【猫の写真の撮り方】ケニアドイさんが教える「猫の目線」と「ズーム」の生かし方

今回のカメラマンは、黒の背景色で撮る犬猫の素敵な写真「ドイブラック」で知られるケニア・ドイさん。三つのポイント「猫目線で撮影する」「猫の目線を生かす」「ズームで切り撮る」について、実際にドイさんがどんな風に撮っているかの紹介も含めて解説していきます。

うちの猫めちゃくちゃかわいいのに、写真にするとなぜか魅力が伝わらない!!――そんな悩みを抱えている猫の飼い主さんいませんか? それはもしかしたら、「写真の撮り方」に改善の余地があるのかもしれません。最近はスマートフォンに付いているカメラの性能も上がり、一眼レフを駆使せずとも誰もが良い感じの写真を撮れるようになりました。でも、あり余る猫の魅力は、「良い感じの写真」ではほんのちょっとしか伝わりませんよね。

新連載「猫の写真の撮り方」では、猫の魅力を最大限に引き出すカメラマンたちに、その技を披露していただきます。ただし、「素敵な写真を撮るためにはこういう点に注意してください」と言われただけでは、いまいちイメージがわきません。そこで、本連載では「技を駆使して撮られた素敵な猫の写真」ではなく、「プロが素敵な猫の写真を撮っている様子の写真」を中心に解説していきます。ぜひプロの技を目で見て盗み、1000年に1匹の猫ちゃんを写真に収めてください!

今回のプロカメラマンは、ケニア・ドイさん

連載第1回に登場するプロカメラマンは、黒の背景色で撮る犬猫の素敵な写真「ドイブラック」で知られるケニア・ドイさんです。

ケニア・ドイさん
ケニア・ドイさん

ドイさんは保護猫カフェ「ネコリパブリック」の猫たちをボランティア撮影する活動もされている方です。そこで今回はネコリパブリックお茶の水店にご協力いただき、保護猫たちに被写体となってもらいました。


スマホから一眼まで、カメラは多種多様

カメラと言っても、今や誰もが持っている「スマホカメラ」から、「コンデジ(コンパクトデジタルカメラ)」「一眼レフ」まで、さまざまな種類があります。コンデジはスマホカメラの高性能化によって存在感が薄くなったと言われることもありますが、最近はコンデジも高性能化して5〜10万円ほどの「高級コンデジ」「ハイエンドコンデジ」というカテゴリが人気です。

SONY デジタルカメラ Cyber-shot RX100 IV Amazonで見る

一眼レフのほうはというと、最近は「ミラーレス一眼」に人気が出ています。Instagramで撮影に興味を持った女性が、小型軽量のミラーレス一眼でワンランク上を目指すという流れができ始めているようです。


ドイさんに聞く「猫の撮影にオススメのカメラ」

さて、いろいろな種類のカメラの中で「猫の写真を撮るのに適したカメラ」とは何なのでしょうか。早速、ドイさんに聞いてみましょう。

ドイさんの「ここがポイント」

ケニア・ドイさん どんなカメラを買えばいいですか? と聞かれたときは、「どこまで目指したいですか?」と聞くようにしています。スマホでうまくなりたいのか、コンデジでいいのか、一眼を使ってうまくなりたいのか。最終目標をどこに置くかで変わってきます。あとは予算を決めて、家電量販店で三つぐらい選んでもらうのがいいでしょう。例えばキヤノンの一眼レフだと入門機として「EOS Kiss」シリーズがありますが、テクニックで補えば僕と同じ写真が撮れると思います。与えられた機能を使ってどうするか、割り切って撮ればいいだけです。

Canon EOS Kiss X8i Amazonで見る

その上で、ドイさんがカメラ選びの基準として挙げるのは、「ズーム機能」です。猫を飼っている方は、やはり猫の「自由気まま」「ツンデレ」「マイペース」といった性格にひかれている方が多いと思いますが、この猫の魅力が撮影の難易度を上げることにもつながっています。

個々の性格にもよりますが、犬はちゃんとしつけができていれば飼い主さんの「こう撮りたい」というイメージにあわせて撮る場所やポーズ、まわりに置く小物など写真の「作り込み」が可能です。しかし、猫の場合はだいたい飼い主さんの思い通りにはいかないでしょう。ポーズを取ることはもちろん、次の瞬間、その場にいるかも怪しいところです。

