初めて参加した譲渡会が「運命の日」に 14歳のダックスとの出会い【お結びレポート】

初めて参加した譲渡会が「運命の日」に 14歳のダックスとの出会い【お結びレポート】

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保護犬・保護猫とペットを飼いたい人を結ぶ場「OMUSUBI」を通じて結ばれたご家族を紹介する「お結びレポート」第5回は、14歳のミニチュアダックスフンド「ミルトくん」を迎えた秦(はた)さんのお話を紹介します。秦さんとミルトくんの出会いは、OMUSUBIと一般社団法人「つむぎ」が開催した譲渡会でした。今回は新しい飼い主さんとなった秦さんと、ミルトくんを3年以上保護していた動物保護団体「paw pads」代表の濱(はま)さんにお話を伺いました。

秦さんとミルトくん


ミルトくんが保護された理由とは

−−昨年末に譲渡が決まってから半年ほどたちます。ミルトくんは新しいお家に慣れましたか?

秦さん:家に来た頃は緊張していたのか1カ月くらい静かにしていたんですが、その後は自然に振る舞うようになりましたね。息子がベタ惚れで、すごくかわいがってくれるんで良かったと思います。

−−譲渡会の開催自体はどのように知ったのでしょうか。

秦さん:新聞のチラシですね。住宅展示場のチラシに譲渡会の告知があって、「ちょっと行ってみようかな」って。

濱さん:譲渡会に来る方はインターネットで知ったという方がほとんどなので、まさかですよね。限られた情報、最短距離でミルトに出会ってくれた気がします。

譲渡会に参加したミルトくん

−−ミルトくんが保護された経緯を教えてください。

濱さん:私たちが保護したのは2014年の5月で、平塚の神奈川県動物保護センターから引き出しました。もともと相模原に住んでいた方がダックスフンドを2匹飼っていて、自身が病院で入院するので飼えなくなったそうです。もう1匹の子は新しい飼い主さんが決まったそうなんですが、ミルトはヘルニアを患っていて歩けない状態で、11歳だったこともあって引き取り手が見つからなかったんですね。それで相模原の保健所経由でセンターに保護されたというのが経緯です。

秦さん:濱さんが引き出してくれなかったら、ミルトは死んでたんじゃないかって母とも話しています。本当にありがとうございます。

濱さん:センターが殺処分ゼロを掲げているので死ぬことはなかったと思いますが、引き出す優先順位が最後の方になるのは間違いないと思います。ヘルニアの手術はとにかくお金が掛かって、50万円くらい平気で掛かっちゃうんですよ。それを保護団体のお金で出すのは難しいですね。それだけお金が掛かるんだったら、もっと他の子を助けてあげようってなるのが普通です。

うちはたまたま、私が前に勤めていた動物病院の先生がヘルニアに強くて、保護にもすごく意識の高い先生でお安くしていただいたんです。ヘルニアの子はいつもその先生に診てもらっていたので、「チャンスがあるかもしれない」ということで引き出しました。

実際に手術はしてもらったんですが、前の飼い主さんの時にもヘルニアの手術をしていたみたいなんですね。それが完璧ではなかったようで、後遺症が残ってしまっていて、改めて手術をしても、時間がたち過ぎてよちよち歩きぐらいが精一杯ということでした。

秦さん:歩けなくてもバギーに乗せてあげて、外の景色を見せるだけでも全然違うと思うんですよね。歩けるのが一番なんですけど、ちょっと抱っこしてあげて、それで結構満足してくれてます。

バギーに乗るミルトくん


−−前の飼い主さんはちゃんと飼っていなかったというわけではなかったんですね。

濱さん:そうですね。大事にはされていたと思います。前の方も飼い主としてやれることはやったんでしょう。でも、最終的には自分の方が先に体を壊してしまって飼えなくなってしまった。

秦さん:今の様子を見てると虐待とかは無かったと思うので、そこは安心しています。ちゃんと飼われてなかったら、こんなに人に懐かないですもんね。

譲渡会での出会いは「巡り合わせ」

−−濱さんのお家には3年半くらいいたことになりますね。

濱さん:うちではひたすら寝てましたね。他にも保護したチワワの子がいたんですけど、その子が赤ちゃんの頃からずっとお世話をしていて。かわいいもんだからずっと顔をなめてるんですよ。親子みたいに。
ミルトくんとチワワ

子猫を保護した時も、ずっとケージの番をしてて。かわいいんでしょうね。鼻っ面を引っかかれたりしてるのに怒りもせずされるがままって感じで。猫が上に乗ってきてもちょっと嬉しそうにして(笑)。あとテレビを見てると、よちよち寄って来て足にピタッとくっ付いてきましたね。

秦さん:わかるー! くっ付いてると安心するんでしょうね。

−−もともと手間が掛かる子ではなかったんですね。

濱さん:排泄だけは手が掛かるのでオムツ替えの必要はありましたけど、それ以外は特にって感じでしたね。でも正直、ヘルニアでシニアということで貰い手は期待してなくて、看取り覚悟で引き出しをしたんですよ。今までも何匹かそういう子がいて、この子もそれでいいかと思っていたんで、お声が掛かったことにビックリしましたね。

