから2歳までの子どもにリスク低下の可能性があることがわかりました。
調査では、子どもが産まれてから2歳の時と、10歳の時の皮膚の状態と、妊娠中の母親の犬との接触の関係を分析しました。犬との接触は1匹もしくは2匹の犬に、1日最低でも1時間以上の接触があったものを「室内犬との接触あり」としました。そして統計学的な手法(ロジスティック回帰分析)を用いた評価により、妊婦の犬との接触は、生まれてきた子どもが2歳時のときの皮膚の状態と相関があったものの、10歳の時の皮膚の状態では相関が無いということがわかりました。G. Cheemaらは、「妊婦の犬との接触は、子どもが2歳になるまでは湿疹のリスクを低下させる」と結論付けています。

子どもたちとペット

散歩をする子どもと犬
犬や猫などのペットはアレルギーの原因ともなりますが、今回ご紹介した三つの研究のように、出生前や幼少期の犬や猫とのふれあいが喘息や湿疹などの発症を抑えるという報告もあります。これらの疾患は何に対して過剰に免疫が反応してしまっているか、人によってさまざまです。そのため全ての子供たちが犬や猫とのふれあいでアレルギーを抑えられるとは言えませんが、動物との接触が子どもたちの精神的なプラスの作用だけでなく、健康面でも良い影響を与える可能性があるということを知っていただければと思います。

調査概要

犬と喘息

  • 調査期間:調査開始時、3カ月、6カ月、9カ月後に臨床的な喘息症状について調べた。
  • 対象者: 中央年齢9.6歳の喘息罹患小児188人
  • 調査方法:家庭で動物を飼っている影響を調べるために被験者の各家庭の粉塵を調査し動物への曝露と動物アレルゲン曝露量を調べ、臨床的な喘息症状との比較を統計学的な手法を用いて解析した。
  • 詳細:OR112 Effect of prenatal dog exposure on eczema development in early and late childhood

猫と喘息

湿疹

  • 調査期間:出生前、2歳時、10歳時
  • 対象者:出生前に母親が室内犬と接触していた2歳と10歳の小児782人、そのうち2歳時の評価ができた675人と10歳時の評価ができた675人について評価調査方法:医師による皮膚の評価と出生前に母親が犬と接触していたかどうかについて統計学的な手法を用いて評価
  • 詳細:OR112 Effect of prenatal dog exposure on eczema development in early and late childhood

※アレルギー患者の犬と猫アレルゲンについての参考資料:鼻アレルギー患者のイヌ・ネコ抗原の感作状況(鳥取大学)