そのため、猫の写真はイメージ先行ではなく、今この瞬間をどうやってうまく撮るかが重要になってくるのです。飼い主さんが「あ、かわいい!」と思ってカメラを手に持っても、おそらく猫は「ん? 何してるの? それ楽しいやつ?」と動いてしまうことでしょう。だからこそ、遠くから猫に意識させることなく「その瞬間」「その光景」を切り撮ることが大事で、それができる「ズーム機能」が大事になってくるのです。

ドイさんの「ここがポイント」

ケニア・ドイさん 僕けっこう人の家に行って猫を撮るときとか、「撮れなくていい」と思って行くんです。隠れて出てこない猫もいるので、「撮らしていただく」という気持ちで焦らず、自分から行かずに寄ってくるまで待ちます。だからズームレンズが生きる。最初から「こんにちは!」では逃げてしまうので、望遠で遠くから狙うんです。


それでは、ズーム機能を駆使してドイさんがどのように撮影しているのか。次のページから、以下の三つのポイントに分けて実際にドイさんが撮影する様子を紹介していきます。
  1. 猫目線で撮影する
  2. 猫の目線を生かす
  3. ズームで切り撮る


1. 猫目線で撮影する

猫に限らず犬もそうですが、ペットを撮る時にやりがちな失敗が上から見下ろすように撮ってしまうことです。ポーズや構図が単調になり、「何も考えずに撮った感」が強く出てしまいがちです。もちろん意図して撮れば良い写真が撮れるので、見下ろすように撮ることがいけないわけではありません。

例えば、下の写真はベッドで猫がまどろむ様子をとらえたもの。前後のボケ感が眠りの世界をより強調していますよね。

ネコリパお茶の水店のかりんちゃん
モデル:かりんちゃん

この写真はどのように撮影されたのかというと……。

ケニアドイさんがネコリパの猫を撮影する様子

ドイさんはあぐらをかいて、斜め上から撮影しています。左肘が左足の上に置かれているのに気付いたでしょうか。暗い室内で手ブレしないための工夫ですね。

そして本題ですが、「猫の目線で撮影する」というのが重要です。床にいる猫の目線となると高さは30cmほどでしょうか。この高さにカメラを合わせると、下のような写真を撮ることができます。ドイさんはどのように撮っているか、ぜひ想像してみてくださいね。

ネコリパお茶の水店のケイタくん
モデル:ケイタくん

まるで自分も猫たちの仲間入りをしたかのような、不思議な感じを覚える写真ですよね。猫目線になることで非日常的な空間を演出することができます。

この写真はどのように撮影されたのかというと……。

ケニアドイさんがネコリパの猫を撮影する様子

ガッツリ寝転んでいました。写真を撮る時は、「ワキを締めてブレないようにカメラをしっかり持って……」というのは基本のポーズとして習うことではありますが、いつもそうしなければいけないわけではありません。低い視点で撮りたい時は、寝転んだり腹ばいになったり、「ポーズはこうあるべきだ」という考えをいったん捨ててみましょう。

ちなみに、カメラによっては画面を上下左右に動かせるバリアングル液晶や上下に動かせるチルト液晶が搭載されたものがあります。これがあれば寝転がったりせずにカメラを低く構えることができますので、ペットの写真を撮る方にオススメの機能といえます。

キヤノン PowerShot G1 X Mark III Amazonで見る

次は、先ほどのケイタくんの写真を例に、猫の目線を生かした写真の撮り方を紹介します。ほぼ同じ写真でありながら、猫の目線が異なるだけで全く印象の違う写真になりますよ。

猫の目線を生かした撮り方

先ほどのケイタくんは「ドイさん、何してるの〜?」といった感じのカメラ目線でしたが、今度は別の方向を見ているケイタくんです。

ネコリパお茶の水店のケイタくん
モデル:ケイタくん

完全に上る気ですね。ジャンプしたくて体がウズウズしている感じが伝わってきます。猫の目線だけでなく、縦の写真でその先にある空間が大きく取られていることで、ジャンプしている姿が自然と想像できてしまうはずです。