もちろん里親募集はしてましたし、里親会(譲渡会)にも何回も連れて行ってはいたんですけど、気にかけてくれる人はいっぱいいても、手が挙がることは1回もなかった。トライアルも一度も無かったんですよ。

秦さんとミルトくん

秦さん:もう一目惚れって言うか。正直に言うと、私は柴犬が大好きで、譲渡会にも柴犬がいたので「もう絶対この子」って思ってたんですが、ミルちゃんを見て「この子!」ってすぐ決めました。皆さん「すごい!」とかびっくりされるんですけど、別にそんなにびっくりするほどのことじゃないんですよ。逆に「巡り合わせてくれてありがとうございます」っていうくらいで。

−−実際、他の子に比べればお世話は大変ですよね。

秦さん:オムツ替えはありますけど、全然苦じゃないし逆に楽しいです。3、4時間ぐらいおきに取り替えるんですけど、赤ちゃんと同じじゃないですか。そんな感じなので、全然面倒くさいとかないです。本当に普通の歩けるワンちゃんと変わらないですよ。

濱さん:秦さんは子育てもされてたし、前のワンちゃんの介護もされていたので、心配無いですよね。

−−ご家族はどんな反応でしたか?

秦さん:実はギリギリまで言わなかったんです。前の子を看取った後で、濱さんにはしばらく内緒ということでお願いしてました。

濱さん:本当はご家族の同意が必要なんですけどね。でも前の子が亡くなって、次の子ってならないご家族もいるので、みんな同じ温度っていうのは難しいですよ。それは仕方ないことです。メインでお世話をされるのは秦さんで、ご家族も飼育経験がある方たちなので何とかなるだろうと。もちろん全員の意志を確認できるのがベストですし、団体さんによってはそこを厳格にやってるところもあります。でも人柄も心配なかったので。

秦さん:そんな裏事情があったんですね。ありがとうございます!

−−飼育経験があるとのことですが、ミルトくんは何代目ですか?

秦さん:4代目ですね。2代目が柴犬で、3代目もミニチュアダックスフンドでした。おばあちゃんがモルモットを飼っていて、うさぎもいて。うちは動物と一緒に暮らすというのが当たり前だったので、逆に犬がいない生活はあり得ないと言うか。

−−なるほど、そういう環境なら団体としても心配ないですね。ご家族は初めてミルトくんと会ってどうでしたか?

秦さん:トライアルに来るちょっと前ぐらいに伝えて、トライアルの時は「来たか」みたいな感じでしたね。でも1週間したらかわいくなったみたいで。今はすごいかわいがってくれてますよ。

秦さんとミルトくん

愛情を注いでくれる人に引き継ぐために


−−濱さんは保護活動を始めてどれくらいになりますか?

濱さん:paw padsとしての活動は2010年ぐらいから始めているので、8年近くになりますね。小さい団体なので数は多くないですけど、今まで350匹ぐらいに新しい家族を見つけてきました。「やっとここまで来たか」という感じです。

−−秦さんは初めての譲渡会で不安はありませんでしたか?

秦さん:むしろワクワクしてましたね。どんなワンちゃんが来るんだろうって。保護団体の皆さんも、犬のことに携わってる人たちに悪い人いないから。不安が無かったわけではないですけど、話をして納得しました。ミルちゃんみたいな子もそうですし目が見えない子もいますよね。そういう子の世話をやってきてる人たちだから、何でも知っててプロじゃないですか。本当に大変だと思います。ありがとうございます。

濱さん:秦さんはみんなが「大変」と思うことを楽しんでいただける方だったんですよね。私の活動も皆さんから「大変だね」と仰っていただけるんですけど、私としては保護活動は楽しいことなので、大変ではないんですよね。もちろん時間も手間も掛かるし、腰が痛くなったり疲れたりすることもあるんですけど、基本的に楽しいこととしてやっているので。根底にあるのは秦さんと一緒なのかもしれないですね。

−−濱さんは3年半も一緒にいた子が巣立つのがさみしくなかったですか?

濱さん:もちろんさみしいですけど、「きちんとこの子に愛情を注いでいただける方を見つけて引き継ぐ」っていうのを目的としてやってますので、「さみしい」というよりは「良かったな」という気持ちですね。さみしいと思うのは活動の最初の頃だけです。数が多くなってくると、とにかく「新しい家族が見つかって良かったね」って。

−−ミルトくんは今年で15歳になりますが全く年を感じさせないですね。

秦さん:お散歩をしてると「何歳ですか?」って聞かれるんですけど、「14歳です」って答えると「えー! 若いですね!」って皆さんびっくりされます。確かに若いのかなって思って嬉しくなっちゃいましたね(笑)。前に公園でお散歩していたら、写真家の方が近付いてきて「すごいイケメンだね。今度写真撮らしてくれる?」って言われて。びっくりしちゃいました。

これからミルちゃん一筋ですよ。本当に、譲渡会があった11月25日は運命の日ですよね。

濱さん:これだけ大事にしていただいていたら寿命を全うできると思います。

秦さん:目標は20年です。頑張ります。

−−ありがとうございました。