アメリカのペットフード市場成長の要因 多様化や犬猫が死亡したリコール事件の影響も
アメリカのペットフード市場のトレンドについて、市場調査会社パッケージドファクツの調査結果『Pet Food in the U.S.』(第13版)から、市場成長の要因や犬猫の死亡事故が起きたペットフード大量リコール事件の影響まで紹介します。アメリカでは2017年のペットフードの販売額が前年から約6%増加し、260億ドルを突破したそうです。特定の犬種・猫種に特化したフードやシニア犬に不足しがちな栄養素を補ってくれるフードなど、愛するペットを想うニーズの多様化がペットフード市場の急速な成長をもたらしています。
アメリカのペットフード市場成長の要因
今回の調査では、ペットフード市場の伸びの要因は、主にオンラインセールスの急成長だと述べられています。特にAmazon.comや、アメリカでペット関連のEコマースを手がける企業Chewy.comの普及が購入を促進しているものと考えられます。Chewy.com
ペットフードの宅配サービス
アメリカではフードの新鮮さや購入の手軽さから、ペットフードの宅配サービスが人気を集めています。例として、「PetPlate」「The Farmer's Dog」「Just Food For Dogs」「Ollie」、Purinaの「Just Right」などが挙げられます。その利用者は飼い主の約5分の1にまで増加しており、特にミレニアル世代と呼ばれる若者は、他の年齢層よりも頻繁に利用する傾向があります。PetPlate
※余談ですが、PetsmartもPetocoも子犬・子猫の生体販売を行わないペットショップです。
肥満や病気予防のためのペットフード
2017年の2月から3月にかけて、パッケージドファクツが行なった国民ペット所有者調査によると、犬の飼い主の76%、猫の飼い主の71%が質の高いペットフードは病気や肥満予防に効果的であると考えていることがわかりました。 米国のペット保険会社ネイションワイドによると、ペットの肥満は7年連続で増加しています(※)。2016年のペット保険請求のうち20%は肥満関連の病気や疾患によるもので、それらの訴求は過去4年間で24%も増加しています。人間と同様に、肥満は犬や猫にとっても病気につながったり、寿命が縮まったりしてしまうことがあります。 ネイションワイドによると、肥満が原因で悪化する最も一般的な疾患である犬の関節炎に関して5万1000件以上のペット保険請求を受け、平均治療手数料は1匹あたり310ドルでした。猫の肥満に最も関連する病気は膀胱または尿路疾患で、平均賠償額はペット1匹につき443ドルでした。※Nationwide「Pet obesity on the rise for seventh straight year」
ペットを健康的な体重に保つためにも、ペットの食事やおやつの量をしっかり管理し、計画的に運動させてあげるようにしましょう。どのようなペットフードを与えるかもペットの肥満や病気に大きく関係してきます。 機能性を重視したペットフード
ペットフードによる肥満や病気予防に関心のある飼い主さんは、おそらく機能性を重視したペットフードを選んでいるはずです。機能性を重視したペットフードとは、例えば特定の栄養を補給するためのフードや、年齢、犬種・猫種、体重、活動量、被毛の種類、アレルギーや健康状態に合わせたフードのことです。パッケージドファクツは、そういったペットフードの需要はこれからも伸び続けると予測しています。自家製、半自家製のペットフード
飼い主さんの中には、グリル肉や自家製のカボチャなどの手作りご飯や、栄養補助食品などを市販のペットフードに追加することでペットの栄養を管理している方もいます。ペットフードメーカーはこのニーズに合わせ、組み合わせて利用できるフードを提供し、それが市場の成長につながっています。タンパク質への関心
タンパク質は人間にとって必要不可欠な栄養素ですが、それは犬や猫にとっても同様です。家畜化される前の野生の犬や猫は、今よりも多くタンパク質を摂取していたと考えられています。そこで犬や猫の健康には、そういったもともとの食事に近付けることが良いのではないか、という意見が飼い主の中で注目を集めています。ペットフードメーカーは、タンパク質を多く含むフードを開発することで、消費者のニーズに応えています。 ただ、飼い主の関心はタンパク質だけでなく野菜や穀物など、他の栄養素にも集まっており、パッケージドファクツが2017年行った国民ペット所有者調査では、飼い主の68%は、野菜は犬や猫にとって必要な栄養素の源だと考え、飼い主の48%が、玄米についても同様に考えています。ペットフード大量リコール事件
実はアメリカの飼い主さんたちがペットフードへこだわりや関心が強い要因の一つに、2007年に起きたペットフードの大量リコール事件が挙げられます。カナダのペットフードメーカー大手メニュー・フーズ社が動物実験を行った結果、同社のペットフードによって約10匹の犬猫が死亡したと発表したのです(※1)。 中国産の小麦グルテンに汚染物質(※2)が混入していたことが確認され、全てのペットフードのリコール(回収)が行われました。残念なことに、この事件を通して、多くの犬猫が亡くなってしまいました。この事件がアメリカの飼い主さんたちのペットフードに対する意識の高さに影響を与えているのは間違いありません。※1:「メニュー・フーズ社によるペットフードのリコール」(日本ヒルズ・コルゲート) ※2:汚染物質としてメラミンが知られていますが、メラミンの混入と犬猫が死亡したことの因果関係は完全には証明されていません。