同じような目線の写真でも、顔が見える角度の違いでも印象が大きく変わってきます。

ネコリパお茶の水店のケイタくん
モデル:ケイタくん

さっきは表情が見えにくかったので目線が強い印象になりましたが、今度は表情が見えるようになったことで、ケイタくんの感情も見えるようになりました。ジャンプしたいのではなく、上に何か気になるものがあるのかな? そんな想像もできます。

ドイさんは先ほどと同じく寝転んで撮っていますが、少し違う角度から撮った様子も紹介しておきます。

ケニアドイさんがネコリパの猫を撮影する様子

猫の目線を生かすということは、ただ猫がいろいろな方向を向いている写真を撮ればいいということではなくて、目線を生かす構図や撮り方をする必要があるということを意味します。その基本は、目線の先に空間を作ることです。

ネコリパお茶の水店の琥珀くん
モデル:琥珀くん

琥珀くんの目線の先に何があるのでしょうか。そこに空間がある分だけ、いろいろな想像がわいてきますよね。

先ほど目線を生かす際の基本は空間を作ることと書きましたが、光を利用することで見えている以上の空間を作ることもできます。

ネコリパお茶の水店の琥珀くん
モデル:琥珀くん

上の写真では外のほうが明るい逆光の状態なので、猫に明るさを合わせると窓の外が白飛びしてしまいます。窓の外も猫も、両方とも明るさが適切になるように撮る方法はありますが、そうするとモデルの琥珀くんが何を見ているのかが分かってしまい面白くありません(だって見えるのは無機質なビルだから)。でも、白飛びを利用することで見ているものが何かわからなくなり、琥珀くんは何を見ているんだろう? という想像ができるようになるんです。

猫を撮ろうとした時、ついつい「こっちを見て!」と呼び掛けてしまいますが、「猫の目線」を意識することで、後ろ姿でもその子の魅力があふれる写真を撮ることができるようになります。

ズームで切り撮る

最後は、ドイさんオススメの「ズーム機能」を効果的に使った撮り方を紹介します。改めて、なぜドイさんがズーム機能をオススメするのか聞いてみましょう。

ドイさんの「ここがポイント」

ケニア・ドイさん 僕は撮影することで猫にストレスを与えたくないんですよ。だから「勝手に撮る」という感じのスタンスでいます。その上で撮る前にどこから撮るかっていう画作りが始まって、「あのカメラ邪魔だな」とか、「邪魔だけど、どけに行くと逃げちゃうな」とか。そんな葛藤があって、望遠(ズーム)で切り撮ります。


実はですね。ドイさんの「あのカメラ邪魔だな」というのは例え話ではなくて、こういうことでした……。

ネコリパお茶の水店の猫たち
「何でこんなとこにカメラ置いたの?」

筆者が置きっ放しにしていたコンデジがドイさんの撮影の邪魔をしていたのです! そこで、ドイズーム(?)が発動します。どれくらいの距離を取って撮影するのかというと、これくらいです。

ネコリパお茶の水店でドイさんが撮影する様子

けっこう距離を取っていますね。これだけ離れていると猫もドイさんのことを気にせず、自然体でいてくれます。そしてそして、ドイさんが撮影した写真がこちらです。

ネコリパお茶の水店のいっちゃん
モデル:いっちゃん

本当にありがとうございました。邪魔なカメラの存在を全く感じさせず、いっちゃんの哀愁漂う写真を撮っていただきました。

邪魔なものを消せるというのもズームを使うメリットの一つですが、やはり一番はカメラマンの存在を感じさせないからこそ撮れる写真です。

ネコリパお茶の水店でドイさんが撮影する様子

ドイさんが狙っているのは……?

ネコリパお茶の水店のおはぎちゃん
モデル:ケイタくん

ぐっすり眠るケイタくんでした。

猫の目線とズームを意識して、愛猫の素敵な写真を

今回、猫の素敵な写真を撮る方法としてドイさんに教えていただいたのは、
  1. 猫目線で撮影する
  2. 猫の目線を生かす
  3. ズームで切り撮る

という三つでした。なかなか良い写真が撮れず、どうすればいいのかな? と思っていた方は、ぜひ意識して撮ってみてください。愛猫の魅力的な写真が撮れるきっかけになるかもしれません。

次回は引き続きドイさんに、スマホを使って猫の写真を撮る方法を教えていただきます。高い一眼レフを持っていなくても、ズーム機能が期待できないスマホだって工夫次第で良い写真を撮ることができるんです。お楽しみに!